オリジナルアニメ『東京24区』の、スタイリッシュながら街の匂いまでしてきそうなオープニング映像。疾走感ある絵が印象的なこの「89秒」を彩るのは日本のロックバンド・Survive Said The Prophet(以下、サバプロ)だ。
そして、今回『東京24区』より蒼生シュウタを演じる榎木淳弥へのメールインタビューも実施。ぜひ併せて読んでほしい。
ロックバンドとアニメーションのコラボレーション
――まずはお二人の「忘れられないアニメソング」について教えてください。
Show いきなり(笑)!
Yosh すごいプレッシャー!
Show 僕は『フルメタル・パニック!The Second Raid』というアニメのOPテーマだった下川みくにさんの「南風」です。15年くらい前に観たものですが、すごく好きでした。
Yosh Aimerの「誰か、海を。」です(アニメ『残響のテロル』EDテーマ)。あれは好きでしたね。でもそうですね……TK from 凛として時雨の「unravel」も好きでした。『東京喰種トーキョーグール』の。
――昨今はロックバンドがアニメーションとコラボレーションすることは当たり前の光景となりましたが、かつてはそうではなかった。今、そういったシーンについてはどのように感じられますか?
Yosh 僕たち自身も、その部分については音楽活動をしながら感じています。Showはアニメーションも含めたジャパニーズカルチャーの知識が豊富で、日本人で良かったと思えるものがそういったジャパニーズカルチャーに詰まっていたことを色々教えてくれまして。そんなカルチャーをかっこいいと言い続けているヤツと一緒に、自分はバンドをやっているんだな、という面も時の変化とともに感じています。
Show そもそも僕はアニメが好きで、結構観てきているんですが、昔のアニソンってアニソン然としていないと成立しないところがあって。今もジャンルによってはそういった傾向にあるとは思うんですが、近年は英詞の曲でも受け入れられる、と感じるんですよね。僕らは英詞中心なので、英詞だけでも成立するアニメも最近はあって。それはオーバーグラウンドにアニメが広がるきっかけにもなると思うんです。
――海外にも広がりますしね。
Yosh 向こうに行くと、「日本の音楽のスタンダードはアニメだよね」って言われます。去年、ロサンゼルスで開催された“FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestra World Tour”で「FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE」のテーマソング「Hollow」を歌いに行ったんですね。お店に入って、ドラゴンボ-ルやワンピースといった作品のTシャツが売っていても、有名なことは知っているから驚かないですが、まさに今放送されているアニメのグッズが売っていたんです。僕よりも遥かに深い知識を持っているだけではなく、アニメーションからしか日本の音楽を知ることができないんだ、と言われたりもして……そうしたシーンの盛り上がりも知ることができたのは大きな経験でした。
――サバプロさんは、これまでにも『コードギアス反逆のルルーシュⅢ 皇道』の主題歌やアニメ『BANANA FISH』のオープニング&エンディングも担当されています。そうしたアニメとのコラボレーションの際に、サバプロとしては「こういうことをしたい」と思っていることはありますか?
Show (Yoshは)日本語よりも英語が得意なので、最初の『コードギアス反逆のルルーシュⅢ 皇道』のときには、まず引き受けるか、それとも断るか、ですごく悩んだんです。さらには引き受けた場合にはどんなことがあるか、もしも断ったならどうなっていくのか、まで考えてしまっていたんです。だからあそこは……。
Yosh ターニングポイントでしたね。カルチャーという大きな面で見れば、自分が悩んでいることは本当に小さいものなんですよね。
――バンドのスタンスが広がるきっかけになったんですね。
Yosh すごく大きくなりましたね。初めてのタイアップを経験してからの自分たちの広がりは驚くべきものです。
――そのアニメの楽曲には「89秒」という尺があります。ここに言いたいことを詰め込むような印象があるかと思いますが、タイアップを経て楽曲の構成に対する考え方などに影響はありましたか?
