「三国志」の孔明が現代でアーティストの軍師に!?そんな異色の設定から飛び出す、笑いと熱い感動が癖になる、話題沸騰中のアニメ『パリピ孔明』でヒロイン・英子の歌声を担当しているのが、変幻自在の歌声で大勢のファンを魅了してきたボーカリスト・96猫。自信初のチャレンジの中で何を見て、考え、感じてきたのかをたっぷりと語ってもらった。英子として歌声に込めた感情――『パリピ孔明』のアニメ、大人気ですね。96猫さんのところにも、かなり大きな反響が届いているのではないでしょうか。率直な話、今のお気持ちはどうですか?96猫 純粋に「嬉しい」気持ちと、「大丈夫かな?」と心配な気持ちがありますね。――心配?96猫 放送される前から、自分の歌が「英子ちゃんの歌声」としてちゃんとやり切れているのか、視聴者の皆さんが思い描くような英子ちゃんの歌声になっているのか、不安に感じていたんです。でもそれと同時に、アニメから自分の歌が響いてくるのが早く見たいような、ワクワクする気持ちもあって。放送が始まってからも、「この話数での英子ちゃんの歌は大丈夫だったかな……?」「……みんな、喜んでくれてるっぽい。良かった!」の繰り返しで、情緒が激しく不安定です(笑)。――元々どういった経緯でこの作品に参加されることになったのでしょうか?96猫 ある収録現場で、「英子役のオーディションを受けてみないか?」とお話をいただいたのが最初のきっかけです。――歌だけではなく、最初は本編の芝居も込みで?96猫 あ、そうです。英子ちゃん役のオーディションには、声優さんに限らず、色々な方が参加していたそうなんです。それで私にも声をかけていただいて。「声優のオーディションはやったことがないですけど、経験させていただけるのであれば……」という感じで、応募して。ありがたいことに、英子ちゃんの歌パートを担当させていただけることになったんです。――作品の第一印象はどうでした?96猫 とても面白かったです!タイトルからは想像できない内容でした。ギャグマンガに近い作品かと思っていたんですが、蓋を開けてみたらとてもエネルギッシュなヒューマンドラマ。キャラクターたちの人間性の部分がしっかりと描かれていて、ストーリーが深くて面白い。一気にハマりました。『パリピ孔明』に出会っていなかったらクラブカルチャーや「三国志」にも触れる機会がなかったですし、こうした作品に出会えて、本当にありがたいです。――歌の収録に入るにあたっては、まず、どんなことを考えましたか?96猫 まず、孔明が歌に感化されて、孔明なりの道……「英子の軍師」としての使命を感じるほどの歌唱をしなければならないなと考えました。すごいプレッシャーでしたね。どうやったら孔明の心に、グサッ!と刺さるような歌声に、自分の歌を落とし込むことができるんだろうか?と。私は元々あまり自信があるタイプではないというか……もちろん、その場その場でちゃんと自分が納得いくものを世に出しているのですが、数年後に聴き返したとき、「まだまだだったな」と感じてしまうことも多いんです。英子ちゃんの歌も、胸を張って「この曲、いいでしょ!」って言えるように歌えているかどうか。そんな不安は、今でもありますね。――いやいや、そんな。刺さるような歌声、英子らしい歌声を、具体的にはどう表現されようとレコーディングに前にはお考えになられました?96猫 英子ちゃんと96猫本人の共通点を探していて、「未熟さ」みたいなものがそうだと思ったんです。英子ちゃんの中にある音楽もまだ完成しきってないし、96猫の音楽もまだまだ、どうしてもゴールが見えていない状況なので、そうした人にある不器用さ、不安定さを、英子ちゃんの持っている真っ直ぐさに落とし込むことで、英子としての歌になるのかな……みたいなことを考えました。――不器用だけど、真っ直ぐな歌声。そうした感情を歌に乗せるのは、いわゆる喜怒哀楽の感情を込めるのとはまた違う努力が求められるのかなと思います。ご苦労はありましたか?96猫 すごい難しくて。特に歌は、メロディが元々ついているじゃないですか。――そこで声のニュアンスが決まってしまう部分もありますよね。96猫 それに沿いながら、さらに自分の考えている感情を歌に落とし込んでいかなければならない。本当に難しいところで、常に課題です。――96猫さんは多彩なボーカルスタイルをお持ちで、一聴して同じ方が歌っているとは思えないくらいの幅があります。曲によって本当に、ガラッと声の感じが変わる。