6月15日、EGOISTの10周年イヤー第2弾シングル『Gold』がリリースされる。ボーカル・chellyが楪いのりというキャラクターの歌唱を担当して10年。
現在では作品の枠を飛び出し、VTuber、Vシンガーの先駆けともいえるバーチャルの歌姫となった。そんなchellyにデビューからの10年の歩みや、新曲の制作エピソードについて聞いた。


chellyが振り返るEGOIST の10年
――EGOISTは昨年の11月から10周年イヤーに入っていますが、改めて今の心境としてはいかがですか?

chelly 「もう10年かぁ」みたいなふわっと感というか(笑)。自分のやるべきことというか使命を全うしていたら、いつの間にか随分と時間が経っていたっていう感じですね。でも10年って振り返ってみると、感慨深い気持ちもありますね。

――僕の中でchellyさんはシンガーとして非常に真摯に、1曲1曲に対する集中力で乗り越えてきたという印象があります。

chelly  EGOISTはバンバン曲を出すほうではなかったじゃないですか。だから1曲1曲に重みがあって、挑戦しがいがありましたね。「積み重ねてきた」っていう気持ちがすごく強いなと思いますね。

――改めて10年前のことを振り返ってみるとどんな感じですか?

chelly すべてのことが「はじめまして」だったので、初めてのレコーディングやライブは印象に残っています。特にボイトレとかもなく、学校帰りに初めてのレコーディングをしたりとか(笑)。

――高校生でしたもんね。
ご自身の中で成長を感じられるところはありますか?


chelly 10年あると、人間って変わるものですね(笑)。今でこそこうして自分の気持ちを喋れるようになりましたけど、最初の頃はもう全然、何も言えないみたいな感じだったので、引っ込み思案な部分が少しは改善したかなという感じはありますね。

――でも10年間インタビューをさせていただいて、やはりライブなどの方向性に対してchellyさんの意志が注ぎ込まれていく過程のなかで、言葉としても明確に表現するようになっていったという印象があります。

chelly 最初の頃は何がなんだかわかってなかったんだと思うんです(笑)。でも自分のやるべきことをしっかりと認識するようになってから、徐々に自分の意志を曲やライブに取り入れてもらうことは多くなってきたかなという印象です。それに、ファンの皆さんの力は本当に大きなものだし、支えていただいてるというのを認識しだしてから、曲を出すたびに「喜んでもらえるかな?」っていうのを考えるようになりました。

オーディションで母親が……!?
――それと、これは10周年を迎えるアーティストに恒例で聞いてしまって、いつも困らせる質問なんですけど(笑)、10年間振り返って特に印象に残っていることは何ですか?

chelly そうですね……。活動前のことになるんですけど、オーディションですね。最終審査の時に母親が一緒に来てくれたんですけど、そのときに母親がいきなり歌い出して(笑)。それが自分も印象に残ってるし、その場にいた皆さんにも印象に残っているって言われますね。

――どういうことなんですか、それは(笑)。お母様としてはその場を和ませようと?

chelly 多分そうだと思うんですけど(笑)。
私もすごい緊張していて、借りてきた猫みたいだったんですけど、びっくりして「あなたのオーディションじゃないのですけど」って思った記憶があります(笑)。

――オーディションも色々ありますが、あまり聞いたことがないですね。保護者が歌い出すっていうのは(笑)。

chelly あとは初めてのライブが印象に残っていますね。シンガポールの“AFA13(Anime Festival Asia Singapore 2013)”というイベントで、一緒に出てらっしゃったLiSAさんと裏でお話ししたんです。LiSAさんが、初めてのこの拙い私のライブに対して「楽しかった~!」って。そう言ってくださったことがすごく当時の私にとっては衝撃でした。あの、ライブの申し子みたいな方に褒めていただいたというのが、思い返すとその後の自信に繋がりましたね。そのときは固まってしまって、「ハッ……!」っていう感じだったんですけど(笑)。特殊なライブの形式ではあって、それに対して不安もあったんですけど、背中を押してもらえたように思えた貴重な機会です。

