本記事では内田本人に加え、今回楽曲制作の中心として携わった黒須克彦と田淵智也を迎えての、鼎談形式の制作回顧録をお届けする。決意を新たに音楽を送り出し、「今が最強」と称される内田の心境を、彼女を長年支えてきた二人のクリエイター視点からの内田真礼像をまじえて聞いた。
誰にお願いしようかとなったときに、もうこの方々しかいないんじゃないかと(内田)
――まずは内田さんと田淵さんがお会いするのがだいぶお久しぶりということで。
内田真礼 めちゃくちゃお久しぶりです。いつ以来ですかね?
田淵智也 この感染症時代になってから初めてなのは間違いないですね。お元気でしたか?
内田 元気でしたよ。ここ最近は働くマシーンと化してました。
田淵 素晴らしい!
――黒須さんと内田さんは最近もお仕事でご一緒されてるのですか?
黒須克彦 そうですね。7月のライブ(“UCHIDA MAAYA LIVE 2021「FLASH FLASH FLASH」”)やレコーディングとかでも何度かお会いしてましたね。
――そんな内田さんと親交の深いお二人が、今回はQ-MHzとしてユニットで楽曲提供していると。内田さんは今回はなぜこういったコラボになったかは聞いていますか?
内田 聞いておりません(笑)。でもこれまでもアルバムでは最初と最後の曲を同じアーティストに作っていただくのが恒例になっていて、今回3度目でいよいよ誰にお願いしようかとなったときに、もうこの方々しかいないんじゃないかと。
――お二人はQ-MHzとして、依頼の第一報を聞いてどう思われましたか?
黒須 とうとう我々に来たかと思いました(笑)。プロデューサーの冨田(明宏)さんからの発注の時点で、今回こういう理由でQ-MHzが必要なんだというしっかりしたビジョンありました。
田淵 もうアルバムの全体像が見えていたので、はっきりとこの位置にこういう曲を書いてもらいたいというリクエストでした。面白い発注だったので嬉しかったですね。
――具体的にはどのような発注内容だったのですか?
田淵 僕、いただいたパワポ持ってますよ。真礼ちゃん覚えてます?
内田 いや全然覚えてないです(笑)。
田淵 要約するとファンへのメッセージとして「自分から発信する笑顔で幸せの連鎖をつなげていきたい」みたいなコンセプト。チームでそういう制作会議をするんですね。
内田 そうですね。延々とお話をする会というか、私の心境をヒアリングしてもらうというか。それこそ冨田さんからインタビューされるみたいな感じで。
田淵 それって今回は時期的にはいつ頃だったんですか?
内田 たしか今年の春頃だったと思います。
田淵 聞いてみたいのは、時代が大きく変わってしまったじゃないですか。それでやりたいことができなくなってしまったときに、内田真礼として何を考えて、何ができなくてどう悔しかったのか、そこから次に何をするのかと進んだときに、どんな言葉が出てきたのか。それを今日知りたいなと思って来たんですよ。今回のアルバムにはその言葉が結集したんだろうなと思って。何か話してもらえることってあります?
内田 私は音楽が嫌いになりそうだったんです。去年の7月5日って本来は横浜アリーナ公演があって、そこに向けて頑張っていたから。あの状況でやむを得ないとはいえ、無観客でやったライブでの自分が物足りなくて恥ずかしい気がしてしまって、どうしても受け止めきれなくて……。自分への自信のなさやファンがいないことの怖さがありありと現れてしまって、ライブをするのが嫌な時期もあったんです。そこから考えつくかぎりのいろんなやり方を試した結果、今年の春ごろに「もういいや!」って吹っ切れたんです。いつまでもウジウジ塞いでてもダメだなというか。今できないことや、持っていきたい色んなものから手を放して、次のステップに進もうと思ったらスッキリ前を向けた……なのでこのアルバムを作るときの話し合いでは、私めちゃくちゃポジティブだったと思います。
田淵 なるほど、それはお客さんがいないライブを体験してみて悲しかった、やはりファンと向き合いたい想いが強くなったと。
内田 誰のために音楽をやりたいかを一度リセットして考えてみて、やっぱりファンだなと。私は自分一人でパフォーマンスがしたいんじゃなくて、みんなと一体になる体験がしたかったんだな、ライブが好きなんだなって。改めて思ったんです。
――内田さんのそういった結論がアルバムの発注には反映されているわけですが、黒須さんはそこに至るまでの過程にも帯同していると思います。葛藤していた期間の内田さんを見ていかがでしたか?