Show 曲によります。Yoshが作詞をしていることもあって英語が中心なので、89秒の中での構成では言いたいことが繋がらなくなってしまうこともあって。そうした場合は構成を考えながら、アニメの制作サイドの方々の心も汲みながら作っています。でも僕らも妥協をしたくなくて、そこで意見を戦わせながら作っていくこともあります。
Yosh ポジティブに考えると、関わるすべての人たちのこだわりが詰まっているからなんですよね。お互いのアイデアをぶつけ合いながら伝え合っていくことで上手く回っていくんだということも、こういった機会を重ねながら覚えているところです。でも一時期、算数で考えてしまったことはありました。「89秒だから、このくらいの秒数でこれをしたいからbpmはこんな感じにして」みたいな。
Show テンポ上げたりして調整もしたよね(笑)。
Yosh テンポを上げて、キーを下げて、みたいなこともやった(笑)。
Show 世界観を崩さずにやりたいな、という気持ちがありますからね。
次ページ:彼らが描く『東京24区』の世界観
彼らが描く『東京24区』の世界観
――サバプロがアニメとコラボをする際には、アニメの印象から楽曲を生んでいくんですか?それとも自分たちの世界のある曲を、アレンジなどを通してアニメとリンクさせていくのでしょうか。
Show どちらのケースもありますね。原作に触れて「こういうことを伝える作品なのか」と感じたうえで制作に入る場合もあれば、元々の曲でイメージが合うものを持ってくることもありますし。ケースバイケースですね。
――では『東京24区』のときはいかがでしたか?オリジナルアニメーションなので、資料をヒントに楽曲で世界を描いていかなければいけなかったかと思いますが。
Yosh 今回は、これまで一緒にやらせてもらった作品よりも、現実の自分たちの世界に近かったんですよね。『BANANA FISH』は少し時代観が前のものでしたし、『コードギアス』はそもそもファンタジックでしたし、『ヴィンランド・サガ』はヴァイキングですから。だから事前のデータが少なかったとしても、彼らはみんな「東京」に住んでいるし、新東京というのはこのコロナ禍もあってリアリティを感じさせるものでもあった。もしも僕たちがこの街にいたら、どうしているだろうか、と考えていってできた1曲です。そこで出てきた答えは、生まれて約束されていることは1つだけ。「死」。「death is the only things promised in life」。
――Showさんはいかがでしたか?この曲と向き合って。
Show オリジナルアニメなので、事前に読み込むことはできなかったので、どういう音にすればいいのかがわかりづらくはあったんです。ただ、Yoshの言っていたコンセプトを元に、その完成形へ向けて各楽器が向かっていきましたね。それがアニメと上手くマッチできていたらいいなぁ、と思いました。
――歌詞を書かれるときにはキャラクターの誰かに気持ちを寄せたりはしたのでしょうか。
Yosh そうではなかったです。もっと全体像を見ようとしていました。
――なるほど。音色でこだわったところはありましたか?『東京24区』だからこその音、というか。
Yosh 冷たさは意識したかもしれないです。コンクリートの冷たさが一発目に音で聴こえたらいいなと思ったんです。ギター、ドラム、ベース、僕の声が当たりまえにあるなかでロックな音を期待してくださっていると思うんですが、そこから『東京24区』へと入っていくような、シンセの音を探しました。実はイントロの、僕の声とギターの音、というのもシンセサイザーで始めていて。そこからギターを重ねていきました。
――あのエレクトロっぽいところが近未来的な街の印象を強めますよね。
Yosh ありがとうございます!
――こうして作られた「Papersky」が実際にアニメの映像とともにオープニングを飾っているのを観られたときにはどんな印象がありましたか?
Show サビからの広がり方が美しいなと思いました。それまでは静というか。ゆっくり展開して、止まって動いて、と進んできたのが、サビになってパーッと広がる。その爽快感を絵からも感じました。
Yosh 完全に歌詞と重なっているんですよね。アニメには出てこない、「Papersky」のためだけに作ってくださっている映像ならすごく嬉しいなって思いました。
――楽曲と街の雰囲気が合っていましたね。
Yosh そこまでお互いに考えながら作ることができた結果かなと思います。
――ここまでご覧になってアニメ『東京24区』の印象はいかがですか?
Show 王道的な感じ。主人公が挫折をして、そこからきっかけがあって前を向いて。謎が多く立ち塞がるなかで、シュウタたちがどうやって立ち上がって進んでいくのか。毎週わくわくします。僕は挫折から立ち上がっていく姿を見せる物語が好きなので、楽しみです。
Yosh アニメの知識がない僕ですが、3Dと2Dのインテグレーションに興味が沸きます。最近のアニメーションといえば3Dが混ざっている様に時代を感じますね。しかもRGBという、シンプルなカラーリング。シンプルだけどいかに複雑な今を表現しているのか。テクノロジーの混ぜ方が印象的です。
――そして今回のシングルにはカップリングも収録。「Win / Lose」はB.LEAGUE 2021-22 SEASONの公式テーマソングです。オファーがきたときはどのような想いがありましたか?
