ナナヲアカリの新曲ラッシュが止まらない。去年10月から展開していた7ヵ月連続配信企画を今年4月に完走したと思ったら、休む間もなく8月24日(水)に5thシングル「恋愛脳 / 陽傘」をリリースした。
「陽傘」と「二度目の花火」は、シンガーソングライター・澤田 空海理による楽曲提供で、ナナヲを題材に制作された短編映画「日曜日とマーメイド」の主題歌&劇中歌。今回は楽曲が生まれた背景や、そこに込めた彼女の想いに迫った。
ポップであることが最大の命題
――5thシングル「恋愛脳 / 陽傘」の「恋愛脳」は、どのようにして生まれたのでしょうか?
ナナヲアカリ 実は、かなり前にワンコーラスだけ作っていたんですよ。それでTVアニメ『Engage Kiss』のお話をいただいたときに、この作品のイチ要素でもある緒方シュウくんとキサラちゃんの、めちゃくちゃな感じのラブコメ感が「恋愛脳」の冒頭リフとハマるなと思い、EDテーマに提案させていただきました。
――元々あったというのは、7ヵ月連続リリースの頃?
ナナヲ それより前にあったんですよ。良い曲だけどいつ出そうか、みたいな。温めていたものが、温めすぎてどうしようとなっていたときに、ちょうど良く「ここだ!」みたいな(笑)。
――ワンコーラスだけあった原型を、どのように1曲に仕上げていったんですか。
ナナヲ まず、ナユタン星人(ナユタセイジ)さんにフルコーラスを作ってもらって。そのときにポエトリー部分に初のフューチャーベースなサウンドが打ち込まれていて「おお!めっちゃくちゃかわいい!」と。
――歌詞の内容については、どんな解釈をされていますか。
ナナヲ 男の子に振り回されているけど、好きなんだろうなっていう女の子の歌詞です。上手いことまだ進展していないけど、すごく好きなんだろうなっていうのが伝わりますよね。こんなに振り回されないですもんね、普通。
――恋愛シンドロームにかかっている人のテンションですよね。
ナナヲ そうそう!渦中にいるんだろうなっていう(笑)。学生の子とかは、やっぱり色んな恋を経験する時期だと思うので、わちゃわちゃになってもらいたいなと思いますね。
――オリジナルMVのほうもYouTubeに投稿してから、すごい勢いで再生されていますね。
ナナヲ いつもの彼女たち(寺田てら、森ノ爺、野良いぬ)が最高のMVにしてくれたので、大満足な映像になりました。
――楽曲とMVを初披露した7月7日の“ナナヲアカリPresentsライブ&パーティー 第十一話 ―770の日―”では「このMVが過去イチ好き」と言ってましたよね。
ナナヲ 最初に聴いたときに平成初期アニメのイメージが降ってきたところから、MVは絶対に4:3のアス比にしようと思って。
――スタッフクレジットのフォントまで、あの時代の雰囲気をパッケージしていて。
ナナヲ そうそう!これやん!って感じがすごくお気に入りです。
――YouTubeのコメントを読んでいても、曲とMVと歌声とトータルで皆さん激賞されていましたよね。
ナナヲ ありがたいです!みんなの中で聴きやすく曲・見やすい映像を1つの作品として落とし込めていたら嬉しいですね。
――ナナヲさんってソロアーティストではあるけど、プロジェクトっぽさも感じるんですよね。ちゃんとチームになっているというか。
ナナヲ まさにそう!ソロのくせにソロ感がなくていいですよね(笑)。映像に関してもそうだし、バンドメンバーに関してもそうなんですけど、もはやソロアーティストじゃないなってすごく思います。
――いつから、チーム・ナナヲアカリはできていたんですか。
ナナヲ 初期の「ハッピーになりたい」で野良いぬちゃんと寺田てらちゃんと一緒になって、すごくハマった感じがあったので、そこから始まっているんじゃないかなと思います。あんなにドンピシャで「これだ!」となることがないんですけど、1曲目からそういう人たちに出会えたことは、すごくラッキーだったなと思います。
――曲はもちろん、MVに関してもナナヲさんが中心になってアイデアを出しているんですか?
ナナヲ そうですね。全体的なイメージはナナヲの中で考えがあって、それをどこまで実現可能かをみんなで話し合いますね。
――皆さんの中で「ナナヲアカリのここはブレちゃいけないよね」という共通認識はあるんですか?
