「一夜ノ永遠ニ君想フ」(ドラマ「明治東亰恋伽』主題歌)以来、2年5ヵ月ぶりとなる待望のシングルは、KENNが今年39歳を迎えたことを記念して“ファンの皆様に向けての感謝”をテーマに制作。
いつも以上にナチュラルでぬくもり溢れる曲が揃っていることは、ジャケット写真の雰囲気からも伝わるのではないだろうか。感謝の気持ちを込めながら、ファンの日常に穏やかで優しい光を照らす。
“ファンの皆様に向けての感謝”、シングル制作の経緯
――今作は“ファンの皆様に向けての感謝”がテーマです。KENNさんからのご希望だったのでしょうか?
KENN 元々はプロデューサーさんからの提案だったんです。39歳になりましたし、シングルも2年以上出していなかったので、「39歳にかけて“サンキュー”ということでリリースしてみませんか?」とお声がけいただきました。自分の中でしっくりくるものがあったというか。シャレになってるのもシンプルでわかりやすいなと思いましたね。これまでも誕生日に感謝の気持ちをお伝えしたことはあったのですが、日頃からお世話になっているファンの皆様に色々な形で気持ちをお返しできたらなと常々思っていたので、「この方向性でやらせてください」とお願いしました。
――「Love Story」を表題曲に選ばれた経緯を教えてください。
KENN プロデューサーさんとどんな作風のシングルにするか、可能性を模索しながら、それぞれの曲のコンセプトを決めていきました。打ち合わせからしばらくして、「こういう曲いかがですか?」といくつか曲を持ってきてくれださった中に「Love Story」があって。
――ほかの3曲には、Akira Sunsetさん、浦島健太さん、伊藤賢治さんが参加されています。KENNさんからラブコールを送ったそうですね。コラボレーションのきっかけなどを教えてください。
KENN 僕がお世話になってきたクリエイターの方々にお願いしたところ、ありがたいことに皆さん快くOKしてくれて。プロデューサーさんからのご提案を元に、それぞれのクリエイターさんへ楽曲のテイストなどをご相談させていただいて、今回のラインナップになりました。「聞こえていますか」(M-3)を手がけてくださったAkira Sunsetさんとは女性向けの作品のレコーディングで初めてお会いしたんですが、意気投合してすぐに仲良くなったんです。今回は「ポップで元気づけるようなアイドルソング的な曲にしましょう」という方向性になりました。「Laughter」(M-2)の作曲をしてくれた浦島さんは、僕の歌う曲の仮歌を歌ってくださっていたり、作曲もしてくださっていたりと日頃からお世話になっている方で。最近ではアイドル系の曲も書かれていますが、R&Bチックな曲を得意にされているイメージがあったので、そういう曲、もしくはバンドサウンドということになりました。
――そうだったんですね。
KENN 伊藤賢治さんは、僕が以前ゲーム系のラジオをやらせていただいているときに、ゲストに何度か来ていただいていて。あと個人的に、伊藤さんが携わられているゲームをプレイしていて……。もっと掘り下げると、僕が初めて入ったバンド(The NaB’s)のメンバーが伊藤さんにお世話になったことがあったそうで「いつかKENNくんと一緒にお仕事したいね」と15年前から言ってくださっていたんです。別作品ではお世話になっていましたが、今回は念願のソロ曲、という感じですね。伊藤さんというと、ゲームのバトルソングや、勢いのあるクラシックロックなどのイメージがあって、そういった方向性もいいなと思っていたんですが、僕は伊藤さんの作られるバラードも好きなんです。特に「Rising Sun」(「聖剣伝説 ~ファイナルファンタジー外伝~」)が好きで。それで「バラードは伊藤さんにお願いしてもいいですか?」とリクエストさせていただきました。それぞれの曲で話し合いはしているんですけど、皆さんには「こういうコンセプトの作品ではあるんですけど、気を遣わず自由に作ってほしいです」とも最初にお願いしていました。
甘く軽やかな「Love Story」について
――ではそれぞれの曲について具体的にお伺いできればと思います。表題曲「Love Story」を聴いたときは「キャッチーでかわいらしい曲」だと思ったとのことでしたが、歌詞を読んでどのような印象を受けましたか?
