7月31日、Billboard Live YOKOHAMAにて“大橋彩香1st Acoustic Live「Lumière et Étoile」”が開催。昨年末リリースの『Lumière』や今年4月リリースの『Étoile』といった2枚のアコースティックミニアルバムを引っ提げて行った念願のアコースティックライブは、それらに結びつくような演出も織り交ぜつつ、1人のシンガーとしての堂々たるライブパフォーマンスを、高い歌唱表現力をもって魅せてくれた。
アコースティックアレンジならではの表現を、ふんだんに盛り込んだライブに
まずはバンドメンバーがステージに登場。青の光がステージを彩り、バンドメンバーによるinterlude用にアレンジされた「Esprit De Lumière」のインストが演奏されるなか、「Étoile」のMVを想起させる本を抱えながらステージに大橋が登場。その本を開くと、開いた本のページからは光が放たれ、まるで彼女が暗闇に光を灯すかのような構図に。
そして深い一礼ののち椅子に腰掛けると、その「Esprit De Lumière」をそっと優しく、会場内の観客と視線を交わしつつ歌い始めてライブがスタート。サビではステージがより明るくなり、大橋の表情も楽曲とその演出の両方に連動するかのように晴れやかさを増す。同時に歌声を下支えするような力感も少々加えつつ、アコースティックならではの演奏にもしっかりマッチさせると、終盤では未来へと飛び立っていくような姿をイメージさせる伸びやかな歌声を響かせて最高のスタートを決める。そこからもう1曲、未来を見据える曲「明日の風よ」へ。よく“苦手”と自称するファルセットをここでは巧みに駆使し、ビブラートのかけ方も含めて優しさやおおらかさを生み出す。2-Bメロでの一瞬の引き方など、スローなアレンジならではの細かいこだわりを歌声に詰め込む。そのうえで、サビの中でも大サビだけは地声を貫いて歌い上げたところからも、またこのタイミングでの新たな始まりを示唆しているように感じさせられた。
2曲歌ってからのMCパートでは「肩の力を抜いてリラックスして楽しんでいただければ」と呼びかけ、バンドメンバーの紹介を挟みそのまま3曲目「ダイスキ。」へ。
それとは若干表情を変化させてきたのが、「ワガママMIRROR HEART」。この曲もまた、冒頭フレーズラストのロングトーンを切なげに尻下がり気味に歌ったり、特に2番以降は感情をふんだんに乗せてメロディラインからわざと少しだけはみ出してみたりと、アコースティックライブだからこそみせられる表現を多数盛り込んでいく。それでいて、Bメロからサビにかけてのクレッシェンド具合や落ちサビでキュンとさせてからの終盤のパワフルさなど、普段のワンマンライブで観客のボルテージを爆上げさせる曲ならではのパワー感も感じさせてくれた。そして前半ラストにあたる「ハイライト」も、Aメロは良い塩梅に肩の力を抜いて歌いつつ、Bメロやサビではぐっと力を込めることでメリハリ感じるステージングに。今の彼女にもリンクするようなDメロの歌詞を伸びやかに歌って心を惹きつけてくれた点も含め、メリハリ感じるボーカルワークだけで惹き込めるシンガーへと彼女が成長したことを、改めて実感させられた時間だったように思う。
ここでライブも折り返し。Billboard Live YOKOHAMA での開催ということもあり、MC中のスタッフによる食事やドリンクのサーブへの新鮮さも感じつつ、今回はCDアレンジをさらにライブに向けてリアレンジしてもらっていたり、事前録音した音は一切使わず全部生演奏のみで楽曲を届けていると明かし、「そんなグルーヴ感も楽しんでいただけたら」とまとめていた。
感情の没入に、すごみさえ感じた後半戦
そして「ここからは“アゲー”な感じで」と予告してから、“Étoile”サイドへと向かう後半戦へ。そのスタートを飾る「ロンリーサンシャイン」から、アコースティックでありながらもバンドの演奏は激しくなり、大橋の歌声も鋭く尖らせたものに。2-Bメロではラウドさも感じさせると、Dメロを激しく歌ってから大サビに荒々しさのピークを持ってくるなど、ただの衝動任せではない流れを感じる感情表現をいきなり見せつける。続く「Break My Jail」はギターのアグレッシブなグルーヴ感に乗せつつ、特に2番に入ってからはAメロでは剥き出しの感情を見せるなど、歌唱するなかで感情がさらに膨れ上がっていく。だからこそ落ちサビでの少し引き気味にした歌声が、歌詞や今の大橋自身とさらにリンクして、心に刺さって抜けないような強い印象を与えてくれていた。
