2021年6月に5曲入り1st EP『hear me?』で待望のアーティストデビューを果たした山下大輝が、3月30日(水)に配信シングル「キャンドル」をリリースする。DISH//の「君の家しか知らない街で」やSixTONES「フィギュア」、Ado「花火」などをプロデュースしたことでも知られるクリエイター・くじらとのコラボレーションで、MVは絵師・大鳥が手がけている。
歌う山下、作るくじら、視覚的に表現する大鳥。三位一体で生まれたのは、聴く者の心に灯りを灯すキャンドルのような暖かな曲。クリエイターの選出も山下自身のアイデアから始まったという1曲が生まれる際の核心にあったのは、一体どんなものだったのだろう。
アーティストデビューの反響
――昨年6月にアーティストデビューを果たしましたが、反響はいかがでしたか?
山下大輝 「まさか!」という声もいただきましたね。アーティストデビューするとは思わなかったという人も結構いらっしゃって。だから良い意味でサプライズになったなと思います。実際に制作をして、出したときに「次の曲を早く出してほしい」という声をたくさんいただけたのは嬉しかったです。当時はまだ5曲だけだったので、さらに先の楽曲への期待感も持っていただけたんだなと思いましたし、バースデーイベントをやったときにはそれを痛感もしました。あのときは3曲のみのライブパートだったので、ちょうど体が温まったな、というときに終わる感じもあったんですね。少し物足りない感があったので、曲数を増やしていきたいと思ったんです。応援してくださる方ももっと新曲を聴きたいと思ってくれていることを知り、曲をどんどん増やしていこうという気持ちになりましたし、そういう意味でも色々な反響をいただけたことを嬉しいなと思いました。
――そもそもflumpoolやDEAN FUJIOKAさん、THE ORAL CIGARETTESなどを擁するA-Sketchとやっていこうと思われたのはどういう意識からだったのでしょうか。
山下 僕自身、新たな挑戦をするにあたって、声優アーティストを良い意味で扱い慣れていない場所に身を置きたかったという部分もあったんです。お声掛けをいただいたこともあってから調べたのですが、A-Sketchには男性声優のアーティストが誰もいなかったので「レコード会社としても新しいチャレンジなのか」と思いましたし、僕の新たな挑戦をさせてもらうのならまさにここだ、と思いました。
――ちょうどアーティストデビューされる頃は、声優10年目が見えてきて、ご自身の中でも「殻を破りたい」というお話も出てくるような時期でした。そこでの「新たな挑戦」を「新しいレーベル」と二人三脚で、というのは非常に山下さんらしい決断でもありましたね。
山下 たしかにそうですね。色々なチャレンジをしていたけれども、特にその時期はコロナ禍真っ只中でもありましたから、声優の仕事がストップしていたんです。それも相まって、「ピンチをチャンスに」と思ったんですよね。だからこそ、それまでなかなか勇気を出せなかったけれど、その勇気を今、出そう!という気持ちになった。
前作『hear me?』から最新シングル「キャンドル」へ
――そのブーストが原動力となり『hear me?』になったのですね。
山下 そうですね。コロナ禍という時期だけど、みんなの力になれるエールのような曲を、というテーマがはっきりしていましたし、そのテーマでアプローチを変えて作った5曲を収録しましたし、目的もはっきりしていたからこそすごく良い5曲に仕上がったなぁと。たくさんの人に愛される1枚になって良かったなと思いますね。
――『hear me?』は佐伯youthKさんをはじめ、様々なクリエイターさんと共に“山下大輝の音楽”を作られましたが、今回の配信シングルはどのような作品にしようと思われたのでしょうか。
山下 色々と変えようかなと考えてもいたんですけど、今の状況だからこそ変わらない安心感を届けたいというか。それで「キャンドル」というタイトルの最新シングルで、みんなの心に寄り添えるような灯りを灯せたらなっていう意味合いもあって。だからテーマとしては前作と近いんですけれども、僕だったら、今の状況下なら聴いて安心できるものを求めてしまうなとも思ったので、あえてコンセプトを大きく変えずに、メッセージを貫かせてもらったところは大きいかなと思います。
――制作にあたってまずはどのようなことから始めたのでしょうか。
山下 テーマは変わらないですが、アプローチの仕方は変化をつけたいと思ったんですよ。
――前作のインタビューで「どんな山下大輝が見えるか」と伺ったのですが、その際に「人間の複雑な部分みたいなものを感じてほしい」とおっしゃっていたんですね。「キャラクターたちは僕の持っている1つの面であることが多いので、そうではない、今の僕のなかにある色んな顔を見せらたら嬉しい」と。今回はテーマを変えていないというだけに、その延長線上での表現となっている?