Yosh 「スポーツ、キター!」ですね。アニメとスポーツが並んでいますが、僕らがその楽曲を担当できることの幸せを感じました。音楽的に幅広くいこうぜっていうことはインディーズの頃から強く維持していたので、メジャーにいってこういうことができるのは、その姿勢に結果が出てきていることなので。誇りに思いました。
Show 昔からスタジアム的な場所でのライブを夢見ているので、そこにはアンセムが必要だとも思うんです。そんな存在の曲を作っていきたいという想いがあったなか、応援歌になる曲ができたらいいなと思ってもいたので、嬉しかったです。サビのところを試合会場で歌ってもらいたいですよね。
Yosh クイーンの「We Will Rock You」のような曲をリバイバル、ではないですが、スタジアムでみんなで歌えるのっていいよね!っていう気持ちで作っていたので、それが叶えられたら嬉しいですね。
――このシングルをリリースして始まる2022年。どんな年にしたいですか?
Show 昨年は色々なことがあった年でしたが、みんなで頑張っていく、という土台がやっと出来上がったので、今は団結して歩いています。そこからの僕らの活躍を楽しみにしてもらえたらなと思いますし、皆さんに聴いていただける曲を世に出していきたいです。
Yosh 引き続き、グローバルな活動をしていきたいと思っています。色んなオーディエンスが我々のカルチャーと触れ合える機会があるので、その波にしっかり乗って、引き続き日本人が誇りに思ってくれるようなロックバンドになれたらいいなと思っています。2022年もシーンを引っ張っていきます!
■榎木淳弥(蒼生シュウタ役)メールインタビュー
――蒼生シュウタ役はオーディションだったとのことですが、オーディションを受ける際の『東京24区』という作品の印象はどのようなものでしたか?
榎木淳弥 実はあまり詳しい設定が書かれていなかったので、熱いヒーロー物なのかなという印象でした。いざアフレコが始まってみると、なかなかヘビーな内容で驚きましたね。
――アフレコは終わっていらっしゃるかと思いますが、実際に放送が始まった今、映像をご覧になったうえで改めて『東京24区』に対してどのようなことを感じていらっしゃいますか?
榎木 やり直しがきかない選択を迫られるというところが面白いな、と。実際の生活でも常に何かを選択して生きていかないといけないので、アニメで描かれていることが自分にもし起こったら……と想像したりしちゃいますね。
――そんな『東京24区』の“顔”であり“名刺”ともなる幕開け曲であるSurvive Said The Prophetの「Papersky」を聴かれての感想を教えてください。どのような部分に耳を惹かれましたか?
榎木 サビの疾走感というか、高揚感がものすごいですよね。PVで断片的に聴いていたときから良い曲だなと思っていたのですが、オープニング映像も合わさるとさらにテンションが上がりました。
――EDテーマ「255,255,255」はシュウタ、(朱城)ラン、(翠堂)コウキが歌っています。こちらの曲を歌っての感想とED映像で観た印象を教えてください。
榎木 ラップパートもあったりと、とてもかっこよくお洒落な曲でしたが、そのぶん歌うのも難しかったですね。雪が降るED映像が少し切ないような雰囲気を感じました。
――物語は謎を帯びていきますが、『東京24区』を楽しんでいる読者へメッセージをお願いします。
榎木 これからシュウタ、ラン、コウキの3人それぞれの物語が段々と1つになっていきます。物語の謎の核心にも迫っていくので、一話もお見逃しなく!