それでいうと、英子の歌声のベースにある声を選ぶのも、考えるところがあったのでは?96猫 ありましたね。最初に録ったときは、どうしても英子ちゃんが「かわいい」イメージが強かったので、自分の中から出せる範囲の最大のかわいらしさみたいなものを表現しながら歌ったんです。でも、ディレクションしてくださる方や、録音に立ち会われたアニメの監督さんから、「もう少しエネルギッシュに、強めな声、突き刺すようなイメージでお願いします」とお話があって。言われてみれば、英子ちゃんはそういうイメージだったと自分も思い直しまして。かわいいんだけど、かわいさが鼻につかない感じを意識して声を決めていきました。そうしたイメージを自分の中で、「じゃあ、地声の高さからこれくらい上げて、かつちょっと声の弱さは強めに出して、張った高い声を維持したまま歌おう」みたいに具体化して、どんな曲でもそれを守るように心がける。自分の癖をいかに削って、英子ちゃんの歌にするかを、ずっと意識していました。2人で1つのキャラクターを完成させる経験――特に思い出深い曲はありますか?96猫 「I’m still alive today」ですね。歌っていて、色んな英子ちゃんを感じられた。アニメで使われるシーンごとに違った感情があって、同じ真っ直ぐさ、不器用さを意識していても、違う気持を込めて歌ったつもりなんです。例えば、七海ちゃん(久遠七海)と一緒に歌うところでは、歌が上手く聞こえるかどうかとか、ニュアンスとか、全部投げ捨てて、「今、隣にいる人と一緒に歌える喜びと、音楽の楽しさ」を前に出す。歌で感情を吐き出す……じゃないですけど、そういうことができたのが、思い出深いです。――8話の銭湯も、9話のラストもエモかったです。映像も素晴らしいですけど、歌声で感情を持っていかれました。物語で描かれる感情とシンクロした歌声となると、英子役の声優の本渡 楓さんの芝居との兼ね合いも難しそうですね。96猫 2人で1つのキャラクターを完成させるようなものですからね。本渡さんの演技で表現されている英子ちゃんの「心」を、歌でどう表現するのが正解なんだろう、逆に歌に対してどういう演技が当て込まれるんだろう、というワクワク感は、自分の普段の音楽では体験できないことだなと思っていました。――そこのすり合わせはどう行われていたんですか?96猫 そこは監督さんがしっかりと、私にも、本渡さんにも英子ちゃんのイメージを伝えてくださっていたんだと思います。感謝しかないです。――ちなみに監督とのやり取りで印象に残っているものはありますか?96猫 歌うときに、そのシーンの流れやニュアンスを絵コンテを見せながら説明してくださっていたんです。そのなかでも、3話の曲前に叫ぶシーンは、「こういう表情で叫びます」と見せていただいて、それにあった叫び方を何パターンか収録したんですね。歌だけじゃなくて、叫ぶところだけでも結構な回数を繰り返して、ニュアンスを調整したのが印象深いです。絵コンテの時点で、もう、表現されている感情がすごかったんですよ。――屋外ライブのところの。96猫 そうです。「ワーッ!」って。――実はこのアニメのそういうシーンがちょっと気になっていて。はっきりと歌っているところは当然96猫さんの声なんですけど、叫ぶところや発声練習、軽く歌を口ずさむときも、基本的に96猫さんの声ですよね?96猫 はい、そうです。――本当に細かいシーンまでありますけど、どうやって収録されたんですか?フルサイズの曲をレコーディングするときに、あわせてシーン合わせのちょっとした歌も録音を?96猫 そういうところもありますし、例えば英子ちゃんがランニングしてて発声したり、ステージの裏で「あー」って声を調整してたり、お風呂場で歌ってるようなシーンみたいなところは、アフレコ現場にちょっとお邪魔させていただいて、映像を見ながら声を当てたりもしていました。――なんと。96猫さんのこの作品での作業量、すごいですね。ちなみにアフレコスタジオはどうでした?96猫 緊張しました!(笑)でも、貴重な経験をさせていただきましたね。実は元々、小学生くらいのときから声優さんを目指していたんです。――それはまた、感慨深いですね。96猫 しかも目指すきっかけになった声優さんのお1人が、置鮎龍太郎さんで。――孔明役の。96猫 そうなんです!そういった方と、声優同士とは別のポジションではあるんですけれどもご一緒できたことが、とにかく嬉しかったですね。