8月20日(土)の千葉公演を皮切りに全国10ヵ所14公演に及ぶライブハウスツアー“朱演2022 LIVE HOUSE TOUR『キミとはだしの青春』”を行う声優アーティストの斉藤朱夏が、ソロデビュー3周年を記念した通算3枚目のシングル「イッパイアッテナ」をリリースした。彼女自身が書いたプロットを基に制作された音盤の中には、上手くいかないコミュニケーションに対するイライラや怒りを抱えた“やんちゃな女の子”と高い壁に向かって“戦う女の子”。
そして、大切な君が住む街に“会いにいく女の子”がいる。不機嫌そうな表情をしていてもチャーミングで、常に新たなことにチャレンジし続ける姿勢や言葉に共感を覚える人は多いのではないだろうか。


世の中、みんな、そして自分自身……言いたいことだらけ!
――1stアルバム『パッチワーク』からは1年ぶりのリリースとなりますが、通算3枚目のシングルはどんなものにしたいと考えてましたか。

斉藤朱夏 ソロデビュー3周年を迎えたのですが、私はまだまだ言いたいことがたくさんあって。だから、ある意味、「これからもたくさん色んなことを言っていくので、覚悟はいいですか?」という決意表明のようなシングルを作りたいなって思っていました。そのうえで、「怒りソングみたいなものを作りたい」というところから始まって、自分の頭の中にある“やんちゃな女の子”のイメージ像も届けたかったのと、“夏=斉藤朱夏の季節”が来るんだから、たくさん色んなことを言っちゃおうよ!という思いで作りましたね。

――朱夏さんが今、言いたいことって何ですか?

斉藤 すごーーーくたくさんあるんですよ、本当に(笑)。基本的には自分に腹立つことが多くて。みんなにも伝えたいことがあるけれど、第一に自分に言いたいことがあるっていうのが一番です。基本的に、怒っていることが多いんですよね。

――自分自身に腹が立ってます!ということですか?

斉藤 そうですね。なんで上手くいかないんだろう?みたいなことが多くて。
その性格は小さい頃からあんま変わっていなくて。人に腹立つこともあるけれど、最終的には自分が悪かったなと思うことばかりで。「あのとき自分がこういう言い方をしていればよかったんだろうな」って。結局は、自分に一番言いたいことがある。

――今、「言い方」とありましたが、楽曲の中では“ちゃんと聞いてよ”だけじゃなく、“ちゃんと話してよ”とも言っていますよね。

斉藤 ここ最近特に、ちゃんと話してもらわないとわからないことって結構あるなと感じていて。「なんでそれ話してくれなかったの?」と思うことがたくさんあったんですよね。もしも、あのときちゃんと話してくれていたら、今こうなってなかったじゃん、みたいな。そんななかで、「やっぱり人って言わないと伝わらないんだな」と感じて。もちろん言わなくても伝わる関係性もあると思うんですけど……。

――ディスコミュニケーションに対する不平不満ですよね。

斉藤 コミュニケーションって本当に難しいですよね。
私は割と明るくてコミュニケーション能力も高いと見られがちですが、実際は下手で。自分の中での壁というか、バリアみたいなものを張って、結局自分でコミュニケーションを絶ってしまっているんです。どこまで言えば伝わるのか。逆に、どこまでは言わないほうがいいのか……。そういうモヤモヤを殴り書きしたノートを(作詞作曲の)ハヤシケイ(LIVE LAB.)さんに渡したら、すごく明るくポップな曲を作ってくれました(笑)。

――テンポはかなり早いし、言葉数も多いポップパンクになっています。

斉藤 デモを聞いた瞬間、「ん?」「待って、めちゃくちゃ言葉詰まってる!?」って(笑)。で、まずはどうやって歌えば自分の気持ちがちゃんと伝わるか、ということを考えました。とにかくたくさん聴き込んで、1つ1つの言葉をしっかり見て、自分の中で作戦会議をたくさんしました。でも、とにかく速いので、1回つまずくと置いていかれるんですよね。なので、歩いているとき、皿洗いをしているとき、日常生活の中で常に口ずさんで、口に慣らすということをやっていました。「イッパイアッテナ」というタイトルのとおり、本当にイッパイ考えました(笑)。
この曲に詰まっている言葉1つ1つにちゃんと向き合わないと、自分の気持ちが真っ直ぐに連動しないなと思ったので、とにかく聞きまくって口ずさんでいましたね。

