大西亜玖璃の3rdシングルは、自身が神官カーラを演じるアニメ『このヒーラー、めんどくさい』のOP主題歌「ジェリーフィッシュな君へ」と、カップリングの「Love・Me・Do」を収録。前者は、ボケとツッコミがテンポ良く連続する作品を楽曲でも体現、耳が楽しくなるスラップスティックなポップソング。
大西が次々と表情を変えていく七変化なMVも必見である。一方の「Love・Me・Do」は眼前にトキメキが広がるような、とてもチャーミングな楽曲。どちらも大西の愛らしい表現力に満ちている!

『このヒーラー、めんどくさい』のOPテーマと知っていたので、とても可愛らしい印象が意外でした
――「ジェリーフィッシュな君へ」を最初に受け取ったとき、どんな楽曲だと感じましたか?

大西亜玖璃 仮歌も入った状態でいただいたんですけど、『このヒーラー、めんどくさい』のOPテーマと知っていたのでとても可愛らしい印象が意外でした。ラブコメではない作品なので。でも歌詞のところどころで、私が演じるカーラちゃんの表情や、(主人公の勇者)アルヴィンとのテンポのいいやりとりがちらほら見えました。カーラちゃんはクラゲ(=ジェリーフィッシュ)みたいに自由で毒のあるキャラクターですし。それに、(アルヴィンとカーラの)2人は特に恋愛関係へ発展しないんですけど、OPでそう思わせるように煽るというのも作品っぽいかな、と思いました。本編は本当に『トム&ジェリー』のようにドタバタなんですけど。でも、「ジェリーフィッシュな君へ」も、遅刻しそうなときに聴いたら慌てられる、みたいな感じがありますし。あとは、私が可愛いものが好きなので、可愛らしい楽曲を作ってくださったのかな、って思いました。

――大西さんが気に入ったポイントを教えてください。

大西 サビ前の、歌詞カードでは( )内にカタカナで表記されている部分なんですけど。
仮歌では棒読みというかロボットのように歌っていて。あまりそういう表現をしたことがなかったので、面白くできたらいいな、と思いながら歌いました、他が元気に歌う感じですけど、そこだけはぐるぐる目が回っているようなイメージで。

――レコーディングはどんな感じで進みましたか?

大西 最初は自分のイメージ通りに自然に楽しく歌ってみたら、「もっとオープニングっぽい感じに」と言われて。「オープニングっぽさとはなんだ?」と結構悩んだんですけど、パワフルにしたり可愛い子ぶったり色々やってみたら、最初の歌い方が選ばれました。欲のない感じで良かった、ということで。いつも、「もう一回」「もう一回」と言われることが多いんですけど、色々なパターンの中から良いものを選んでくれているみたいです。なので素直に歌わせてもらっています。

――少し手の上で踊らされてるような?

大西 そうですね。キャラソンの場合、みんなで合わせるというか、方向性の指示があったので、「本日は晴天なり」や「Elder flower」のときはすごく戸惑いましたし、今もどこが悪かったのかも色々考えるんですけど、もう「そういうものなんだ」と思って(笑)。終わったあとにはすごく褒めてくださるし、信じてやっていくという感じですね。

――では楽曲通り、楽しく歌えたレコーディングでしたか?

大西 私は(作詞・作曲した)俊龍さんの楽曲が大好きで、ゆいかおりさんや小倉 唯さんの楽曲でずっと聴いていましたし、キャラソンではお世話になったこともあったので、いつか自分のソロ曲でも楽曲が歌えたら嬉しいと思っていたんです。今回は純粋にコンペだったと思うんですけど、(俊龍による作詞・作曲)と知ったときは「やったー!」って思ってテンションが上がりました。
でも、「ジェリーフィッシュな君へ」を最初に聴いたときは、音も高いし、速いし、「歌えるかな?」とちょっと思いました。ただ、曲が楽しいので、その勢いをもらって難しく考えずに楽しく歌えた気がします。俊龍さんもレコーディングにいらしていて、すごく素直な声なので濁りがなくてとってもいいよ、と言っていただきました。カラオケではバラードとかを歌うことが多かったんですけど、こういう一面も自分に合っていると思える楽曲になって良かったです。

――MVで見られますが、可愛い振り付けもつきました。

大西 1月15日にライブイベント(『大西亜玖璃 First Contact ~1st LIVEのその前に~』)があって、そこで「ジェリーフィッシュな君へ」を初披露する機会があるということで振り付けをつけることになりました。なので、マイクを持っていて片手でも大きく見えて、楽しく踊れる振り付けになっています。

――MVよりもライブで先に振付を披露、というところで緊張はなかったですか? あまりダンスが得意ではないと仰っていますが。

大西 私の覚えが悪くて。脳トレみたいな振りがあるんですけど。

――脳トレ?