さて、ここからはバンドメンバーの人数を絞った曲に。まずギターとピアノと大橋の3人による「Winding Road」では、外には見せないような葛藤や苦しみを乗せた歌声が青メインの暗めなライティングのなかで響き、その演出も含め非常に胸に迫るものに。それもただ単に力いっぱいに押し付けるのではなくて、引くところは引いて感情の波を作っている。だからこそその苦しさが生々しく伝わるし、最後には前を向ける力強さをも感じさせてくれたのだろう。
そして続く、ピアノとツーマンでの「バカだなぁ」が、とにかくすさまじかった。歌い出しから虚脱感たっぷりに、でも手元で零すだけに留めずに観客へと伝わるようにしっかり発信されている歌声が、絶妙としか言いようがない。1サビで感情を一度膨らませたことで大橋自身も2-A・Bメロでよりいっそう楽曲への没入をみせているかのようで、それが下地になっての2サビやDメロでの感情の爆発はただただ圧巻のクオリティ。
その感情のバトンをそのまま受け継いでスタートした「NOT YET」では、序盤から比較的強めの想いを歌声に乗せていくことでセットリストの中における大きな流れも大事にしつつ、曲中の心の動きも的確に表現。自分の感情に踏ん切りをつけるような姿を提示するかのように、最後のロングトーンを力強く歌い上げて出しきり、中盤からの連続披露を締め括った大橋。少々目が潤み、鼻をすすっていたようにも見えたのは、高ぶった感情からきたものだったのだろうか。
ライブもいよいよあと1曲。当日リハも含め大橋としては実質3公演目が幕を下ろす直前であることに触れると、「今日はこんな素敵な会場で、素敵なバンドメンバーの皆さんとたくさん歌えて本当に幸せでした。ありがとうございます」と改めて感謝の言葉を述べ、ラストナンバーへ。その曲は、ミニアルバム収録の新曲「Étoile」だ。
ステージの中央に立って客席全体に視線を配りながら、ギュッと詰まったアコースティックライブのエンディングとして、優しく包み込むように歌っていく大橋。
歌い終わった大橋は鳴り止まない拍手に包まれて満足げな笑顔をみせると、「音楽ってこんなに楽しいんだなと感じたライブ期間だった」と準備期間を含めた総括の言葉を述べ、配信で観覧したファンも含め「今日駆けつけられなかった皆さんとも、いつか直接お会いできる日が来たらいいなと思うので、これからも精進してまいります」と改めての研鑽を誓ってみせた。そして最後には光を放ち続けていた本を閉じることで、この7月31日にBillboard Live YOKOHAMAで紡がれた物語に幕を下ろし、未来へ向かって歩き始めたのだった。
曲数こそ普段のフルライブには及ばなかったものの、アコースティックという明確なコンセプトを据えながら、非常に満足度の高い公演を見事に作り上げた大橋彩香。そのなかで、彼女の歌唱における表現力の豊かさを、改めて感じた観客も多かったのではないだろうか。もちろん勢いのあるナンバーで観客を巻き込み、一緒に盛り上がっていくパワーというのも魅力的である。だがそれに加え、幅広い表現を通じて魅せ・聴かせることのできるシンガーでもあるという側面も、再注目してほしい――終演後、真っ先に頭に浮かんだ想いは、それだった。大橋彩香は、やはりすごいのだ。そしてそれを多くの人が体感できる機会が、また近いうちに設けられることを、心から願ってやまない。
TEXT BY 須永兼次
“大橋彩香1st Acoustic Live「Lumière et Étoile」”2ndステージ
2022.07.31@Billboard Live YOKOHAMA
【SET LIST】
M01. Esprit De Lumière
M02. 明日の風よ
M03. ダイスキ。
M04. YES!!