山下 「キャンドル」は生きていくうえで誰しもが感じている想いが表現されています。立ち止まってしまったり、ぶつかったり、悩んでしまったり。生き辛く息苦しい世の中で、何が正解かもわからないという心の悩みとどう向き合っていったらいいのだろうか、という想い。自分の今歩いている道が正解なのかわからない。でもわらかないのも「今」の自分なのだから、「今」は無理に答えを出さなくてもいいのではないか。
「キャンドル」を構築する過程の想い
――制作にあたって、明確な世界観でのオーダーを出されていたのでしょうか。
山下 出しました。楽曲をくじらさんにお願いする、という大前提があって。くじらさんは複雑な心の葛藤など、感情の動きを想像力が刺激される描き方をされる方なので、そんなくじらさんのカラーが活きる方向で自分が歌いたいものをお伝えして制作をしていただきました。上手く気持ちがリンクしたなと思います。自分の気持ちをお伝えしたうえであがってきた曲でしたし、いただいた曲と歌詞に対して「そうだよね…!」という声が漏れました。
――今回タッグを組まれたくじらさんの印象はどのようなものでしたか?
山下 くじらさんの独特な言葉のチョイスが本当に素敵で。歌詞でも考えさせる余地があるんですよね。どういう意味なんだろう、なんでこういうふうにしているんだろう、と聴いている側に考えさせられることができるワードチョイスなんですよね。色んな考察ができるからこそ、これを聴いて、受け取ってくれた人にも考えてもらいたいなと思っていて……「こういうことだ」「こうなんだ」って、真っ直ぐに伝える曲ももちろん良いと思うんですけど、ただそうじゃない。
――そして、ビジュアル面でのコラボとなった大鳥さんの印象も教えてください。
山下 大鳥さんは、色んなMVを作られている方なんです。それらを拝見させていただいたのですが、説明をしすぎないアニメーションを作るところが非常に素敵だなって思ったんです。だからこそ、今回の楽曲との相性が良いはずだ、とお願いしました。これはこうだからこうなる、という視覚から得られる情報からも「これってもしかして」と考えさせるところがある。表情1つとっても、あえて作り込まないというか。
――だとすると、くじらさんや大鳥さんにお願いしたい、というのは山下さんご自身から出たアイディアだった?
山下 そうですね。このお二人に頼みたい、というお話をさせていだだきました。
――普段からそういったクリエイターさんの情報はチェックされているのですか?
山下 アーティスト活動を始めてから意識してチェックするようになりました。SNSもそういった視点で見るようになりましたね。「この人の曲、めちゃめちゃいいなぁ。いつか一緒にやれたらいいな」とか「この人の絵は味があって好きだなぁ」というように。この人と仕事をしたい、あの人と一緒にやってみたい、ってメモしていますし、一緒に仕事をしたい人リストを作っています。だって、とりあえず好きな人を挙げていくのは自由ですから(笑)。今後も楽しみですし、今回はくじらさんと大鳥さんとご一緒できて本当に嬉しいです。
「キャンドル」から受け取ったもの。届けたい想い。
――そんな「キャンドル」を歌うときにはどんなことを意識されていますか?
山下 心情的な部分はもちろん大事なのですが、この曲、実はすごく難しい歌なんです(笑)。シンプルに、跳ねるテンポにどう乗せるかがすごく難しい。そこに歌詞を乗せることにも苦戦しましたし、曲のレンジも広いんです。低いところから高いところの、音の跳躍でのニュアンスの付け方や、裏声でいくか地声でいくかもレコーディング当日に話し合いをさせてもらいましたし、「どっちの方が聴いていてエモーショナルでしたか?」と聞いたりもしました。客観的な反応をいただかないとわからないところもあるので、そういった部分を話し合いながらレコーディングを進めていって。少しでも気になるところは何度でも録り直しをしました。終わったときにはへとへとでしたね(笑)。
――レコーディングにくじらさんの立ち合いはありました?
