『シン・エヴァ』“完結”以前に臨んだ「Final Call」制作
――パチンコ『新世紀エヴァンゲリオン~未来への咆哮~』に搭載された高橋さんの最新曲は「Final Call」と、意味深なタイトルです。これは歌詞内容からも2021年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの“完結”を念頭に置いた楽曲と思われますが、作品の“完結”を高橋さんはどのように受け止めましたか?
高橋洋子 実はこの「Final Call」を作っているときはまだ『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の内容を一切知らされていなかったんです。だから、本当に“完結”するのかも分からなくって(笑)。作品を最初に拝見したのは関係者試写会だったのですが、「本当に終わったんだ……」と、ハンマーで殴られたかのような衝撃でした。でも本当に素晴らしい作品でしたから、すぐに全世界の人々に観てほしいなと思いました。昨年からのコロナ禍のなか、配信で世界中の方がTVシリーズの方も観てくれて、その人たちが「残酷な天使のテーゼ」も聴いてくれたんです。イタリアではステイホーム期間中にマンションのベランダで大勢の方が合唱して励ましあったという動画も拝見しました。アニメは国境も容易く超える力があるし、なんなら26年という時間さえも超えて歌を愛してもらえる。改めてその尊さを実感しました。
――公開後も『シン・エヴァ』はご覧になりましたか?
高橋 もちろんです。
――「Final Call」の制作にはどんな思いで臨まれましたか?
高橋 ひとりの『エヴァ』ファンとしてはこうであったらいいなという思いと、シリーズの公式アンバサダーとしては、この26年間ずっと応援してくださった皆様に伝えたいことを、両方合わせて成立する作品にしたいなと思いました。オファーをいただいたときに、直感的に「Final Call」というタイトルが思いつき、プロデューサーからも「すごくいいと思います」と言っていただけて、迷わず進むことができました。
――作曲をMasaya Wadaさんにお願いした経緯を教えて下さい。
高橋 Wadaさんはご自身で曲を作るだけでなく、アレンジやBTSのボーカルディレクションなど本当に多彩な方なんです。
――アーティスト同士、どんなところがヴァイブスが合ったんですか?
高橋 お互いに声域が広いこともあって音楽についての感覚が似ているんです。好きな曲も似ているし、ディレクションでは「この曲だったらこのアレンジの方がサウンド的に合うよね」という意見が合ったりもします。だから安心して頼めましたし、『エヴァ』のファンが喜んでくれるオシャレなものになるという自信がありました。私からは、「歌った時に踊り出してしまいたくなるような、アップテンポなものにしてほしい」とお願いしました。でも実はそんなにBPMは速くなくて、サビに行く前の部分を駆け上がるようにリズムを倍打ちにすることでそのように感じさせるというアレンジ上の工夫もあります。
――『エヴァ』というと、シリアスな印象が強いので、楽曲の持つ明るさが印象的でした。
高橋 今回は敢えて“これまでのエヴァ関連楽曲”っぽくないようにしました。「Final Call」ですから、今までのものを全部持っているけれども、新しい一歩を踏み出す、また終わりではなくこれが始まりで、勇気が出る一歩につながるようになればいいなという思いがありました。
――『シン・エヴァ』でも「さよならはまた会うためのおまじない」とありましたね。
高橋 本当にそう。
――さまざまな部分に作品を想起させる要素が込められていますね。
高橋 楽しいですよね。終わりから始まりにするにはいろんなことを解決して、膝をつくようなことがあってもその砂を払って立ち上がって、笑顔で前を向く必要がありますので、そういった全体のイメージで作っています。冒頭から「太陽を知らない 少年のピアノソロには 儚く優しすぎて 泣きたくなる」。彼らが「知らない」と思っていた愛を、大人になるなかで自分で知って持っていくという前向きな気持ちを表現しています。「残酷な天使のテーゼ」の作詞の及川眠子さんは、歌詞を書かれたときに、「母性」を意識されたとおっしゃいました。そしてそれを歌う高橋洋子に対しても「母性」というキーワードで語っていただくことが多いんです。当時は子供を産む前でしたが、今では気づくとそういう眼差しで見ているところがあります。