黒須 去年の無観客ライブから次のライブまでは会っていないので、実は僕も1年くらいブランクがあるんです。その間にどう変わったかを確認する場がこのアルバム制作という感じだったので、本人やチームの皆さんと会って、音楽を通してだったり会話の内容だったりで、「あ、色々変わったんだな」と実感しました。冨田さんとアルバムの打ち合わせをしたときにも、今真礼ちゃんが話していたのと同じようなことをおっしゃっていて。「色々経て今の内田真礼は最強です」って言ってました(笑)。
田淵 聞いた聞いた。「菩薩の内田です」って言ってた(笑)。
内田 そうだ、「すべてを許せるようになった」みたいなことを話しました。色々思ったように活動できない期間があって、「執着から手を放すことって必要かも」って思ったんです。
田淵 やっぱりアーティストのキャリアが長くなると会社やチームって若返るタイミングがあるし、「内田はここまで育ったし若い者に現場を任せてみようか」みたいなことは起きますよね。自分もバンドをやっていて感じますけど、結局そういう周りの環境の中で自分が考えて提案して自分で動かないと長続きしないっていうのはあるので、真礼ちゃんにも来るべき時が来たということなんじゃないかな。そういう経緯で出てきた結論が、「自分の限界を自分で決めるのはやめた」なんだと冨田さんがおっしゃっていて、「私はなんでもかんでもやってみるぞ」というのが内田なりの成長なのですと。じゃあ何のために音楽をやるのかと問うたときに「ファンのためだ」という答えが出てきたのが自分で決めて行動するようになった証というか、たくましく成長されている証拠なのではないかと、「ギミー!レボリューション」の頃から見ていて思います。
テーマは「ギミー!レボリューション2021」(田淵)
――そんな内田さんのモードも受け止めてQ-MHzとしての制作が始まるわけですが、メンバーそれぞれが単独で曲を完成させられる方々が、チームとしてどのように作業をしたのかもお聞きしたいです。
黒須 まずは今回の案件は3曲あったので、中心となって全体の舵を取る役を決めます。今回に関してはこれまでの関わりもあって私が舵取り役になったんですが、そこからこの曲は誰に骨組みを作ってもらうのか、どうやって肉付けをしていくのか、などをリレー形式で割り振って作っていきます。まずは「YA-YA-YAN Happy Climax」を田淵君にお願いして、ほぼ丸ごと作ってもらいました。
田淵 曲は1コーラスまでは私が作って、歌詞も2番のBメロくらいまでは自分で書きました。具体的に話すと、この曲のテーマは「ギミー!レボリューション2021」となっていて、Q-MHzで作るんだったらさらにプラスアルファがあったほうがいいだろうし、1コーラス以降もどんどん展開しまくっていいということだったので、2番以降は田代智一さんに「好きにやっちゃってください!」とお願いして、フルコーラスまで作ってもらいました。歌詞は2番までで僕が考える内田真礼のストーリーを書ききってしまったので、その先の物語を畑 亜貴さんに書いてもらいたいとお願いして、どうやって魔法をかけて未来に持っていくかは完全にお任せしました。
――内田さんは聴いてみての感想はいかがでしたか?