エンディングの「気分上々↑↑」のカバーでもご一緒できて、完成した音源で置鮎さんが一緒に歌ってくださっているのを聴くと、「うわー、ここでもまた1つ、夢が叶ってしまった!」と思いました。「気分上々↑↑」はまさに世代というか、青春時代によく触れた曲でもあるので、その意味でも楽しんで歌わせていただきました。――置鮎さんをお好きになったきっかけはなんなんですか?96猫 『テニスの王子様』です。――ああ、手塚部長!96猫 それから『BLEACH』の朽木白哉。もう、ド世代なんですよ(笑)。――それはたまらないですね。素敵な経験をたくさんされた作品だったことが伝わってきました。96猫 そうですね。作品の内容というか、ストーリーに関しても、英子ちゃんはもちろん、KABE(太人)くんや七海ちゃんの姿も、私にはものすごく刺さったんです。特に七海ちゃんが、「音楽で人気になれるから」といって始めたバンドが、自分のやりたいことができない状態で人気が出てしまう。あの状況は、過去に自分も同じような経験をしたことがあるので、とても気持ちが入りました。七海ちゃんは英子ちゃんと出会って自分らしさを解放するんですけど、昔の私にはそれができなかったんです。どうしても流れに流されて。だからアニメを観ていて、「うわ、七海ちゃん、かっこいい!」と思いましたね。――そんなところでも作品にシンクロを。96猫 今は全然、好き勝手にやらせていただいてるんですけどね。当時は未成年だったのもあって、何も正解がわからない状態で、違和感があっても言えなかったんです。――英子ちゃんとして歌いながら、ななみんの気持ちもわかる。96猫 そうなんですよ。だからこそ英子ちゃんが七海ちゃんにかける言葉1つ1つがすごい、グサグサと刺さりました。そうだよな、それでいいんだよなって。この作品には背中を押されるというか、励まされた部分がありますね。――今のお話もそうかもしれませんが、『パリピ孔明』という作品に参加されたことを通じて、アーティストとして新しく手に入れられたと感じていることはありますか?96猫 そうですね……新しく手に入れたものはきっとたくさんあるんですけど、この作品を通して得たもので一番大きいのは、「自分が自分でいていいんだ」と思えたことかもしれません。曲によって声色や歌い方を変えているので、「96猫といえばこの歌い方だよね」というのが、正直、自分の中にはないんです。そのことが気になった時期もあったんですけど、今は「それが96猫なのかな」と思えている。歌の上手さをはじめ、アーティストとしても、人としても、もっともっと精進していかなきゃいけない部分はあるんですけど、活動の仕方というか、やりたいことは今のままで、ブレずにやっていこうと、この作品に関わることを通じて思いましたね。――作品とのシンクロ率が本当に高かったんですね。96猫 音楽が題材なのも大きかったかもしれません。音楽をやっている人なら誰にでも響く内容だと思いますし、音楽と関係がなくても、人生で迷ってる人、くじけそうな人は、みんな「頑張ろう」と思える作品じゃないかなと感じました。なので、ぜひまだ「観たことない」という方は、まず1話だけでもどうか、触れてみてほしいです。そうしたら、きっと気付けば、あっという間に最終話まで見てると思います。――ちなみに、96猫さんはもし叶うなら、英子のように、孔明に横にいてほしいと思いますか?96猫 思います!いてほしい!(笑)……でも、今お世話になっている企業さんだったり、こうして取材に来てくださる皆さんだったり、それ以外にも、私の活動に関わってくださるすべての人が、きっと自分にとっての「孔明」的な存在だと思うんです。導いて、支えてくれて、後悔させたくはないので、自分も頑張らねばという気持ちになれる。だからもう、私にとっての「孔明」はそこにいる……んですけど、やっぱり、もし可能だったら側にいてほしいですね。何も私自身はわからない状態で、なんだかとんでもないことが次々と周りで起きる。素敵ですよね。INTERVIEW & TEXT BY 前田 久●リリース情報TVアニメ「パリピ孔明」VOCAL COLLECTION MEGAMORI!!7月27日(水)発売<収録曲>・Be Crazy For Me・I’m still alive today acoustic ver.・Shooting Star・Make it real・六本木うどん屋(仮)・Find the way・I’m still alive today他、全13曲収録予定。