幅広い音楽ジャンルに独特のカラーを織り交ぜ、様々な楽曲をアニメシーンに投入してきたZAQ。2022年はそんな彼女にとってアーティストデビュー10周年という節目となる年であり、その瞬間に向けてカウントダウンが始まる年明けの1月から、9ヵ月連続で楽曲をリリースすることが発表された。
リスアニ!WEBでは来るべき2022年10月24日というデビュー10周年記念日に向かって、毎月連続でインタビューを敢行していく。

インタビュー第1弾となる今回は、2012年のデビュー前後に迫るとともに、当時の熱い想いをそのままに制作した連続リリース第1弾シングル「ZIGZAG」、2月に発売される第2弾シングルにしてTVアニメ『薔薇王の葬列』第1クールエンディングテーマである「悪夢」、そのカップリング曲である「耺」について聞いていく。シンガーソングライターZAQの隠れざる才能と魅力がさらに暴き出される連載をぜひチェックしてほしい。


1年を通してZAQの楽曲を楽しんでもらえる形を考えて
――今回の9ヵ月連続リリースについては、どういった経緯や意図があるのか教えてもらえますか?

ZAQ 最初はアルバムを作ろうという話ではあったんですけど、配信シングルのほうがCDよりも手軽に聴ける形として楽しんでもらえるんじゃないか、という提案を(所属レーベルの)ランティスからいただきました。

――ZAQさんの楽曲も、ランティスのサブスクリプションサービスでの配信がスタートしましたね。

ZAQ そうなんです。それに、9ヵ月連続リリースというのはなかなかできないことですし、アルバムを出してライブをやって終わり、というよりは1年を通して楽しんでいただけると思うんですよ。ライブ自体もまだまだオンラインでの開催が多い状況ですし。だから、今の時代に合った形でZAQの新曲を楽しんでもらえるんじゃないかと考えました。9ヵ月連続リリースが終わったあとの10月が10周年となるデビュー月となります。

――2022年の1年を通してアニバーサリーイヤー感を出すということですね。

ZAQ お客さんを飽きさせないように。


――デビューした2012年当時、10年後に自分が9ヵ月連続で楽曲をリリースすると想像していましたか?

ZAQ まったく。私、10年後は劇伴作家になると思っていたんですよ。30(歳)を越えたらきっとライブをする体力なんてないから、作家として暮らしていくんだろうと思っていました。実際にはライブをやればやるほど、60(歳)、80(歳)になるまでライブをやりたい、と思うようになりましたね。でもデビュー当時は、10年も経ったらみんな私のことなんて忘れていると思っていましたよ。すごくネガティブでした。

――2012年のZAQに至る、さらに前段階についてもお聞きしたいんですが……。

ZAQ パリピをやっていた頃ということですか?(笑)。

――(笑)。音大のピアノ科出身とは知られていますが、音大生時代は音楽を仕事にしたいと考えていたんですか?

ZAQ 音大の頃は本当に夢がなくて。高校で音大に入ると決めたときはピアノの先生になろうと思っていました。

――堅実に。


ZAQ そう、堅実に。大学に4年通ってそれなりに結果を残したら地元の鹿児島に帰って、って。でも、大学でピアノの先生にはなれないことに気づいてしまって。それは性格的なところもあるんですけど、ピアノが自分よりも上手い人がこの世に何百、何千人もいることを目の当たりにしたんですね。それでグレました。

――それでパリピに(笑)。

ZAQ そう(笑)。そこから先は全然夢が持てなくて。音楽で食べていく自信はないし、大学で卒業生の就職先を調べたら銀行員や郵便局員に進む人が圧倒的に多くて、音楽の道に進んだ音大生がほとんどいない、ということも知って超ショックを受けたんですよね。「だからみんな若いうちから婚活を頑張るのかな」とか思いました(笑)。でも、ピアニストとしてやっていける人って全国で1年に1人出てくるかどうかで。やっぱりクラシック音楽で食べていくのはすごく難しいんですよね。


――そんな夢破れた頃にアニソンと出会ったんですね。

ZAQ 出会いましたね。大学在学中にアニソンと出会わなければ、今の自分はいないです。

――そのとき、音楽で食べていく道が見えたということですか?