内田 「ギミー!レボリューション2021」というコンセプトは私も聞いて覚悟していたんですけど、最初に冨田さんから「聴かせるべきか悩んでいる」「内田君の心境に今これが合っているかわからないけど、本当に必要だと思うんだったらやろう」って、結構苦々しい顔で提出されて、みんなで田淵さんの仮歌を聴いたんです。最初は「なんだこれは!?かなりすごい曲だな……」って印象だったけど、でも「ギミー!レボリューション2021」だということは念頭にあったので、「冨田さんがどう思っていても私はやります」という気持ちになりました。これは田淵さん主導で作ったと聞いていたので、私への挑戦状なんだなと思って、受けて立つつもりで歌いました(笑)。
田淵 発注で「限界はない」ってご自分で言われていたから(笑)。僕が単独で真礼ちゃんに曲提供させてもらった歴史の中で、「take you take me BANDWAGON」で一度すべてを書き切った手応えが自分の中であって。そのあとのスピンオフのつもりで「共鳴レゾンデートル」を書いた時点で、内田真礼のバイオグラフィのお手伝いはやりきってしまったなと思っていて、その次をやるなら本人の限界を超える必要があるなと。最近の曲は落ち着いてるものが多いのも知っていたけど、一方で以前お客さんの前でライブをやったときに「ギミー!レボリューション」が楽しかったとおっしゃっていたと聞いたので、「ギミー!」を現代風にアップデートするなら過去をただなぞるんじゃなくて、直近のディスコグラフィもすべてふまえたうえでの次をやらないと新しいものにはならないなと。だから今回のふざけた合唱とかも……。
内田 あれか!なんなんですかあれは(笑)。
田淵 「まーやややん」ですよ。ああいう妙な合唱があるとファンもわけがわからず楽しくなれるじゃないですか。年齢を重ねた落ち着きとは別に、内田真礼ってどこかにああいうバグってるような感じがあるよなっていうのを、僕自身もまた見たかった。それを今の真礼ちゃんのスキルでやるのって絶対面白いなと。それができるなら僕もちゃんと今だから出せるエッセンスが出せて、しかもそれを僕が尊敬している人たちがさらに面白く仕立ててくれるんだから、きっと聴いたことのない曲が出来上がるぞと。
――ハチャメチャな曲なのに痛々しくないというか、ハイテンションなのにメッセージ性が強いですよね。
田淵 そうですね。この1年できっと色々悩んだんだろうなというのは遠くから見ていても感じていて、今はそこから前を向いてポジティブだと言っているなら「今を受け入れた私」という曲を書いてあげたほうがいいんじゃないか思って。今の自分を受け入れたうえでめちゃくちゃにはっちゃけるというのは、おそらく「ギミー!」の頃にはなかった要素だと思いますし。
――田淵さんは歌録りには立ち会えなかったということで、完成品を聴いていかがですか?
田淵 これが結果的にお客さんにどう映るかは僕にもわかりませんが、今できる挑戦を全力でやったという感じは曲に出ていると思うので、これをみんなが聴いたときに「なんかよくわかんないけど楽しい!」ってなれば嬉しいです。真礼ちゃんに聴かせたくなかった冨田さんもわけのわからないコーラスを面白がってくれればいいな(笑)。
内田 今お話を聞いていて思ったのが、私は曲を作ったり歌詞を書いたりすることはできないんですが、冨田さんに伝えたことが、すごい形になって返ってくるので、冨田さんを郵便局にして文通をしている感覚です。改めて私はすごい方々に支えられているんだなと感じます。ありがとうございます。
――黒須さんは田淵さんから上がってきた曲を聴いていかがでしたか?
黒須 「ギミー!2021」というコンセプトがあり、田淵君と編曲をやしきん君に任せるのは最初の段階で決めていたので、もうバッチリじゃんという感じ。この曲に関しての不安はまったくなかったです。まさか真礼ちゃんチーム側で物議をかもしてるとは思いませんでしたが(笑)。
――ではアルバムの最初と最後を飾ることになる「Change the world」と「Excite the world!」はどのように制作されたのでしょうか?
黒須 今回は3曲の制作を同時に進行していて、「YA-YA-YAN Happy Climax」で田淵・田代・畑の枠が埋まってしまったので……。
田淵 僕がリソース全部使っちゃった……(笑)。
黒須 最初に「YA-YA-YAN Happy Climax」から進めるのは決めていたので、自動的に残りの2曲に関しては僕が骨組みを作るという感じで。真礼ちゃんのアルバムはこれまでも最初と最後の曲には共通性を持たせるという、暗黙の了解みたいなものがあったので、そこをふまえて僕が並行して作っていきました。結果的に「Change the world」はそれほど長い曲にはならなかったので、編曲をy0c1e君にお願いして、「Excite the world!」はちょうど1コーラスができてその先をどうしようかと考えていたときに、「YA-YA-YAN~」がある程度形になっていたので、2番以降の制作を田淵君に手伝ってもらった感じです。
――「ギミー!2021」のようなはっきりしたコンセプトがない2曲は、どのように発注側の意図を汲んで作曲するのですか?