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
●リリース情報
Survive Said The Prophet ニューシングル
「Papersky | Win / Lose」
2022年2月2日(水)発売
【期間生産限定盤(CD+DVD/TVアニメ「東京24区」 ジャケットデジパック仕様)】
品番:SRCL-12018~12019
価格:¥1,760(税込)
<CD>
M.1「Papersky」TVアニメ『東京24区』オープニングテーマ
M.2 「Win / Lose」『B.LEAGUE 2021-22 SEASON』公式テーマソング
<DVD>
TVアニメ『東京24区』Opening Movie ※期間生産限定盤
【初回仕様限定盤(CD+封入特典)】
品番:SRCL-12017
価格:¥1,100(税込)
<CD>
M.1「Papersky」TVアニメ「東京24区」オープニングテーマ
M.2 「Win / Lose」『B.LEAGUE 2021-22 SEASON』公式テーマソング
M.3 Papersky -Instrumental-
M.4 Win / Lose -Instrumental-
<封入特典>
Origami
▼「Papersky」の単曲ダウンロード、ストリーミングはこちら
URL:https://sstp.lnk.to/gz8Uk0YC
▼「Papersky」 Music Video
▼『Win / Lose』 Music Video
●作品情報
TVアニメ「東京24区」
<放送情報>
TOKYO MX 毎週水曜 24:30~
とちぎテレビ 毎週水曜 24:30~
群馬テレビ 毎週水曜 24:30~
BS11 毎週水曜 24:30~
ABCテレビ 毎週水曜 26:14~
メ~テレ 毎週水曜 26:11~
【CAST】
蒼生シュウタ:榎木淳弥
朱城ラン:内田雄馬
翠堂コウキ:石川界人
翠堂アスミ:石見舞菜香
櫻木まり:牧野由依
きなこ:兎丸七海
黒葛川早紀子:生天目仁美
翠堂豪理:楠 大典
翠堂香苗:大原さやか
クナイ:斉藤壮馬
ヤマモリ:伊丸岡 篤
ラッキー:喜多村英梨
白樺広樹:上田燿司
白樺 梢:日高里菜
筑紫 渉:中村悠一
宍戸花奈:花守ゆみり
進藤 薫:江頭宏哉
【STAFF】
原作:Team 24
監督:津田尚克
ストーリー構成・脚本:下倉バイオ(ニトロプラス)
キャラクター原案:曽我部修司、ののかなこ(FiFS)
キャラクターデザイン:岸田隆宏
総作画監督:髙田 晃、伊藤公規、まじろ
副監督:髙橋英俊
プロップデザイン:髙田 晃
グラフィティデザイン:河原秀樹、添野 恵
美術設定:塩澤良憲
美術監督:春日美波
色彩設計:中島和子
2Dデザイン:久保田彩
特殊効果:清水彩香
CGディレクター:宮地克明
撮影監督;佐久間悠也
編集:三嶋章紀
音響監督:岩浪美和
音楽:深澤秀行
制作:CloverWorks
【イントロダクション】
東京湾に浮かぶ人工島「極東法令外特別地区」――通称“24区”。
そこで生まれ育ったシュウタ、ラン、コウキは、家柄も趣味も性格も違うが、いつもつるんでいる幼馴染だった。しかし彼らの関係は、とある事件をきっかけに大きく変わってしまう。
事件の一周年追悼ミサで、偶然再会を果たした3人の電話が突如一斉に鳴る。それは死んだはずの仲間からの着信で、彼らに“未来の選択”を迫るものであった。3人は、自分の信じるやり方で、愛する24区(マチ)と人々の未来を守ろうとするが―――
脚本にアニメ初挑戦の下倉バイオ(ニトロプラス)を迎え、キャラクター原案は多くの女性から人気を集めるFiFSが担当。「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」などハイクオリティな作品を手掛けてきたCloverWorksと、「ジョジョの奇妙な冒険」のシリーズ監督を務める津田尚克が初タッグを組んだオリジナルTVアニメーションが誕生!
関連リンク
Survive Said The Prophet Official Website
http://survivesaidtheprophet.com/
Survive Said The Prophet Twitter
https://twitter.com/SSTPofficial
榎木淳弥 公式Twitter
https://twitter.com/enojunjunjun
TVアニメ「東京24区」公式サイト
https://tokyo24project.com/
メジャーデビュー前から各地フェスを賑わすライブバンドでもあった彼らは、2018年に4thアルバム『space[s]』でメジャーデビューを果たす。勢いある英詞とエモーショナルなサウンドで人気を博す彼らは、「アニメによって自身のサウンドを広げてもらった」と話す。そんなサバプロがアニメ『東京24区』との邂逅によって生み出したものとは。
そして、今回『東京24区』より蒼生シュウタを演じる榎木淳弥へのメールインタビューも実施。ぜひ併せて読んでほしい。
ロックバンドとアニメーションのコラボレーション
――まずはお二人の「忘れられないアニメソング」について教えてください。
Show いきなり(笑)!