――振り返ってみて、EGOISTのchellyとしてこの楽曲と出会えたことによって何かが変わったという楽曲はありますか?

chelly さっきも言ったように、1曲ごとに重みがあって、どれも成長の機会という感じではあったのですが……。1曲挙げるなら、「名前のない怪物」です。
ギルティクラウン』が終わって、作中で楪いのりは死んでしまったわけなんですけど、そこからまったくの別作品の主題歌もやらせていただくこととになり、「どうしたらいいんだろう」と考えて。これからまた新しいものとして気持ちを入れ替えていくのか、それともこのスタンスを続けていくのか?初めてアーティストとして、自分自身について考えたシングルでもあります。曲的にもすごくチャレンジングな感じで、転機という意味ではこの曲ですね。

――あとこれも聞いてみたかったのですが、今ではVTuberやVシンガーのような存在が当たり前になりましたけれども、圧倒的にEGOISTのほうが早かったし、オリジナルだったと思います。現在のこのような状況を、先駆者としてどのようにご覧になってるか伺いたくて。

chelly 私自身はVTuberってまったくわからないですけど……。先駆け的に言われることが多いみたいですね。同じようなバーチャルになるわけですけど、普段私が楪いのりの姿で喋って配信をしたりすることはないので、似て非なるものみたいな。私自身もライブでMCをやるときに毎回違和感を覚えてるくらいなので……。楪いのりのMCじゃなくていいのかなって?思っていたんですよ。いのりさんにはいのりさんの人格があるし、EGOISTである限り私が歌以外ではあまり前に出たくないんですけど、VTuberさんはどっちかというと、ご本人なんですよね?

――そうですね、中の人とは別人格ではなく、ある意味イコールの存在として活動してますね。

chelly バーチャルになったらなったで人間でいるときにはなかった悩みみたいなものに直面するとは思うんですけどね(笑)。


――まさに先駆者のお言葉ですね(笑)。コロナ禍の時代でもバーチャルな存在なら世界へ向けてライブができたり、EGOISTが示した可能性って大きかったなと思います。

chelly そうだったら嬉しいですね。出てきた当時から技術が発達していて、今では自分が追い越されている感じもしますけど(笑)。

“楪いのりとして歌う”ことの正解
――さて、ここで最新シングルのお話を聞かせていただきたいのですが、今回10枚目のシングルとなる「Gold」も衝撃的でした。chellyさんはこの曲を受け取ったとき、どんな印象を持たれましたか?

chelly いやー、また強い曲が来たなって思いました(笑)。「BANG!!!」に続いてギラギラした感じの曲が来たなあと思ったんですけど、GigaさんとTeddyLoidさんの曲は本当にイメージが掴みやすいので、大変助かるのと同時に、また“いのりちゃん”とのバランスをどうしようかなという問題がありました。

――chellyとして歌唱するのではなく、EGOISTとして歌うからには楪いのりでなければならないというバランスも、やっぱり10年かけて毎回探している感じですか?

chelly そうですね。そこが10年かけても解決しない一番の問題かもしれないです。

――何が面白いって、その答えを知っているのは、おそらくchellyさんしかいないはずなんですよね。

chelly 確かに。

――でもそのchellyさんにも本当の答えがわからないというところが、このEGOISTというユニットの最も興味深く、かつ一番難しい要素なんだろうなと思うんですよ。


chelly だから、楪いのりちゃんのことを考えながら、自分としての表現も入れつつ、あとは待っていてくださっているファンの方がどうしたら楽しんでくれるかな、というのを考えながらやっていますね。今回は過去イチレベルでスキルフルな楽曲になっていて、こういう歌唱スキルを全面に出したものをあまりやる機会がなかったんです。“私として歌うならこう表現する”というのはあるんです。でも、いのりちゃんの歌としてそれをやっていいの? って。最初はそう思ったのですが、ディレクション入れていただいたりしながら、トータルでいいバランスに仕上がったと思います。