M05. ワガママMIRROR HEART
M06. ハイライト
M07. ロンリーサンシャイン
M08. Break My Jail
M09. Winding Road
M10. バカだなぁ
M11. NOT YET
M12. Étoile
関連リンク
大橋彩香 オフィシャルサイト
http://ohashiayaka.com
大橋彩香 オフィシャルTwitter
https://twitter.com/AyakaOhashi
本稿では、そのうち2ndステージの模様をお届けする。
アコースティックアレンジならではの表現を、ふんだんに盛り込んだライブに
まずはバンドメンバーがステージに登場。青の光がステージを彩り、バンドメンバーによるinterlude用にアレンジされた「Esprit De Lumière」のインストが演奏されるなか、「Étoile」のMVを想起させる本を抱えながらステージに大橋が登場。その本を開くと、開いた本のページからは光が放たれ、まるで彼女が暗闇に光を灯すかのような構図に。
そして深い一礼ののち椅子に腰掛けると、その「Esprit De Lumière」をそっと優しく、会場内の観客と視線を交わしつつ歌い始めてライブがスタート。サビではステージがより明るくなり、大橋の表情も楽曲とその演出の両方に連動するかのように晴れやかさを増す。同時に歌声を下支えするような力感も少々加えつつ、アコースティックならではの演奏にもしっかりマッチさせると、終盤では未来へと飛び立っていくような姿をイメージさせる伸びやかな歌声を響かせて最高のスタートを決める。そこからもう1曲、未来を見据える曲「明日の風よ」へ。よく“苦手”と自称するファルセットをここでは巧みに駆使し、ビブラートのかけ方も含めて優しさやおおらかさを生み出す。2-Bメロでの一瞬の引き方など、スローなアレンジならではの細かいこだわりを歌声に詰め込む。そのうえで、サビの中でも大サビだけは地声を貫いて歌い上げたところからも、またこのタイミングでの新たな始まりを示唆しているように感じさせられた。
2曲歌ってからのMCパートでは「肩の力を抜いてリラックスして楽しんでいただければ」と呼びかけ、バンドメンバーの紹介を挟みそのまま3曲目「ダイスキ。」へ。
ミニアルバム同様に原曲よりもキーが低めというアレンジも効いたのか、歌い回しは非常にグルービーなものとなり、会場の雰囲気とも良好にマッチ。Bメロなどの歌詞に盛り込まれたほのかな切なさも、歌声のみならず表情も含めて上手く表現していく。その一方で、サビでは原曲に通ずる開放感あるボーカルワークをみせたりと、様々な要素をバランス良く盛り込んだ仕上がりとなっていた。そして続く「YES!!」ではイントロ中に観客へと要求したクラップが響くなか、大橋自身もサビ後半のコール部分を音程気にせずややシャウト気味に入れたり終盤で気持ち良くフェイクを織り交ぜたりと、ライブ感を感じさせる1曲に。それをステージ上をゆったり歩いて往復しつつ、キラッキラの笑顔とともにハッピーをファンへと距離近く届けていった。
それとは若干表情を変化させてきたのが、「ワガママMIRROR HEART」。この曲もまた、冒頭フレーズラストのロングトーンを切なげに尻下がり気味に歌ったり、特に2番以降は感情をふんだんに乗せてメロディラインからわざと少しだけはみ出してみたりと、アコースティックライブだからこそみせられる表現を多数盛り込んでいく。それでいて、Bメロからサビにかけてのクレッシェンド具合や落ちサビでキュンとさせてからの終盤のパワフルさなど、普段のワンマンライブで観客のボルテージを爆上げさせる曲ならではのパワー感も感じさせてくれた。そして前半ラストにあたる「ハイライト」も、Aメロは良い塩梅に肩の力を抜いて歌いつつ、Bメロやサビではぐっと力を込めることでメリハリ感じるステージングに。今の彼女にもリンクするようなDメロの歌詞を伸びやかに歌って心を惹きつけてくれた点も含め、メリハリ感じるボーカルワークだけで惹き込めるシンガーへと彼女が成長したことを、改めて実感させられた時間だったように思う。
ここでライブも折り返し。Billboard Live YOKOHAMA での開催ということもあり、MC中のスタッフによる食事やドリンクのサーブへの新鮮さも感じつつ、今回はCDアレンジをさらにライブに向けてリアレンジしてもらっていたり、事前録音した音は一切使わず全部生演奏のみで楽曲を届けていると明かし、「そんなグルーヴ感も楽しんでいただけたら」とまとめていた。
感情の没入に、すごみさえ感じた後半戦
そして「ここからは“アゲー”な感じで」と予告してから、“Étoile”サイドへと向かう後半戦へ。そのスタートを飾る「ロンリーサンシャイン」から、アコースティックでありながらもバンドの演奏は激しくなり、大橋の歌声も鋭く尖らせたものに。2-Bメロではラウドさも感じさせると、Dメロを激しく歌ってから大サビに荒々しさのピークを持ってくるなど、ただの衝動任せではない流れを感じる感情表現をいきなり見せつける。続く「Break My Jail」はギターのアグレッシブなグルーヴ感に乗せつつ、特に2番に入ってからはAメロでは剥き出しの感情を見せるなど、歌唱するなかで感情がさらに膨れ上がっていく。だからこそ落ちサビでの少し引き気味にした歌声が、歌詞や今の大橋自身とさらにリンクして、心に刺さって抜けないような強い印象を与えてくれていた。
