愛媛発、男女ツインボーカルの3ピースパンクバンド・LONGMANが、TVアニメ『ラブオールプレー』のEDテーマ「ライラ」を表題とする新作EPを5月4日(水)にリリース。
バドミントンを題材に青春を描く『ラブオールプレー』に、蒼きエモーション、美しきメロディーを乗せ疾走する力強い「ライラ」。
LONGMANの道のり
――リスアニ!WEB初登場ということで、LONGMANのこれまでの道のりからお伺いできればと思います。元々は松山大学の音楽サークルのメンバーで結成されたそうですが、きっかけはあったんですか?
ひらい 最初は僕が別のメンバーとバンドをやっていたんです。そのメンバーが就職でバンドを辞め、1人になってしまったときに後輩のさわちゃんに声を掛けて。さわちゃんのやっていたコピーバンドを聴いて「声がすごく良いな」と思っていたんです。1ヵ月くらいかけて説得して、入ってもらって。そこからしばらくはドラムはサポートメンバーにお願いしていました。その1年後くらいに、ほりほりが加入しました。ほりほりがX JAPANの楽曲を叩いているのを聴いて「こんなに速いドラムを叩ける人が愛媛にいるんだ!」と思って、すぐに声を掛けたんです。
――それが2012年くらいということですね。ひらいさんの中に、バンドのイメージ像のようなものはあったんですか?
ひらい 元々Hi-STANDARDや10-FEETが好きだったんですけど「同じことをやってもしょうがないな」と。男女ツインボーカルで、メロコア、スカをやるようなバンドにしたら面白いかもしれないなと思っていました。
――男女ツインボーカルのメロディックバンドというとFOUR GET ME A NOTSを思い出しますが、当時聴いていましたか?
ひらい 聴いていました!なんなら最初に誘ったときも「フォゲミ(FOUR GET ME A NOTS)のような感じで……」と言っていて。
さわ 私はギターでフォゲミのコピバンをやっていたんです。だから男女ツインボーカルと聞いて「あぁいう音楽ができるのかもしれん!」と思ってワクワクしていました。
――当時ほかには男女ツインの3ピースバンドは少なかったですよね。
ひらい そうなんです。だからヤバT(ヤバイTシャツ屋さん)が出てきたときは「ついにきたか!」と思っていました(笑)。ヤバTとはグループLINEを組んでいるくらい仲が良くて、同じ構成なので色々学ばせてもらっています。
――ところで、さわさんはギターを弾かれていたとのことですが、ベースは弾かれていなかったんですか?
さわ 実はベースはほぼ触ったことがない状態だったんです。「ベースボーカルやってくれん?」と誘われたのですが、「弾いたことがない」という理由で最初は断っていました。歌いたいけど、ベースはできないなって。
ひらい 自分にリズム感がないのを自覚していたので、僕はベースはできないなと。だから「それは譲れない」と、最終的にご飯を奢って、なんとか説得しました(笑)。
――一方ほりほりさんはX JAPANのコピーバンドをされていたのでしょうか?
ほりほり サークル内で色々なバンドのコピーをしていたんです。同じサークル内にめちゃくちゃギターが上手い人がいたんですが、負けたくないと思ってX JAPANを叩いていたら声を掛けられて。最初(ひらいさんから)「家に行くわ!」って言われたんですよ。同じサークルとはいえ、見ず知らずの人に家を教えられるか!と(笑)。
ひらい 家のほうが話しやすいだろうから良かれと思ったんですけど(笑)。結局外で会うことになったんです。
ほりほり 楽器屋の前で待ち合わせしてね。僕はあまりメロコアを聴いたことがなかったので、直接会って断ろうかと思ってたんですよ。でもひらいさんからもらったデモ音源を聴いたら「あ、メロディが良いな」って。今考えると曲自体は荒かったんですけど、僕のストライクゾーンにハマったんです。
――本格的にバンド活動していくとは、当時想像していましたか?