KENN ちょっぴり自信のない男性が、背伸びしていたり、勇気が出なかったり。そんな中でプロポーズをしているような描写もあって。恋と愛の良いとこどりのようなイメージを受けました。
――“ふざけて 笑って何気ないこと喜び合うとなりで 二人で寄り添う日々送りませんか?”という言葉がありますもんね。レコーディングはいかがでしたか?
KENN 幸せムードが溢れる曲だったので、かわいらしさや初々しさなどの要素を入れるとマッチするのかなと。ラップっぽい要素があるなかでメロディもきっちりあるので、割とシビアなテンポ感なんです。こういった楽曲は初めてではないですが、そこまで経験がなかったので、チャレンジングな楽曲だなと思っていました。最初は苦戦したんですけど、楽しかったですね。難しい音ゲーをクリアしたときのような達成感がありました。「やってやったぜ」的な(笑)。
――ここまで甘く、軽やかな曲というのもKENNさんの曲の中では珍しいですよね。
KENN そうですね。今回の4曲ともロックっぽい歌い方はあまりしていなくて。意識したわけではなく、曲に寄り添った結果なんですけど。プロデュースをしていただくときの面白い部分ですね。
――皆さんのお力もあって、様々な表情のKENNさんが引き出されていますね。
KENN 本当におんぶにだっこです。4曲ともコンセプトは一緒なんですけど、それぞれ違ったアプローチになっていて、クリエイターの皆さんの色も出ていると思います。僕自身にはあまり自分の中に色や個性がないと思っていて……。
――えっ、そうなんですか。
KENN はい。こうやって取材を受けさせていただくたびに感じているんです。「突出した個性があんまりないな」って。だから色々な色に染めていただいてありがたいですね。
――ご自身の音楽性についても、同様に考えられているのでしょうか?
KENN はい。今まで僕が出してきたソロシングルを見ていただくとわかると思うんですけど、色々なジャンルに挑戦していて。「音楽ってこういうもんだろ!」とか「KENNがやる音楽は絶対こうだぜ」ってものがないんです。言葉にできていないだけで、芯にあるものはあるとは思うんですけど。
――でも、だからこそ作品ごとに挑戦できる。
KENN そうですね。だから一緒にやらせてもらう方によってカラーが違っています。受け身なところがあるので、自分でガツガツするよりも、与えられたものを「どう表現するか」考えるのも好きなんです。今回は自分で歌詞を書いたり、歌ったりして……僕自身が受け取る側に立ったとしても「嬉しいな」と思える曲を作りたいとは思っています。芯となる部分はそこかもしれません。でもまだまだ自分を探している感じですね。
――それはいずれ見つかるものなんですかね?
KENN 全然わからないですね(笑)。
――しかも4人も。
KENN そうですね。理想形の僕というか。「この世界線にいたとしたら、こんな感じだったのかな」って。
「Laughter」は爽やかなR&B
――「Laughter」はどのような印象がありましたか?
KENN 「Love Story」よりも大人な雰囲気な曲で、すごく爽やかですよね。この楽曲は、浦島さんの仮歌が上手すぎたんですよ……(笑)。日本人離れしたグルーブ感があって、初っ端からフェイクっぽい歌いまわしで。少し香る程度にそれをさり気なくやるっていうのが今の僕が目指したいところなんです。
――合唱団で培ったハモリの技術を使ったとおっしゃっていましたが、イントロやサビのコーラスが印象的です。
KENN 「ハモリを厚いものにしたい」と浦島さんにお願いしていて、それでイントロ部分でウーアー系のコーラスを入れていただいたんです。ハモリはメインボーカルとして歌うのとは違った技術がいるので、普段なかなか動かさない脳や声帯を使っている感じがありました。やりがいがありましたね。
等身大のアイドルソングを──「聞こえていますか」
――3曲目「聞こえていますか」は元気なアイドルソングがコンセプトだったとのこと。すごくポップな曲ですよね。
KENN この曲もかわいらしさと爽やかさがある曲で。Akiraさんとお話しているなかで「今の等身大のKENNがアイドルソングを歌ったらどうなるんだろう」って。キャラクターソングでアイドルっぽい曲を歌わせていただく機会もありますし、10代の子たちが映えるような曲を歌うことはあるんですが、今の僕が歌うとどうなるのか興味があったんです。そしたら懐かしさを感じるような曲に仕上げてくれました。それでいて今風のテイストも入っていてキャッチーで、Akiraさんのバランス感覚が素晴らしいなと思いましたね。“拝啓 元気してますか 健やかに過ごせていますか”というお手紙のような言葉から始まって、話し言葉もあるんですが、ほかの曲と同じくやりすぎてしまうと違ったアプローチになってしまうような気がしたので、さり気なく歌いたいなと思っていました。
――大人なアイドルソングって良いですよね。
KENN フレッシュなアイドルソングも良いけれど、少しミディアムテンポで良いですよね!レコーディングもノリノリで歌いました(笑)。もし僕がこの曲をライブで歌うとしたら、どんな衣装なんでしょうね……?(笑)
――全曲ライブで聴きたいですね。「聞こえていますか」はアイドルチックな衣装になるでしょうか?