公式アンバサダーとして伝えたかった5行の言葉
――この26年間、『エヴァ』との関わり方も高橋さんのなかで変化していったんですね。
高橋 そうですね。そんな「母性」に関わるような歌を歌ったら、それが社会現象になって、新聞の取材ではストーリーや謎の解釈まで聞かれるようになりましたから。そのとき初めて、アニメの主題歌を担当するということは、ただ歌うだけではなく自分で作品を理解した上で取り組まなければいけないとか、責任を持って語らなければいけないと意識するようになりました。以後は主題歌を担当させていただくときには必ず資料を頂いたりするようになりました。『エヴァ』という作品もあまりに大きくなりすぎて、私が触れるにはおこがましいようなポジションになってしまったのですが、ありがたいことに公式アンバサダーとして直接応援させていただける環境をいただき、とても嬉しかったです。この歌詞の最後の5行「ありがとう、 さようなら、 ありがとう、 さようなら、 『ありがとう』」はそんな自分として伝えたい思いを書きました。
――その前の「これが最後になるかもね」という1行もちょっと意味深な感じがします。
高橋 私もどうなるかは知りませんよ?(笑)。でも、あの5行の言葉は言えても「これで最後です」とはこちらからは言いたくない。だからやっぱりここは含みを残しておきたいところではあります。伝えたい言葉は伝えたし、「さようなら」は作中のセリフや宣伝のキャッチコピーでも使われていたので、これで良かったなという思いでいます。
――ダンスナンバーとしてリズムへのノリ方についてはどんな点を意識されましたか?
高橋 この曲は元々Wadaさんが仮歌詞を英語で付けてくれていたんです。私自身も英語に乗りやすいメロディを歌いたかったので。ただ、カラオケで歌いたい人のことまで考えると、英語歌詞はちょっとハードルが高いなと思って、歌詞は日本語で書いていきました。また、これを聴く環境を考えたうえで、歌詞の言葉が耳に残りやすいようにしている箇所がいくつもあります。「どうでもいいけど聞こえる?」なんてちょっと俗っぽいけれども、仲間に語りかけるような感じを出していくような言葉の使い方を意識しています。
――「Final Call」でいえばWadaさんと制作をされたり、12月にはビルボードライブ東京でピアニストのまらしぃさんと共演してステージに立たれたりと、高橋さんは幅広いジャンルの方とのコラボレーションを行なっています。キャリアを重ねてもなお新しいことに意欲的に取り組めてオープンな姿勢でいられる秘訣はどこにあるのでしょうか?
高橋 音楽という表現に終わりがないからだと思います。歳を取ると表現するものまで年齢感のあるものを見せなくてはいけないみたいな風潮があったりしますが、実際には現場でどんどんいろんな新しい人との出会いがあるわけです。「セッションしたいな」という気持ちは常に刺激として受けていて、そう思っているからどこかで見たり聞きつけたりして声をかけてくださるんだと思います。まらしぃ君も、最初は偶然ヴィレッジヴァンガードで流れていた彼のDVDを見かけたことがきっかけだったんです。「千本桜」を弾いていて、「こんなに速弾きできる若い子がいるんだ」と思っていたら、動画配信サイトでも「残酷な天使のテーゼ」を演奏しているのを拝見して。
INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
●配信情報
デジタルシングル
エヴァンゲリオン25周年記念作品パチンコ『新世紀エヴァンゲリオン~未来への咆哮~』新規搭載楽曲
「Final Call」
2021年12月20日配信開始
配信リンクはこちら
作詞:高橋洋子
作曲:Masaya Wada
編曲:Masaya Wada & MANABOON
高橋洋子マイベストソングPLAYLIST
公開中
配信リンクはこちら
©カラー ©カラー/Project Eva.
関連リンク
高橋洋子オフィシャルサイト
http://king-cr.jp/artist/takahashi/
「新世紀エヴァンゲリオン~未来への咆哮~」特設サイト
https://net-pachi.com