黒須 まず「Excite the world!」について、「アルバムの最後を飾る壮大なロック」というキーワードがあって、あとは「ポエトリーリーディングを入れたい」とか、「各楽器がせめぎ合う演奏」みたいなヒントをもらっていたので、それらをふまえてある程度作っていき、では共通性を持つ「Change the world」はどうやって作ろうかなという順番でした。「Change the world」はアルバム1曲目ということと、ここ1年くらいの世界で起きた出来事からのキーワードとして「光を感じられるような曲」というヒントがあって、歌詞も含めて楽曲的にアルバムの最初と最後でそこに共通性を持たせる、みたいな意識で作っていきました。
――途中で「Excite the world!」のバトンを受け取った田淵さんはどのように作業されたのですか?
田淵 最後の曲というのもあり、壮大なロックというヒントも聞いていたので、どこまで壮大に展開できるかを試してみて、あとは黒須さんに判断してもらおうと思ってました。普通に2番を繰り返してDメロがあって終わりっていうよりも、この曲も面白チャレンジみたいなことをやっていいんじゃないかと思って、終わりまでずっと展開し続けるような、しかも壮大な曲なら多重コーラスが入るのはいいなと思って。オペラやミュージカルみたいな世界観で雨に打たれながらしゃべってるような絵が見えたので、それらをどうやって上手く組み合わせようか考えながら作っていきました。
――作詞はどなたがメインで進められたのでしょうか?
黒須 「Excite the world!」の1コーラス目を畑さんにお願いして、2番以降を田淵君に任せました。畑さんは真礼ちゃん個人の作品との関わりはそれほどなかったので、冨田さんからも「黒須さんがこれまで関わってきて感じた内田真礼像みたいなものをQ-MHzメンバーにも共有してもらいたい」とお願いされて。
――ちなみにその内田さん像はどんな言葉で伝えたのでしょうか?
黒須 そこはナイショです(笑)。
――これまでどういうアーティストイメージを積み上げてきたのかがわらないなかで、しかもアルバム最後の曲となると作詞のヒントは多いほうがいいですね。
黒須 もちろん畑さんは発注書のヒントだけでも素晴らしい歌詞を書いてくれるんですけど、やっぱりパーソナルなアーティスト性とかも知ったうえで書いてもらったほうが、より深いものが上がってくるので。結果的に1コーラス上がってきた時点で、その判断は間違ってなかったなと思いました。
真礼ちゃんのバンマスを長年務めてこられた黒須さんが、このアルバムの1曲目を作詞するのはアツい(田淵)
田淵 「Change the world」の歌詞に関しては激アツエピソードがありまして。
内田 どういうことですか?