大西 間奏のところで、幾何学的な動きというか、右手上げて、左手上げて、右足出して、みたいな。

――しかもリズムが細かいところですね。


大西 サビの振り付けはノリノリな感じでいけるんですけど、体で覚えられないというか、あそこは頭の中にいっぱい「?」が浮かんでいました。(振付を教わった)その日のうちには覚えられなかったです。なので、もう1回リハーサルがあるということで、動画をスローモーションにできるアプリとか使って家で必死に覚えました。でも、覚えてしまったら歌詞も一緒に出てきますし、体力は削られるんですけど、ダンスがあったほうがやっぱり楽しいですね。



PVでは素が出ている部分を楽しんでもらえたら
――ライブで披露した感想は?

大西 お客さんを見る振りがあるんですけど、スタッフさんから見る方向を変えてもいいと言われていたので、それをやってみました。そういう自由さもあったのと、ライブで生えるダンスでもあるので、すごく楽しかったです。

――ライブは昼と夜の2部制でしたし。

大西 そう、両方で踊れたので。でも昼公演では、こんな元気な新曲だったからか、皆さんは結構ビックリしたみたいです。夜の部ではもう覚えてきていて、「知ってるよー」って感じでノッてくださいました。「この短時間で?」ってなりましたね。

――昼の部と夜の部の間にリハを重ねていたのかもしれないですね。


大西 ちょうど私と同じように(笑)。

――ライブでもそうでしたし、MVやジャケットでもベレー帽を身につけることが多いですね。

大西 確かに。そこは衣装さんのセンスなんですけど。でも帽子をかぶったときの反応がすごくいいんですよ。Twitterのリプライなどでみなさんから「帽子最強!」みたいな感じで。MVのスタッフさんも、ラインの入った黒のニットにベレー帽をかぶったとき、「(漫画雑誌の)『りぼん』とかに出てくる憧れの女の子みたい」とか「めっちゃ流行ったよね」みたいに話されていましたね。MVでは、ベレー帽って形がクラゲっぽいね、という話にもなって。それもありましたね。あと、ジャケット写真の衣装はメンズ服で、だからすそやそでがブカブカになっているところがクラゲっぽいね、という話も出ました。

――今お話にも出ましたが、MVでは色々なキャラクターを演じて七変化されていました。撮影はどんな感じでしたか?

大西 これまでずっと同じ監督に撮っていただいているんですけど、いつも盛り上げ上手な優しい方で。
私はコメディ仕立てのPVが初めてだったのでどこまでふざけていいのか心配だったんですけど、思いっきりやってもOKが出たので、実家でふざけている私、みたいな感じで思う存分に殻を破って楽しみました。びん底眼鏡みたいなのをかけたときも、ずっと(カメラを)回しているので何かしていてください、と言われて積み木をしていたら使われていましたし。鉛筆が転がっていくところもすごく目をひんむいていたのに使われて、「これも?」と思いました。

――ディレクションというよりはお任せというか。アイテムを使っての大喜利みたいな撮影ですね。

大西 確かに大喜利しているような気分でしたね。眼鏡のつるの後ろをもって上下に動かすとか、結構ふざけていました(笑)。音楽教師になったところも「自由に」と言われたので、楽器をいろいろ使いながらノリノリでやっていましたけど、手を振って指揮するところは「絶対あんな指揮ない」って動きになっちゃってます(笑)。でも「もっと視界に入るでしょ」では、うずまきのペロペロキャンディーを目に当ててくださいと言われたので、リズムに合わせて視力検査みたいに動いたんですけど、そうしたらちゃんと(ランドルト環の)画像を出してもらえました。最後の「あいつが矢を放った」では、矢が頭を貫いているみたいなカチューシャを作ってもらっていて。コテコテではあるんですけど、「できあがったら楽しいだろうな」と思っていたら、いい感じのシーンになっていましたね。

――ただ、大西さんもすごく表情豊かで、さすがと思いました。


大西 変顔ばっかりだから大丈夫かな、って思いましたけど(笑)。

――自身で特に気に入っている箇所は?

大西 最後に赤い糸を引っ張るところなんですけど、いっぱい手繰り寄せたらとれてしまって、慌ててつけるところがあるんです。とれると思っていなくて、そのときは「ヤバい」と思ったんですけど、それも使われていて。そうやって、結構私のボケボケなところが出ているので、素の部分を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

――『このヒーラー、めんどくさい』で演じるカーラについても教えてもらえますか?

