声優アーティスト・Machicoが、アーティストデビュー10周年を記念したベストアルバム『10th Anniversary Album -Trajectory-』を7月20日(水)にリリース。新曲として、彼女が敬愛するシドの明希が作編曲を手掛け、自ら作詞を担当したジャジーなロックナンバー「Shall we…?」を収録。
また、インタビューの最後には「Machico 10 BIG NEWS!」と題して、アーティストデビューを果たした2012年から2022年までの間に起こった各年のMachico的BIG NEWSも掲載。ぜひ併せてチェックしてほしい。
目指したのは10周年の足跡でもあり、新しい入口でもある1枚
――今回の『Trajectory』はデビュー10周年を記念したベストアルバムです。数多くの曲の中から、この18曲をどのように選ばれたんでしょうか?
Machico 今回はまず、デビュー曲とアニメの主題歌は全部入れまして。次に過去の各アルバムから自分が作詞した楽曲を優先的に選んで、それ以外の自分が作詞していないアルバム曲は、ライブでファンのみんなが好きだと言ってくれる曲を選びました。例えば「紅花火」は、本当にライブ人気が高くて。主題歌以外でもそういう声をたくさんもらえている曲も選びたかったんですよ。あと「青春オーバードライブ」は、私が「ロックな曲を歌いたい!」と言ったときに作っていただけたロック系のオリジナル曲で、アーティスト活動初期の色んなライブを支えてくれた曲でもあるんです。
――そういった要素も加味して、選択していった。
Machico そうです。
――「青春オーバードライブ」の頃のMachicoさんは、クールな曲が好きというお話をよくされていた記憶があります。
Machico デビュー曲の「Magical Happy Show!」みたいにポップでかわいらしい感じの曲ももちろん好きなんですけど、基本的にはロックが好きなので、当時は「ファンの方のイメージが“キュート”で固まっちゃったらどうしよう?」という自分なりの恐怖心みたいなものがあったみたいで。だから「私、実は、かっこいい曲も歌えるんだぞ!」みたいなアピールをしていた頃だったんです(笑)。あと選曲ではもう1つ、今まで出したアルバム全部から、1曲は選ぶということも心がけました。
――それは、どんな狙いから?
Machico 『Trajectory』を聴いたことをきっかけに、過去の作品にも触れてもらえたらいいな……という気持ちからです。そのアルバムを出した当時の私を知らなかった方が、ほかの曲にも興味を持ってくれるきっかけになるような、新しい入口にもなってくれるアルバムにできたらいいな……ということで。
――選曲の過程で実際に曲を聴きながら当時を振り返っていくと、思い出すこともたくさんあったのでは?
Machico ありました。特に思い出すことが多かったのは、デビュー曲「Magical Happy Show!」ですね。まず、今と歌い方が全然違うんですよ。「声変わりしたかな?」っていうくらい初々しいんです!(笑)でも当時の私の歌い方が全部こうだったかというと、全然そうではなかったんです。そもそも私、倖田來未さんとか宇多田ヒカルさん、あとはBoAさんみたいなハスキー系のかっこいい歌をうたう人が好きで。
――そういう歌声になったのは、なぜだと思われていますか?
Machico “自分の歌声がオリジナルになる”という経験が、初めてだったからだと思います。それまではオリジナルのアーティストさんがいて、その方のマネをして歌えば上手く聴こえたんです。でも自分が本家になるときの表現の仕方が、全然わからなくて。しかも当時は表現の引き出しも、音楽の知識も全然なかったんですよ。ディレクションで何を言われているのかもわからず「とりあえず歌う」という感じでしたし……でも今思えば、1つ1つのことに感動していた、愛おしい記憶たちです。
――緊張もあったでしょうけど、感動も多かった。
Machico そうですね。そもそも「Magical Happy Show!」って初めてレコーディングブースで歌った曲なので、ポップガード1つにも感動していたんです。当時はお金もなかったから、家でマイク処理するときには100円ショップの湯船の垢取りネットを手で持ちながら歌っていたりしたので(笑)、「本物だぁ!」ってなって。なんならレコーディングのときに個人のブースを使うことすらも知らなかったくらいだったんです(笑)。
――例えば、どんなことですか?
Machico わかりやすいところだと、譜面台の置き場所ですね。いっぱいレコーディングをやらせてもらってきたなかで、譜面台が右にあると歌いづらいことに気づいて。今では絶対左側に置くんです。あとボリュームも、私は基本オケをガンガンに流して、オケの中のリズムをとるのが好きだったりとか……あれ?初期の頃って、どういう耳環境で歌ってたんだろう?モニターの調節の仕方とかも全然わからなかったから……写真撮っておけばよかったかなぁ。ただ、何が歌いやすいかもわからなかった時期なので、きっと初期設定のまま歌ったんだと思います。ツマミをいじった記憶も、ほぼないので。
――そういった思い出のほか、ご自分で成長を感じるようなところもありましたか?