ほりほり いや、愛媛県内で活動するだけかと思ってました……。
さわ でも(ほりほりさん加入後の)最初のライブが県外で。
ひらい 最初が高知県でのライブだったんですよ。言うと引かれちゃうかなと思って、軽い感じで誘っていたんです(笑)。
――それこそ皆さん就職を考えられる時期ですもんね。バンドで食べていくというのは、大きな決心だったと思うんですが……。
ひらい そうなんですよね。だからいかにメンバーのモチベーションを上げられるかっていうのはすごく意識していました。
さわ 私はみんなと同じ大学のサークルに入ってはいたんですけど、専門学生だったんです。私の場合は2年で就職になるので、まさにそういうタイミングで。葛藤はあったのですが、そのとき既にバンドの楽しさを知ってしまっていたので、「バンドをやりたいな」とは思っていました。最初は親からも「5年以内に目に見えるような成果を出せなかったらバンドを辞めて就職しなさい」と言われていたのですが、その間に「MONSTER baSH」というフェス(香川県で開催されている中四国最大規模の野外音楽フェス)に出られたので「大丈夫だろう」と。そこからずっと続いています(笑)。
ほりほり うん、モンバスはデカかったよね。
ひらい うんうん。今思えば若気の至りなんでしょうけど、「いける!」って自信がありました。
――いまや全国区で活躍され、TVアニメ『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』や、マンガ原作のドラマ「ゆるキャン△」など様々な作品の主題歌も彩られてきましたが、アニメ音楽やマンガは元々お好きだったのでしょうか?
さわ 私はアニメが大好きで。ライブ会場のBGMは私が選曲をしていることが多いのですが、その中にもアニソンが入っています。LiSAさんの曲や『マクロス』シリーズ、〈物語〉シリーズとか……。それに、元々マンガの「NARUTO」、アニメの『ゆるキャン△』が好きだったので、「メジャーになれて良かった!」って思いましたね。
ひらい さわちゃんはアニメ大好きだもんね。
ほりほり 今回東京に来るときも『ハイキュー!!』をずっと観ていたよね(笑)。僕は高校のときにニコニコ動画の「アニソン叩いてみた」動画をめちゃくちゃ観ていましたね。あと、アニマックスでもよくアニメを観ていました。
ひらい 僕は元々野球少年だったんですよ。バンドの曲は中学生から聴いていたんですけど、学生時代はアニメを観る機会がそこまで多くなくて。最近だと『約束のネバーランド』にめちゃくちゃハマりました。
ほりほり 少し話は変わるのですが、僕、オンラインゲームが好きで、外国人の方とコミュニケーションをとる機会が多いんです。「日本の音楽」って言うとあまり通じないことがあるのですが、「アニソン」って言うと通じるんですよね。一度仲間に「俺、『BORUTO-ボルト- 』の主題歌やったんだよ」って言ったらビビってました(笑)。アニメのパワーのすごさを改めて思い知りましたね。
さわ 『BORUTO-ボルト-』の「Wish on」を海外の方がカバーしてくださっている動画も観て。「アニメを通して世界と繋がれるんだ!」と実感して、すごく嬉しかったです。
――素敵なエピソードですね。ほりほりさん、ちなみにどんなオンラインゲームをされているんですか?
ほりほり 「ラストオアシス」(ノマドスタイルサバイバルMMO)というゲームをプレイしていて。
「ライラ」では初めて友情をテーマに
――『ラブオールプレー』のEDテーマ「ライラ」は、どのように制作を進められていったのでしょうか?
ひらい 最初はシークレットだったので「バドミントンのアニメ」とだけ聞いていたんです。そのうえで歌詞のない状態のデモを15曲作って。その中から3曲選んでいただき、最終的に「ライラ」に決まりました。そこから小説を読ませてもらい、作詞と編曲をしていって。
――お二人は「ライラ」のデモを聴いたときはどのような印象を持ちましたか?
さわ デモが完成する前にAメロ、Bメロを聴いたんですけど、すっごく良くて!サビメロでひらいさんが苦戦をしていて。今のサビメロの形になるまでに、何度もやり取りをしました。申し訳ないなと思いつつも「もっといけるよ!」って、意見を言い続けて。
ひらい でも僕自身は、意見をもらえるのはありがたいなと思っていて。というのも、作った直後は客観的に見られないんです。Aメロ、Bメロが良いだけになかなかサビがしっくりこなくて。良いものが出るまで意見をもらい続けました。
ほりほり そうして出来上がったものを並べて、僕がラスボス的な感じで聴くっていう(笑)。それぞれ役割分担がある感じなんです。
――“君とならきっと大丈夫だって”という、仲間との絆を描かれた歌詞もグッとくるものがありました。
ひらい これまでは自分の弱さや葛藤を書くことが多かったんです。でも初めて友情をテーマに書いて、信頼できる人がいると強くなれるし、人のためのほうが頑張れることもあると思って。それで“大丈夫”という言葉が出たのかなと思います。
――今のお話はまさにバンドにも言えることですよね。
ひらい そうですね。仲間と上を目指していくなかで、悔しいことも、大変なこともあって。それでも諦めないっていうのは、僕らにも通じるところがあると思います。僕らの原動力の根底にあるのは「好き」という気持ち。小説を読んでいるなかで「好き」って気持ちは大切にしなきゃいけないなと再確認できました。
――初心を思い出すところがあったんですね。
さわ 主人公の水嶋 亮くんは記憶力がすごいんですけど、試合中の感情は覚えていなくて。ある日の水嶋兄弟の会話の中で、お姉さんから「記憶に残る、熱くなる一打があれば、もう1つ上を目指せる」的なことを言われる場面があって、それを読んで自分自身の経験と重ねるところがありました。私自身、今まで色々な曲を聴いて、色々なライブを観てきたなかで「記憶に残る1曲」があるんです。人生の分岐点に立ったとき、その記憶に残っている1曲に背中を押されて、道を選べたなと。この作品を読みながら「ライラ」もそういう存在になったらいいなと思いました。
――聴いた人の心の中で輝く曲になると思います。ところでタイトルの「ライラ」という言葉は、曲の中にも出てくる星からですか?
