石原夏織 7th Single「Starcast」Music Video
自分の言葉であり多くの人に響くと確信した、やなぎなぎによる表題曲の歌詞
――今回の表題曲「Starcast」は、どんな曲を目指して制作が始まったのでしょうか?
石原夏織 今回は久々のノンタイアップということもありまして、割と自由に曲を作れるタイミングだったんです。なので、今までファンの皆さんによくお話していた「心の距離が近いアーティストになりたい」という自分の目標と、昨今人と会うことが難しいということにもどかしさや憤りを感じている方が多いだろうな……というふたつの要素を噛み合わせまして。いろんな方に私の歌が、自分のことのように受け止めてもらえる作品にしたいな、と思いました。
――表題曲の作詞を、やなぎなぎさんに依頼されたのはなぜだったのでしょう。
石原 今までご一緒させていただいたりEDを歌われていた作品に携わる数も多かったので、「聴く人それぞれの思い出に結びついたり想像力が膨らむ歌詞を書いていただくなら、なぎさんがいちばんなんじゃないかな?」と思って、お願いすることに決めました。
――実際に歌詞をご覧になって、最初どう感じられましたか?
石原 最初いただいたのは方向性のチェックのために1コーラス分だけだったんですけど、そのときから内容的にもすごく深いものでしたし、自分の今までの経験からいろいろな想像を掻き立てられて。聴く度に違うニュアンスに聴こえるようなところが素晴らしくて、「やっぱり、やなぎさんにお願いしてよかった!」と思いましたし、2番以降の物語もすごく楽しみになりました。
――その2番以降については、どう感じられましたか?
石原 衝撃でした!もっとせつなさが増していったり言葉が強くなっていったりしていく歌詞を読んでいるうちに、いつの間にかその世界に自分が入り込んでいるような、不思議な感覚がありました。
――自分で書いた言葉じゃないのに、自分の言葉のように感じたというか。
石原 そうなんです!でもそれはきっと、自分だけじゃなくて多くの人が同じような気持ちになるだろうなとも思ったんです。それにせつなさを表すのに「悲しい」みたいな言葉を使わなかったり、会いたい気持ちを描いた曲なのに「会いたい」という言葉が入っていなかったりという“直接言わない”オシャレさもあって!歌詞の内容に自分も共感して、想像して、感動して……早くレコーディングしたいなという気持ちになりました。だからいつかなぎさんに、どうやってこの歌詞が生まれたのかを聞いてみたいんです。あと、「どんな生活をしてきたら、この言葉のチョイスができるのか」も(笑)。
――その一方で、サウンドについてはどんな印象をお持ちですか?
石原 まず、コンペで選んだときから印象的な曲だったんです。バラードを歌おうと考えていたわけじゃなかったのに、この曲だけ静かめに始まって「バラード頼んだっけ!?」と思って。そうしたら曲が進むにつれてリズムが入ってスピードも出てきて……1コーラスだけのデモの段階で展開の面白さに心惹かれて、1回聴いたら繰り返し聴きたくなる曲だなぁ……と、心を鷲掴みにされました。
――フルバージョンになったときには、どんな印象を受けましたか?
石原 サビ以外に繰り返すところがないというところが、物語みたいな歌詞と相まってまるで人生を見ているような感じがしてすごく好きなんです。あと、終盤の高音部分はいつか挑戦してみたいと思っていたけどなかなかその機会がなかったものだったんです。なので自分にとっての挑戦でもありましたし、歌詞が入っていない段階でも「このメロディの流れに、ずっと乗っかっていきたくなるなぁ」という気持ちになるぐらい盛り上がるメロディなのも、好きなんです。
――そこに歌詞が乗って、イメージもより鮮明になったのでは?