Machico そうですね……特に自分が意識していなかった部分で不意打ちの成長を感じたのは、「fantastic dreamer」と「TOMORROW」を聴いたときで。「fantastic dreamer」の前にカバーアルバムを2枚出させていただいたりと結構経験は積んでいたはずだから、そこから歌い方の大きな変化や成長はないかなと思っていたんですよね。でも改めて聴いたら、「Magical Happy Show!」ほどではないにしろ「fantastic dreamer」には初々しさが残っているような気がしたんです(笑)。
――改めて今聴き返したことで、大きな差を感じられた。
Machico そうですね。
――それも改めて感じられた(笑)。
Machico そう(笑)。しかもライブだと、かなりの曲数を歌ったあとに「Everlasting Glory」歌ってからの「ENISHI」だったので、今考えたら恐ろしいセトリだなぁって思います(笑)。でもそれは、「ライブ本編は最新曲で終わりたい」という気持ちもあったし、「Everlasting Glory」は別のライブでラストを飾っているので同じ終わり方にするのは嫌だな……というのもあっての構成だったんですよね。
チャンスを掴む原動力、それは負けん気と丁寧さ
――ただ、その「ENISHI」が終わったときにあっという間のライブに思えましたし、声も最後まで生き生きとしていたところにもすごさも感じました。
Machico 嬉しい……!特に「あっという間だった」と思ってもらえたのが、すごく嬉しいです。今までのライブはアンコールを含めても歌って17~18曲だったんですけど、今回は「20曲以上歌う」というのはマストだったんです。だからこそ今回は、ファンのみんなに3ブロック構成の1ブロックごとを体感早く感じてもらえるように意識して、セトリを組んでいきました。
――それが顕著だったのは、例えばどんな部分だったのでしょうか。
Machico 1ブロック目から挙げるなら、カバー曲メドレーですね。最近知ってくれた方たちには初期の曲はあまり馴染みがないかもしれないけど、それでも全曲ちゃんと印象に残るようにしたかったんです。ただ、デビュー曲だけは知らなくても“デビュー曲”というだけでテンションが上がるものだと思うんですけど、それ以降が難しくて。そこで「カバー曲をメドレーにすれば曲の変化も出るし、一気に何曲も披露できるな」と気づいて、メドレーにすることに決めました。
――たしかに、最近ファンになった方はMachicoさんがアニソンカバーアルバムを出されていたことを知らないかもしれない。
Machico そういう方も、きっと多いと思います。でも曲自体はどれも有名なので、本家を知っていれば楽しんでもらえるかなって。それに、今回選んだ4曲は全部違うジャンルのものにしたので、メドレーの中でも変化をつけられたように感じています。
――同じタイトルを冠したベストアルバムと完全に曲目が一致しているわけではないので、それぞれ違った意図もあったのでは?
Machico 今回、ライブのほうでは勢いを大切にしたかったんですよ。だから「紅花火」も「人気だから入れたいけど、この3ブロックの中だとどういう意味合いの曲になるの?」と考えた結果、入れなかったりしたんです。
――逆にベストアルバムはバラード曲の割合がやや多めなので、じっくり聴いてもらいたい曲を多くされたように思いました。
Machico ライブはライブに特化した曲を、アルバムはアルバムだからこそゆったり聴ける曲を何も考えずに聴いてほしい……という気持ちで並べていったので、そこの違いを意識したつもりはありませんでした。でもたしかに、言われてみればそうだったのかも……?
――あと、ほぼ時系列で並んでいるからこそ感じたことなのかもしれないのですが、Machicoさんってチャンスがきたときに全部的確に撃ち抜いて、またレベルアップして次のチャンスを仕留める……ということを繰り返しているイメージがあって。そうやって頑張り続けられるための、原動力になったものは何なんでしょう?
Machico まず、ずっと大切にしていることは、先輩たちに言われていた「腐らないこと」ですね。自分にとっては、お仕事って常にいただけているというものではなかったから、周りの仕事の多い子たちと自分を比べると絶対に悲しい気持ちにはなるじゃないですか? でも「今いただけるお仕事に自分が丁寧に向き合っていれば、いつか良い結果が出るんじゃないか」という気持ちだけは大切に持って、丁寧に全力を注いでいこう……という姿を、10年間かけてみんなに見てもらえたというのはあるように思います。あとやっぱり、「アイドルマスター ミリオンライブ!」という作品は、私の中ですごく大きなもので。
――声優デビュー作でもありますからね。
Machico そうなんです。それに「アイドルマスター」って、周年の大規模なライブやリリースイベントなどがあって、おかげでソロでは立てない会場で歌う経験もたくさんできたんです。それに、近くにいた同世代の子たちにもすごい子がいるから、そばで見た「この人のここが良いな」というところはとにかく盗もう!という気持ちで、もう……盗みを働いて(笑)。
――盗みを働く(笑)。
Machico 言い方が良くないな(笑)。でも本当に、そういうものを学べる場所がたくさんあったから、それを自分なりに受け取って落とし込んで披露して、それがまたファンの人たちの評価にも繋がって……やればやるほどそのキャラクターのことも好きになってくれるという実感があったんです。それと、「アイドルマスター」を通じて自分の中に色んな気持ちが芽生えたんですよ。私が演じている伊吹 翼ちゃんは天才肌の子なのに、私はデビュー当時にはツーステップも踏めないくらいだった。でも「諦めたくない」という負けん気な性格も相まって、「ダンスもできるようになりたい」と思ったり……。
――「色んな気持ち」ということは、そのほかにも芽生えた想いが?
Machico ありました。アーティストデビューが声優デビューよりも先だったから、「Machicoは歌上手くて当然だよね。だってアーティストだもん」みたいによく言われて。何年経っても“声優”として認めてもらえなかったことが悔しかったんです。だから「あなたたちが認めている声優の方に勝てるくらい、ステージの上でキャラクターとして存在するパフォーマンスをみせてやる!」みたいな、「見返したい」という気持ちもあって。私がキャラソンをステージで歌うときに妥協したくない理由も、そこにあるんですよ。
――そこは、悔しさもエネルギーになった。
Machico はい。もちろんそれは私なりのキャラクターの愛し方がそういう表現だっただけで、ほかの方を否定するわけではないんですけど、単に「そう言ってくる人を見返したい」という気持ちがきっかけだった……ということなんです。
――その想いがあったからこそ多くのものを吸収されていったんでしょうね。
Machico そうかもしれません。あと、昔は稼働が少なかったぶん、個人練習が基本になっていた時期があって。そういうときは長時間スタジオだけ取っていただいて、「あとは自分でやって」という感じだったんです。だからそのなかで、考える癖や自分を研究する癖を、活動初期につけさせてもらいました。そのおかげで、いざお仕事をいただいたときに「ここはライブでパフォーマンスするとき、こうやったらいいんじゃないですか?」ということも言えるようになったから、あの時間はムダじゃなかったんだなって今では思いますね……孤独な時間ではありましたけど(笑)。
――そういうものが土台になって新しい挑戦をする度にさらに惹かれていくのかなと思いますし、今回の新曲「Shall we…?」でもジャジーなロックナンバーという、また新しいジャンルの曲に挑戦されていますね。
Machico 私、元々シドがずっと好きだったので、そもそも明希さんに楽曲提供をOKしていただけたことが本当に驚きでした!制作にあたってリモートで打ち合わせさせていただくなかで、2つのお願いをしまして……。
――どんなお願いか、それぞれお聞きできますか?