ひらい そうですね。小説を読んだときに自分の高校時代を思い出して。先ほども話した通り、僕は野球少年だったんです。試合に負けたときや素振りをしたあと、川を眺めたり、空を見たりしていた情景が浮かんで。仲間と高みを目指していくなかでの葛藤、悔しさを抱えている少年が星を眺めている……という物語が思い浮かんだので、タイトルは星にしようって思っていました。それで、こと座の意味を持つ「ライラ」を調べている流れで「ライラック」という花があることを知ったんです。その花言葉が「青春の喜び」で、「これはピッタリだな!」と。水嶋くんに捧げられる曲になるなと思い、この言葉を選びました。
ほりほり 素振りのあとに星を見るんだ。僕は剣道部だったから外で竹刀を振り回すことはできなくて。やばい人になっちゃう(笑)。
ひらい それはそうだね(笑)。
さわ たしかに(笑)。私自身は小中高とバスケ部で。私たちが住んでいたところは田舎なので星がよく見えるんです。
――それで“まだ空は輝き放ちながら僕を照らした 寝転んで見上げたライラ”などの情景を思い出す言葉にもリアリティがあるんですね。
さわ LOMGMANの曲には丸々日本語詞というのもはあるにはあったんですけど、ここまで情景が思い浮かぶ曲はなくて。それも相まって、アニメと一緒になったときにどうなるのかなってワクワクがあります。
――どんな映像がつくのかも楽しみです。
一同 楽しみです!
――しかも『ラブオールプレー』は、土曜日5時半という『半妖の夜叉姫』が放送されていた枠でもあって。幅広い層の方が観られる時間ですよね。
ひらい 身が引き締まる思いです。今までのタイアップは残念ながら愛媛では放送されてなかったんです。だから初めて家族や地元の友達にも観てもらえるなと。タイアップの場合は、LONGMANのファンの方以外にも聴いていただけるので、なかなかないチャンス。それが実ってすごく嬉しかったです。
カップリングにはライブ音源を
――今作にはカップリングに「Will」「1919」「WALKING」「Hello Youth」(ドラマ「ゆるキャン△2」主題歌)のライブ音源も収録されます。ライブ音源を収録した理由はなんだったのでしょう?
ひらい この状況ではライブに来たくても来られない人がいるだろうなって。その方々にライブの熱量を少しでもお届けできたらと思ったんです。ライブハウスを忘れないでほしいな、と。曲はわかりやすいほうがいいかなと思って、僕らのライブを代表するようなものを選ばせてもらいました。
――音源は今年の2月20日、代官山UNITで開催された“LONGMAN TOUR “BACK TO THE 20XX””のもの。かなり最近の音源ですよね。(※インタビューは3月頭に実施)
ひらい 2週間前くらいのもので(笑)。僕らの主催ライブをずっとやっていなかったということもあって、タイミング的にそこしかなかったんです。少しでも新しいもののほうがいいだろうなと思って、この日のライブの曲にしました。
――久しぶりの主催のツアーはいかがでしたか?