Yosh すごいプレッシャー!
Show 僕は『フルメタル・パニック!The Second Raid』というアニメのOPテーマだった下川みくにさんの「南風」です。15年くらい前に観たものですが、すごく好きでした。
Yosh Aimerの「誰か、海を。」です(アニメ『残響のテロル』EDテーマ)。あれは好きでしたね。でもそうですね……TK from 凛として時雨の「unravel」も好きでした。『東京喰種トーキョーグール』の。
どちらにするか悩みました。でもSurvive Said The Prophet的には「unravel」のような気もします。「このままでいいんだ」という勇気を与えてくれた1曲なんです。ロックの、攻撃的な面を持ったままでいていいんだよってことを、僕に感じさせてくれました。
――昨今はロックバンドがアニメーションとコラボレーションすることは当たり前の光景となりましたが、かつてはそうではなかった。今、そういったシーンについてはどのように感じられますか?
Yosh 僕たち自身も、その部分については音楽活動をしながら感じています。Showはアニメーションも含めたジャパニーズカルチャーの知識が豊富で、日本人で良かったと思えるものがそういったジャパニーズカルチャーに詰まっていたことを色々教えてくれまして。そんなカルチャーをかっこいいと言い続けているヤツと一緒に、自分はバンドをやっているんだな、という面も時の変化とともに感じています。
Show そもそも僕はアニメが好きで、結構観てきているんですが、昔のアニソンってアニソン然としていないと成立しないところがあって。今もジャンルによってはそういった傾向にあるとは思うんですが、近年は英詞の曲でも受け入れられる、と感じるんですよね。僕らは英詞中心なので、英詞だけでも成立するアニメも最近はあって。それはオーバーグラウンドにアニメが広がるきっかけにもなると思うんです。
昔のニッチな視聴者層から、ライト層にも響くようになったことで、主題歌の間口も広がり、僕らもコラボレーションができるようになったんだなぁ、と思います。
――海外にも広がりますしね。
Yosh 向こうに行くと、「日本の音楽のスタンダードはアニメだよね」って言われます。去年、ロサンゼルスで開催された“FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestra World Tour”で「FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE」のテーマソング「Hollow」を歌いに行ったんですね。お店に入って、ドラゴンボ-ルやワンピースといった作品のTシャツが売っていても、有名なことは知っているから驚かないですが、まさに今放送されているアニメのグッズが売っていたんです。僕よりも遥かに深い知識を持っているだけではなく、アニメーションからしか日本の音楽を知ることができないんだ、と言われたりもして……そうしたシーンの盛り上がりも知ることができたのは大きな経験でした。
――サバプロさんは、これまでにも『コードギアス反逆のルルーシュⅢ 皇道』の主題歌やアニメ『BANANA FISH』のオープニング&エンディングも担当されています。そうしたアニメとのコラボレーションの際に、サバプロとしては「こういうことをしたい」と思っていることはありますか?
Show (Yoshは)日本語よりも英語が得意なので、最初の『コードギアス反逆のルルーシュⅢ 皇道』のときには、まず引き受けるか、それとも断るか、ですごく悩んだんです。さらには引き受けた場合にはどんなことがあるか、もしも断ったならどうなっていくのか、まで考えてしまっていたんです。だからあそこは……。
Yosh ターニングポイントでしたね。カルチャーという大きな面で見れば、自分が悩んでいることは本当に小さいものなんですよね。
ただプラスすること、マイナスすること、と考えていくなかで、自分の表現に新たなものをプラスする機会をもらったように感じたんです。ただ日本語を入れ込むのではなく、もっと言葉に注視して。例えば日本語は単語1つに二重にも三重にも意味があって。その言葉の美学って日本語にしかないものだなと感じたんです。それから音。「あ」とか「お」といった母音の響きを、英語と混ぜ込むことで出せることに気づきがあった。そして僕らが歌うことで、そのアニメがどういった作品なのかというイメージを掴める。作品のイメージを大きく感じるための援護をするような楽曲を作れるんじゃないか、という面白味を感じて。その個性を維持していきたいと思っています。
――バンドのスタンスが広がるきっかけになったんですね。
Yosh すごく大きくなりましたね。初めてのタイアップを経験してからの自分たちの広がりは驚くべきものです。
――そのアニメの楽曲には「89秒」という尺があります。ここに言いたいことを詰め込むような印象があるかと思いますが、タイアップを経て楽曲の構成に対する考え方などに影響はありましたか?