ZAQ いや、全然見えてなかったです。でも、やるしかないと思っていました。そのとき、Hip HopのラッパーやR&Bシンガーとしての活動、コーラスやカラオケのガイドボーカルといった仕事など、色々なところに手を付けてはいたんですね。なので、インディーズでR&Bシンガーとしてのデビューや、誰々の弟子としてデビューみたいなお話も色々とあったんですよ。でも、全部「はい」とは返事しなかったんですよね。そのうちにランティスさんと関わりができて、もう「ここだ!」と思いました。ずっと自分がアニソンシンガーになっている姿しか想像できなかったんですよね。

――そこまでアニソンに惹かれた理由は何だと思いますか?

ZAQ なんだろう?でも、アニソンシンガーを夢見始めたときからとにかくキャラソンが好きで。ただ、私の声はアニソンに向いてないと色々な人に言われたんですよ。


――Hip HopやR&Bシンガーとしてデビューの話がくるくらいですから。

ZAQ アニソンが好きだし、アニソンっぽい曲もいっぱい作れるのに……だから、それはすごくコンプレックスでした。でもそうすると誰かに歌ってもらうしかないんですよね。なので、自分が作った曲を色々なキャラクターに歌わせる、という妄想はすごくしていましたし、好きだったんです。星の数ほどいるアニメキャラクターの、その1人1人が持つストーリーにスポットを当てて1曲として完成させる、というのはまるで短編集を作るような感覚で。そのワクワク感にハマったんだと思います。それに、キャラソンって色々なジャンルの音楽で作られていると思うんですけど、キャラソンに関してはどんなジャンルの曲でも好きだったんですよね。

――特に心掴まれたキャラソンというと?

ZAQ 「恋愛サーキュレーション」はキャラソンとしての完成度が高すぎると思いましたね……!でも、一番衝撃だったのは『みつどもえ』というアニメのキャラクターソングアルバム(『みつどもべすと』)でしたね。『みつどもえ』のキャラソンは大部分をヒャダイン(前山田健一)さんが作られていて、どの曲もヒャダインさんのサウンドなんです。なのに全部、キャラクターごとに性格も音楽ジャンルも全然違っていて、「1人の脳内でこんなに物語を作れるんだ!?」ってすごく興味が湧きました。今でも私は『みつどもべすと』が一番好きなキャラソンアルバムだと言っています。

――2012年、TVアニメ『中二病でも恋がしたい!』のオープニングテーマ「Sparkling Daydream」でデビューしますが、同アニメでは既存曲のカバーを除き、主題歌とキャラクターソングをすべてZAQさんが担当されました。
今の『みつどもえ』のお話にも通じる流れも感じますが、どのような経緯で決まったのでしょうか?


ZAQ 2011年くらいに作家としてランティスの副社長(※当時)にご挨拶したときに、「こんな面白い素材はいない!」って私のことを面白がってくれたんですよ。ヒャダインさんがすごく勢いある時期だったので、同じように歌えるうえに作曲もすごい、その女性版というところを打ち出そうと考えられたみたいですね。それで全部やることになって。でも私も、「わかりました!そういうの大好きです!」って感じだったと思います(笑)。

――プレッシャーや仕事量よりも、さっきおっしゃったキャラソンを作るという楽しみが上回った?

ZAQ そうですね。一度にたくさんのキャラクターソングを作ることになりましたけど、自分の中で着せ替え人形する感覚というか、気持ちを切り替えて作っていくことにすごくワクワクしていました。、

――今振り返ると、デビュー当時の「Sparkling Daydream」やほかの『中二病』楽曲についてはどのように受け止めていますか?

ZAQ 「昔から作り方は変わらないな」って思いますね。当時から、原作とアニメと声優さんたちと超向き合って作っていた覚えがあります。私、『中二病』エンディングテーマの「INSIDE IDENTITY」(Black Raison d’etre/小鳥遊六花、丹生谷森夏、五月七日くみん、凸守早苗)のレコーディングに立ち会わせていただいたんですよ。それで声優さんたちの性格とかを探って、そこから「こういうことならやってくれるんじゃないか?」って考えたりしていましたね。キャラクターと声優さんの親和性を私の中で落とし込みあらゆることを考えながら作る、というやり方はあのときにもう確立していたと思います。

――「Sparkling Daydream」は「平成アニソン大賞」で作曲賞(2010-2019)にも選ばれました。
当時から手応えを感じていたんですか?