Machico まず今回は10周年記念曲だとお伝えしたうえで、「今までロックに特化した曲は歌ってきたけど、ジャジー系の大人っぽいロックにはまだ挑戦したことがないんです」という話になりまして。そこから「シドの中だと、こういうジャジーな楽曲が特に好きで……」と例を挙げつつお話していって、「大人っぽくて、リズムで引っ張っていけるような曲に挑戦したいんです」というお願いをさせていただきました。あともう1つは、「明希さんにお願いさせていただいた以上は、アニメ業界とかを意識せずに明希さんゴリゴリの曲を作ってほしいです!」というお願いをして、結果「Shall we…?」が生まれました。
――打ち合わせ後のデモの段階で、想像を超えてきた部分もかなりあったのでしょうか?
Machico もう「うわ!私の好きなサウンドだ!」ってテンション上がりました!でもすぐ「で、誰が作詞するんでしたっけ?……私かぁーっ!」って気づいて、すごくプレッシャーになっちゃって(笑)。シドの曲は基本的にボーカルのマオさんが作詞をされていて、私自身マオさんの歌詞もすごく好きだからこそ、自分が歌詞を書いて曲を台無しにしないかすごく不安だったんです。でもこうやって憧れの人に曲を書いてもらってたうえに自分が作詞をしてクレジットで並べる機会なんてないし、しかも10周年なんだから「ビビってちゃダメだ!」と思って、一生懸命書きました。
10周年で見事に新たな顔をみせた彼女の、次なる目標とは?
――作詞をするなかで特に強く意識したのは、具体的にはどんなことでしたか?
Machico 今まで歌詞を書くことの多かった明るかったりかわいいポップだったりする曲とは違って、「Shall we…?」は曲を聴いただけでも艶やかなイメージが浮かんできたので、そのイメージに負けない歌詞にしたかったんです。なので何回も何回も聴き直して、女の子が主導権を握っている男女の恋愛を彷彿とさせるようなものにしました。それと同時に、裏側には私とファンの方々の関係性もちょっと散りばめていて。今、ライブでファンのみんなは声が出せないですけど、「心の共鳴し合おうよ」という想いを込めてサビに「共鳴」という言葉を入れてみたりと、ライブでのお互いの関係にも当てはまるような歌詞にしています。
――10周年ライブでは、「曲に引っ張られて、今まで自分の中から出てこなかったようなフレーズが出てきた」とおっしゃっていましたね。
Machico そうなんです。それに、どこか私がシドを大好きだという気持ちが滲み出るような歌詞に、自ずとなっていって(笑)。それもきっと、明希さんが作ってくださった曲だからこそのことなんですよ。だって“鍵をかける 一生”とか、絶対今までの曲では出てこなかったから……これは特に気に入っているフレーズなんですけど(笑)、曲のおかげで自分でも発見できなかった、恋愛観や大人感を出せたように思っています。
――裏テーマも散りばめられるほど作詞の段階からイメージが湧きやすかったとなると、レコーディングでも気持ちを乗せやすかったのでは?
Machico 自分が想像しながら歌詞を書いているぶん、歌いながら情景がより浮かんで、気持ちを作りやすかったです。レコーディングでは明希さんがディレクションしてくださったので、正直緊張で吐きそうにもなりましたけど(笑)、歌い終わる度に「すごく良いよ!」みたいに褒めていただけたことをパワーにして歌っていきました。ただ今回は、実はテイク的には3テイクぐらいしか録ってないんです。
――回数としてはかなり少ないですね。
Machico そうなんです。それはライブ感を想像しながらレコーディングしていったからで。「あえてちょっと巻いちゃったりルーズになったりするような、ライブ感がある歌い方のほうがかっこいいし楽曲の良さも出ると思うから、勢いのまま歌でグイグイ引っ張ってほしい」というお話をいただいて、一気にフルでパンパンパン!と3テイク録って。よっぽど気になるところは部分的にパンチインしましたけど、基本的にはその3テイクの中から選びましたね。
――たしかに、こういう曲だとライブ感があったほうが、音源として聴く側も気持ち良いですし。
Machico そうなんですよね……だから、ものすごく緊張したなぁ。ディレクションも、基本的には1テイク目から「もう全然、これでOK!」みたいに言っていただいて。「勢いとかパワーがすごく感じられるから、逆にあんまりテイクを重ねないほうがいいね」という結論になったんです。
――ということは、苦戦した部分などは今回はあまりなかった?
Machico いえ、元々苦手にしているフェイクが、最初はこの曲でもあまり上手くいかなくて。そういうニュアンスをつけるような部分も全力で歌おうとしちゃって、結果すごくダサく聴こえる歌になっちゃうんです(笑)。
――あらかじめ決まった音階があるように聴こえてしまうというか。
Machico そうなんです。でもこれからライブとかで歌い込んでいくなかで適度に肩の力を抜いた歌い方にして、ニュアンスを生かせるように頑張ります!
