“光”のヒーローの姿を投影した、閃光のように鋭く眩しい最新曲
――まずはTVアニメ版『ULTRAMAN』シーズン1のED主題歌「my ID」を担当されたときの反応・反響や手応えについてお聞かせください。ファンや関係者からの声で印象に残っていることはありますか?
高橋 諒 「『ULTRAMAN』としては新しい感じだけどこういうのも大人でアリですね」と言っていただけてとても嬉しかったです。RyoheiさんとFoggy-Dさんのお二人を迎えて初の男声のみのタッグということで、楽曲も今までとはまた違った、熱いけど汗臭くないみたいな、モダンでいてヘヴィな方向に挑戦できました。かつ作品のクールでヌケ感のある映像も相まって、ちょっと大人の『ULTRAMAN』の新たな側面を描けたのではないかと思います。作品としての相性と、音楽性の領域も冒険できた非常に手応えがある作品になったと感じています。
――「my ID」は、『ULTRAMAN』の主人公・早田進次郎がヒーローとして成長していく、シーズン1のストーリーに寄り添う楽曲でした。今回のシーズン2のED主題歌「Transcending Time」では、本作の物語のどんな部分を意識して制作しましたか?
高橋 運命を受け入れたのちの、立ち向かっていくヒーローたちの能動的に躍動する姿を中心に捉えています。そこに音楽性として軽快なサウンド感……フュージョンファンクスタイルを軸に16ビートを感じる楽曲を組み合わせて、熱く滾る魂というよりは、宇宙を駆け抜ける閃光のようなスピードや火花のような鋭さをもったヒーローの姿を抽象化しています。
――それら作品に寄り添う部分とは別に、Void_Chordsもしくは高橋さん個人としてチャレンジしたかったことはありますか?個人的に設けていたテーマなどがあれば教えてください。
高橋 カップリングも含めて、今までで一番軽い味わいかつ、手数はしっかり多いような(笑)、乾いた手触りの作品を作ろうと思いました。よりジャンル感としても遊べるアプローチになったので、しっかり温故知新はしつつ、よく聴くと新しいと思ってもらえるようなギミックを入れようと。
――曲名になっている「Transcending Time(=時空を超越する)」という言葉は、歌詞の中にもフックとして繰り返し登場します。この言葉にはどんなメッセージを込められているのでしょうか?
高橋 時間を超えた運命と、さらに広大なスケールで展開する物語に対して、飲み込まれながらもそのすべてを受け入れ、打ち克っていく、主人公たちの宣言としてフックにしています。
――作詞はVoid_Chordsの楽曲ではお馴染みのKonnie Aokiさんが担当されています。歌詞の全体としての印象はいかがでしたか?作品との寄り添い方として秀逸に感じたラインなどがあれば教えてください。
高橋 よりポジティブというか、1つ抜けた感じがあって、今回のコンセプトをしっかり描き出していただきました。守るべき/変えるべき未来やその可能性、それを受け入れるヒーローを“Light”として表現されています。なぜ“光”なのかは本編を観ていただければと思いますが、“allow in this light” と宣言するフレーズは非常に示唆的で、自分自身の行動によって未来を変えようとする、また守ろうとする、それは自分の力によって、という能動的な決意を感じます。
――サウンド面に目を向けると、腰の入ったグルーヴやアタック感のあるシンセブラスなど、ファンク色が強いサウンドに感じました。アレンジ面でこだわった部分、ご自身のルーツやリファレンスとして意識したものがあれば教えてください。
高橋 自分自身のルーツとしてファンクが強いので色々とこだわりましたが、本作で最も大事にしたのはフレーズそのものよりグルーヴや重心の全体的な据わりの調整によって、「日本人だからできるフュージョンファンク」を明確に感じられるような作品にするということでした。
――今作は「my ID」に続きRyoheiさんとFoggy-Dさんがフィーチャリングボーカリストとして参加しています。お二人に歌っていただく際にはどんなディレクションをされましたか?
高橋 Ryoheiさんは、前回かなり丁寧にリズムをリニアに乗せていただいた印象ですが、今回はよりノリ重視でお願いしました。横の流れとして気持ち良く上がっていけるようなボーカリゼーションが、素晴らしかったです。
――Foggy-Dさんはいかがだったでしょうか。
高橋 Foggyさんのパートは少しアプローチを変えて、ラッパーというよりは今作はバッキングボーカルの比重が高くなっています。彼のコーラスサウンドもとても作品に合っていて、スパイスのように繰り出されるラップパートの鮮烈さが増して面白くなったと思います。
――ほかに「Transcending Time」のレコーディングや楽曲制作の過程で、印象深かったことはありましたか?