黒須 2曲とも最初に僕が仮の歌詞をつけて提出したのですが、なんとなくつけた、どうとでも取れるフワッとした内容だったんです。当初は「Change the world」に関しても正式な歌詞は畑さんにお願いしようと思っていたんですが、制作の順番的に全体の一番最後になりまして。歌録り日が近かったのもあって、どうしようかと思っていたら「仮歌詞が良かったので、あれでいきたいです」という連絡をもらったんです。僕としては光栄なことなのですが、あくまで仮だしフワッとした内容だしで、本当に良いのかなと疑問もあり、畑さんに相談したんです。事のいきさつは畑さんも知っていたし、細かい文字校正もお願いしていたので。そしたら「これで全然いいんじゃない?」と言ってくださって。
田淵 だから「Change the world」は作詞作曲が黒須さんなんです。
黒須 サビの頭の1ワードとタイトルだけが決まっていなくて、そこだけ「Excite the world!」と連続性を持たせるために畑さんに決めてもらったんですけどね。
田淵 真礼ちゃんのバンマスを長年務めてこられた黒須さんが、このアルバムの1曲目を作詞するのはアツいですよ。
内田 でも私、黒須さんの書く歌詞好きですよ。以前一緒に曲を作らせてもらったときも、1番の歌詞を黒須さんが仮として書いてて、それがとても好きだったので、1番への返事の手紙を書くような感覚で2番以降を書いたんです。今回も違和感はまったくなく、最初に読んでスッと入ってきました。
黒須 これは余談なんですが、そうやって歌録りの直前でサビの譜割りなどが変わって、仮歌資料を作る時間がなくて、僕もスケジュール的に歌録りに立ち会えないのが決まってたので、その箇所をどう伝えようかと悩みまして。真礼ちゃんなら歌詞カードを見れば一発で歌えるだろうなとは思ったんですが、念のためと思って僕が歌った録音を渡しました。
田淵 それも激アツじゃないですか。
内田 スタジオでチームのみんなで聴きましたよ。「みんな集まれー! 黒須さんの歌が流れるぞー!」って(笑)。
田淵 あ、わかりましたよさっき言ってた真礼ちゃん像の件。うーん……これは確かに悩みますね。でもファンは知っていてもいいことだと思うので、大きい部分をかいつまんで話しますね。結果的に畑さんと僕の手で「Excite the world!」の歌詞に落とし込まれたキーワードは「私は私のままで」というものなんですが、このアルバムの最後を締めくくるメッセージの元ネタは今年の7月のライブでの真礼ちゃん自身の発言からきてるということです。これを歌詞に組み込んでくれという依頼が冨田さんから最初に出てますね。本人が一番覚えてると思いますが、ファン的にも胸に刺さった良いライブMCだと思うと。ならば今回はそんな決意をした自分を肯定できるような音楽にしてあげよう、というところから畑さんは1コーラス目を作詞しているんでしょうね。
内田 そうか、私その歌詞がすごく好きで、最後のサビの前に“ヒカリ”って出てくるじゃないですか。この歌詞を最初に聴いたときに、アルバムのタイトルは『HIKARI』しかないなと思ったんです。最初はほかにいくつか候補もあったんですけど、「Excite the world!」を聴いた瞬間に『HIKARI』に決めました。
――そんな「Change the world」と「Excite the world!」は最初に聴いてみた感想はいかがでしたか?
内田 この2曲はするっと心に入ってきました。ポエトリーの部分も冨田さんに「これはちょっとどうかと思うんだけど……」って言われたんですけど(笑)。
田淵 なんたる信頼の低さ(笑)。
内田 「内田君の思いが伝わってるかどうかわからないので、言いたいことがあったらなんでも言ってもらっていいから」って音源をもらって、いざ聴いてみたら「いやこれでバッチリですけど」みたいな(笑)。
――「Excite the world!」の歌録りはいかがでしたか?
内田 ものすごく壮大な展開の曲なので、どうやって歌おうかと悩んだんですが、最終的には何も考えず歌うのが正解なんじゃないかと思ったんです。あまりかっこつけても良くないし、背伸びせず今の自分がちゃんと歌に乗れば成立するなと思ったので、深く考えず、これまでのライブの楽しかった記憶を思い出して、楽しそうな顔で歌いました。ライブでどう歌おうかと今から悩んでます(笑)。
黒須 ポエトリー部分も田淵君が仮歌を入れてたんですけど、彼は普段こうやって接してると慣れで忘れがちですが、基本的に早口なんですよ(笑)。実際に録るときに常人が普通に歌うと、情報量が多すぎて尺が全然足りないんです。真礼ちゃんが最初に録ったときに、「ポエトリー部分は任せるから、好きに歌ってみて」ってやったら、尺にまったく収まらなくて。
田淵 なるほど、そうか。たしかに今回は僕もだいぶギリギリを攻めたというか、結構速く発音しないと入りきらないなとは思ってた(笑)。でもライブでここをギリギリで歌い抜けて次の「私は私のままでいるよ」にそのまま進む姿が見られたら「うおおかっけー!」ってなると思うんです。それって声優という職業人のスキルがあればこそドラマチックに演出できる気がして、僕も仮歌を入れるときは実際にギリギリ一息で歌いきれるまで微調整して録り直してました。ここは真礼ちゃんのこれまでの紆余曲折、起承転結の歴史が入っていればいいなと。いいことばかりじゃなかったというか、何かあると「嫌だー!」って言ったり凹んだりしてる印象が勝手にあったので、そういう雰囲気がちゃんと感じられたほうが今の内田真礼っぽくてかっこいいなとは思っていたので。
――黒須さんはこの2曲に歌が入って、完成してみていかがでしたか?