――また、今回はMVにもMachicoさんがアイデアを出されての撮影だったとのことですが。
Machico はい。「Shall we…?」は曲自体が大人っぽくてジャジーな感じなので、例えば「口元のアップを入れたい」みたいに大人っぽい描写も入れたいと方向性を決める段階で伝えさせていただいて。あとフィルム感もレトロにしていただきましたし、リズムがしっかりした曲だから音に合わせてテンポよくシーン替えをして、視覚からもリズムを感じられるようにしてほしいというお話もしたし……こんなにMVに口を出したのは、これが初めてです(笑)。
――その結果、今までにないようなカット感のMVができたわけですね。
Machico ただ、今回は初めて私以外の方に出ていただいたので、すごく緊張しちゃって。マイクスタンドで歌うシーンにもお客さん役で入ってくださっていたのに、緊張で全然言葉が出てこなくて、フルコーラス歌ったときには8割以上間違えちゃったんです(笑)。「逆に、どこ使える?」っていうくらいボロボロだったから皆さんにも謝りましたし、そのあと自分にも絶望しちゃって。カメラが回っている間は一応ドヤ顔してましたけど、カットがかかった瞬間、絶対人に見せちゃいけないような落ち込んだ顔をしてたんです(笑)。でもそれがすごく悔しかったので、もし次そういう機会をいただけたら、そういうプレッシャーにも勝てる精神になりたいです。
――さて、『Trajectory』は今までの10年間の足跡と新しい顔の両方を感じられる作品になりました。そんな作品を経てもちろん活動は続いていくわけですが、今のMachicoさんは、今後どんな声優アーティストになっていきたいと思われていますか?
Machico まず声優としては、私自身元々海外のアニメがすごく好きなので、そういう自分がアニメを好きになった原点のような作品の吹き替えを担当してみたいです。あとは、やっぱりディズニー作品に出たい!(笑)ずっと夢なので。アーティスト活動でも、引き続き色んな楽曲を歌っていきたいです。今はありがたいことに爽やか系や大人っぽいイメージがついているので、逆にかわいい系の……少女マンガ的な、キュンとするような曲も歌ってみたいです。
――となると、原点回帰のような形になりますね。
Machico たしかに!踊りながらかわいい曲を歌ったり、それをアニメ主題歌として担当してみたい気持ちもあるので、ジャンルに囚われずに色んなことにどんどん挑戦していきたいです。……ジャンルに囚れないことといえば、先日初めて出させていただいた舞台もそうで。最初は体を使って表現することへの恐怖心もあったんですけど、演出家さんをはじめ周りの方々に本当に恵まれたおかげで、すごく楽しかったんですよ。だから機会があれば舞台にも今後また挑戦して、色々な形での表現ができる人間になりたいです!
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
★「Machico 10 BIG NEWS!」
2012年:Machicoとなる!
2013年:広島から東京へ~はじめての独り暮らし~
2014年:エセ制服を卒業。
2015年:占いで「ショート」にすると開運し「青」が今後キーになってくると教わる。
2016年:Machico、ショートヘアになる!
2017年:上京してずっと住んでいた家から次の更新で引っ越そうと決心する。
2018年:Machico、金髪になる!
2019年:初めて東京で年を越す
2020年:憧れのプリキュアシンガーになれた!
2021年:自分でもわからなくなるくらい髪色が変わる
2022年:Machico10さいになりましたあ☆彡
●リリース情報
Machico
『10th Anniversary Album -Trajectory-』
7月20日(水)発売
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:COZX-1930~1
価格:¥4,400(税込)
【通常盤(CD)】
品番:COCX-41809
価格:¥3,300(税込)
<CD>
01. Magical Happy Show!《PCゲーム「すぴぱら」- Alice the magical conductor‐より》
作詞:酒井伸和 作曲・編曲:天門
02. 青春オーバードライブ《アルバム「COLORSII -RML-」より》
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:あらケン
03. 禁断の運命《「ゲームRE:VICE[D]」より》
作詞:トベタ・バジュン 作曲・編曲:中村祐介
04. 星屑プリンス《アルバム「Ambitious*」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:エンドウ. (GEEKS)
05. 花音《アルバム「Ambitious*」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:水口浩次
06. fantastic dreamer《TVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』より》
作詞・作曲・編曲:園田智也
07. 勇気のつばさ《TVアニメ『12歳。』より》
作詞:柚木美祐 作曲:池毅 編曲:岩崎元是
08. TOMORROW《TVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!2』より》
作詞:桜アス恵(TRYTONELABO) 作曲・編曲:岡野裕次郎(TRYTONELABO)
09. ココロメロディー《アルバム「SOL」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:園田智也
10. 紅花火《アルバム「SOL」より》
作詞:森由里子 作曲・編曲:内海孝彰(TRYTONELABO)
11. コレカラ《TVアニメ『りゅうおうのおしごと!』より》
作詞:森 由里子 作曲・編曲:馬渕直純
12. 1ミリ Symphony 《映画『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』より》
作詞:高橋久美子、多保孝一 作曲・編曲:多保孝一、UTA
13. ピンクトルマリン《アルバム「マチビトサガシ」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:八王子P
14. Everlasting Glory《アルバム「マチビトサガシ」より》
作詞:Sally#Cinnamon (Heavenstamp) 作曲・編曲:多保孝一、D&H
15. ENISHI《TVアニメ『幻想三國誌 -天元霊心記-』より》
作詞:ミズノゲンキ 作曲・編曲:睦月周平
16. Happy Magic《「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」より》
作詞・作曲・編曲:佐藤厚仁(Dream Monster)
17. ミライロケット《アルバム「COLORSII -RML-」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:岩瀬聡志
18. Shall we…?《アーティストデビュー10周年記念楽曲 》
作詞:Machico 作曲・編曲:御恵明希(シド)
<Blu-ray>
01. fantastic dreamer Music Video
02. 勇気のつばさ Music Video
03. TOMORROW Music Video
04. OVER HEAT Music Video
05. コレカラ Music Video
06. 1ミリ Symphony Music Video
07. Everlasting Glory Music Video
08. ENISHI Lyric Video
09. Shall we…? Music Video
10. Shall we…? メイキング映像
関連リンク
Machicoオフィシャルサイト
http://machi.co/
Machico音楽情報サイト
https://columbia.jp/machico/
さらに人気のアニメ主題歌はもちろん、デビュー曲やアルバム収録の自作詞曲など全18曲を収めている。本稿では今年5月に開催された“Machico 10th Annivesary Live ~Trajectory~”の裏話も交えつつ、本作や彼女の10年間の歩みについて存分に語ってもらった。
また、インタビューの最後には「Machico 10 BIG NEWS!」と題して、アーティストデビューを果たした2012年から2022年までの間に起こった各年のMachico的BIG NEWSも掲載。ぜひ併せてチェックしてほしい。
目指したのは10周年の足跡でもあり、新しい入口でもある1枚
――今回の『Trajectory』はデビュー10周年を記念したベストアルバムです。数多くの曲の中から、この18曲をどのように選ばれたんでしょうか?