ZAQ いや、あの曲を作った当時は「これでいいのかな?」と思っていたはずです。ワクワクが勝っていたとは思いますけど、「こんな感じでいいのかな?」が4割で、残り6割は「私のやりたいアニソンはこれーっ!」という気持ちでしたね。

自分を振り返り、音楽に憧れを抱いていた頃の気持ちを
――デビューから10年が経ち、初のノンタイアップシングルというのも想像していなかった未来かと思いますが、その記念すべき1曲、9ヵ月連続リリース第1弾である「ZIGZAG」はどのように生まれたか、教えていただけますか?

ZAQ 実は、9ヵ月連続リリースの中の配信シングルに関しては全部タイトルが決まっていまして。最初に決めたタイトルに曲を寄せていくというスタイルで作っていくつもりなんです。で、タイトルには少しギミックを入れてあるんですよ。

――配信シングル曲のタイトルの頭文字で。

ZAQ はい。実は私、わざわざ電子辞書を買ったんですよね(笑)。「ZIGZAG」については、Zから始まる、かっこ良さそうな単語を候補としてディレクターさんに出していきました。(メモを見ながら)Zest、Zeal、Zelophovia、Zarking、Zero Cool、Zerogravity、Zeft、Zigzag、Zeal、って。でも、響き的にも、歌詞がパッと想像できるところから一番良いと思ったのが「ZIGZAG」でしたね。ジグザグした道を進んでいても光を掴むような、前向きな曲にしようというのが浮かびました。最初の1枚にふさわしいシングルになると思いましたね。

――青春ロックというのは?

ZAQ 「ZIGZAG」は9ヵ月連続リリースの第1弾ということで、自分を改めて振り返る楽曲にしたかったんですよね。だから、音楽に憧れを持っていたときの自分を想像して作りましたし、バンドを始めたばかりのフレッシュな感じというのが私の頭の中での「ZIGZAG」のコンセプトですね。それに、先ほどのキャリアの話にも繋がるんですけど、私は誰かと曲を作ったりバンド活動をしたりという経験がなくて、とても憧れがあるんですよね。最近出てきた若手のロックバンドを見ていても「青春しているなぁ」と思うし、「メンバー同士で一所懸命セッションして作っているんだろうな」って想像するんですよ!きっとブレインが1人いて、そのメンバーに楽器たちが合わせたり、そのなかから「今の良いね」っていう演奏を切り取ったりするとか……そういう、自分が通ってこなかった道みたいな構成にしたかったんです。だから極力楽器の数は少なく、イメージは「出れんの!?サマソニ!?」に応募する学生バンドですね。

――だから、各パートの演奏が担当に任せたような感じになっているんですね。

ZAQ そうです、そうです。パートが独立しているというか。

――ZAQさんがやり残した青春を取り戻すソングだ、と。

ZAQ その通りです(笑)。あと、楽曲だけではなく歌詞でも音楽に向き合っていますね。やっぱり、デビューから数えて10年経ちましたけど、音楽の本当の姿も限界もわからない、そういう想いが歌詞に込められています。

――“まだ僕は君の本質を知らない”というのは音楽に対しての言葉なんですね。

ZAQ だけど、ずっとそばにいてくれる存在ではあるので、“あぁ僕は 君のことが好きだよ”と歌っているんです。

――先ほど、今は10年前以上に作品と向き合って楽曲を作っているというお話でした。第2弾となるシングルの「悪夢」は『薔薇王の葬列』からどのように生まれたか、教えていただけますか?

ZAQ 原作であるマンガはシェイクスピアの「リチャード三世」を題材にしていて、非常に救いのない物語なんですよね。作品の背景となる「薔薇戦争」(1455~1485、1487年にイングランドで起きた王家同士の争い)の流れを知ってはいたんですけど、今回初めて詳しい歴史を知って、すごく「食らってしまった」というか、「うわ、もうやだ。こんな辛い漫画がこの世に存在するなんて」という気持ちになりました。ただ、そういう作品に携わったことは今までなかったので、落ち込んでいる自分すらも歌にしたいというワクワク感がすごかったです。

――そういった作品ではありながら、ZAQさんとしては美しい曲に仕上げられた印象があります。

ZAQ 美しさという点で言いますと、恐らく視聴者層は大人の女性であるというところに着目したという部分はありますね。ドロドロした曲を書きたいし、歌詞はそういう表現でもいいかもしれないけど、やっぱり中世の美しさというか、絵本のような世界観にしたかったんです。

――ファンが作品に求めているところはそこだろう、と。

ZAQ だから私としては、美しさというよりは「ファンタジー」。ミステリアスなところに落とし込んだつもりでした。作品とガッチリ合わせるならもっとサイケデリックな、プログレのような狂った楽曲でも良かったかもしれないんですけど、やっぱり5分以内に成立させる必要もあるので、きちんとしたコードで構成しています。でも、発注内容自体は、とにかく暗くて女性らしくはなく、ゆっくりしたテンポの曲というものでした。

――アレンジに石川智久さんを起用した理由は?