KENN ローラースケートとか履くのかな(笑)。本当はコール&レスポンスとかしたいんですけどね。早くみんなで歌えるようなご時世になってほしいです。でも手は叩けますし、ぜひライブがあったらハンズクラップしてくれたら嬉しいです。
「Honest」の作詞は公園で
――本作唯一のバラード「Honest」はKENNさんが作詞されています。どのような場所や環境で取り組まれたのでしょうか。
KENN 「歌詞を書きませんか?」とプロデューサーさんに言っていただいたので、ぜひ書かせてください、とお話ししました。先に楽曲を作っていただいて、あとから歌詞を書く形だったのですが、コード的にいうとメジャーで、優しく包み込んでくれるような雰囲気。曲を聴いて、小さい頃、親によく連れて行ってもらってた公園を思い出したんです。実際にその公園に行って、ベンチに座りながら大自然の中で歌詞を書きました。時間を見つけては、ちょこちょこ車で行ってましたね。
――その公園にはどのような思い出があるんですか?
KENN 実家からは離れた場所にあったので毎日のように行っていたわけではないんですが、親が時々連れていってくれて。すごく綺麗な場所なんです。
――やはり自宅で書くときとは違うものがありますか。
KENN そうですね。実際にその景色を見ながら書くことでよりリアリティのある単語が出てきました。
――“水面に映った 木々はゆっくり揺れている”など、その公園での景色を想起させる言葉もありますね。
KENN 単純に僕に語彙力がなくて(笑)。比喩表現が得意じゃないんです。でもあまり背伸びしたことをすると足元をすくわれると思っているので、なるべくシンプルな言葉をチョイスしたいなと。
――シンプルな言葉だからこそ伝わるものがあると思います。歌詞はどのような思いを込められたのでしょうか。
KENN あまり答え合わせをしちゃうと楽しみが減ってしまうと思うので、どこまでお話するか迷うところなのですが……ざっくりいうと、久しぶりに懐かしの公園に行って。子供の頃から僕は見た目も気持ちも変わったけど、公園は変わらず僕を迎え入れてくれたんですよね。色々あるけど、難しいこと、今できないことがあっても、「気にすんなよ」って言われているような気持ちになったんです。コロナ禍でフラストレーションが溜まりやすい世の中じゃないですか。今までの当たり前が当たり前でなくなって「自分ってなんだろう」って考え込んでしまうこともあると思うんですよ。でも「大丈夫だよ」「なんかあったらおいでよ」「いつでもいるから」って公園が言ってくれているような気がしたので、それを伝えたいなって。ちょっと一息じゃないですけど「気持ちを楽にしようよ」と言えたらなと思っていました。
――ファンの方にとっては、このCDがその公園のような存在になるのではないでしょうか。
KENN 良いこと言いますね……!僕より良いこと言ってる!(笑)
――(笑)。優しい曲が多くて、日常を優しく照らしてくれるようなシングルだと思います。
KENN 元々ポジティブな気持ちを乗せたいという気持ちが強いんですよね。そもそも、音楽業界に入りたいと思った理由もそれだったんです。平たく言うと、落ち込んでいるときにとあるアーティストさんの切ないバラードを聴いて「あ、頑張ろう」って思えたことがきっかけで。それで自分も誰かの気持ちをポジティブにしたいなと思ったんです。
MVの撮影エピソード
――「Love Story」のMVはデート風でナチュラルなイメージです。撮影時のエピソードを教えてください。