Machico 今回はまず、デビュー曲とアニメの主題歌は全部入れまして。次に過去の各アルバムから自分が作詞した楽曲を優先的に選んで、それ以外の自分が作詞していないアルバム曲は、ライブでファンのみんなが好きだと言ってくれる曲を選びました。例えば「紅花火」は、本当にライブ人気が高くて。主題歌以外でもそういう声をたくさんもらえている曲も選びたかったんですよ。あと「青春オーバードライブ」は、私が「ロックな曲を歌いたい!」と言ったときに作っていただけたロック系のオリジナル曲で、アーティスト活動初期の色んなライブを支えてくれた曲でもあるんです。
――そういった要素も加味して、選択していった。
Machico そうです。
曲自体にもすごく勢いがあり、ライブでよく自分のスイッチを入れてもらっていたりもしていたので。
――「青春オーバードライブ」の頃のMachicoさんは、クールな曲が好きというお話をよくされていた記憶があります。
Machico デビュー曲の「Magical Happy Show!」みたいにポップでかわいらしい感じの曲ももちろん好きなんですけど、基本的にはロックが好きなので、当時は「ファンの方のイメージが“キュート”で固まっちゃったらどうしよう?」という自分なりの恐怖心みたいなものがあったみたいで。だから「私、実は、かっこいい曲も歌えるんだぞ!」みたいなアピールをしていた頃だったんです(笑)。あと選曲ではもう1つ、今まで出したアルバム全部から、1曲は選ぶということも心がけました。
――それは、どんな狙いから?
Machico 『Trajectory』を聴いたことをきっかけに、過去の作品にも触れてもらえたらいいな……という気持ちからです。そのアルバムを出した当時の私を知らなかった方が、ほかの曲にも興味を持ってくれるきっかけになるような、新しい入口にもなってくれるアルバムにできたらいいな……ということで。
――選曲の過程で実際に曲を聴きながら当時を振り返っていくと、思い出すこともたくさんあったのでは?
Machico ありました。特に思い出すことが多かったのは、デビュー曲「Magical Happy Show!」ですね。まず、今と歌い方が全然違うんですよ。「声変わりしたかな?」っていうくらい初々しいんです!(笑)でも当時の私の歌い方が全部こうだったかというと、全然そうではなかったんです。そもそも私、倖田來未さんとか宇多田ヒカルさん、あとはBoAさんみたいなハスキー系のかっこいい歌をうたう人が好きで。
だからプライベートでは、そういう歌い方が主だったんです。でも「Magical Happy Show!」だけは、「真っ直ぐにも程がある」みたいな歌声なんですよ。
――そういう歌声になったのは、なぜだと思われていますか?
Machico “自分の歌声がオリジナルになる”という経験が、初めてだったからだと思います。それまではオリジナルのアーティストさんがいて、その方のマネをして歌えば上手く聴こえたんです。でも自分が本家になるときの表現の仕方が、全然わからなくて。しかも当時は表現の引き出しも、音楽の知識も全然なかったんですよ。ディレクションで何を言われているのかもわからず「とりあえず歌う」という感じでしたし……でも今思えば、1つ1つのことに感動していた、愛おしい記憶たちです。
――緊張もあったでしょうけど、感動も多かった。
Machico そうですね。そもそも「Magical Happy Show!」って初めてレコーディングブースで歌った曲なので、ポップガード1つにも感動していたんです。当時はお金もなかったから、家でマイク処理するときには100円ショップの湯船の垢取りネットを手で持ちながら歌っていたりしたので(笑)、「本物だぁ!」ってなって。なんならレコーディングのときに個人のブースを使うことすらも知らなかったくらいだったんです(笑)。
でも、それからだんだん「自分はどういうレコーディング環境が好きなのか?」が、わかっていくようになって。
――例えば、どんなことですか?
Machico わかりやすいところだと、譜面台の置き場所ですね。いっぱいレコーディングをやらせてもらってきたなかで、譜面台が右にあると歌いづらいことに気づいて。今では絶対左側に置くんです。あとボリュームも、私は基本オケをガンガンに流して、オケの中のリズムをとるのが好きだったりとか……あれ?初期の頃って、どういう耳環境で歌ってたんだろう?モニターの調節の仕方とかも全然わからなかったから……写真撮っておけばよかったかなぁ。ただ、何が歌いやすいかもわからなかった時期なので、きっと初期設定のまま歌ったんだと思います。ツマミをいじった記憶も、ほぼないので。
――そういった思い出のほか、ご自分で成長を感じるようなところもありましたか?