Show 曲によります。Yoshが作詞をしていることもあって英語が中心なので、89秒の中での構成では言いたいことが繋がらなくなってしまうこともあって。そうした場合は構成を考えながら、アニメの制作サイドの方々の心も汲みながら作っています。でも僕らも妥協をしたくなくて、そこで意見を戦わせながら作っていくこともあります。
Yosh ポジティブに考えると、関わるすべての人たちのこだわりが詰まっているからなんですよね。お互いのアイデアをぶつけ合いながら伝え合っていくことで上手く回っていくんだということも、こういった機会を重ねながら覚えているところです。でも一時期、算数で考えてしまったことはありました。「89秒だから、このくらいの秒数でこれをしたいからbpmはこんな感じにして」みたいな。
Show テンポ上げたりして調整もしたよね(笑)。
Yosh テンポを上げて、キーを下げて、みたいなこともやった(笑)。
Show 世界観を崩さずにやりたいな、という気持ちがありますからね。
次ページ:彼らが描く『東京24区』の世界観
彼らが描く『東京24区』の世界観
――サバプロがアニメとコラボをする際には、アニメの印象から楽曲を生んでいくんですか?それとも自分たちの世界のある曲を、アレンジなどを通してアニメとリンクさせていくのでしょうか。
Show どちらのケースもありますね。原作に触れて「こういうことを伝える作品なのか」と感じたうえで制作に入る場合もあれば、元々の曲でイメージが合うものを持ってくることもありますし。ケースバイケースですね。
――では『東京24区』のときはいかがでしたか?オリジナルアニメーションなので、資料をヒントに楽曲で世界を描いていかなければいけなかったかと思いますが。
Yosh 今回は、これまで一緒にやらせてもらった作品よりも、現実の自分たちの世界に近かったんですよね。『BANANA FISH』は少し時代観が前のものでしたし、『コードギアス』はそもそもファンタジックでしたし、『ヴィンランド・サガ』はヴァイキングですから。だから事前のデータが少なかったとしても、彼らはみんな「東京」に住んでいるし、新東京というのはこのコロナ禍もあってリアリティを感じさせるものでもあった。もしも僕たちがこの街にいたら、どうしているだろうか、と考えていってできた1曲です。そこで出てきた答えは、生まれて約束されていることは1つだけ。「死」。「death is the only things promised in life」。
それだったら誇りを持った死を迎えるために空を見上げて、「いつかそこへ」と言うんじゃないかっていうイメージが生まれて。そうみんなが思える未来へと着地したいだろうな、というストーリーラインを想像しました。この曲を毎週聴きながら、最終話まで観て、どう思えるか。そこまでがこの曲のドラマだと思ったんです。
――Showさんはいかがでしたか?この曲と向き合って。
Show オリジナルアニメなので、事前に読み込むことはできなかったので、どういう音にすればいいのかがわかりづらくはあったんです。ただ、Yoshの言っていたコンセプトを元に、その完成形へ向けて各楽器が向かっていきましたね。それがアニメと上手くマッチできていたらいいなぁ、と思いました。
――歌詞を書かれるときにはキャラクターの誰かに気持ちを寄せたりはしたのでしょうか。
Yosh そうではなかったです。もっと全体像を見ようとしていました。
――なるほど。音色でこだわったところはありましたか?『東京24区』だからこその音、というか。
Yosh 冷たさは意識したかもしれないです。コンクリートの冷たさが一発目に音で聴こえたらいいなと思ったんです。ギター、ドラム、ベース、僕の声が当たりまえにあるなかでロックな音を期待してくださっていると思うんですが、そこから『東京24区』へと入っていくような、シンセの音を探しました。実はイントロの、僕の声とギターの音、というのもシンセサイザーで始めていて。そこからギターを重ねていきました。
――あのエレクトロっぽいところが近未来的な街の印象を強めますよね。
Yosh ありがとうございます!
――こうして作られた「Papersky」が実際にアニメの映像とともにオープニングを飾っているのを観られたときにはどんな印象がありましたか?