――先ほどGigaさんとTeddyLoidさんの楽曲はイメージしやすいというお話がありましたけれど、今回はどういうものを求められていると思われましたか?

chelly 曲調だけでいうと、「BANG!!!」の系譜というか、自分の意志で道を切り開いていく、肩で風を切るイケイケ感が出ているので(笑)、儚い印象よりは強めのEGOISTなのかなっていうのはひしひしと感じてました。私もこんなふうに生きてみたいですよ(笑)。それはマインド的に理解できるんですけど、自分の意志を曲げないで行くってなかなか実践できない生き方ですよね。でも“選べ”“変えろ”“過去を超えろ”とか、全体的に自分に言い聞かせる強い言霊めいたものが並んでるような歌詞だなって思ったんです。それでEGOISTの10年を思い出したりもして。

――EGOISTの歴史は戦いの歴史みたいなところがあって、毎回強い曲を乗り越えてきて、ライブでもプレッシャーの中でお客さんと向き合い、前人未到のライブを展開してきました。そういう戦いを強い言葉で言語化するとこうなるのかなって、ちょっと思ったりもしたんですが。


chelly なるほど……。確かにストンと腑に落ちました。なかなか普段からこんな自信満々には思えないですけれど、マインドとしては持っておきたいですよね、うん。

――ちなみに、今回はディレクションされたのはどなただったんですか?

chelly GigaさんとTeddyLoidさんです。どういう歌唱法かわからないですけど、洋楽にあるような歌詞の切り方やブレスは勉強になりましたし、楽しかったです。

「名前のない怪物」の頃の気持ちに
――今回の楽曲はTVアニメ『ビルディバイド -#FFFFFF- 』OPテーマですが、『ビルディバイド』の作品の印象っていかがですか?

chelly 自分の中でカードゲームっていうものが『遊戯王』で止まっているんですよ(笑)。「今のカードゲームってすごいなー」って感心してますね。今回は女の子2人が主人公で、尊いなぁと思いながら楽しんでいます。

――そして、今回新しいアーティストとしての楪いのりちゃんのイラストができましたけれども、かなりインパクトのある立ち姿ですね。

chelly 立ち姿がかっこいいですよね。一枚だけで絵になるなって思いました。私、ああいう系のファッション好きなんです。スポーティな感じっていうか。立ち姿で強い意志、強い表情を表していて、それも楽曲のイメージとして合ってるなって思いました。

――MVはご覧になっていかがでしたか?

chelly すごい高度なテクニックがいっぱい詰まってますね。自分でも流れてくる歌詞の言葉の強さに圧倒されています。



――今回は「Gold(ANIMAL HACK Remix)」「BANG!!!(M2U Remix)」というRemixも収録されていますが、「BANG!!!」のRemixは引き算のRemixをしている印象があって、原曲よりもchellyさんの歌声の繊細さ、表現の機微がわかりやすいのでびっくりしました。こちらをお聞きになった感想はいかがですか?

chelly たしかに引き算ですね。より鮮明に聴こえる感じになってて、恥ずかしいところでもあるんですけど(笑)。原曲とは違った発見もできる二度美味しい感じになっていると思いますので、ぜひ皆さんに聴いていただきたいですね。

――10周年を経て、今後成し遂げたいことは?

chelly 基本は今までやってきたことをやり抜きつつ、10年間培ってきたことを徐々に放出していけたらいいなと個人的には思っています。ちょうど節目ですし、「名前のない怪物」のときと同じような心境かもしれないですね。これからも頑張ります。

INTERVIEW BY 冨田明宏
TEXT BY 金子光晴

●リリース情報
「Gold」
6月15日発売

【初回生産限定盤(CD+BD)】

品番:VVCL-2066~2067
価格:¥1,870(税込)
※EGOIST 10周年ロゴステッカー封入

【通常盤(CD)】

品番:VVCL-2068
価格:¥1,430(税込)

【ビルディバイド盤(完全生産限定盤/CD+BD+ビルディバイドTCG OP限定プロモーションカード)】

品番:VVCL-2063~2065
価格:¥1,870(税込)

関連リンク
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