高橋 フリーなかっこよさも活きるファンク楽曲ですが、コンセプト上今回はかなりの部分、手数も決めた状態でレコーディングしました。特にドラムの波多江 健さんにはご苦労おかけしましたが(笑)、素晴らしいテイクをいただきました。
――「Transcending Time」のMVは男女による殺陣のシーンをフィーチャーしていて、これまでのVoid_ChordsのMVにはなかったタイプの映像に仕上がっています。なぜこのような映像になったのでしょうか。
高橋 上記のコンセプトを踏まえて日本をより感じる、そしてステレオタイプなものでも肯定的にミックスできるのではないかと思い、乾いた感じと軽快さに、シックな殺陣を合わせたら面白いのではないかと。
クラブミュージックのルーツとグルーヴがもたらしたもの
――カップリング曲「UNFORESEEN」は、クラブミュージック直系の華やかなダンスナンバー。こちらはどんなコンセプトで制作しましたか?
高橋 “乾いた良さ”みたいなコンセプトのシングルとしてもう1つ考えたアプローチとして、2000年代のハウスを通過した曲をやってみようと。湿度も低くできて、スピンオフ的な軽さもありA面との親和性もあるということで、得意なジャンルで楽しい曲にしようと思いました。シンプルな4つ打ちは案外作っていなかったのでとても楽しめました。
――軽快かつグルーヴィーなハウスミュージック、Ryoheiさんのしなやかなボーカル、Foggy-Dさんのファンキーな掛け声。そのどれもが魅力的ですが、サウンド的に特にこだわったポイントは?
高橋 コードとサックスのエッセンシャルな美しさを楽しめる曲に仕上がりましたし、細くて伝わるか分からないのですが、プロパーなハウストラックというよりは、アシッドジャズバンドのEPにあるクラブリミックス版的な据わりを意識していて、とても良い塩梅になったかなと思います。庵原良司さんのテナーソロも素晴らしいです。
――高橋さんはDJとしてのキャリアもお持ちですが、こういったハウスミュージックからの影響も大きいのでしょうか。
高橋 ハウス/テクノを長年やっていたのもあり、DJにはたくさん影響受けていますが、今作は特にリチャード・アーンショウなどの影響が大きいですね。シンプルかつツボを抑えたコードワークと同時代では少し硬めでモダンなビートの組み合わせ、メロディアスで艶のあるソロ楽器などの部分。前述のバンドのオリジナルミックスとリミックスワークのサウンドの違いもそうです。
――高橋さんの作られる楽曲は、曲自体の構造や構成が緻密でインテリジェンスが感じられる一方で、ダンスミュージックの要素も強くフィジカルな部分も大切にされている印象があります。もちろん楽曲によって異なるとは思いますが、そのバランスについて制作時に心がけていることはありますか?
高橋 やっぱり緻密なものをやろうとするとどんどんリニアに平面的になっていきますし、衝動性はぼけていきます。テクニックとしてそれを感じさせない研究をする他方、そこを克服してどこまで身体性や偶然性を入れられるかというのは通底したテーマでもあります。今のところすごく正確に作ってからレコーディングで違うことをやるとか、ベースを最後に録って最後まで据わりがわからないとか、一度知性で組み上がったものを肉体に戻ってちょっと壊すみたいな方向性で試行錯誤しています。
――個人的に今回のシングルはどちらの楽曲も、ポジティブで未来に対する希望を感じさせる内容に感じました。高橋さんとしては今作にどんな手応えを感じていますか?
高橋 今作が一番グルーヴの楽しさに注力できた作品になったことで、その意味でとても身体的なものが素直に詰まった曲になりました。紐付いている作品に寄り添った音楽は当然として、元々コンセプトを練り上げて作るタイプではありますが、他方で本来コンセプトなどなくてもよいですし、プリミティブな感性にのみ従うことも音楽には本当に重要なことだと再認識しました。どちらをもにらんだ、良きハイブリッドを目指して、音楽を作っていきたいです。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●リリース情報
アニメ『ULTRAMAN シーズン2』ED主題歌
Void_Chords feat. Ryohei & Foggy-D
「Transcending Time」
発売中
品番:LACM-24229
価格:¥1,430(税込)
<index>
1.Transcending Time (読み:トランセンディングタイム)
2.UNFORESEEN (読み:アンフォーシーン)
3.Transcending Time (Instrumental)
4.UNFORESEEN (Instrumental)
関連リンク
Void_Chords アーティスト公式ホームページ
https://www.lantis.jp/artist/Void_Chords/
高橋諒[Void_Chords]Twitter
https://twitter.com/RyoTakahashi111?s=20