亜咲花10枚目のシングル「BELIEVE MYSELF」はTVアニメ『シキザクラ』オープニング主題歌。疾走感あふれる楽曲で、自分を信じることをテーマに不安や成長を歌詞に込めた入魂の1曲だ。
ポリープ手術と戦いながら歌ったこの表題曲と、それを乗り越えてステージに立つ姿を映し出したカップリング2曲。1枚のシングルとして記念碑的なつくりになった本作への思いを余すところなく聞いた。

亜咲花「BELIEVE MYSELF」Lyric Video


この歌が「自分を信じること」の支えになってほしい
――新作「BELIEVE MYSELF」は亜咲花さんにとって10枚目のシングルになりますが、まずこの数字をどのように捉えていますか?

亜咲花 10枚という数字で見ると、改めてたくさんの作品に携わらせていただきながら歩んでくることができたなと、強く実感が湧きました。今年の10月26日でデビュー5周年を迎え、その間もコンスタントにリリースさせていただき、ライブもたくさんすることができました。一方で喉にポリープ見つかり、手術を終えてからのリハビリ期間は気持ちとして落ち込んで、果たして自分の声は戻ってくるんだろうかという不安も経験しました。1年以上かけて回復に取り組んでいった結果、現在は何の不自由もなく歌えるようになり、壁を乗り越えたことは自分にとって良い影響を与えてくれ、これからもっともっと言葉にして歌にしていかなきゃなという強い意志に変わりました。ちょうど今回リリースする『BELIEVE MYSELF』の表題曲はそんな手術前にレコーディングした最後の曲なんです。

――TVアニメ『シキザクラ』オープニング主題歌ですね。この作品は名古屋を中心とした東海エリアを舞台にしたオリジナルアニメ企画で、制作陣にもこの地域の人々が中心となっています。名古屋出身の亜咲花さんはこの作品の主題歌オファーをどのように受け止めましたか?

亜咲花 名古屋という土地に思い入れが強いので東海エリアを舞台にしたアニメに関わらせていただけるのがすごく嬉しかったです。この作品をきっかけに、この地域がどんどん盛り上がっていけるきっかけの一つになったらいいなと思いました。

――エンディング主題歌は、同郷で亜咲花さんがリスペクトされているMay’nさんが歌われています。
初めて同じ作品に携わることへの感慨は?


亜咲花 May’nさんとはこれまでイベントでご一緒したりプライベートでも仲良くしていただいていますが、同じアニメで主題歌担当としてタッグを組むことには、また違ったエモさがありますね! クレジットが並んだ画面はスクショを撮って家族で共有しました(笑)。父も私と同じくMay’nさんの大ファンなので「今まで頑張ってきて本当によかったね」と、とても喜んでいました。

――親孝行ができましたね。「BELIEVE MYSELF」を作るにあたって、制作側からのオーダーはどのようなものがありましたか?

亜咲花 「疾走感があってアクションに合う曲で、亜咲花さんが受け取ったものを言葉にしてほしい」と伺いました。そして大変貴重なことに、制作現場を見学させていただきました。CGのスタッフさんやイラストレーターの方、プロデューサーの皆さんから直接作品の内容を伺ったり熱い思いを聞かせていただき、とても勉強になったと同時に、アニメは本当にたくさんの方の手によって作られているのだなと実感しました。その熱い気持ちを私が受け取って歌詞に載せるのはプレッシャーでもありましたが、それが背中を押す形になってより良い歌詞を書くことができたと思います。

――冒頭からセリフ言葉の歌詞で始まるのが印象的でした。

亜咲花 これは『シキザクラ』の主人公の三輪翔くんのセリフを引用し、よりアニメとのリンクを高めようと試みました。主題歌として掲げている以上、やはり作品を大事にしようと頭を捻って歌詞を書いていきました。彼は物語の中で、最初は「もう どうでもいいや」という状態です。でもお話が進むにつれて、「自分もヒーローとして向き合っていかなきゃ!」と強い子に変わっていきます。
歌の方でも、最初は投げ出すぐらい嫌な日々だったけれども、向き合っていくうちに光が見えて戦わなければと成長していけるようなストーリー仕立てにしていきました。

――楽曲についてはどのようなオーダーをされましたか?

亜咲花 先ほどの“疾走感”に加え、キャラクターたちの葛藤や切なさにもフォーカスを当て、単に明るいだけの曲ではないような形でとお願いをいたしました。ストリングスを重ねることより壮大かつ爽やかで、疾走感はありつつも、苦しくて投げ出したくなるような要素が入っています。戦うときはどうしても綺麗ごとばかりではなく、ときには何かの犠牲を伴う現実を受け入れる必要があり、それでも守りたいというジレンマを歌の中に込めています。戦いの象徴である“拳”からインスピレーションを受け、「抱く」「抗う」「描く」など、この歌は全体的に「手」をキーワードとしています。

――歌い方や声の質感もこれまでにはない印象を受けました。

亜咲花 歌詞や曲に合わせて、ただのアップテンポではなくちょっとネガティブなところも声で出していきたいなと思ったんです。特にAメロは「自分はこれからどうしたらいいんだろう」という不安を声に載せられるように囁くような感じで歌ってみました。

――楽曲にもストーリー展開があって、サビに入っていくところでガラッと変わっていきますね。この辺りはどのように表現していったんでしょうか?