大西 最初は「理解しよう、理解しよう」と思ったんですけど、やっぱり理解不能で。無意識のうちに人を煽ったり、時々本当にそのつもりで煽ったり、見た目は可愛いのに中身は変わっていますよね。でも、素直で可愛らしい一面が1/1000、1/10000の確率で出てくるので、そういうときはギャップとして可愛く思える気がします。不良が子犬を助けているのを見かけたときみたいに。

――(笑)。大西さんとしても初めて接するタイプのキャラクターですね。

大西 そうですね。だから参考がないというか、自分の思うままに一から作らせてもらったと思います。

――どういう女の子にできたら、というイメージでしたか?

大西 さっきもお話したように基本的には無意識というか、事実を言っているだけなので、素直なところを出そうと思いました。意地悪には聞こえないように、サラッと(台詞を)言って、「え?」といらつかせる感じですね。いらつかせようという気持ちではやらなかったです。

あまり気持ちを出せない女の子を演じる気持ちで
――カップリング曲の「Love・Me・Do」は名曲ですね。大西さんのストレートな歌声とあいまって、とても幸せな気持ちになれる曲というか。

大西 ありがとうございます。プロデューサーの方もすごくいいと仰っていましたし、スタッフさんにも好きな方が多いですね。ずっと気分が上がったまま聴いていられるというか、聴くたびに「いいな」と思える楽曲なので、いただけて嬉しいです。

――80年代に聴いたような懐かしさと、洗練されたところを兼ね備えていて、J-Pop感もあります。どのようなイメージで歌いましたか?

大西 確かにJ-Pop感がありますね。曲のテンションも一定で。でも、ずっと淡々と歌ってしまうと聴き逃されるような感覚があって。なので、表現を入れたいと思いました。例えば「あと一歩 そうぎゅっと寄り添えたら」では「ぎゅっと」という気持ちが伝わるように、とか。あと、「“このまま帰りたくない”」や「“時計より もっと私だけを見て”」といった台詞っぽいところ。歌詞の女の子はロマンチックなので心の中で思っていてもあまり表に出せない子だと思うので、その“”のところは絞り出して言う感じやぐっとこらえながら言う感じ、はっきり言わない感じを入れられたらいいな、と思いました。あとは最後の「“あのね…”」はやっと言えたところだと思うので、あざとくならないように素直に言うとか、そういうことに気をつけながら歌いました。



――こちらの曲でも好きなところを教えてもらえますか?

大西 楽曲全体で音が高めで、ずっとトップをキープし続けるというのがすごく大変でしたけど、最後に少し音数が減るところは聴いていても歌っていても気持ち良かったですね。歌詞だと、出てくる女の子は私くらいの年齢かと思ったんですよね。「終電間近」という単語が出てきますし。でも、「見守ってて Shooting star」とか「星空へ キミとランデ・ヴー」とか心の中で妄想している感じが可愛いですよね。街を見て、「ワンダーランドみたくきらめく街」って……思ったことありますか?

――いや、ないです(笑)。

大西 ディズニーランドとか見たら「わぁ」と思うことはありますけど。きらめく街を見ても「新宿だな」ってなりますよね。

――そんなカーラみたいな辛辣なことを(笑)。

大西 あ、こういうところは似てるのかもしれない(笑)。でも、恋愛で舞い上がっているからそう思えちゃう、そんな可愛さがところどころありますね。

――自身では、可愛く歌えた実感はありますか?

大西 どうかな(笑)。でも、今までの「元気」とか「かっこよく」とは違って、ドラマに浸るような歌い方ができたという意味では、新たな自分を見せられる楽曲になって良かったとは思っています。

――こちらもライブで歌ったときの感想を教えてください。

大西 こちらは夜の部だけで歌う楽曲だったので、少し緊張しました。でも、皆さんの目がすごくキラキラしていて、「神曲来た」みたいな気持ちが伝わってきた気がします。私も皆さんも素直に楽曲にノレて、初めてでも一体感が生まれる楽曲でしたね。楽しかったです。

――2022年度のスタートにふさわしい2曲だと思いますが、今年度の目標は?

大西 またライブができたら嬉しいんですが、やっぱりアルバムとかがないと……。といって、今年中にアルバムを作ってライブもして、というのは難しそうなので、アルバム制作に向けて自分から意見を出していきたいとは思います。

――ライブという意味ではアニサマへの出演は決まりました。

大西 めちゃめちゃ嬉しかったです。それこそ、この会議室だったかな?

――出演を聞かされたのが?