Show サビからの広がり方が美しいなと思いました。それまでは静というか。ゆっくり展開して、止まって動いて、と進んできたのが、サビになってパーッと広がる。その爽快感を絵からも感じました。
Yosh 完全に歌詞と重なっているんですよね。アニメには出てこない、「Papersky」のためだけに作ってくださっている映像ならすごく嬉しいなって思いました。
――楽曲と街の雰囲気が合っていましたね。
Yosh そこまでお互いに考えながら作ることができた結果かなと思います。
――ここまでご覧になってアニメ『東京24区』の印象はいかがですか?
Show 王道的な感じ。主人公が挫折をして、そこからきっかけがあって前を向いて。謎が多く立ち塞がるなかで、シュウタたちがどうやって立ち上がって進んでいくのか。毎週わくわくします。僕は挫折から立ち上がっていく姿を見せる物語が好きなので、楽しみです。
Yosh アニメの知識がない僕ですが、3Dと2Dのインテグレーションに興味が沸きます。最近のアニメーションといえば3Dが混ざっている様に時代を感じますね。しかもRGBという、シンプルなカラーリング。シンプルだけどいかに複雑な今を表現しているのか。テクノロジーの混ぜ方が印象的です。
――そして今回のシングルにはカップリングも収録。「Win / Lose」はB.LEAGUE 2021-22 SEASONの公式テーマソングです。オファーがきたときはどのような想いがありましたか?
Yosh 「スポーツ、キター!」ですね。アニメとスポーツが並んでいますが、僕らがその楽曲を担当できることの幸せを感じました。音楽的に幅広くいこうぜっていうことはインディーズの頃から強く維持していたので、メジャーにいってこういうことができるのは、その姿勢に結果が出てきていることなので。誇りに思いました。
Show 昔からスタジアム的な場所でのライブを夢見ているので、そこにはアンセムが必要だとも思うんです。そんな存在の曲を作っていきたいという想いがあったなか、応援歌になる曲ができたらいいなと思ってもいたので、嬉しかったです。サビのところを試合会場で歌ってもらいたいですよね。
Yosh クイーンの「We Will Rock You」のような曲をリバイバル、ではないですが、スタジアムでみんなで歌えるのっていいよね!っていう気持ちで作っていたので、それが叶えられたら嬉しいですね。
――このシングルをリリースして始まる2022年。どんな年にしたいですか?
Show 昨年は色々なことがあった年でしたが、みんなで頑張っていく、という土台がやっと出来上がったので、今は団結して歩いています。そこからの僕らの活躍を楽しみにしてもらえたらなと思いますし、皆さんに聴いていただける曲を世に出していきたいです。
Yosh 引き続き、グローバルな活動をしていきたいと思っています。色んなオーディエンスが我々のカルチャーと触れ合える機会があるので、その波にしっかり乗って、引き続き日本人が誇りに思ってくれるようなロックバンドになれたらいいなと思っています。2022年もシーンを引っ張っていきます!
■榎木淳弥(蒼生シュウタ役)メールインタビュー
――蒼生シュウタ役はオーディションだったとのことですが、オーディションを受ける際の『東京24区』という作品の印象はどのようなものでしたか?
榎木淳弥 実はあまり詳しい設定が書かれていなかったので、熱いヒーロー物なのかなという印象でした。いざアフレコが始まってみると、なかなかヘビーな内容で驚きましたね。
――アフレコは終わっていらっしゃるかと思いますが、実際に放送が始まった今、映像をご覧になったうえで改めて『東京24区』に対してどのようなことを感じていらっしゃいますか?
榎木 やり直しがきかない選択を迫られるというところが面白いな、と。実際の生活でも常に何かを選択して生きていかないといけないので、アニメで描かれていることが自分にもし起こったら……と想像したりしちゃいますね。
――そんな『東京24区』の“顔”であり“名刺”ともなる幕開け曲であるSurvive Said The Prophetの「Papersky」を聴かれての感想を教えてください。どのような部分に耳を惹かれましたか?
榎木 サビの疾走感というか、高揚感がものすごいですよね。PVで断片的に聴いていたときから良い曲だなと思っていたのですが、オープニング映像も合わさるとさらにテンションが上がりました。
――EDテーマ「255,255,255」はシュウタ、(朱城)ラン、(翠堂)コウキが歌っています。こちらの曲を歌っての感想とED映像で観た印象を教えてください。
榎木 ラップパートもあったりと、とてもかっこよくお洒落な曲でしたが、そのぶん歌うのも難しかったですね。雪が降るED映像が少し切ないような雰囲気を感じました。
――物語は謎を帯びていきますが、『東京24区』を楽しんでいる読者へメッセージをお願いします。
榎木 これからシュウタ、ラン、コウキの3人それぞれの物語が段々と1つになっていきます。物語の謎の核心にも迫っていくので、一話もお見逃しなく!