亜咲花 このラインはとても難しかったです。暗い展開から始まってサビで希望が差してくる構成になっているので、その差を声でいかに見せていくかはレコーディングのときも一番苦労しました。裏声から地声に、地声から裏声にと展開させることによって、はかなさと切なさを声で演出しています。
ここはたとえ地声で歌えたとしても絶対に裏声で歌おうと決めていました。

――そして最後に「BELIEVE MYSELF」とタイトルが歌われます。この言葉は亜咲花さんにとってどんな意味を持っていますか?

亜咲花 自分を信じるって、なかなか難しいですよね。自分だからこそ厳しくなったりもするので、だからこそ自分を信じてあげることは大事だと思います。皆さんも自分を見失ってしまったり、大きな壁にぶつかったときに、まず自分を信じてほしいなと思います。私はポリープの手術をしたとき、自分の声が戻ってくるかこれまでで一番不安でした。その時も、リハビリを続けて乗り越えれば絶対に戻ってくると、自分を信じて過ごしてきました。自分を信じるのはなかなか難しいかもしれませんが、この歌が支えになっていってくれればいいなと思います。

――この作品に付属するリリックビデオを作られたそうですが、どういった内容でしょうか?

亜咲花 「BELIEVE MYSELF」の歌詞は『シキザクラ』にあわせて男の子を主人公として書いていましたが、リリックビデオでは対比として女の子を主人公にしてみました。女の子だからか自分の等身大に近いような気がします。リリックビデオになるとより歌詞の意味が入ってきやすくなるので、作詞をした立場としてもこのインタビューを踏まえてより歌詞にフォーカスしてご覧になっていただければと思います。



「今、ライブで一番歌いたい曲」5周年イヤーへの熱い思い
――2曲目の「RED ECLIPSE」はミドルテンポのロック曲ですが、どのように作られていきましたか?

亜咲花 コロナ禍以降はライブが開催できたとしてもお客さんが声を出せない状況になってしまいましたので、声が出せなくとも熱くなれる曲を作りたいと思い、ヘヴィなミドルテンポのロックを提案しました。
実は今まで私のレパートリーにミドルテンポの曲はあまり多くなかったので、そのようにお願いをしました。ただ、曲が完成に近づくにつれて、さらに熱くしたいという思いが増していき、Dメロでは頭を振って楽しめるような楽曲にした方がパンチが効くようにと、アレンジャーさんと相談をしてエレキギターをかき鳴らしたりドラムも強くしてもらいました。今、ライブで一番歌いたい曲ですね。

――Dメロは歌詞の口調も、歌のがなり方も、一段上の激しさがありますね。

亜咲花 完成したDメロの曲を聴いたときに、当初の歌詞から変更したんです。もっと強く人を説得するような言葉でないと、と思い、「言葉じゃ駄目だって 態度で示せよ」と訴える言葉にしました。

――他の箇所もかなり強い歌詞ですが、どうやって生み出されたのでしょうか?

亜咲花 こうしたダークな世界観の曲を自分の歌詞で綴ることは、これもこれまで意外となかったことなんです。「ECLIPSE」は月食という意味なのですが、語源はギリシャ語で「消える/逃げる」という内容の言葉で、そこから「消えたいぐらい嫌な出来事に苛まれている人」を想定して書いていきました。「忍び寄る黒い影」とか、普段の自分に寄せた歌詞ではなかなか書けない歌詞で、ノリノリで書いていきました(笑)。

――歌の収録もノリノリな感じで?

亜咲花 はい。もうテンション上がっちゃって「全然歌になってないよ」と叱られてしまいました(笑)。曲調が好きだからこそ口角が上がっちゃって、それが声に出てしまったんです。
そこで気持ちをコントロールするにはまず形から入って行かねばと思い、部屋を真っ暗にしてエアコンも20℃くらいに設定して、寒くて孤独感を出すように、この歌詞の人物を演じるようにして気持ちを整えて歌っていきました。この曲は収録自体よりもそこまでの気持ちの作り方の方が難しかった感じがします。

――クレジット上、亜咲花さんは歌唱と作詞ですが、ミドルテンポのロックというコンセプトから声の作り方も含め、セルフプロデュース色が高めですね。

亜咲花 それでいえば、ここ1~2年にリリースした作品はどれもセルフプロデュースに近い形だと思います。それは作詞を自分でするようになったことが大きいと思います。やっぱり、1人のアーティストとして歌うだけではなく、その他の表現でも自分の気持ちを皆に伝えていかなきゃと思い、ここ1~2年は作詞に積極的になりました。「BELIEVE MYSELF」は作詞をきっかけに作品の解釈がより楽しめたので、作品をリスペクトしているからこそ書ける歌詞を表題曲の方でもより積極的に書いていきたいです。