大西 はい。実は最初インタビューかと思っていたんですよ。リモート取材が1件ありますと言われていたので。画面に「(アニサマ統括プロデューサーの)さいとーぴーがいるな」とは思ったんですけど。

――おかしいな、と思いつつ(笑)。

大西 でも、今日はそういう感じなんだと思ったんですね。「ドワンゴです」とか「Animelo Summer Live」みたいな言葉も聞こえた気がするんですけど、リモートだったので少し聞き取り辛くて。だから、自分の楽曲の資料を見ていたら急に、「出演すること知っていますか?」と聞かれて。慌てて、「あ、はい」みたいに答えたら、「では説明しますね」って話が進んで、今年のアニサマについての説明が始まったので、「え? アニサマ!?」ってよくわからなくなってしまって。いろいろお話してもらったのに飲み込めなくて、「すみません、もう1回最初から言ってもらっていいですか?」ってお願いしました。そこであらためて出演のお話を聞いてビックリしました。それでも「アニサマ2022開催発表会」まではあまり実感なかったですね。

――今年のライブがしたい気持ちはまずそこでぶつけていただいて。

大西 はい、ステージで泣かないように頑張ります。すぐ泣いちゃうので。

――現実的な要素は置いておいて、個人的な欲望としては2022年度に何がしたいですか?

大西 一番は北海道に行きたいですね。

――なぜまた北海道に?

大西 2019年に、イベント(『キャラソンJAPAN 札幌公演』)でZepp Sapporoに行ったんですけど、2月(23日)だったので寒かったんですよ。しかも深夜に飛行機で着いて。そのとき、一緒に行ったスタッフさんやメンバーさんとすすきので食べたラーメンが超美味しくて、忘れられなくて。コンビニの前でたむろっている人に「東京から来たん?」みたいに言われてびっくりしたり。いや、私がビビりなのでビクビクしていただけなんですけど。他のメンバーは普通に「そうだよ」とか返していたので。でもまたラーメンが食べたいですね。あの人たちも元気にしているのかな?

――(笑)。でも、寒さがさらに美味しさを増してくれたんでしょうね。

大西 雪が積もっていました。寒かったです。なのにコンビニの前でたむろっていましたからね。

――(笑)。さすがの地元民ですね。

大西 ノースリーブ着てピンヒール履いて、それで店から店へと移動しているお姉さんもいました。「えっ!?」ってなりましたね。私はジーンズの下にタイツを履いてセーター2枚重ねするくらいに寒がりなので。そういう違いがすっごく楽しかったので、また行きたいですね。得意ではないけど暑いよりは寒い方が好きですし、雪景色もまた見たいです。あ、でも、全国各地で歌ってみたい気持ちはあります。地元の愛知とか、あと福岡も人生で行ったことがないですし。関東にお住まいの方も、私について来たら一緒に旅行気分を味わえると思うんです。みんなで美味しいものを食べたいですね。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

●リリース情報
大西亜玖璃 3rdシングル
「ジェリーフィッシュな君へ」
4月13日発売

【初回限定盤(CD+DVD)】

品番:COZC-1879~80
価格:¥2,090(税込)

【通常盤(CD Only)】

品番:COCC-17969
価格:¥1,430(税込)

<CD>
1.ジェリーフィッシュな君へ(TVアニメ『このヒーラー、めんどくさい』OPテーマ)
作詞・作曲:俊龍 編曲:Sizuk
2.Love・Me・Do
作詞:東乃カノ 作曲・編曲:木村孝明
3.ジェリーフィッシュな君へ(Instrumental)
4.Love・Me・Do(Instrumental)

<DVD>
「ジェリーフィッシュな君へ」ミュージックビデオ+メイキング映像

●作品情報
TVアニメ『このヒーラー、めんどくさい』
放送中

【スタッフ】
原作:丹念に発酵
監督:中西伸彰
シリーズ構成・脚本:志茂文彦
キャラクターデザイン:菊永千里
プロップデザイン:白﨑詩織
美術監督:湖山真奈美
色彩設計:荒木隆介
撮影監督:山本耕平
編集:小野寺絵美
音響監督:郷文裕貴
音響効果:白石唯果(ラプソディ)
音楽:五十嵐聡(TOKYO LOGIC)
オープニングテーマ:「ジェリーフィッシュな君へ」大西亜玖璃
エンディングテーマ「HERO in HEALER」
カーラ with アルヴィン、キノコ(CV:大西亜玖璃、佐藤拓也、泊明日菜)
アニメーション制作:寿門堂

【キャスト】
アルヴィン:佐藤拓也
カーラ:大西亜玖璃
キノコ(オルテガイア):泊 明日菜
牛:速水奨
マリア・デスフレイム:早見沙織

©丹念に発酵/KADOKAWA/このヒーラー、めんどくさい製作委員会

関連リンク
大西亜玖璃 音楽情報サイト
https://columbia.jp/onishiaguri/

TVアニメ『このヒーラー、めんどくさい』公式サイト
https://kono-healer-anime.com/
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