山下 歌のレコーディングの前に楽器のレコーディングがあって、そこでご挨拶ができました。元々僕のことを知ってくださっていたらしくて、作品を見てくださってもいたそうなんです。それで声の雰囲気とか把握して作ってくださったんだな、と感じました。声を張ったときの抜ける感覚などから、歌っていると一番映えるところのキーを考えて作ってくださっているなということを感じるんです。これは僕の声を知ってくれている人が作ってくださっているな、と感じながら歌える、そんな感覚がくじらさんとの作業ではありました。
――改めて出来上がったものを聴かれると、どんな「山下大輝」を感じますか?
山下 その日、1日1日を踏みしめながら、次の一歩をどこに踏み出そうかと葛藤している1人の人間の姿を感じられるのかなと。もちろん自分自身を重ねて歌っていますから。ただどう一歩を踏みだせばいいのか葛藤している不安定さも滲んでいるように思いますし、それが楽曲の味にもなっているように感じます。でもそういったところも自由に聴いてもらうことをなによりも大事にしたいのですね。
――リスナーの景色や物語になっていく楽曲だと思いますが、ご自身の中で「僕の物語」としてガツンと響いた部分はありますか?
山下 初っ端からですね。サビから始まりますが、そのサビがデモの段階から印象的だったんです。一周聴き終わったときにそのサビの印象が強烈で。そこを聞いただけでも覚えられて、鼻歌交じりに歌えるくらいでしたから、そこは歌詞も相まって皆さんの耳にも残るのではないかと客観的に感じたんですよね。だからこのサビの部分は、聴いている方にも強い印象を持ってもらえるかなと思います。早く皆さんに聴いてもらいたいですし、ぜひ感想をSNSなどに綴ってもらいたいです。
――エゴサしますよね。
山下 しちゃいます!「キャンドル」からの皆さんの想いに早く触れたいです。
「キャンドル」は、山下大輝の新たな名刺
――今回は配信シングルなので、フットワーク軽く届けられる感覚もありますね。
山下 デジタルシングルは気軽に聴けるという点が便利ですよね。人にもお薦めしやすいですし。あとはMVが出るので、そちらも見ていただきたいです。大鳥さんが手がけてくださったこのMVは本当に素敵なので、URLをそこら中に貼りまくってほしい(笑)。人にお薦めするにもまずはMVを観てからって主流ですからね。「とりあえず山下大輝の音楽を知るのにこの曲を聴いてくれ」と知らせることが出来ますよね。どんなアーティストか、と言われたときに「この人」と伝えられるMVがあるって重要ですから。
――そうなると、デビューのEPがありつつも、この「キャンドル」も山下さんにとっての名刺ということですか?
山下 そうだと思います。MVもフルサイズを公開するので、全貌が明らかになっていますし、フルで楽しんでもらえるからこそ入口になる機会も多くなるかなとも思っています。今回のMVはアニメーションですし、声優という職業との親和性も高いと思うので。MVの雰囲気やキャラクター像も僕自身から伝えてこだわったところでもあるので、ぜひ見てほしいです。
――そんな配信シングル「キャンドル」も楽しみですが、まもなくアーティストデビューから1年となります。今後はどんなビジョンを持って進んでいこうとお考えでしょうか。
山下 曲を増やしていきたいです。まだ「キャンドル」を含めて6曲なので、ライブをやるにはミニライブやアコースティックライブとトーク、というような雰囲気になりますから。セットリストで選べるくらいの曲数は欲しくて。それと並行して、声優の仕事もしていくので、良いバランスを見つつ、どちらにも活かせるような生き方をしていきたいです。音楽活動で培ったものを声優で活かし、声優で得たものを音楽活動に活かすみたいな両立が出来ると、新しい発見もより生まれていくと思うので、スタッフさんと話をしながら肥やしにしていきたいですし、その姿を見て、聴いていただいて、なにかを頑張っていたりチャレンジをしている皆さんに曲や役を通じてエールを届けられたらいいなと思っています。30代、まだまだ成長していけるところをお見せしたいですね。同じ年代の方はもちろん、下の世代、上の世代含めて、幅広い方たちに刺さるようなチャレンジをしていきたいと思います。
――では最後に読者へメッセージをお願いします。