黒須 どの曲も編曲に関してはそれぞれお任せだったり共同アレンジという形をとらせてもらっているんですけど、編曲もイメージ通りになりましたし、世界観も真礼ちゃん本人の歌も含めて、これまでのアルバムの最初と最後に引けを取らない出来になったなと思いました。
どんな姿でも、どんな服を着ていても、どんな声でも私は私で変わらないものがある(内田)
――では黒須さんと田淵さんは今回のアルバムを通して聴かれてみて、感想や何か思うところはありましたか?
田淵 ここ2年くらいのストーリーが色濃く出た構成だったと思います。新しい挑戦をしたいという気持ちが、過去と比べても強いアルバムだなという印象でした。これが今やりたいことをやります!ってモードの答えだというのは、曲の並びからすごく感じたというか、そこに関連して真礼ちゃん的に前のアルバムから明確に変わったのはどこなの?っていうのは今聞いておきたいな。
内田 私の今の音楽活動って冨田さんが主導で動いてくれてるなかで、自分から「こういう音楽がやりたいです!」って言ったことはほとんどないんです。何度かリクエストしたことはありますけど、基本的には私の内面を色々と形を変えて音楽にしてもらうことが多くて。こういう職業をしていて、音楽半分、役者半分みたいになったときに、音楽活動オンリーにはならないように導いてもらってるんだと思うんです。私が音楽って楽しいと思えるようにあれこれ導いてくれている手段のなかに音楽活動が含まれているというか。そんな私が今回アルバムを出すタイミングで決意したのは、「まだまだ音楽活動やっていこう」っていうことで、その決意に音楽が乗ってる感じです。だから変化したというより、導かれてるのに近い感覚です。私がこういう方向に行きたいというか、今はこのくらいの方向にしておこうっていう冨田さんの意思のほうが強い気がします。
田淵 ああーそうなんだ!なんか納得できる。
内田 こういう音楽がやりたいから音楽活動をしているという気持ちはあんまりないというか。それよりも、音楽の中に乗ってるストーリーのほうが大切で、どんな音楽かよりも中身の歌詞であるとか、伝えたいメッセージが“私の今”であれば成立すると思います。
田淵 なるほど。曲順とかはこだわる人っていうイメージが前からあったけど、今回は声の幅とかも含めて前のアルバムと明確に意図が変わったような印象があった。
内田 あ、そういう意味でいうと、冨田さんやほかのスタッフさんに任せる比率が増えたかもしれない。前はもっとああしたいこうしたいと我が強かったと思います。今は“内田真礼”という作品が出来上がってくうえで、ちゃんとみんなに任せてもいいなと思うようになってきたというか。それがさっきの「手を放す」ということの1つだと思うんですよ。
田淵 今の真礼ちゃんの話を聞いてから曲順を見渡してみると、すごく自由な印象を受けますね。歌の表現とかに関しても、あまり決め込んでる感じがしないというか。どんなキャラでいくか、どの表現でいくのかを、自由に楽しんでやってるというか。幅が広がったというか。
内田 どんな姿でも、どんな服を着ていても、どんな声でも私は私で変わらないものがあるということに繋がるんじゃないかと思ってます。
田淵 良い話だ。聞けてよかったです。
たくさんの経験をした内田真礼のまさしく縮図となる作品(黒須)
――黒須さんはいかがですか?