Machico そうですね……特に自分が意識していなかった部分で不意打ちの成長を感じたのは、「fantastic dreamer」と「TOMORROW」を聴いたときで。「fantastic dreamer」の前にカバーアルバムを2枚出させていただいたりと結構経験は積んでいたはずだから、そこから歌い方の大きな変化や成長はないかなと思っていたんですよね。でも改めて聴いたら、「Magical Happy Show!」ほどではないにしろ「fantastic dreamer」には初々しさが残っているような気がしたんです(笑)。
――改めて今聴き返したことで、大きな差を感じられた。
Machico そうですね。
2期も担当させてもらったということで、作品への理解度が上がったというのもあるのかもしれないですけど。あとアルバムの中盤には爽やか系の曲が並んだり、「勇気のつばさ」みたいなバラードもありますけど、後半には「Everlasting Glory」とか「ENISHI」みたいな歌い上げる系のバラードもあって。自分でも「そういう曲も歌えるようになったんだねぇ」って、嬉しくなりました。ただ、10周年のライブで久しぶりに「Everlasting Glory」を歌ったら、「むっず!」って思いました(笑)。
――それも改めて感じられた(笑)。
Machico そう(笑)。しかもライブだと、かなりの曲数を歌ったあとに「Everlasting Glory」歌ってからの「ENISHI」だったので、今考えたら恐ろしいセトリだなぁって思います(笑)。でもそれは、「ライブ本編は最新曲で終わりたい」という気持ちもあったし、「Everlasting Glory」は別のライブでラストを飾っているので同じ終わり方にするのは嫌だな……というのもあっての構成だったんですよね。
チャンスを掴む原動力、それは負けん気と丁寧さ
――ただ、その「ENISHI」が終わったときにあっという間のライブに思えましたし、声も最後まで生き生きとしていたところにもすごさも感じました。
Machico 嬉しい……!特に「あっという間だった」と思ってもらえたのが、すごく嬉しいです。今までのライブはアンコールを含めても歌って17~18曲だったんですけど、今回は「20曲以上歌う」というのはマストだったんです。だからこそ今回は、ファンのみんなに3ブロック構成の1ブロックごとを体感早く感じてもらえるように意識して、セトリを組んでいきました。
――それが顕著だったのは、例えばどんな部分だったのでしょうか。
Machico 1ブロック目から挙げるなら、カバー曲メドレーですね。最近知ってくれた方たちには初期の曲はあまり馴染みがないかもしれないけど、それでも全曲ちゃんと印象に残るようにしたかったんです。ただ、デビュー曲だけは知らなくても“デビュー曲”というだけでテンションが上がるものだと思うんですけど、それ以降が難しくて。そこで「カバー曲をメドレーにすれば曲の変化も出るし、一気に何曲も披露できるな」と気づいて、メドレーにすることに決めました。
――たしかに、最近ファンになった方はMachicoさんがアニソンカバーアルバムを出されていたことを知らないかもしれない。
Machico そういう方も、きっと多いと思います。でも曲自体はどれも有名なので、本家を知っていれば楽しんでもらえるかなって。それに、今回選んだ4曲は全部違うジャンルのものにしたので、メドレーの中でも変化をつけられたように感じています。
――同じタイトルを冠したベストアルバムと完全に曲目が一致しているわけではないので、それぞれ違った意図もあったのでは?
Machico 今回、ライブのほうでは勢いを大切にしたかったんですよ。だから「紅花火」も「人気だから入れたいけど、この3ブロックの中だとどういう意味合いの曲になるの?」と考えた結果、入れなかったりしたんです。
――逆にベストアルバムはバラード曲の割合がやや多めなので、じっくり聴いてもらいたい曲を多くされたように思いました。
Machico ライブはライブに特化した曲を、アルバムはアルバムだからこそゆったり聴ける曲を何も考えずに聴いてほしい……という気持ちで並べていったので、そこの違いを意識したつもりはありませんでした。でもたしかに、言われてみればそうだったのかも……?
――あと、ほぼ時系列で並んでいるからこそ感じたことなのかもしれないのですが、Machicoさんってチャンスがきたときに全部的確に撃ち抜いて、またレベルアップして次のチャンスを仕留める……ということを繰り返しているイメージがあって。そうやって頑張り続けられるための、原動力になったものは何なんでしょう?
Machico まず、ずっと大切にしていることは、先輩たちに言われていた「腐らないこと」ですね。自分にとっては、お仕事って常にいただけているというものではなかったから、周りの仕事の多い子たちと自分を比べると絶対に悲しい気持ちにはなるじゃないですか? でも「今いただけるお仕事に自分が丁寧に向き合っていれば、いつか良い結果が出るんじゃないか」という気持ちだけは大切に持って、丁寧に全力を注いでいこう……という姿を、10年間かけてみんなに見てもらえたというのはあるように思います。あとやっぱり、「アイドルマスター ミリオンライブ!」という作品は、私の中ですごく大きなもので。
――声優デビュー作でもありますからね。
Machico そうなんです。それに「アイドルマスター」って、周年の大規模なライブやリリースイベントなどがあって、おかげでソロでは立てない会場で歌う経験もたくさんできたんです。それに、近くにいた同世代の子たちにもすごい子がいるから、そばで見た「この人のここが良いな」というところはとにかく盗もう!という気持ちで、もう……盗みを働いて(笑)。
――盗みを働く(笑)。
Machico 言い方が良くないな(笑)。でも本当に、そういうものを学べる場所がたくさんあったから、それを自分なりに受け取って落とし込んで披露して、それがまたファンの人たちの評価にも繋がって……やればやるほどそのキャラクターのことも好きになってくれるという実感があったんです。それと、「アイドルマスター」を通じて自分の中に色んな気持ちが芽生えたんですよ。私が演じている伊吹 翼ちゃんは天才肌の子なのに、私はデビュー当時にはツーステップも踏めないくらいだった。でも「諦めたくない」という負けん気な性格も相まって、「ダンスもできるようになりたい」と思ったり……。
――「色んな気持ち」ということは、そのほかにも芽生えた想いが?
Machico ありました。アーティストデビューが声優デビューよりも先だったから、「Machicoは歌上手くて当然だよね。だってアーティストだもん」みたいによく言われて。何年経っても“声優”として認めてもらえなかったことが悔しかったんです。だから「あなたたちが認めている声優の方に勝てるくらい、ステージの上でキャラクターとして存在するパフォーマンスをみせてやる!」みたいな、「見返したい」という気持ちもあって。私がキャラソンをステージで歌うときに妥協したくない理由も、そこにあるんですよ。
――そこは、悔しさもエネルギーになった。
Machico はい。もちろんそれは私なりのキャラクターの愛し方がそういう表現だっただけで、ほかの方を否定するわけではないんですけど、単に「そう言ってくる人を見返したい」という気持ちがきっかけだった……ということなんです。
――その想いがあったからこそ多くのものを吸収されていったんでしょうね。
Machico そうかもしれません。あと、昔は稼働が少なかったぶん、個人練習が基本になっていた時期があって。そういうときは長時間スタジオだけ取っていただいて、「あとは自分でやって」という感じだったんです。だからそのなかで、考える癖や自分を研究する癖を、活動初期につけさせてもらいました。そのおかげで、いざお仕事をいただいたときに「ここはライブでパフォーマンスするとき、こうやったらいいんじゃないですか?」ということも言えるようになったから、あの時間はムダじゃなかったんだなって今では思いますね……孤独な時間ではありましたけど(笑)。
――そういうものが土台になって新しい挑戦をする度にさらに惹かれていくのかなと思いますし、今回の新曲「Shall we…?」でもジャジーなロックナンバーという、また新しいジャンルの曲に挑戦されていますね。
Machico 私、元々シドがずっと好きだったので、そもそも明希さんに楽曲提供をOKしていただけたことが本当に驚きでした!制作にあたってリモートで打ち合わせさせていただくなかで、2つのお願いをしまして……。
――どんなお願いか、それぞれお聞きできますか?