石原 曲の壮大さもあって若干せつなくなるところもあるんですけど、でも誰かがそばにいてくれるぬくもりを感じるような、温かさがどこかあって。
――石原さん自身の支えにも、すでになっているんですね。
石原 そうなんです。しかもそれが、「この曲を聴いて心を奮い立たせよう」みたいにぐっと押してくれるパワーがあるときも、凝り固まった気持ちをほぐして心を浄化してくれるようなぬくもりを感じるときもあるので、本当に聴くタイミングごとに違うものを感じられる曲なんです。
みんなで作り上げ、突き詰めていくことに楽しさ感じたレコーディング
――となると、逆に歌で表現したいものを伝えるためにイメージを固めていくなかで難しい部分もありましたか?
石原 やっぱり最初は、どういうテンション感で歌っていくのが正解なのか悩んだりもしました。序盤は楽器の数も少ないから張って歌うのも違うし、でも抑えすぎると今度は負けちゃうし、暗くなりすぎちゃう。なのでそのバランスを取りながら、最後にどうやって膨らませて持ち上げていくか……ここに最初、すごく難しさを感じました。でも逆に、今まで抑えながら「ここは出して、ここは引いて」みたいに歌うこともあまりやってきていなかったので、今回はそれに挑戦できるなと思ったんです。なので、サビのフレーズを1個1個突き詰めて考えていったり、ゆったりした部分の語尾を伸ばさずにパツパツ切って歌ってみたりといろいろなことを試してみて。そのなかでなんとなく感覚が掴めたら、あとは自由に伸び伸び楽しく歌わせていただく、というような形で……研究しながらみんなで作り上げていくことに、すごく楽しさを感じたレコーディングでした。
――ということは、楽曲自体がもつ流れが歌ったりイメージを作るうえで助けになったりも?
石原 しました。特にサビの盛り上がる部分は自然とメロディが引っ張ってくれるような感覚があったので、そこは身を委ねて。音が静かなところでは自分でコントロールしながら歌うことに難しさも感じたんですけど、そこでは歌詞が想像を補ってくれたんです。だから歌っているのにお芝居をしているような気持ちになれて、歌詞やメロディが私を助けて引っ張ってくれているとすごく感じました。逆に、家でいろいろ考えているときがいちばん歌いづらかったかもしれないぐらいです(笑)。もちろんそのなかで考えていたことも頭の片隅にありながらのレコーディングではあったんですけど、「切り替えよう」と意識しなくても身を任せて歌っているうちに、いつの間にか曲の主人公になって夜の森にいる……みたいな感覚でした。
――加えて、サビ明けのコーラス部分も印象的なポイントでした。
石原 実はそのコーラスが、レコーディングでいちばん悩んだところだったんです。あまりにも地声すぎるとメインボーカルを潰してしまいそうで、割とファルセット寄りで歌ってみたり。でも曲と合わせて聴くと、楽器の音もボーカルも結構強いから足りないように感じたりもして……なのであのコーラスは、試しながら何本も録っていました。これもあまり経験のないことだったんですけど、コーラスによって曲の壮大さやきれいさを膨らませられるので、こだわって録っていきました。
――そしてこの曲のMVが、苔むす樹海の中や満天の星空の下など、どのシーンを取っても本当に美しい映像作品になっていますね。
石原 そうなんです!今回は曲の世界観もあって自然の中でロケをして、映像美みたいなものを突き詰めたMVになったんです。最初のシーンの苔も、カメラのレンズを通して見ると肉眼とは違った感じの緑に見えたり、奥行きを感じられたりして……撮影中から「これは絶対いいMVになる!」と思いました。
――それ以外にも、お気に入りのシーンはありますか?