――そこに詰まっている“言葉=気持ち”の根底にあるのは怒りですよね。

斉藤 基本、怒りです。あはははは。私って、怒ってばかりでずっとプンスカしてるんですよ(笑)。よくケラケラ笑っていますけど、本当は怒ってるんだよ?みたいなこともあって。今までは怒りというものを楽曲にしてこなかったし、私自身は、怒りの感情を抑える傾向があったんですね。「ま、いいや」って、自分の中で消滅させるというか、解決してしまうことが多くて。でも、アーティストとして色んな表現を出したいなという欲がどんどん出てきて、“怒り”という感情に焦点を当てて作ってみました。ただ、怒りすぎると怖くなってしまうので、怒りながらポップに歌うってなんだろう?というのは考えました。

――歌うことで怒りは昇華されましたか?

斉藤 すごーく発散できました!何もかもどうでもよくなって、なんで怒ってるんだろう?みたいな気持ちになって。きっと、すごく些細なことだったんですよね。
色んな言葉で怒ってみたあと、結局は、「お腹空いたしケーキでも食べよっか」って。ケイさんには、「この人(=斉藤)、やばい人だよね」って言いましたもん。

――どうですか?そんな自分は(笑)。

斉藤 「この人、何?」って感じますけど(笑)、自由気ままだなと思いましたし、すごく良く言えば、素直な人ですよね。楽曲を通して改めて、「自分自身ってこういう人なんだ」ということがより知れたという発見もありました。“自分”が一番出た楽曲だったので、歌っていてすっきりしましたね。最終的にはダブルピースしてますし(笑)、それくらい発散できた楽曲だし、自分の中での新しい軸みたいなのができましたね。

――アーティスト写真やジャケット写真では“やんちゃな女の子”を表現していますが、MVも評判もいいですよね。

斉藤 皆さんが喜んでくれて、すごく嬉しいです。やんちゃな女の子って、わがままさがあるけど、すごくかわいらしさもあるじゃないですか。そういうものを表現したくて、MVでは色んなもので遊んでいて。

――レコードとか、洋服とか、椅子とか。


斉藤 基本はフル尺で撮っているので、動きのレパートリーがどんどんなくなってしまうんですね。でも、それはしちゃいけないなと思って、今自分の中にある動きの引き出しを全部開けました(笑)。10年以上やっているダンスが活かされましたし、ずっと自由に動いていました。お菓子やマイクを当てられたのは予想外だったんですけど(笑)、色んなカットがあるので、飽きずに楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。

――発明家みたいなヘルメットとメガネ姿も良かったです。

斉藤 あはははは。あれはほんとに、動ける部分が少なかったんですけど、面白くしたら勝ちだと思っていたので、とにかく変な動きをしてました。上半身だけでできる変な動きをして。それが、合間合間に入って、緩急がついたなというイメージがあって。内容的にはわがままで怒ってるやんちゃな女の子なんですけど、楽しいMVができたなと思いますね。



斉藤朱夏が壁をつくり、越え続ける理由
――カップリングの「ノーサレンダー」も朱夏さん自身ですよね。

斉藤 自分のことを歌うことが多くなったなと思って。
1年目2年目は誰かの背中を押したいっていう曲がたくさんあったんですけど、ここ最近、自分のことをプロットに書くことが多くて。自分と同じように生きづらさを感じている人が共感してくれたら嬉しいですし、「私と少し似ている」と感じることが救いになったらいいなと思ってて。何よりも、今の私は、基本的に自分のことじゃないと歌えないというか、自分の中で迷ってしまうんですよ。歌詞のプロットを書いていても、少しでも「嘘ついてないかな?」と感じた瞬間に一旦止めてしまうんですね。私はずっと、「嘘偽りのないものを音楽にしていく」と言ってきたので、その約束を守らないといけないなと思っていて。だから、「ノーサレンダー」も私自身のことを歌っていますね。とにかく色んなものに立ち向かう“ファイターガール”。分厚い壁をずっと殴っているような人なので(苦笑)。結局は全然壊れなくて、怒り散らして……。