ひらい めっちゃ楽しかったですね。コロナ禍になってからやっとお客さんと遊べたライブで。コロナ禍になった当初は僕らが一方的に投げている感じがしていて……でもそうじゃなきゃいけないのかなと、迷いのようなものがあったんです。でも僕らは違うなと。お客さんとできる限り遊べるライブにしようと思って、手拍子でコールアンドレスポンスをしてもらったり、その場でジャンプをしてもらったりと、ルールの中でできる楽しみ方を確立できたツアーでした。お客さんとも親和性を深められた、良い時間になりました。
ほりほり 今回からお題を決めずにMCでフリートークをするようにしたんです。LONGMANの良い意味でのユルさを出せたんじゃないかなって。
さわ あと「新しいチャレンジ」の話で言うと、お客さんが声を出せないぶん、(ほりほりさんが)パソコンを使って歓声を出したんです。
ほりほり でももうちょっと練度を上げる必要があるな(笑)。
――少し気が早いんですけど、そのツアーのエネルギーが出るであろう次の作品、ツアーも楽しみですね。
さわ 今作で音源収録したツアーの前に「ライラ」のレコーディングをしているんです。プロデューサーさんに「新しいことにたくさんチャレンジするには今がチャンスだよ!」とアドバイスをいただき、ツアーで色々なチャレンジができて。それよりまた一段階上にあがった私たちを次のツアーで見せられるんじゃないかなと思ってます。
ひらい 前回のツアーで新しいチャレンジはできたんですけど、同じことを繰り返していても駄目だと思うんです。ツアーを経て「コロナ禍でも一体感は出せる」ということや、新しい可能性は感じられたので。研ぎ澄ませて、お客さんが楽しめるように、しっかり考えて、良い空間を作っていきたいなと思っています。
ほりほり 個人的に「もっとライブを良くするためにはどうすれば良いんだろう」って思っていて。ドラムとして何が足りないんだろうと考えていたときに、Dizzy Sunfist(大阪府出身のロックバンド)のライブ映像を観ていたら、コメント欄に「moAiくんのドラムはすごく丁寧だよね」って書いてあって、「これだ!」と(笑)。だから次のツアーに向けて、丁寧にドラムを叩きたいなと思っています。
ひらい アバウトだなぁ(笑)。もう少し詳しくいいすか。
ほりほり (笑)。もうちょっと詳しく言うと、僕は勢いで叩きがちだったので、1音、1音、ムラのない、しっかりとした音にしたいなと思っています。そういう意味でも新しいツアーになるんじゃないかなと。
――今日お話をお伺いしていくなかで、挑戦という言葉がたくさん出てきて。LONGMANのTwitterのプロフィールに、「元気に楽しく新しい音楽に挑戦していきたいという信条でやらせてもらってます」と書いてありましたが、“挑戦”というのはLONGMANにとって、永遠のテーマでもあるのでしょうか?
ひらい そうですね。バンドって新しいことに挑戦して、進化していかないと終わっていくなと思っていて。昨今の情勢的にも。
ほりほり 歩き続けていきたいよね。
ひらい うん。変わりすぎてもお客さんとしては困惑してしまうかもしれないですけど、芯はブレないまま、新しいことに挑戦していきたいなと。自分たち自身もドキドキできるような、ハッとするような音楽が好きですし、それを目指してやっていきたいなと思っています。
さわ いつまでもドキドキ、ワクワクしてたいよね。「音楽が好き」って気持ちをずっと更新していきたいな。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
●リリース情報
LONGMAN ニューEP
「ライラ」
2022年5月4日(水)リリース
価格:¥1,650(税込)
品番:AICL 4089
M1:ライラ
M2:Will(Live at Daikanyama UNIT 20220220)
M3:1919(Live at Daikanyama UNIT 20220220)
M4:WALKING(Live at Daikanyama UNIT 20220220)
M5:Hello Youth(Live at Daikanyama UNIT 20220220)
●ライブ情報
LONGMAN TOUR 2022 “This is Youth”
4月23日(土)熊本 B.9 V2
4月24日(日)福岡 DRUM LOGOS
4月29日(金・祝)広島 セカンド・クラッチ
4月30日(土)岡山 YEBISU YA PRO
5月4日(水・祝)京都 KYOTO MUSE
5月5日(木・祝)大阪 心斎橋 JANUS
5月15日(日)香川 高松 DIME
6月1日(水)宮城 仙台 CLUB JUNK BOX
6月3日(金)神奈川 F.A.D YOKOHAMA
6月5日(日)東京 Spotify O-WEST
6月26日(日)愛知 名古屋 THE BOTTOM LINE
7月2日(土)愛媛 松山 WStudioRED
関連リンク
LONGMAN 公式サイト
https://longman.jp/
LONGMAN 公式Twitter
https://twitter.com/longman_asp
バドミントンを題材に青春を描く『ラブオールプレー』に、蒼きエモーション、美しきメロディーを乗せ疾走する力強い「ライラ」。
楽曲に込めた想いについて、そしてこれまでとこれからについて、松山から東京にライブで来ていたさわ(vo、b)、ひらい(g、vo)、ほりほり(ds)に話を聞いた。
LONGMANの道のり
――リスアニ!WEB初登場ということで、LONGMANのこれまでの道のりからお伺いできればと思います。元々は松山大学の音楽サークルのメンバーで結成されたそうですが、きっかけはあったんですか?