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
●リリース情報
Survive Said The Prophet ニューシングル
「Papersky | Win / Lose」
2022年2月2日(水)発売
【期間生産限定盤(CD+DVD/TVアニメ「東京24区」 ジャケットデジパック仕様)】
品番:SRCL-12018~12019
価格:¥1,760(税込)
<CD>
M.1「Papersky」TVアニメ『東京24区』オープニングテーマ
M.2 「Win / Lose」『B.LEAGUE 2021-22 SEASON』公式テーマソング
<DVD>
TVアニメ『東京24区』Opening Movie ※期間生産限定盤
【初回仕様限定盤(CD+封入特典)】
品番:SRCL-12017
価格:¥1,100(税込)
<CD>
M.1「Papersky」TVアニメ「東京24区」オープニングテーマ
M.2 「Win / Lose」『B.LEAGUE 2021-22 SEASON』公式テーマソング
M.3 Papersky -Instrumental-
M.4 Win / Lose -Instrumental-
<封入特典>
Origami
▼「Papersky」の単曲ダウンロード、ストリーミングはこちら
URL:https://sstp.lnk.to/gz8Uk0YC
▼「Papersky」 Music Video
▼『Win / Lose』 Music Video
●作品情報
TVアニメ「東京24区」
<放送情報>
TOKYO MX 毎週水曜 24:30~
とちぎテレビ 毎週水曜 24:30~
群馬テレビ 毎週水曜 24:30~
BS11 毎週水曜 24:30~
ABCテレビ 毎週水曜 26:14~
メ~テレ 毎週水曜 26:11~
【CAST】
蒼生シュウタ:榎木淳弥
朱城ラン:内田雄馬
翠堂コウキ:石川界人
翠堂アスミ:石見舞菜香
櫻木まり:牧野由依
きなこ:兎丸七海
黒葛川早紀子:生天目仁美
翠堂豪理:楠 大典
翠堂香苗:大原さやか
クナイ:斉藤壮馬
ヤマモリ:伊丸岡 篤
ラッキー:喜多村英梨
白樺広樹:上田燿司
白樺 梢:日高里菜
筑紫 渉:中村悠一
宍戸花奈:花守ゆみり
進藤 薫:江頭宏哉
【STAFF】
原作:Team 24
監督:津田尚克
ストーリー構成・脚本:下倉バイオ(ニトロプラス)
キャラクター原案:曽我部修司、ののかなこ(FiFS)
キャラクターデザイン:岸田隆宏
総作画監督:髙田 晃、伊藤公規、まじろ
副監督:髙橋英俊
プロップデザイン:髙田 晃
グラフィティデザイン:河原秀樹、添野 恵
美術設定:塩澤良憲
美術監督:春日美波
色彩設計:中島和子
2Dデザイン:久保田彩
特殊効果:清水彩香
CGディレクター:宮地克明
撮影監督;佐久間悠也
編集:三嶋章紀
音響監督:岩浪美和
音楽:深澤秀行
制作:CloverWorks
【イントロダクション】
東京湾に浮かぶ人工島「極東法令外特別地区」――通称“24区”。
そこで生まれ育ったシュウタ、ラン、コウキは、家柄も趣味も性格も違うが、いつもつるんでいる幼馴染だった。しかし彼らの関係は、とある事件をきっかけに大きく変わってしまう。
事件の一周年追悼ミサで、偶然再会を果たした3人の電話が突如一斉に鳴る。それは死んだはずの仲間からの着信で、彼らに“未来の選択”を迫るものであった。3人は、自分の信じるやり方で、愛する24区(マチ)と人々の未来を守ろうとするが―――
脚本にアニメ初挑戦の下倉バイオ(ニトロプラス)を迎え、キャラクター原案は多くの女性から人気を集めるFiFSが担当。「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」などハイクオリティな作品を手掛けてきたCloverWorksと、「ジョジョの奇妙な冒険」のシリーズ監督を務める津田尚克が初タッグを組んだオリジナルTVアニメーションが誕生!
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