――あははは。「イッパイアッテナ」に戻った。でも、乗り越えてきてますよね。

斉藤 いや、3年目にして、まだまだだなって思いますね。やっぱりまだ全然自信がないんです。色んなものを手に入れてはいますが、「なんかダメだな、自分……」と思う瞬間はたくさんあります。「もっともっと立ち向かわないとダメだ、このままじゃダメだよ」「何してるんだろう、自分……」ってなって、そこに対してまた怒りが生まれて……。壁に立ち向かっては自分に怒って、立ち向かっては怒って。その繰り返しですね。最近の自分は、ちょっと違う人になりかけてるなと思う瞬間があって。それはきっと、立ち向かい続けているからこそ、今、そういう時期なんだろなって。それを乗り越えた先に、自分が見たかったものが見れるだろうなと思っています。

――ケイさんも「プレッシャーがあるときに輝く方だ」と言っていますね。

斉藤 え?一生、プレッシャーに晒されるの?みたいな(笑)。でも、私自身もそれが生き甲斐なんですよね。私のプライベート、本当につまらないので……。この仕事をしているからこその生き甲斐がめちゃめちゃあって。この仕事があるからこそ、自分は生きていると思えるし、壁がない日常の自分に興味がなくて。仕事をしている自分、高い壁に立ち向かっている自分には興味があるから、壁はあり続けたほうがいいです。私、“挑戦”という言葉がすごく好きなんですよね。自分ができないことがまだまだこんなにあったんだ、と思ったときの嬉しさがあって。でも、それは、私だけじゃなく、応援してくれる皆さんもそうだと思うんですよ。何か新しいことにチャレンジして、それができるようになった瞬間ってめちゃめちゃ嬉しいじゃないですか。私は、それをみんなと一緒にやっていきたい。どんなに挫けそうになっても、みんなと一緒にチャレンジをすれば、乗り越えた瞬間に生まれる絆がある。そういう意味では、ずっと挑戦し続けるんだぞって、自分に喝を入れている楽曲でもありますね」

――乗り越えた先にある“できるだけでっかい未来図”というのは?

斉藤 ……ここ最近、まったくもって未来図が見えなくて。怖いくらい見えないんですよ。

――未来が見えないくらい高い壁の前にいるんですね、今。

斉藤 なんだかわからないんですけど、すごくプレッシャーがあるんですよね。ステージに立つごとに、その壁がどんどん分厚くなっていて。だから、「やっぱりステージ嫌い。怖い。なんでこんな壁分厚いの」ってなるんですけど、それが心地良くもあって。「この壁を越えたら、どうなっちゃうの、自分?覚醒するでしょ」みたいな(笑)。それを見るためにやっているところがありますね。今は、未来図は全然見えないですけど、新たな色が1つでもあったらいいなと思います。今の私は“赤”という色がありますが、そこは欲張らないで、もう1つ色が増えたらいいなくらいに思っていて。まだ一色にしか染まれていないんですよ。それまではモノクロで、白か黒しかなくて。最近、“赤”という色を手に入れて。たくさんある色を、少しずつでも手に入れたいなと思っていますね。

――もう1曲、アコースティックなフォークカントリー「だから会いにいく」が収録されています。

斉藤 この曲は、ライブをしていて思ったことを歌詞のプロットに書きました。その日(=ライブを行った日)がその瞬間、その1日しかないことに対して、すごく寂しさを覚えて。最近、ライブが終盤に入っていくにつれ悲しくて仕方なくて。序盤は緊張していてガチガチなんですけど、終盤にかかると、緊張も取れているし、「え、もう終わっちゃうの?」という寂しさが出てきて。でも、今回、ライブハウスツアーで10ヵ所もまわることができて。その1公演1公演を大切にしたいですし、皆さんの顔や地元の街の風景を肌で感じたいと思ったんですよね。そこで、話はできないけど、みんなの思い出や、みんなの想いを感じ取ることができたら、“君”と私の距離がもっともっと縮まるんじゃないかなって。今年は「みんなに会いにいく」「みんなとたくさん会う」というのが自分のテーマなんです。「だから会いにいく」はまさにテーマソングですね。

――前回のライブでも「私が会いにいく」とおっしゃってましたけど、ライブハウスツアー(“朱演2022 LIVE HOUSE TOUR『キミとはだしの青春』”)のために書かれた曲って言っていいんですよね。