Machico まず今回は10周年記念曲だとお伝えしたうえで、「今までロックに特化した曲は歌ってきたけど、ジャジー系の大人っぽいロックにはまだ挑戦したことがないんです」という話になりまして。そこから「シドの中だと、こういうジャジーな楽曲が特に好きで……」と例を挙げつつお話していって、「大人っぽくて、リズムで引っ張っていけるような曲に挑戦したいんです」というお願いをさせていただきました。あともう1つは、「明希さんにお願いさせていただいた以上は、アニメ業界とかを意識せずに明希さんゴリゴリの曲を作ってほしいです!」というお願いをして、結果「Shall we…?」が生まれました。
――打ち合わせ後のデモの段階で、想像を超えてきた部分もかなりあったのでしょうか?
Machico もう「うわ!私の好きなサウンドだ!」ってテンション上がりました!でもすぐ「で、誰が作詞するんでしたっけ?……私かぁーっ!」って気づいて、すごくプレッシャーになっちゃって(笑)。シドの曲は基本的にボーカルのマオさんが作詞をされていて、私自身マオさんの歌詞もすごく好きだからこそ、自分が歌詞を書いて曲を台無しにしないかすごく不安だったんです。でもこうやって憧れの人に曲を書いてもらってたうえに自分が作詞をしてクレジットで並べる機会なんてないし、しかも10周年なんだから「ビビってちゃダメだ!」と思って、一生懸命書きました。
10周年で見事に新たな顔をみせた彼女の、次なる目標とは?
――作詞をするなかで特に強く意識したのは、具体的にはどんなことでしたか?
Machico 今まで歌詞を書くことの多かった明るかったりかわいいポップだったりする曲とは違って、「Shall we…?」は曲を聴いただけでも艶やかなイメージが浮かんできたので、そのイメージに負けない歌詞にしたかったんです。なので何回も何回も聴き直して、女の子が主導権を握っている男女の恋愛を彷彿とさせるようなものにしました。それと同時に、裏側には私とファンの方々の関係性もちょっと散りばめていて。今、ライブでファンのみんなは声が出せないですけど、「心の共鳴し合おうよ」という想いを込めてサビに「共鳴」という言葉を入れてみたりと、ライブでのお互いの関係にも当てはまるような歌詞にしています。
――10周年ライブでは、「曲に引っ張られて、今まで自分の中から出てこなかったようなフレーズが出てきた」とおっしゃっていましたね。
Machico そうなんです。それに、どこか私がシドを大好きだという気持ちが滲み出るような歌詞に、自ずとなっていって(笑)。それもきっと、明希さんが作ってくださった曲だからこそのことなんですよ。だって“鍵をかける 一生”とか、絶対今までの曲では出てこなかったから……これは特に気に入っているフレーズなんですけど(笑)、曲のおかげで自分でも発見できなかった、恋愛観や大人感を出せたように思っています。
――裏テーマも散りばめられるほど作詞の段階からイメージが湧きやすかったとなると、レコーディングでも気持ちを乗せやすかったのでは?
Machico 自分が想像しながら歌詞を書いているぶん、歌いながら情景がより浮かんで、気持ちを作りやすかったです。レコーディングでは明希さんがディレクションしてくださったので、正直緊張で吐きそうにもなりましたけど(笑)、歌い終わる度に「すごく良いよ!」みたいに褒めていただけたことをパワーにして歌っていきました。ただ今回は、実はテイク的には3テイクぐらいしか録ってないんです。
――回数としてはかなり少ないですね。
Machico そうなんです。それはライブ感を想像しながらレコーディングしていったからで。「あえてちょっと巻いちゃったりルーズになったりするような、ライブ感がある歌い方のほうがかっこいいし楽曲の良さも出ると思うから、勢いのまま歌でグイグイ引っ張ってほしい」というお話をいただいて、一気にフルでパンパンパン!と3テイク録って。よっぽど気になるところは部分的にパンチインしましたけど、基本的にはその3テイクの中から選びましたね。
――たしかに、こういう曲だとライブ感があったほうが、音源として聴く側も気持ち良いですし。
Machico そうなんですよね……だから、ものすごく緊張したなぁ。ディレクションも、基本的には1テイク目から「もう全然、これでOK!」みたいに言っていただいて。「勢いとかパワーがすごく感じられるから、逆にあんまりテイクを重ねないほうがいいね」という結論になったんです。
――ということは、苦戦した部分などは今回はあまりなかった?
Machico いえ、元々苦手にしているフェイクが、最初はこの曲でもあまり上手くいかなくて。そういうニュアンスをつけるような部分も全力で歌おうとしちゃって、結果すごくダサく聴こえる歌になっちゃうんです(笑)。
――あらかじめ決まった音階があるように聴こえてしまうというか。
Machico そうなんです。でもこれからライブとかで歌い込んでいくなかで適度に肩の力を抜いた歌い方にして、ニュアンスを生かせるように頑張ります!