ZAQ ZAQが作るとどうしても女性的になってしまうんですよ。これまで、明るい曲、かっこいい曲、厨二っぽい曲、と「わかりやすい」楽曲しか作ってこなかったので、アレンジをどう頑張ってもどす黒さみたいな部分が出せなくて。コードもクラシック音楽のようにはっきりしてしまうし。だから、「こういうのじゃない!」とずっと悩んでいましたけど、「やっぱ無理!」ということで、酸いも甘いも知りつくした大人の男性にかき混ぜてもらうことにしました。

――石川さんにはどういったオーダーを出されたんですか?

ZAQ もっとおどろおどろしくしてほしいとか、飛び道具として変なSEが入っていてほしいとか、でもストリングスは繊細で切なく歌う感じを前面に出してほしい、とかですね。

――c/w曲の「耺」についてはどういうコンセプトで作られた楽曲ですか?

ZAQ 「悪夢」のc/wになるということで、『薔薇王』のキャラクターと心情がリンクするような部分を混ぜ込みつつ、自分が作品世界に入ったときに流れてくるような楽曲にしました。

――ZAQさんが『薔薇王』のキャラクターになったら?

ZAQ はい。私も貴族の争いに巻き込まれて凄惨な最期を遂げたいです(笑)。
歴史を彩る1人になるというか。それはそれで夢女子みたいですけど(笑)。

――でも、非常にZAQさんらしい楽曲ですよね。

ZAQ そうなんです。実は、「悪夢」は4番目に提出した楽曲で、「耺」は2番目に出した曲だったんですよ。テンポが速いということで採用されなかったんですけど、曲が好きすぎてどこかで使いたいと思っていたのでc/wに入れさせてもらいました。

――自身としてはどの辺りがお気に入りなんですか?

ZAQ 頭のサビ部分ですね。これは私の持論なんですけど、作ったあとに一晩寝て、朝起きたときにそのメロディが繰り返される曲は「良い曲」なんですよ。「耺」も、頭サビの部分がずっと離れなかったので、きっと良いメロディなんだろう、と。そんなに自分の感性をあてにはしていないんですけど、でも、良いと思ったものしか外に出さないようにはしています。

――改めて、10周年に向かって突き進む今の気持ちを教えてください。

ZAQ 10周年には大きいライブをしたいとずっと思ってはいたんです。でも、こういうご時世なのでなかなかそれは難しくて。でも、サブスクやYouTubeといった、SNSで色々な挑戦ができるのでは、とも思っています。ただ、自分には音楽を作る才能しかないとも思っているので、9ヵ月連続リリースにこだわらず、音楽家である部分をみんなにアピールする場を作っていきたいですね。

【連載企画:ZAQUIZ!】
Q.1
2012年のデビュー当時から愛用していて、今も部屋に置いているグッズ(機材、食器など)とは何でしょう?

▼正解は第2回インタビューで!

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司

●配信情報
配信シングル
「ZIGZAG」

作詞・作曲・編曲:ZAQ

配信リンクはこちら

●リリース情報
21st シングル
TVアニメ『薔薇王の葬列』第1クールエンディングテーマ

「悪夢」

発売中

品番:LACM-24243
価格:¥1,320(税込)

<収録曲>
M1「悪夢」
作詞・作曲:ZAQ 編曲:石川智久
M2「耺」
作詞・作曲・編曲:ZAQ

各インストも収録の計4 曲収録

配信リンクはこちら

22nd シングル
TVアニメ『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』オープニングテーマ
「ASEED」
2022年4月20日(水)発売

品番:LACM-24239
価格:¥1,320(税込)

関連リンク
ZAQ Official Site
http://www.zaqzaqzaq.jp/

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https://twitter.com/ZAQinfo

ZAQ Official YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCPsYjwzsmN8g2GEqaSei1-A?app=desktop

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