――3曲目の「Bravery Song」。これはライブの最後で映えそうなアコースティック曲です。

亜咲花 これは今年の7月にアコースティックライブを行なったときの感触が元になっています。久々にステージに立ったことで、「歌える場所があるって、当たり前じゃないんだな」と再認識したんです。立った瞬間にこのときの気持ちをそのまま歌にしたいと思って、英語の歌詞を一気に綴っていきました。
ここは訳すと「私はここに立っているよ。なぜなら君が私の歌を待っていてくれるから 私はあなたを笑顔にしたいんだよ」となっています。他の英語の歌詞も隅々まで訳してメッセージを受け取ってほしいなと思います。あと、実はこの曲は「BELIEVE MYSELF」のアンサーソングになっていて、両方の「let you down」(がっかりさせる)で繋げていて、両方の視点からなっているという形になっています。

――曲の方はどのようなテーマでお願いをされましたか?

亜咲花 バラードロックでお願いしますとご相談をしました。Dメロが終わった後にサビを4回回すところがあるのですが、そこを淡々と繰り返すのではなくアレンジをちょっと変えて、ミックスの段階でアカペラのところを作ってもらいました。レコーディングは通常通りに行なって、その後の工程でアイディアを加えていくという新しい作り方になりました。その結果、CDでもライブと同じような臨場感でお届けできるようになりましたし、実際に歌ったら泣いてしまいそうです。

――そういう現場で生まれるマジックってあるんですね。

亜咲花 この曲に限らずなんですが、自分で作詞をしているときはアドリブがめちゃめちゃ多いです。ブースに入ってから急にシャウトしたりセリフを言いだしたり(笑)。その反応を見て良かったら続行して、やりすぎと言われたら素直に引っ込めます(笑)。もしかしたらマイクに立っている以上、レコーディングも1つのライブのように捉えている自分がいるのかもしれません。録っているときも体を動かしますし、その歌詞の子になりきったりもします。この曲の収録は通常ですとブロックごとに分けるのですが、通しでほぼ1発録りでしたので、その意味でもライブ感が強めでした。歌詞を書いてるせいか、こみ上げてくるものがあって声が詰まる場面もありましたが、その部分も採用されているので尚更だと思います。

――レコーディングドキュメントも見てみたいですね。

亜咲花 実は「BELIEVE MYSELF」にはあるんですよ。『シキザクラ』を放送している中京テレビさんに作詞の段階から密着していただきましたのでぜひご覧いただければと思います。



――改めて、この作品はどんな1枚になりましたか?

亜咲花 「BELIEVE MYSELF」は先程もお話したように手術前に録音した最後の曲ですので、私がポリープと戦っていた最後の証として聴いていただきたいなと思います。カップリングの2曲は、また新たに生まれ変わった声と一緒に歌っているものになるので、その変化もそうですし、先程の曲同士のリンクは「RED ECLIPSE」にも含めておりますので、歌詞カードも目を凝らしてご覧いただきながら聴いていただくとより楽しめるシングルになっていると思います。

――そして、ここから亜咲花さんの5周年イヤーが始まります。

亜咲花 2022年1月10日に、KT Zepp Yokohamaで初めてのZeppワンマンライブを開催します。自分が携わってきた曲やアニソンのカバーを含め、5周年の集大成をそこでお届けできたらなと思っているので、ぜひ遊びに来てください。さらに5周年特設サイトを制作していただき、そこでは仲の良いお友達や、尊敬する先輩55人の方からいただいたコメントやイラストを掲載しています。さらに初めての写真集を出す事になりました。5周年を機にいろんなチャレンジをしています。他にもコラボアパレルなどとにかくいろんなことにたくさん挑戦して、自分の可能性を見つけていく1年にしていけたらと思っています。

INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉

●リリース情報
亜咲花
「BELIEVE MYSELF」
11月10日発売

【DVD付盤(CD+DVD+フォトブック)】
品番:USSW-0329
価格:¥3,080(税込)

【アニメ盤(CD)】
品番:USSW-0330
価格:¥1,760(税込)

初回封入特典
DVD付盤、アニメ盤 共通 初回封入特典
・亜咲花オリジナル生写真(プリントサイン入り)※全5種類のうち1枚をランダム封入
DVD付盤のみ 初回封入特典
・亜咲花直筆サイン入りCD(盤面に本人サイン) をランダム封入

<CD>
01. BELIEVE MYSELF(TVアニメ『シキザクラ』オープニング主題歌)
作詞:亜咲花 作曲:夢見クジラ 編曲:大沢圭一
02. RED ECLIPSE
作詞:亜咲花 作曲:真下正樹 編曲:大沢圭一
03. Bravery Song
作詞:亜咲花 作曲:坂本由佳 編曲: 坂本由佳/坂本昌也
04. BELIEVE MYSELF -off vocal-
05. RED ECLIPSE -off vocal-
06. Bravery Song -off vocal-

<DVD>
・「BELIEVE MYSELF」Lyric Video
・「PHOTO BOOK」 Making Movie

©シキザクラ製作委員会


関連リンク
亜咲花オフィシャルサイト
http://asaka1007.jp/

「シキザクラ」公式サイト
https://shikizakura-anime.com/
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