――また、今回はMVにもMachicoさんがアイデアを出されての撮影だったとのことですが。
Machico はい。「Shall we…?」は曲自体が大人っぽくてジャジーな感じなので、例えば「口元のアップを入れたい」みたいに大人っぽい描写も入れたいと方向性を決める段階で伝えさせていただいて。あとフィルム感もレトロにしていただきましたし、リズムがしっかりした曲だから音に合わせてテンポよくシーン替えをして、視覚からもリズムを感じられるようにしてほしいというお話もしたし……こんなにMVに口を出したのは、これが初めてです(笑)。
――その結果、今までにないようなカット感のMVができたわけですね。
Machico ただ、今回は初めて私以外の方に出ていただいたので、すごく緊張しちゃって。マイクスタンドで歌うシーンにもお客さん役で入ってくださっていたのに、緊張で全然言葉が出てこなくて、フルコーラス歌ったときには8割以上間違えちゃったんです(笑)。「逆に、どこ使える?」っていうくらいボロボロだったから皆さんにも謝りましたし、そのあと自分にも絶望しちゃって。カメラが回っている間は一応ドヤ顔してましたけど、カットがかかった瞬間、絶対人に見せちゃいけないような落ち込んだ顔をしてたんです(笑)。でもそれがすごく悔しかったので、もし次そういう機会をいただけたら、そういうプレッシャーにも勝てる精神になりたいです。
――さて、『Trajectory』は今までの10年間の足跡と新しい顔の両方を感じられる作品になりました。そんな作品を経てもちろん活動は続いていくわけですが、今のMachicoさんは、今後どんな声優アーティストになっていきたいと思われていますか?
Machico まず声優としては、私自身元々海外のアニメがすごく好きなので、そういう自分がアニメを好きになった原点のような作品の吹き替えを担当してみたいです。あとは、やっぱりディズニー作品に出たい!(笑)ずっと夢なので。アーティスト活動でも、引き続き色んな楽曲を歌っていきたいです。今はありがたいことに爽やか系や大人っぽいイメージがついているので、逆にかわいい系の……少女マンガ的な、キュンとするような曲も歌ってみたいです。
――となると、原点回帰のような形になりますね。
Machico たしかに!踊りながらかわいい曲を歌ったり、それをアニメ主題歌として担当してみたい気持ちもあるので、ジャンルに囚われずに色んなことにどんどん挑戦していきたいです。……ジャンルに囚れないことといえば、先日初めて出させていただいた舞台もそうで。最初は体を使って表現することへの恐怖心もあったんですけど、演出家さんをはじめ周りの方々に本当に恵まれたおかげで、すごく楽しかったんですよ。だから機会があれば舞台にも今後また挑戦して、色々な形での表現ができる人間になりたいです!
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
★「Machico 10 BIG NEWS!」
2012年:Machicoとなる!
2013年:広島から東京へ~はじめての独り暮らし~
2014年:エセ制服を卒業。
2015年:占いで「ショート」にすると開運し「青」が今後キーになってくると教わる。
2016年:Machico、ショートヘアになる!
2017年:上京してずっと住んでいた家から次の更新で引っ越そうと決心する。
2018年:Machico、金髪になる!
2019年:初めて東京で年を越す
2020年:憧れのプリキュアシンガーになれた!
2021年:自分でもわからなくなるくらい髪色が変わる
2022年:Machico10さいになりましたあ☆彡
●リリース情報
Machico
『10th Anniversary Album -Trajectory-』
7月20日(水)発売
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:COZX-1930~1
価格:¥4,400(税込)
【通常盤(CD)】
品番:COCX-41809
価格:¥3,300(税込)
<CD>
01. Magical Happy Show!《PCゲーム「すぴぱら」- Alice the magical conductor‐より》
作詞:酒井伸和 作曲・編曲:天門
02. 青春オーバードライブ《アルバム「COLORSII -RML-」より》
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:あらケン
03. 禁断の運命《「ゲームRE:VICE[D]」より》
作詞:トベタ・バジュン 作曲・編曲:中村祐介
04. 星屑プリンス《アルバム「Ambitious*」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:エンドウ. (GEEKS)
05. 花音《アルバム「Ambitious*」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:水口浩次
06. fantastic dreamer《TVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』より》
作詞・作曲・編曲:園田智也
07. 勇気のつばさ《TVアニメ『12歳。』より》
作詞:柚木美祐 作曲:池毅 編曲:岩崎元是
08. TOMORROW《TVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!2』より》
作詞:桜アス恵(TRYTONELABO) 作曲・編曲:岡野裕次郎(TRYTONELABO)
09. ココロメロディー《アルバム「SOL」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:園田智也
10. 紅花火《アルバム「SOL」より》
作詞:森由里子 作曲・編曲:内海孝彰(TRYTONELABO)
11. コレカラ《TVアニメ『りゅうおうのおしごと!』より》
作詞:森 由里子 作曲・編曲:馬渕直純
12. 1ミリ Symphony 《映画『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』より》
作詞:高橋久美子、多保孝一 作曲・編曲:多保孝一、UTA
13. ピンクトルマリン《アルバム「マチビトサガシ」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:八王子P
14. Everlasting Glory《アルバム「マチビトサガシ」より》
作詞:Sally#Cinnamon (Heavenstamp) 作曲・編曲:多保孝一、D&H
15. ENISHI《TVアニメ『幻想三國誌 -天元霊心記-』より》
作詞:ミズノゲンキ 作曲・編曲:睦月周平
16. Happy Magic《「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」より》
作詞・作曲・編曲:佐藤厚仁(Dream Monster)
17. ミライロケット《アルバム「COLORSII -RML-」より》
作詞:Machico 作曲・編曲:岩瀬聡志
18. Shall we…?《アーティストデビュー10周年記念楽曲 》
作詞:Machico 作曲・編曲:御恵明希(シド)
<Blu-ray>
01. fantastic dreamer Music Video
02. 勇気のつばさ Music Video
03. TOMORROW Music Video
04. OVER HEAT Music Video
05. コレカラ Music Video
06. 1ミリ Symphony Music Video
07. Everlasting Glory Music Video
08. ENISHI Lyric Video
09. Shall we…? Music Video
10. Shall we…? メイキング映像
関連リンク
Machicoオフィシャルサイト
http://machi.co/
Machico音楽情報サイト
https://columbia.jp/machico/
編集部おすすめ