石原 そうだなぁ……2番の最初のほうの、ダンサーのNAOちゃんと一緒に森の中のステージで踊っているシーンの緑の青さとか、少しスモークを焚くことでモヤッとして見えるような雰囲気が、個人的にはすごく刺さりました。
――すごく神秘的ですよね。
石原 そうなんです!しかも、ちょっと自分で言うのは恥ずかしいんですけど(笑)、まわりの方が「森の妖精みたいだね!」って言ってくれたりもして。自分でも雰囲気がナチュラルな感じなので、「あ、いいな」と思いました。
――そのペアダンスのシーンは他よりも笑顔多めだったので、それもあっての妖精感なのかもしれませんね。
石原 たしかに!他のシーンではせつなくしていたんですけど、ダンスの部分は距離の離れたふたりの心が、近づいたり離れたりするのを表現しているので、「ちょっとテンション変えてもいいかな?」と思って。実は、こっそり笑ってみたシーンなんです(笑)。
――石原さん発信のアイデアだったんですね。
石原 そうなんです(笑)。逆にせつないシーンでは、歌詞を頼りに表情を作っていきまして。
本当に初タッグ!!? HoneyWorks手掛けたカップリング「わざと触れた。」での抜群の相性
――さて、続いてはカップリング曲「わざと触れた。」についてお聞きしていきます。HoneyWorksさんとのタッグは初めてなんですよね?
石原 初めてです!今回は、プロデューサーさんが提案してくださったことがきっかけで曲を書いていただきました。HoneyWorksさんの曲には「キラキラしていてかわいい」というイメージがあったので、いったいどんな曲になるのかワクワクしながら待っていました。
――それにこちらの曲も、ストーリーのしっかりある曲で。
石原 そうですね。この曲は少女漫画を読んでいるような気持ちになるぐらいに物語があるので、今回は自分がその主人公になったような気持ちで歌っていきまして。まさに今女子高生ぐらいの方には「これ、今の私だ」と思ってもらえそうですし、私や私よりも年上の方たちは「懐かしいしかわいいな」という気持ちになるような曲なんです。
――石原さんからは、曲の方向性について希望は出されたんですか?
石原 はい!ざっくりではあるんですけど、やっぱり石原夏織として歌う曲なので、自分の年齢と離れすぎていないほうがいいなぁというお話はさせていただいて。なのですごくポップ!というよりは、明るいけどちょっとせつなくて。でもかわいらしい……みたいな曲になりました。
――HoneyWorksさんの曲と石原さんの歌声の相性が非常にいいので、今回初タッグと知って驚きました。
石原 うれしい!実はレコーディング中に、HoneyWorksさんからも直接「めちゃめちゃ相性いいですよね!」と言っていただいていたんです。自分的には、自分の声がどんな曲に似合うのかがパッと浮かばなかったので、今回は「こういう路線もできるんだな」という発見のあった曲にもなったんです。しかもそれが自己満足じゃなくて、まわりの人から言ってもらえたことが、とてもうれしかったです。
――石原さんご自身が、この曲の中で気に入った部分はどんなところですか?
石原 いっぱいあるんですけど……個人的に特に好きなのが、かわいらしくて爽やかなのにリズムやギターが生っぽく入っていたりと、楽器がかっこいいところです。あとは、2番の「ついてないな こぼした息」という部分もです。ここはすごくセリフっぽい歌詞なので、今までの経験を生かしてメロディには乗りながら、少しセリフのように歌ってみたんです。
――そのフレーズはこの曲の中で、特にキュンとくる部分のように思いまして。それはHoneyWorksさんの色でもありますし、その色と石原さんの歌声との相性のよさが、強く出ていたように感じたんですよ。
石原 よかった……ありがとうございます。ここは「どこまで息入れて歌ってみようかな?」みたいにいろいろなことを実験しながら録っていった部分なんです。それに他にも、たとえばサビで「ここだけ裏声で歌ってみてください」みたいなディレクションもしていただいて。本当だったらもうちょっと前から裏声に切り替えるようなところを、一瞬だけ裏声に切り替えて歌ったりもしたんです。
――非常に細かいところまでこだわられて。
石原 はい。しかも、地声でも出せちゃう高さのところを、あえて裏声で……とか。逆に、自分が語尾を抜きながら歌うのも好きなのでそう歌っていたら、「それがいいです!」と採用してくださったことも結構あったんです。なのでちょっと必要以上にやって「どこまで使えるかな?」って楽しく突き詰めていったりもして……そういうところを通じて「作品作ってるなぁ」という感じがすごくしたレコーディングになりましたし、そういう今まであまりしなかった歌い方を通じて端々にHoneyWorksさんらしい要素を詰め込めたところも、個人的には好きなポイントでした。
――完成版を聴かれて、ご自身でも今までの曲との違いは何か感じられましたか?