ひらい 最初は僕が別のメンバーとバンドをやっていたんです。そのメンバーが就職でバンドを辞め、1人になってしまったときに後輩のさわちゃんに声を掛けて。さわちゃんのやっていたコピーバンドを聴いて「声がすごく良いな」と思っていたんです。1ヵ月くらいかけて説得して、入ってもらって。そこからしばらくはドラムはサポートメンバーにお願いしていました。その1年後くらいに、ほりほりが加入しました。ほりほりがX JAPANの楽曲を叩いているのを聴いて「こんなに速いドラムを叩ける人が愛媛にいるんだ!」と思って、すぐに声を掛けたんです。
――それが2012年くらいということですね。ひらいさんの中に、バンドのイメージ像のようなものはあったんですか?
ひらい 元々Hi-STANDARDや10-FEETが好きだったんですけど「同じことをやってもしょうがないな」と。男女ツインボーカルで、メロコア、スカをやるようなバンドにしたら面白いかもしれないなと思っていました。
――男女ツインボーカルのメロディックバンドというとFOUR GET ME A NOTSを思い出しますが、当時聴いていましたか?
ひらい 聴いていました!なんなら最初に誘ったときも「フォゲミ(FOUR GET ME A NOTS)のような感じで……」と言っていて。
さわ 私はギターでフォゲミのコピバンをやっていたんです。だから男女ツインボーカルと聞いて「あぁいう音楽ができるのかもしれん!」と思ってワクワクしていました。
――当時ほかには男女ツインの3ピースバンドは少なかったですよね。
ひらい そうなんです。だからヤバT(ヤバイTシャツ屋さん)が出てきたときは「ついにきたか!」と思っていました(笑)。ヤバTとはグループLINEを組んでいるくらい仲が良くて、同じ構成なので色々学ばせてもらっています。
――ところで、さわさんはギターを弾かれていたとのことですが、ベースは弾かれていなかったんですか?
さわ 実はベースはほぼ触ったことがない状態だったんです。「ベースボーカルやってくれん?」と誘われたのですが、「弾いたことがない」という理由で最初は断っていました。歌いたいけど、ベースはできないなって。
ひらい 自分にリズム感がないのを自覚していたので、僕はベースはできないなと。だから「それは譲れない」と、最終的にご飯を奢って、なんとか説得しました(笑)。
――一方ほりほりさんはX JAPANのコピーバンドをされていたのでしょうか?
ほりほり サークル内で色々なバンドのコピーをしていたんです。同じサークル内にめちゃくちゃギターが上手い人がいたんですが、負けたくないと思ってX JAPANを叩いていたら声を掛けられて。最初(ひらいさんから)「家に行くわ!」って言われたんですよ。同じサークルとはいえ、見ず知らずの人に家を教えられるか!と(笑)。
ひらい 家のほうが話しやすいだろうから良かれと思ったんですけど(笑)。結局外で会うことになったんです。
ほりほり 楽器屋の前で待ち合わせしてね。僕はあまりメロコアを聴いたことがなかったので、直接会って断ろうかと思ってたんですよ。でもひらいさんからもらったデモ音源を聴いたら「あ、メロディが良いな」って。今考えると曲自体は荒かったんですけど、僕のストライクゾーンにハマったんです。
――本格的にバンド活動していくとは、当時想像していましたか?