黒須 やっぱりアルバムってその時点での人生の縮図だと思うんです。で、この2年くらいで色んなことがあって、たくさんの経験をした内田真礼のまさしく縮図となる作品だと感じました。たとえば歌い方にしても、キャリアが長くなると年齢や経験などによってデビュー当時とは歌声が変わることはよくありますが、それが良い意味であらわれてると思います。キュートさも感じますが、デビュー初期によくあるキャピキャピしたキュートさとは違う、大人の女性がときおり見せるキュートさみたいなものだったりとか。無理して大人ぶってもいないし、無理して若作りしてるわけでもない、そういう表現力が増しているなと。僕はライブという人間の表現が爆発する場で毎年一緒になって近くで見ていて、その爆発する表現が良い方向に進んでいると感じていたので、その変化が記録として凝縮されたよいアルバムだと思います。
――最後に内田さん、こうして自分の音楽を作るチームと向き合い、ご自身について話してみていかがでしたか?
内田 お二人にすごく会いたかったんですよ。話さないとわからないことってあるし、こんな時代なので気軽に会えないっていうのもあるし。私は自分の音楽に携わってくれてる人たちをファミリーだと思っていて、私が音楽を通してさらけ出している、自分の弱い部分や嫌いな部分とかを知ってくれているおふたりと話すと、なんか泣きそうになるんです(笑)。こんなに心が動くということは、私はまだ音楽をやりたいんだと思いますし、好きなんだと思います。今こういった機会が設けられてとても良かったと感じました。
INTERVIEW BY 青木佑磨(学園祭学園)
TEXT BY 市川太一(学園祭学園)
●リリース情報
内田真礼3rdアルバム
『HIKARI』
10月27日発売
【きゃにめ限定盤(CD+2BD)】
品番:SCCG-00084
価格:¥7,150(税込)
【初回限定盤(CD+BD)】
品番:PCCG-02064
価格:¥4,950(税込)
【通常盤(CD ONLY)】
品番:PCCG-02051
価格:¥3,300(税込)
<CD>
1.Change the world
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:Q-MHz・y0c1e
2.Never ending symphony
作詞・作曲・編曲:R・O・N
3.ノーシナリオ
作詞・作曲:渡辺翔 編曲:白戸祐輔
4.youthful beautiful
作詞・作曲:RIRIKO 編曲:白戸祐輔
5. LIFE LIVE ALIVE
作詞:織田あすか(Elements Garden) 作曲・編曲:藤永龍太郎(Elements Garden)
6.鼓動エスカレーション
作詞:hotaru 作曲:Tom-H@ck 編曲:KanadeYUK・Tom-H@ck
7.フラッシュアイデア
作詞:前迫潤哉・理沙 作曲:前迫潤哉・after all 編曲:after all
8.ハートビートシティ
作詞・作曲:TAKU INOUE 編曲:kz(livetune)
9.アストラ
作詞・作曲:Δ 編曲:Δ・y0c1e
10.ストロボメモリー
作詞・作曲・編曲:RIRIKO
11. Love for All Stars
作詞・作曲:ZAQ 編曲:白戸祐輔
12.いつか雲が晴れたなら
作詞・作曲 kz(livetune) 編曲:TAKU INOUE
13.Flag Ship
作詞:PA-NON 作曲・編曲:fu_mou
14. YA-YA-YAN Happy Climax!
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:Q-MHz・やしきん
15. Excite the world!
作詞・作曲:Q-MHz 編曲:Q-MHz・櫻澤ヒカル
<Blu-ray1>
「youthful beautiful」Music Video
「鼓動エスカレーション」Music Video
「ノーシナリオ」Music Video
「ハートビートシティ/いつか雲が晴れたなら」Music Video
「ストロボメモリー」Music Video
「Never ending symphony」Music Video
「LIFE LIVE ALIVE」Music Video
<Blu-ray2>※きゃにめ限定盤特典
「Hello, ONLINE contact!」LIVE映像 2020年7月5日@harevutai
初回盤・きゃにめ限定盤共通特典
【封入特典】フルカラーフォトブック
関連リンク
内田真礼 オフィシャルサイト
http://uchidamaaya.jp/
内田真礼 公式Twitter
https://twitter.com/MaayaUchida
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