石原 やっぱり聴こえ方が変わった感じがしました。こういうかわいらしいミドルテンポな曲では抜き目に歌ったほうが少し色っぽさも出るし、この女の子の心が揺れている感じも表現できるので、やっぱりこの歌い方にしてよかったです。それに私、聴く分にも歌う分にも、結構裏声が好きなんです。だからそういう意味でも、「やっと挑戦できてよかったな」と思いました。
――逆に、今まで歌われてきた曲を改めてライブで歌うときにも、取り入れられそうなことがあるようにも思われましたか?
石原 しました!何度も歌っている曲だったら、ちょっとずつ歌い方を変えるのもライブならではでいいですよね。なのでこの2曲で学んだことを組み込んでいって、さらによくしていけたらいいなと思っています。
――ライブといえば、来年3月に東京と神奈川で、このシングルのタイトルを冠したライブを開催されます。なのでまず、新曲2曲をライブで歌うとしたらどう歌いたいか、今イメージはありますか?
石原 「Starcast」については、状況によって歌い方や気持ちが変化した曲なので、今とライブのときでは歌詞一つひとつの感じ方が違うと思うんです。なのでライブ中に自分が感じたものを素直に出して、歌っていきたいます。あと「わざと触れた。」は、この曲の中の女の子に、演技みたいに入り込んで歌いたいですね。なのでCD音源とまったく同じように歌うというわけじゃないんですけど、この世界観を形にするということが、今回に関してはいちばんなのかなと思っています。
――では、ライブ自体については、どんなものにしたいと思われていますか?
石原 具体的にはこれから詰めていくんですけど、今回は関東圏内で2回開催なので、それぞれの日程で内容を変えたものにしようとしています。しかも東京が「Vega」で神奈川が「Altair」とサブタイトルが変わるので、それぞれ違うコンセプトを立てたものにしたいんです。
――ファンの方はすごくうれしいとは思うんですが、準備が大変なような気も……(笑)。
石原 だと思います(笑)。でもこれもやったことがないので、自分への挑戦みたいで、ちょっと楽しみなんですよ。
――となると、このシングルから3月のワンマンまで挑戦続きになるわけですね。
石原 あ、そうですね!(笑)。ただ今回はツアーでもないし、1回きりのワンマンライブでもない……という初めてのパターンなので、「思い切ってやってみよう!」ということになったんですよ。なのでぜひ、皆さんにもシングルを聴きながら、楽しみにしていていただきたいです!
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
●リリース情報
「Starcast」
11月24日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
品番:PCCG-02068
価格:¥1,925(税込)
【通常盤(CD)】
品番:PCCG-02069
定価:¥1,375(税込)
<CD>
M1.Starcast
作詞:やなぎなぎ 作曲・編曲:栁舘周平
M2.わざと触れた。
作詞・作曲・編曲:HoneyWorks
M3.Starcast Instrumental
M4.わざと触れた。 Instrumental
BONUS TRACK. Plastic Smile(Piano ver.)
※BONUS TRACKはCD限定収録となります(配信の予定はございません)。
<DVD>
・「Starcast」MUSIC VIDEO
・「Starcast」MUSIC VIDEO MAKING
初回限定盤・通常盤 共通特典(初回製造分のみ)
石原夏織 LIVE 2022 「Starcastタイトル未定」チケット優先販売申込券 封入!
※詳細は決定次第お知らせ致します。
関連リンク
石原夏織オフィシャルサイト
http://ishiharakaori.com
石原夏織 オフィシャルファンクラブ「hand in hand」
https://ishiharakaori-fc.com/