ほりほり いや、愛媛県内で活動するだけかと思ってました……。
さわ でも(ほりほりさん加入後の)最初のライブが県外で。
ツアーもやるらしいぞ、「あれ?」みたいな(笑)。
ひらい 最初が高知県でのライブだったんですよ。言うと引かれちゃうかなと思って、軽い感じで誘っていたんです(笑)。
――それこそ皆さん就職を考えられる時期ですもんね。バンドで食べていくというのは、大きな決心だったと思うんですが……。
ひらい そうなんですよね。だからいかにメンバーのモチベーションを上げられるかっていうのはすごく意識していました。
さわ 私はみんなと同じ大学のサークルに入ってはいたんですけど、専門学生だったんです。私の場合は2年で就職になるので、まさにそういうタイミングで。葛藤はあったのですが、そのとき既にバンドの楽しさを知ってしまっていたので、「バンドをやりたいな」とは思っていました。最初は親からも「5年以内に目に見えるような成果を出せなかったらバンドを辞めて就職しなさい」と言われていたのですが、その間に「MONSTER baSH」というフェス(香川県で開催されている中四国最大規模の野外音楽フェス)に出られたので「大丈夫だろう」と。そこからずっと続いています(笑)。
今となっては入って良かったなと。
ほりほり うん、モンバスはデカかったよね。
ひらい うんうん。今思えば若気の至りなんでしょうけど、「いける!」って自信がありました。
――いまや全国区で活躍され、TVアニメ『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』や、マンガ原作のドラマ「ゆるキャン△」など様々な作品の主題歌も彩られてきましたが、アニメ音楽やマンガは元々お好きだったのでしょうか?
さわ 私はアニメが大好きで。ライブ会場のBGMは私が選曲をしていることが多いのですが、その中にもアニソンが入っています。LiSAさんの曲や『マクロス』シリーズ、〈物語〉シリーズとか……。それに、元々マンガの「NARUTO」、アニメの『ゆるキャン△』が好きだったので、「メジャーになれて良かった!」って思いましたね。
ひらい さわちゃんはアニメ大好きだもんね。
ほりほり 今回東京に来るときも『ハイキュー!!』をずっと観ていたよね(笑)。僕は高校のときにニコニコ動画の「アニソン叩いてみた」動画をめちゃくちゃ観ていましたね。あと、アニマックスでもよくアニメを観ていました。
そういう意味では、アニソンは僕らにとっても礎になってる存在だと思います。
ひらい 僕は元々野球少年だったんですよ。バンドの曲は中学生から聴いていたんですけど、学生時代はアニメを観る機会がそこまで多くなくて。最近だと『約束のネバーランド』にめちゃくちゃハマりました。
ほりほり 少し話は変わるのですが、僕、オンラインゲームが好きで、外国人の方とコミュニケーションをとる機会が多いんです。「日本の音楽」って言うとあまり通じないことがあるのですが、「アニソン」って言うと通じるんですよね。一度仲間に「俺、『BORUTO-ボルト- 』の主題歌やったんだよ」って言ったらビビってました(笑)。アニメのパワーのすごさを改めて思い知りましたね。
さわ 『BORUTO-ボルト-』の「Wish on」を海外の方がカバーしてくださっている動画も観て。「アニメを通して世界と繋がれるんだ!」と実感して、すごく嬉しかったです。
――素敵なエピソードですね。ほりほりさん、ちなみにどんなオンラインゲームをされているんですか?
ほりほり 「ラストオアシス」(ノマドスタイルサバイバルMMO)というゲームをプレイしていて。
一時期日本でも盛り上がっていたんですが、どちらかというと海外のプレイヤーの方が多くて。いつか実況とかもやりたいなぁと思ってます。
「ライラ」では初めて友情をテーマに
――『ラブオールプレー』のEDテーマ「ライラ」は、どのように制作を進められていったのでしょうか?
ひらい 最初はシークレットだったので「バドミントンのアニメ」とだけ聞いていたんです。そのうえで歌詞のない状態のデモを15曲作って。その中から3曲選んでいただき、最終的に「ライラ」に決まりました。そこから小説を読ませてもらい、作詞と編曲をしていって。
――お二人は「ライラ」のデモを聴いたときはどのような印象を持ちましたか?