山下 まだまだ1年ということで、音楽活動はここからだと思うんです。今回は「キャンドル」という曲で前向きな、ポジティブな想いを皆さんに届けたいと制作をしました。新しい変化としてくじらさんに楽曲をお願いして、大鳥さんにアニメーションのMVを作ってもらって、前回とは全然違うフレーバーのものに仕上がったと思います。そういう変化もありつつ、また今度も自分自身が見つけられていない自分との出会いを、楽曲を通じて重ねていきたいな、と。。キャラクターとも違う、楽曲との出会いがなければ生まれなかった表情も出てくると思いますし、僕自身もそういった顔を見つけてみんなに届けていきたいです。そんな未来を楽しみにしながら、「キャンドル」を聴いていただきたいです。どうぞよろしくお願いします。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
●リリース情報
デジタルシングル
「キャンドル」
3月30日(水)配信開始
作詞・作曲・編曲:くじら
ジャケットイラスト:大鳥
各音楽配信サービスにて配信中
https://A-Sketch-Inc.lnk.to/Daiki_Yamashita_Candle
関連リンク
山下大輝オフィシャルサイト
https://yamashitadaiki.com/
MEMBER’S CLUB「DAIKING」
https://daiking.yamashitadaiki.com
山下大輝 MUSIC STAFF Twitter
https://mobile.twitter.com/daiking_staff
山下らしい世界観を見事に放つこの「キャンドル」について、山下本人に話を聞いた。
歌う山下、作るくじら、視覚的に表現する大鳥。三位一体で生まれたのは、聴く者の心に灯りを灯すキャンドルのような暖かな曲。クリエイターの選出も山下自身のアイデアから始まったという1曲が生まれる際の核心にあったのは、一体どんなものだったのだろう。
アーティストデビューの反響
――昨年6月にアーティストデビューを果たしましたが、反響はいかがでしたか?
山下大輝 「まさか!」という声もいただきましたね。アーティストデビューするとは思わなかったという人も結構いらっしゃって。だから良い意味でサプライズになったなと思います。実際に制作をして、出したときに「次の曲を早く出してほしい」という声をたくさんいただけたのは嬉しかったです。当時はまだ5曲だけだったので、さらに先の楽曲への期待感も持っていただけたんだなと思いましたし、バースデーイベントをやったときにはそれを痛感もしました。あのときは3曲のみのライブパートだったので、ちょうど体が温まったな、というときに終わる感じもあったんですね。少し物足りない感があったので、曲数を増やしていきたいと思ったんです。応援してくださる方ももっと新曲を聴きたいと思ってくれていることを知り、曲をどんどん増やしていこうという気持ちになりましたし、そういう意味でも色々な反響をいただけたことを嬉しいなと思いました。
そういった声に、僕自身も色々なチャレンジをするきっかけをいただいています。でもそもそもは、あの状況下だったからこそ最初の一歩を踏み出せたんじゃないかと思うんですよ。歌を通じてなにかを届けられたらいいなと、ずっと思ってはいたけれども、形にすることができていなかったというところで、今のレコード会社であるA-Sketchさんにプッシュしていただき、チャレンジすることができました。
――そもそもflumpoolやDEAN FUJIOKAさん、THE ORAL CIGARETTESなどを擁するA-Sketchとやっていこうと思われたのはどういう意識からだったのでしょうか。
山下 僕自身、新たな挑戦をするにあたって、声優アーティストを良い意味で扱い慣れていない場所に身を置きたかったという部分もあったんです。お声掛けをいただいたこともあってから調べたのですが、A-Sketchには男性声優のアーティストが誰もいなかったので「レコード会社としても新しいチャレンジなのか」と思いましたし、僕の新たな挑戦をさせてもらうのならまさにここだ、と思いました。
――ちょうどアーティストデビューされる頃は、声優10年目が見えてきて、ご自身の中でも「殻を破りたい」というお話も出てくるような時期でした。そこでの「新たな挑戦」を「新しいレーベル」と二人三脚で、というのは非常に山下さんらしい決断でもありましたね。