斉藤 そうです。“キミとはだしの青春”。どんな青春を一緒に過ごせるのか。どうして裸足という言葉が入っているのか。それを10ヵ所14公演のライブでみんなが感じてくれたら嬉しいですし、私自身がみんなの街に行って音楽を届けることがすごく楽しみですね。

――かなり距離の近いライブハウスばかりですね。

斉藤 初めて立つ場所ばかりですね。

――先日は東京ドームのステージに立ってた人がこんなに近くで見れることはそうないと思います。

斉藤 あはははは。色んな人に言われます。ツアーを発表したときにざわつきがあったんですけど、その距離感を体験したくて。体験しないとダメだなと思って。いつもの派手にどんちゃん騒ぎして、みんなと遊ぶライブとはまた違う、新しいことをしたいです。自分自身も初めていくライブハウスばかりですし、距離感も初めてなので、どうなるかわからないですが、これを経験したときには何かまた、たくさんの色んな感情が生まれてくるだろうなと思っています。今は楽しみのワクワクよりかは、ドキドキのほうが強いですね。とにかく一番は、“私自身が会いにいく”ということを大切にしたいですね。ライブハウスツアーは夏から秋にかけてですが、みんなとすべてを脱ぎ捨てて、むき出しの状態で、“今”という青春を私と過ごしてほしいなと思っています。「青春はいくつになってからでもできるんだよ」ということも伝えたいし、素っ裸になって、みんなと感情を分かち合いたいです。



INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ

●リリース情報
斉藤朱夏 3rd Single
「イッパイアッテナ」
発売中

■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら

【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】

価格:¥2,500(税込)
品番:VVCL-2085~2086
特製スリーブケース仕様

【初回仕様通常盤(CD)】

価格:¥1,650(税込)
品番:VVCL-2087

<CD>
01.イッパイアッテナ
作詞・作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.)編曲:川崎智哉
02.ノーサレンダー
作詞・作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.)編曲:倉内達矢
03.だから会いにいく
作詞・作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.)編曲:山口隆志
04.イッパイアッテナ -Instrumental-
05.ノーサレンダー -Instrumental-
06.だから会いにいく -Instrumental-

<Blu-ray>
01.イッパイアッテナ -Music Video-
02.朱演2022 LIVE HOUSE TOUR「はじまりのサイン」ツアードキュメンタリー映像

●ライブ情報
日本青年館ホール ワンマンライブ (※仮タイトル)
会場:日本青年館ホール(東京)
12月3日(土)※2公演ございます。
第一部:OPEN 15:15 / START 16:00
第二部:OPEN 18:15 / START 19:00

チケット料金:¥8,800(税込)
※未就学児入場不可

朱演2022 LIVE HOUSE TOUR「キミとはだしの青春」
8月20日(土) 柏PALOOZA OPEN 17:30 / START 18:00
8月21日(日)柏PALOOZA  OPEN 16:00 / START 16:30
9月9日(金)仙台darwin OPEN 18:00 / START 18:30
9月17日(土)岐阜club-G OPEN 17:00 / START 17:30
9月19日(月・祝)LIVE ROXY SHIZUOKA OPEN 17:00 / START 17:30
9月23日(金・祝)広島SECOND CRUTCH OPEN 17:00 / START 17:30
9月25日(日)福岡DRUM Be-1 OPEN 17:00 / START 17:30
10月8日(土)神戸VARIT. OPEN 15:30 / START 16:00
10月8日(土)神戸VARIT. OPEN 18:30 / START 19:00 ※追加公演
10月22日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3 OPEN 15:30 / START 16:00
10月22日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3 OPEN 18:30 / START 19:00 ※追加公演
11月3日(木・祝)京都MUSE OPEN 17:00 / START 17:30
11月5日(土)yokohama BayHall OPEN 15:00 / START 16:00
11月5日(土)yokohama BayHall OPEN 18:30 / START 19:30 ※追加公演

チケット料金(立ち見)
¥6,000(税込/ドリンク代別)
※整理番号順の入場
※未就学児入場不可
※枚数制限2枚(複数公演申し込み可能)

関連リンク
斉藤朱夏 オフィシャルサイト
http://www.saitoshuka.jp

斉藤朱夏 オフィシャルTwitter
https://twitter.com/Saito_Shuka

斉藤朱夏 オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCNZixANYOD3NyepS2lsAArg

FCサイト『しゅかランド』
https://shuka-land.jp/
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