さわ デモが完成する前にAメロ、Bメロを聴いたんですけど、すっごく良くて!サビメロでひらいさんが苦戦をしていて。今のサビメロの形になるまでに、何度もやり取りをしました。申し訳ないなと思いつつも「もっといけるよ!」って、意見を言い続けて。
ひらい でも僕自身は、意見をもらえるのはありがたいなと思っていて。というのも、作った直後は客観的に見られないんです。Aメロ、Bメロが良いだけになかなかサビがしっくりこなくて。良いものが出るまで意見をもらい続けました。
ほりほり そうして出来上がったものを並べて、僕がラスボス的な感じで聴くっていう(笑)。それぞれ役割分担がある感じなんです。
――“君とならきっと大丈夫だって”という、仲間との絆を描かれた歌詞もグッとくるものがありました。
ひらい これまでは自分の弱さや葛藤を書くことが多かったんです。でも初めて友情をテーマに書いて、信頼できる人がいると強くなれるし、人のためのほうが頑張れることもあると思って。それで“大丈夫”という言葉が出たのかなと思います。
――今のお話はまさにバンドにも言えることですよね。
ひらい そうですね。仲間と上を目指していくなかで、悔しいことも、大変なこともあって。それでも諦めないっていうのは、僕らにも通じるところがあると思います。僕らの原動力の根底にあるのは「好き」という気持ち。小説を読んでいるなかで「好き」って気持ちは大切にしなきゃいけないなと再確認できました。
――初心を思い出すところがあったんですね。
さわ 主人公の水嶋 亮くんは記憶力がすごいんですけど、試合中の感情は覚えていなくて。ある日の水嶋兄弟の会話の中で、お姉さんから「記憶に残る、熱くなる一打があれば、もう1つ上を目指せる」的なことを言われる場面があって、それを読んで自分自身の経験と重ねるところがありました。私自身、今まで色々な曲を聴いて、色々なライブを観てきたなかで「記憶に残る1曲」があるんです。人生の分岐点に立ったとき、その記憶に残っている1曲に背中を押されて、道を選べたなと。この作品を読みながら「ライラ」もそういう存在になったらいいなと思いました。
――聴いた人の心の中で輝く曲になると思います。ところでタイトルの「ライラ」という言葉は、曲の中にも出てくる星からですか?
ひらい そうですね。小説を読んだときに自分の高校時代を思い出して。先ほども話した通り、僕は野球少年だったんです。試合に負けたときや素振りをしたあと、川を眺めたり、空を見たりしていた情景が浮かんで。仲間と高みを目指していくなかでの葛藤、悔しさを抱えている少年が星を眺めている……という物語が思い浮かんだので、タイトルは星にしようって思っていました。それで、こと座の意味を持つ「ライラ」を調べている流れで「ライラック」という花があることを知ったんです。その花言葉が「青春の喜び」で、「これはピッタリだな!」と。水嶋くんに捧げられる曲になるなと思い、この言葉を選びました。
ほりほり 素振りのあとに星を見るんだ。僕は剣道部だったから外で竹刀を振り回すことはできなくて。やばい人になっちゃう(笑)。
ひらい それはそうだね(笑)。
さわ たしかに(笑)。私自身は小中高とバスケ部で。私たちが住んでいたところは田舎なので星がよく見えるんです。
――それで“まだ空は輝き放ちながら僕を照らした 寝転んで見上げたライラ”などの情景を思い出す言葉にもリアリティがあるんですね。
さわ LOMGMANの曲には丸々日本語詞というのもはあるにはあったんですけど、ここまで情景が思い浮かぶ曲はなくて。それも相まって、アニメと一緒になったときにどうなるのかなってワクワクがあります。
――どんな映像がつくのかも楽しみです。
一同 楽しみです!
――しかも『ラブオールプレー』は、土曜日5時半という『半妖の夜叉姫』が放送されていた枠でもあって。幅広い層の方が観られる時間ですよね。
ひらい 身が引き締まる思いです。今までのタイアップは残念ながら愛媛では放送されてなかったんです。だから初めて家族や地元の友達にも観てもらえるなと。タイアップの場合は、LONGMANのファンの方以外にも聴いていただけるので、なかなかないチャンス。それが実ってすごく嬉しかったです。
カップリングにはライブ音源を
――今作にはカップリングに「Will」「1919」「WALKING」「Hello Youth」(ドラマ「ゆるキャン△2」主題歌)のライブ音源も収録されます。ライブ音源を収録した理由はなんだったのでしょう?
ひらい この状況ではライブに来たくても来られない人がいるだろうなって。その方々にライブの熱量を少しでもお届けできたらと思ったんです。ライブハウスを忘れないでほしいな、と。曲はわかりやすいほうがいいかなと思って、僕らのライブを代表するようなものを選ばせてもらいました。
――音源は今年の2月20日、代官山UNITで開催された“LONGMAN TOUR “BACK TO THE 20XX””のもの。かなり最近の音源ですよね。(※インタビューは3月頭に実施)
ひらい 2週間前くらいのもので(笑)。僕らの主催ライブをずっとやっていなかったということもあって、タイミング的にそこしかなかったんです。少しでも新しいもののほうがいいだろうなと思って、この日のライブの曲にしました。
――久しぶりの主催のツアーはいかがでしたか?