山下 たしかにそうですね。色々なチャレンジをしていたけれども、特にその時期はコロナ禍真っ只中でもありましたから、声優の仕事がストップしていたんです。それも相まって、「ピンチをチャンスに」と思ったんですよね。だからこそ、それまでなかなか勇気を出せなかったけれど、その勇気を今、出そう!という気持ちになった。
色々なものが重なったことで、デビューへとブーストしていったと思います。視野が広がりましたし、もっとここから広げてもいきたいと思いましたね。
前作『hear me?』から最新シングル「キャンドル」へ
――そのブーストが原動力となり『hear me?』になったのですね。
山下 そうですね。コロナ禍という時期だけど、みんなの力になれるエールのような曲を、というテーマがはっきりしていましたし、そのテーマでアプローチを変えて作った5曲を収録しましたし、目的もはっきりしていたからこそすごく良い5曲に仕上がったなぁと。たくさんの人に愛される1枚になって良かったなと思いますね。
――『hear me?』は佐伯youthKさんをはじめ、様々なクリエイターさんと共に“山下大輝の音楽”を作られましたが、今回の配信シングルはどのような作品にしようと思われたのでしょうか。
山下 色々と変えようかなと考えてもいたんですけど、今の状況だからこそ変わらない安心感を届けたいというか。それで「キャンドル」というタイトルの最新シングルで、みんなの心に寄り添えるような灯りを灯せたらなっていう意味合いもあって。だからテーマとしては前作と近いんですけれども、僕だったら、今の状況下なら聴いて安心できるものを求めてしまうなとも思ったので、あえてコンセプトを大きく変えずに、メッセージを貫かせてもらったところは大きいかなと思います。
――制作にあたってまずはどのようなことから始めたのでしょうか。
山下 テーマは変わらないですが、アプローチの仕方は変化をつけたいと思ったんですよ。
前回はMVも自分が登場する実写での表現で、ジャケットの写真も自分自身の姿で出しましたが、今回は自分がまったく出てこないものにしたくて。それでジャケットの絵もMVも大鳥さんにお願いをしました。僕がアニメーションのMVを作りたかったというのもあって。そういった意味では、実写からアニメーションになっているという変化をつけて、そこを皆さんに面白がってもらえたらなとも思っています。テーマは変わっていないけれど、そういった意味での変化はありますね。
――前作のインタビューで「どんな山下大輝が見えるか」と伺ったのですが、その際に「人間の複雑な部分みたいなものを感じてほしい」とおっしゃっていたんですね。「キャラクターたちは僕の持っている1つの面であることが多いので、そうではない、今の僕のなかにある色んな顔を見せらたら嬉しい」と。今回はテーマを変えていないというだけに、その延長線上での表現となっている?
山下 「キャンドル」は生きていくうえで誰しもが感じている想いが表現されています。立ち止まってしまったり、ぶつかったり、悩んでしまったり。生き辛く息苦しい世の中で、何が正解かもわからないという心の悩みとどう向き合っていったらいいのだろうか、という想い。自分の今歩いている道が正解なのかわからない。でもわらかないのも「今」の自分なのだから、「今」は無理に答えを出さなくてもいいのではないか。
そんな日常の生活の中で自分自身とどう向き合っていけばいいのか、という生きるうえでの葛藤がこの曲からも伝わるのではないかと思います。そこは前作から変わらない想いとして息づいていますが、そんななかでも少しでも前向きになれた「かもしれない」くらいでいいので、聴き終わったあとに「キャンドル」というタイトルの通り、ちょっとだけ灯りが見えたかもしれない、心が温かくなっていたらいいな、という曲です。
「キャンドル」を構築する過程の想い
――制作にあたって、明確な世界観でのオーダーを出されていたのでしょうか。
山下 出しました。楽曲をくじらさんにお願いする、という大前提があって。くじらさんは複雑な心の葛藤など、感情の動きを想像力が刺激される描き方をされる方なので、そんなくじらさんのカラーが活きる方向で自分が歌いたいものをお伝えして制作をしていただきました。上手く気持ちがリンクしたなと思います。自分の気持ちをお伝えしたうえであがってきた曲でしたし、いただいた曲と歌詞に対して「そうだよね…!」という声が漏れました。
――今回タッグを組まれたくじらさんの印象はどのようなものでしたか?