KENN 素敵にプロデュースしていただき、ドキュメンタリーチックなカットも多く差し込まれています。あれも1つの理想形ですね。当日は雨予報だったんですが、ほぼ雨が降らず晴れ男の実績がまた1つ刻まれました(笑)。撮影は茅ヶ崎だったんですが、僕がいたバンドに茅ヶ崎出身のメンバーがいて、茅ヶ崎でライブをやったこともあったので、音楽活動でまたこの地を訪れることができてありがたいなあ、と。クルーの方はほぼほぼ男性だったので、撮影中は学校の部室のようなノリで話をしていましたね。その日に彼女役としてカメラを担当してくださっていたのが、僕より少しだけ年下の男性で。その方の名前に「子」をつけて、海のシーンやジュースを渡すシーンでは「〇〇子ちゃん、最近どう?」なんて話しかけていました。それはそれで不思議でしたが、楽しいエチュードでした。
――ジャケットの写真もナチュラルな雰囲気ですよね。
KENN 柔らかいオレンジ色の光があって。ゆったりとした雰囲気が伝わってくるようなジャケットになったと思います。
最近ハマってるものは……ゲームと紅生姜?
――最後にいくつか質問させてください。「Love Story」の“とびきり好きでいるから”という歌詞にちなんで、最近の好きなものを教えていただけますか?
KENN ゲームボーイアドバンスと紅生姜です(笑)。今はソフトを色々なところで買えるので、取っておいたゲーム機を引っ張り出して昔のゲームをやっています。最近は「メトロイドフュージョン」をやり直しているところです(笑)。
――なるほど。紅生姜はなぜハマっているんですか?
KENN 最近紅生姜を初めて自分で作ったんです。よく料理をしているので、調味料も自分で作ってみたいなと。梅が買える季節には梅酢を作っているのですが、その梅酢に生姜をつけたら紅生姜になると知ったんです。試してみたらすごく美味しかったですね。
――先ほど公園の話題がありましたが、公園ではどのような遊びをしていたんでしょうか?またどのようなお子さんだったのでしょうか?
KENN「落ち着きがない」と言われて育ちました(笑)。通信簿にも「落ち着きがない」と書かれていたくらい、同じ場所にいない子どもだったようです(笑)。小学生のうちはゲームやアニメを許してくれる家庭ではなかったので、外で遊ぶことが多くて、公園で色々な遊びをしていました。でもローラースケートは一発でこけたので即やめたんですよ……(笑)。まさか大人になってからインラインスケートの舞台(ミュージカル「エア・ギア」)に出演するとは思っていなくて、めっちゃ練習しましたね。おかげで滑れるようになったので嬉しかったです。
――では最後に、読者にメッセージをお願いします。
KENN まずは“サンキュー”という気持ちを伝えたいです。今までお世話になっているスタッフさん、初めてご一緒したスタッフさん含め、そして何よりいつも応援してくださるファンの皆さんに感謝ですね。とにかく楽しい制作で、その雰囲気がこのニューシングルに詰まっています。ちょっとくすぐったい表題曲のタイトルですが、色々なシーンのお供にしていただけたら嬉しいです。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
●リリース情報
KENN ニューシングル
「Love Story」
2021年12月1日(水)発売
発売元/販売元:MAGES.
品番:USSW-0327
価格:¥2,970(税込)
<CD>
1.Love Story
2.Laughter
3.聞こえていますか
4.Honest
5.Love Story -off vocal-
6.Laughter -off vocal-
7.聞こえていますか -off vocal-
8.Honest -off vocal-
<DVD>
1.Love Story -Music Video-
2.Love Story -Music Video Making Movie-
関連リンク
KENN 公式サイト
http://5pb.jp/records/kenn_music2021/
KENN 公式Twitter
https://twitter.com/KENNstaff