※収録楽曲は放送に併せて随時公開予定TVアニメ「パリピ孔明」EDテーマ「気分上々↑↑」歌:EIKO starring 96猫、諸葛孔明(CV:置鮎龍太郎)、KABE太人(CV:千葉翔也)、久遠七海 starring Lezel発売中価格:¥1,430(税込)TVアニメ「パリピ孔明」オリジナルサウンドトラック6月29日(水)発売価格:¥3,300(税込)<収録内容>1.チキチキバンバン (TV Ver.)2.軍師3.再来の前4.合戦5.悲劇6.団欒7.Enjoy it!8.Elegant and Dainty9.GIRL TALK10.Helloween Party!11.I love to RAVE12.EVERYBODY xxxx V313.Color BADBOY BASS14.WAVE15.TROPICAL FRUIT16.Stealthy Steps17.分析18.Espionage19.対峙20.Crisis Psy21.The Requiem.22.Coercion23.Brain24.ASSEMBLE25.凱旋26.スラッシュスラッシュスラッシュ27.困惑28.Tears29.休息30.Affection31.溢れ出す想い32.夕暮れの空33.憂いのノクターン34.Dream.35.Passing each other.36.回想37.転生38.頂点39.憐憫40.Epilogue41.気分上々↑↑ TV size.※収録内容は変更になる可能性がございます。●作品情報TVアニメ『パリピ孔明』毎週(火)放送中 & 毎週(木)先行配信中【キャスト】月見英子:本渡楓/歌唱.96猫諸葛孔明:置鮎龍太郎KABE太人:千葉翔也久遠七海:山村響/歌唱.Lezelオーナー小林:福島潤【スタッフ】原作:四葉夕卜・小川亮(講談社「ヤングマガジン」連載)監督:本間 修シリーズ構成:米内山陽子キャラクターデザイン:関口可奈味プロップ設定:宮岡真弓、牧野博美美術監督:東 潤一美術設定:藤井祐太色彩設計:江口亜紗美3D監督:市川元成撮影監督:富田喜允編集:髙橋 歩特殊効果:村上正博音響監督:飯田里樹音楽:彦田元気(Hifumi,inc.)音楽制作:エイベックス・ピクチャーズアニメーション制作:P.A.WORKS製作:「パリピ孔明」製作委員会<イントロダクション>あの諸葛孔明が!なぜか渋谷に!!まさかの転生!!!渋谷で出会った月見英子の歌に心を奪われた諸葛孔明は、英子の軍師として仕える。そして・・・。天才軍師の圧倒的無双を誇る知略計略が音楽シーンに新たな伝説を誕生させる。原作はヤングマガジンまで勢力拡大中の「パリピ孔明」を、まさかのP.A.WORKSがアニメ化諸葛孔明役は、三国志のキャラクターを数々と演じてきた置鮎龍太郎。月見英子役は、本渡楓と歌唱パートはネットで絶大なカリスマ性を誇る歌い手96猫によるダブルキャスト。予測不能の畳み掛ける驚きの知略計略。圧倒的な心揺さぶる音楽と歌。溢れる爽快感と止まらない疾走感で贈る、笑えて!エモい!メンタル復活系エナジーエネルギッシュTVアニメが爆誕!Let‘s Party Time.オープニング主題歌「チキチキバンバン」歌:QUEENDOM作詞・作曲:Tarcsi Zoltan編曲:M.O.R(Eurobeat Union)日本語詞:RUCCAエンディング主題歌「気分上々↑↑」歌:EIKO starring 96猫、諸葛孔明(CV:置鮎龍太郎)、KABE太人(CV:千葉翔也)、久遠七海 starring Lezel作詞:hiroko、mitsuyuki miyake作曲:mitsuyuki miyake、日比野元気、Shifo編曲:彦田元気挿入歌情報「Be Crazy For Me」歌:EIKO starring 96猫作詞:Kenn Kato作曲:大西克巳編曲:日比野裕史「Shooting Star」歌:EIKO starring 96猫作詞:leonn作曲:BOUNCEBACK編曲:日比野裕史「UNDERWORLD」歌 :AZALEA(久遠七海 starring Lezel)作詞:kenko-p作曲:ats-編曲:ats-©四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会関連リンク96猫 公式サイトhttps://96neko.jp/TVアニメ「パリピ孔明」公式サイトhttps://paripikoumei-anime.com