山下 くじらさんの独特な言葉のチョイスが本当に素敵で。歌詞でも考えさせる余地があるんですよね。どういう意味なんだろう、なんでこういうふうにしているんだろう、と聴いている側に考えさせられることができるワードチョイスなんですよね。色んな考察ができるからこそ、これを聴いて、受け取ってくれた人にも考えてもらいたいなと思っていて……「こういうことだ」「こうなんだ」って、真っ直ぐに伝える曲ももちろん良いと思うんですけど、ただそうじゃない。
受け取ったことで考えるきっかけになって、この曲を10人が聴いたとして、10人が違う感想を抱いてほしいんです。それって自分だけの気持ちなんですよね。だからこそ、そこで湧き上がる気持ちを大事にしたいと思うし、自分だけの気持ちだからこそ力も湧く。次に繋がるパワーになると思うんです。くじらさんの歌詞や楽曲は、そういったパワーを持っているんですよね。想像力を掻き立てるような言葉の散りばめ方ですし、曲への乗せ方、伝え方が本当に素敵だなと思っています。
――そして、ビジュアル面でのコラボとなった大鳥さんの印象も教えてください。
山下 大鳥さんは、色んなMVを作られている方なんです。それらを拝見させていただいたのですが、説明をしすぎないアニメーションを作るところが非常に素敵だなって思ったんです。だからこそ、今回の楽曲との相性が良いはずだ、とお願いしました。これはこうだからこうなる、という視覚から得られる情報からも「これってもしかして」と考えさせるところがある。表情1つとっても、あえて作り込まないというか。
今回のMVもそうですが、聴いている人の受け取り次第で喜怒哀楽の見え方も変わってくると思うんです。見てくださる方に曲や歌声、歌詞、MVというピースを届けるので、それぞれが感じる自分だけの想いを大事にしてもらいたいです。
――だとすると、くじらさんや大鳥さんにお願いしたい、というのは山下さんご自身から出たアイディアだった?
山下 そうですね。このお二人に頼みたい、というお話をさせていだだきました。
――普段からそういったクリエイターさんの情報はチェックされているのですか?
山下 アーティスト活動を始めてから意識してチェックするようになりました。SNSもそういった視点で見るようになりましたね。「この人の曲、めちゃめちゃいいなぁ。いつか一緒にやれたらいいな」とか「この人の絵は味があって好きだなぁ」というように。この人と仕事をしたい、あの人と一緒にやってみたい、ってメモしていますし、一緒に仕事をしたい人リストを作っています。だって、とりあえず好きな人を挙げていくのは自由ですから(笑)。今後も楽しみですし、今回はくじらさんと大鳥さんとご一緒できて本当に嬉しいです。
「キャンドル」から受け取ったもの。届けたい想い。
――そんな「キャンドル」を歌うときにはどんなことを意識されていますか?
山下 心情的な部分はもちろん大事なのですが、この曲、実はすごく難しい歌なんです(笑)。シンプルに、跳ねるテンポにどう乗せるかがすごく難しい。そこに歌詞を乗せることにも苦戦しましたし、曲のレンジも広いんです。低いところから高いところの、音の跳躍でのニュアンスの付け方や、裏声でいくか地声でいくかもレコーディング当日に話し合いをさせてもらいましたし、「どっちの方が聴いていてエモーショナルでしたか?」と聞いたりもしました。客観的な反応をいただかないとわからないところもあるので、そういった部分を話し合いながらレコーディングを進めていって。少しでも気になるところは何度でも録り直しをしました。終わったときにはへとへとでしたね(笑)。
――レコーディングにくじらさんの立ち合いはありました?
山下 歌のレコーディングの前に楽器のレコーディングがあって、そこでご挨拶ができました。元々僕のことを知ってくださっていたらしくて、作品を見てくださってもいたそうなんです。それで声の雰囲気とか把握して作ってくださったんだな、と感じました。声を張ったときの抜ける感覚などから、歌っていると一番映えるところのキーを考えて作ってくださっているなということを感じるんです。これは僕の声を知ってくれている人が作ってくださっているな、と感じながら歌える、そんな感覚がくじらさんとの作業ではありました。
――改めて出来上がったものを聴かれると、どんな「山下大輝」を感じますか?
山下 その日、1日1日を踏みしめながら、次の一歩をどこに踏み出そうかと葛藤している1人の人間の姿を感じられるのかなと。もちろん自分自身を重ねて歌っていますから。ただどう一歩を踏みだせばいいのか葛藤している不安定さも滲んでいるように思いますし、それが楽曲の味にもなっているように感じます。でもそういったところも自由に聴いてもらうことをなによりも大事にしたいのですね。
――リスナーの景色や物語になっていく楽曲だと思いますが、ご自身の中で「僕の物語」としてガツンと響いた部分はありますか?