ひらい めっちゃ楽しかったですね。コロナ禍になってからやっとお客さんと遊べたライブで。コロナ禍になった当初は僕らが一方的に投げている感じがしていて……でもそうじゃなきゃいけないのかなと、迷いのようなものがあったんです。でも僕らは違うなと。お客さんとできる限り遊べるライブにしようと思って、手拍子でコールアンドレスポンスをしてもらったり、その場でジャンプをしてもらったりと、ルールの中でできる楽しみ方を確立できたツアーでした。お客さんとも親和性を深められた、良い時間になりました。
ほりほり 今回からお題を決めずにMCでフリートークをするようにしたんです。LONGMANの良い意味でのユルさを出せたんじゃないかなって。
さわ あと「新しいチャレンジ」の話で言うと、お客さんが声を出せないぶん、(ほりほりさんが)パソコンを使って歓声を出したんです。
ほりほり でももうちょっと練度を上げる必要があるな(笑)。
――少し気が早いんですけど、そのツアーのエネルギーが出るであろう次の作品、ツアーも楽しみですね。
さわ 今作で音源収録したツアーの前に「ライラ」のレコーディングをしているんです。プロデューサーさんに「新しいことにたくさんチャレンジするには今がチャンスだよ!」とアドバイスをいただき、ツアーで色々なチャレンジができて。それよりまた一段階上にあがった私たちを次のツアーで見せられるんじゃないかなと思ってます。
ひらい 前回のツアーで新しいチャレンジはできたんですけど、同じことを繰り返していても駄目だと思うんです。ツアーを経て「コロナ禍でも一体感は出せる」ということや、新しい可能性は感じられたので。研ぎ澄ませて、お客さんが楽しめるように、しっかり考えて、良い空間を作っていきたいなと思っています。
ほりほり 個人的に「もっとライブを良くするためにはどうすれば良いんだろう」って思っていて。ドラムとして何が足りないんだろうと考えていたときに、Dizzy Sunfist(大阪府出身のロックバンド)のライブ映像を観ていたら、コメント欄に「moAiくんのドラムはすごく丁寧だよね」って書いてあって、「これだ!」と(笑)。だから次のツアーに向けて、丁寧にドラムを叩きたいなと思っています。
ひらい アバウトだなぁ(笑)。もう少し詳しくいいすか。
ほりほり (笑)。もうちょっと詳しく言うと、僕は勢いで叩きがちだったので、1音、1音、ムラのない、しっかりとした音にしたいなと思っています。そういう意味でも新しいツアーになるんじゃないかなと。
――今日お話をお伺いしていくなかで、挑戦という言葉がたくさん出てきて。LONGMANのTwitterのプロフィールに、「元気に楽しく新しい音楽に挑戦していきたいという信条でやらせてもらってます」と書いてありましたが、“挑戦”というのはLONGMANにとって、永遠のテーマでもあるのでしょうか?
ひらい そうですね。バンドって新しいことに挑戦して、進化していかないと終わっていくなと思っていて。昨今の情勢的にも。
ほりほり 歩き続けていきたいよね。
ひらい うん。変わりすぎてもお客さんとしては困惑してしまうかもしれないですけど、芯はブレないまま、新しいことに挑戦していきたいなと。自分たち自身もドキドキできるような、ハッとするような音楽が好きですし、それを目指してやっていきたいなと思っています。
さわ いつまでもドキドキ、ワクワクしてたいよね。「音楽が好き」って気持ちをずっと更新していきたいな。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
●リリース情報
LONGMAN ニューEP
「ライラ」
2022年5月4日(水)リリース
価格:¥1,650(税込)
品番:AICL 4089
M1:ライラ
M2:Will(Live at Daikanyama UNIT 20220220)
M3:1919(Live at Daikanyama UNIT 20220220)
M4:WALKING(Live at Daikanyama UNIT 20220220)
M5:Hello Youth(Live at Daikanyama UNIT 20220220)
●ライブ情報
LONGMAN TOUR 2022 “This is Youth”
4月23日(土)熊本 B.9 V2
4月24日(日)福岡 DRUM LOGOS
4月29日(金・祝)広島 セカンド・クラッチ
4月30日(土)岡山 YEBISU YA PRO
5月4日(水・祝)京都 KYOTO MUSE
5月5日(木・祝)大阪 心斎橋 JANUS
5月15日(日)香川 高松 DIME
6月1日(水)宮城 仙台 CLUB JUNK BOX
6月3日(金)神奈川 F.A.D YOKOHAMA
6月5日(日)東京 Spotify O-WEST
6月26日(日)愛知 名古屋 THE BOTTOM LINE
7月2日(土)愛媛 松山 WStudioRED
関連リンク
LONGMAN 公式サイト
https://longman.jp/
LONGMAN 公式Twitter
https://twitter.com/longman_asp
編集部おすすめ