さて、ここからはバンドメンバーの人数を絞った曲に。まずギターとピアノと大橋の3人による「Winding Road」では、外には見せないような葛藤や苦しみを乗せた歌声が青メインの暗めなライティングのなかで響き、その演出も含め非常に胸に迫るものに。それもただ単に力いっぱいに押し付けるのではなくて、引くところは引いて感情の波を作っている。だからこそその苦しさが生々しく伝わるし、最後には前を向ける力強さをも感じさせてくれたのだろう。
そして続く、ピアノとツーマンでの「バカだなぁ」が、とにかくすさまじかった。歌い出しから虚脱感たっぷりに、でも手元で零すだけに留めずに観客へと伝わるようにしっかり発信されている歌声が、絶妙としか言いようがない。1サビで感情を一度膨らませたことで大橋自身も2-A・Bメロでよりいっそう楽曲への没入をみせているかのようで、それが下地になっての2サビやDメロでの感情の爆発はただただ圧巻のクオリティ。
さらに落ちサビではつらさとともに内にこもったかと思えば、それを溜めとして大サビではさらなる感情の爆発をみせる大橋。しかし想いを溢れさせながらもそこに決して雑さはなく、“歌唱表現”として成立させていく。ラストのロングトーンでわずかに震わせた声も含め、まさに完璧。筆者としては、この日のハイライトに挙げてもいいとさえ感じた1曲だった。
その感情のバトンをそのまま受け継いでスタートした「NOT YET」では、序盤から比較的強めの想いを歌声に乗せていくことでセットリストの中における大きな流れも大事にしつつ、曲中の心の動きも的確に表現。自分の感情に踏ん切りをつけるような姿を提示するかのように、最後のロングトーンを力強く歌い上げて出しきり、中盤からの連続披露を締め括った大橋。少々目が潤み、鼻をすすっていたようにも見えたのは、高ぶった感情からきたものだったのだろうか。
ライブもいよいよあと1曲。当日リハも含め大橋としては実質3公演目が幕を下ろす直前であることに触れると、「今日はこんな素敵な会場で、素敵なバンドメンバーの皆さんとたくさん歌えて本当に幸せでした。ありがとうございます」と改めて感謝の言葉を述べ、ラストナンバーへ。その曲は、ミニアルバム収録の新曲「Étoile」だ。
ステージの中央に立って客席全体に視線を配りながら、ギュッと詰まったアコースティックライブのエンディングとして、優しく包み込むように歌っていく大橋。
多用されているファルセットやミックスボイスではベールのような繊細さも感じさせる一方で、2-Bメロなどでは先頭に立つ者としての決意をぐっと込めたかのような、この先の未来へとファンを引っ張っていく姿の見えるボーカルを披露。冒頭と同様に、最後に再び未来への希望を抱かせて、全披露曲を締め括ったのだった。
歌い終わった大橋は鳴り止まない拍手に包まれて満足げな笑顔をみせると、「音楽ってこんなに楽しいんだなと感じたライブ期間だった」と準備期間を含めた総括の言葉を述べ、配信で観覧したファンも含め「今日駆けつけられなかった皆さんとも、いつか直接お会いできる日が来たらいいなと思うので、これからも精進してまいります」と改めての研鑽を誓ってみせた。そして最後には光を放ち続けていた本を閉じることで、この7月31日にBillboard Live YOKOHAMAで紡がれた物語に幕を下ろし、未来へ向かって歩き始めたのだった。
曲数こそ普段のフルライブには及ばなかったものの、アコースティックという明確なコンセプトを据えながら、非常に満足度の高い公演を見事に作り上げた大橋彩香。そのなかで、彼女の歌唱における表現力の豊かさを、改めて感じた観客も多かったのではないだろうか。もちろん勢いのあるナンバーで観客を巻き込み、一緒に盛り上がっていくパワーというのも魅力的である。だがそれに加え、幅広い表現を通じて魅せ・聴かせることのできるシンガーでもあるという側面も、再注目してほしい――終演後、真っ先に頭に浮かんだ想いは、それだった。大橋彩香は、やはりすごいのだ。そしてそれを多くの人が体感できる機会が、また近いうちに設けられることを、心から願ってやまない。
TEXT BY 須永兼次
“大橋彩香1st Acoustic Live「Lumière et Étoile」”2ndステージ
2022.07.31@Billboard Live YOKOHAMA
【SET LIST】
M01. Esprit De Lumière
M02. 明日の風よ
M03. ダイスキ。
M04. YES!!
M05. ワガママMIRROR HEART
M06. ハイライト
M07. ロンリーサンシャイン
M08. Break My Jail
M09. Winding Road
M10. バカだなぁ
M11. NOT YET
M12. Étoile
関連リンク
大橋彩香 オフィシャルサイト
http://ohashiayaka.com
大橋彩香 オフィシャルTwitter
https://twitter.com/AyakaOhashi
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