山下 初っ端からですね。サビから始まりますが、そのサビがデモの段階から印象的だったんです。一周聴き終わったときにそのサビの印象が強烈で。そこを聞いただけでも覚えられて、鼻歌交じりに歌えるくらいでしたから、そこは歌詞も相まって皆さんの耳にも残るのではないかと客観的に感じたんですよね。だからこのサビの部分は、聴いている方にも強い印象を持ってもらえるかなと思います。早く皆さんに聴いてもらいたいですし、ぜひ感想をSNSなどに綴ってもらいたいです。
――エゴサしますよね。
山下 しちゃいます!「キャンドル」からの皆さんの想いに早く触れたいです。
「キャンドル」は、山下大輝の新たな名刺
――今回は配信シングルなので、フットワーク軽く届けられる感覚もありますね。
山下 デジタルシングルは気軽に聴けるという点が便利ですよね。人にもお薦めしやすいですし。あとはMVが出るので、そちらも見ていただきたいです。大鳥さんが手がけてくださったこのMVは本当に素敵なので、URLをそこら中に貼りまくってほしい(笑)。人にお薦めするにもまずはMVを観てからって主流ですからね。「とりあえず山下大輝の音楽を知るのにこの曲を聴いてくれ」と知らせることが出来ますよね。どんなアーティストか、と言われたときに「この人」と伝えられるMVがあるって重要ですから。
――そうなると、デビューのEPがありつつも、この「キャンドル」も山下さんにとっての名刺ということですか?
山下 そうだと思います。MVもフルサイズを公開するので、全貌が明らかになっていますし、フルで楽しんでもらえるからこそ入口になる機会も多くなるかなとも思っています。今回のMVはアニメーションですし、声優という職業との親和性も高いと思うので。MVの雰囲気やキャラクター像も僕自身から伝えてこだわったところでもあるので、ぜひ見てほしいです。
――そんな配信シングル「キャンドル」も楽しみですが、まもなくアーティストデビューから1年となります。今後はどんなビジョンを持って進んでいこうとお考えでしょうか。
山下 曲を増やしていきたいです。まだ「キャンドル」を含めて6曲なので、ライブをやるにはミニライブやアコースティックライブとトーク、というような雰囲気になりますから。セットリストで選べるくらいの曲数は欲しくて。それと並行して、声優の仕事もしていくので、良いバランスを見つつ、どちらにも活かせるような生き方をしていきたいです。音楽活動で培ったものを声優で活かし、声優で得たものを音楽活動に活かすみたいな両立が出来ると、新しい発見もより生まれていくと思うので、スタッフさんと話をしながら肥やしにしていきたいですし、その姿を見て、聴いていただいて、なにかを頑張っていたりチャレンジをしている皆さんに曲や役を通じてエールを届けられたらいいなと思っています。30代、まだまだ成長していけるところをお見せしたいですね。同じ年代の方はもちろん、下の世代、上の世代含めて、幅広い方たちに刺さるようなチャレンジをしていきたいと思います。
――では最後に読者へメッセージをお願いします。
山下 まだまだ1年ということで、音楽活動はここからだと思うんです。今回は「キャンドル」という曲で前向きな、ポジティブな想いを皆さんに届けたいと制作をしました。新しい変化としてくじらさんに楽曲をお願いして、大鳥さんにアニメーションのMVを作ってもらって、前回とは全然違うフレーバーのものに仕上がったと思います。そういう変化もありつつ、また今度も自分自身が見つけられていない自分との出会いを、楽曲を通じて重ねていきたいな、と。。キャラクターとも違う、楽曲との出会いがなければ生まれなかった表情も出てくると思いますし、僕自身もそういった顔を見つけてみんなに届けていきたいです。そんな未来を楽しみにしながら、「キャンドル」を聴いていただきたいです。どうぞよろしくお願いします。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
●リリース情報
デジタルシングル
「キャンドル」
3月30日(水)配信開始
作詞・作曲・編曲:くじら
ジャケットイラスト:大鳥
各音楽配信サービスにて配信中
https://A-Sketch-Inc.lnk.to/Daiki_Yamashita_Candle
関連リンク
山下大輝オフィシャルサイト
https://yamashitadaiki.com/
MEMBER’S CLUB「DAIKING」
https://daiking.yamashitadaiki.com
山下大輝 MUSIC STAFF Twitter
https://mobile.twitter.com/daiking_staff
編集部おすすめ