ナナヲ “ポップであること”じゃないですかね。もちろん、ちょっとイメージを変えたいときにはあえてポップを外すことはあるんですけど、基本のベースとして「ナナヲアカリはポップであるべき」だと思っているので、そこはブレないようにみんなが意識していると思います。
――お客さんが増えたりキャリアを重ねたりすると、コアなほうにいくケースもあるじゃなですか。ナナヲさんがポップの旗を振り続けられるのは、どうしてなのかなって。
ナナヲ それが向いてるってことを、客観的に自分が理解してるからじゃないですかね? かっこ良くシリアスに、おどろおどろしいのが得意な人っていると思うんですけど、その人たちのマネをしても結局超えられない。
「陽傘」はナナヲが中高時代に救われていた音楽と似ている
――まさに、そこが際立っている「恋愛脳」ですが、カップリングはまた新しい表情を見せた楽曲になっていますね。
ナナヲ 2曲とも短編映画「日曜日とマーメイド」のために、書き下ろした楽曲です。この映画は、頃安祐良監督がナナヲアカリからインスピレーションを受けて書き下ろしてくださった脚本なんですよ。脚本があってナナヲが曲を制作したんじゃなくて、監督がナナヲアカリの曲と人物像から脚本を書き下ろして、その脚本を読んでナナヲが新たに曲を制作するっていう。なので面白い企画なんですよね。この映画に出てくる女の子がアニメーター志望なのもナナヲがアニメ好きだからですし、内省的な性格というのも投影していただいてます。
――言ってしまえば、原作・ナナヲアカリなんですね。
ナナヲ そうなんです。とはいえナナヲの要素を踏襲しながら、そこに偏り過ぎているわけでもない。
――カップリングの曲は主題歌と劇中歌ですね。どこで流れるのかも、曲作りをするうえでポイントだったのかなって。
ナナヲ 最初はどっちがどうなるかとか、どこで流れるのかがわかっていなくて。とりあえず2曲を作ってみようという感じだったんです。夏という大きな題材で「二度目の花火」を作り、「陽傘」は主人公の女の子2人の葛藤や関係性をよく表した楽曲になっていたので、前者が主題歌で後者が劇中歌になりましたね。
――作詞作曲をされたのは、どちらもシンガーソングライターの澤田 空海理さんです。まず「陽傘」が届いたときは、どんな印象を受けました?
ナナヲ 率直に天才か!と思いました。歌詞といいメロディの美しさといい、すごく好きな感じだったんですよ。世界観というか纏っている空気感が、中高時代にナナヲが聴いて救われていた楽曲の感じなんですよね。
――救われると思うポイントは、特にどこで感じます?
ナナヲ 小学生のときって、みんな怖いもの知らずで無敵だと思うんですよ(笑)。でも中学生になってから先輩後輩みたいな関係値が突然出てきたり、臆病になって失うものもどんどん多くなる。“見えない敵をつくったって 決して生きやすくはならなかった。”というフレーズがすごく好きなんですけど、本当にそうなんですよね。誰かのせいにしようとしても、結局は何も解決しないし、大人じゃないから現状を変えることなんてできない。子供のときって自分の無力さをすごく感じやすいと思うんですよ。逆に、ここまで弱さと未熟さを言葉にせず、鮮明に表現しているのが素晴らしい。こういう曲って、きっと助けになると思うんですよね。
――これって自分だけが抱えている心の闇なのかと思ってしまうと、どうせ他人には理解されないから打ち明けることもできない。そんな袋小路な状態のときに、自分だけじゃないんだと思わせてくれる曲があると、それは救いになりますよね。
ナナヲ 本当にそう。やっぱり“自分の歌がある”って救いになると思うんですよ。これが誰かの自分の歌になってほしいですね。
――「二度目の花火」はどんな楽曲になっていますか。
ナナヲ これはサウンドも歌詞も含めてすべてが王道。映画の内容が女の子2人のもどかしい関係性を表現した作品なので、そこも含めて聴いてもらうと、苦しい感じをより一層楽しんでもらえると思います。でも、それを抜きにしても恋をしたことがある人なら、誰でも胸にチクチクくるストーリー構成になっているので、上手くいかなかったデートの帰り道に1人で聴いてほしい(笑)。
――短編小説のような構成ですよね。
ナナヲ そうなんですよね。ストーリー性が高い歌詞で、シンプルにすごいなと思います。“八月、人混み。合わない歩幅すら、いつか思い出になる。”の箇所はもう天才。今だから「そうだよな!」と思えるんですけど、今恋をしている人はチクチクと辛すぎてわからないと思うんですよ。だけど2、3年後には「ここの3行、まさにそうなんだよな」と気づいてほしいです。
次ページ:“ナナヲアカリをする”ことを見出した
“ナナヲアカリをする”ことを見出した
――改めて「恋愛脳 / 陽傘」はどんな1枚になりましたか?
ナナヲ ナナヲの幅の広さを1枚で感じてもらえるのはもちろんのこと、恋愛というテーマで1枚にまとまった作品になっているから、すごくもどかしい気持ちでめちゃめちゃになって、悲しくなってほしいですね。心を掻き回されて、1枚聴き終わったときに「わ~……疲れたな」と良い意味で感じてもらいたい。
――どの曲もナナヲさんなんだけれど、どれも違う表情という。
ナナヲ そうなんですよね。そこが面白いと捉えてもらえるか「なんだこいつは?」と思われるかのどっちかなんですけど(笑)。
――でも、昔は「これも自分です」じゃなくて「これが自分です」を求めていましたよね?
ナナヲ そもそも自分で作詞作曲をしてきた人間だから、楽曲提供してもらうことに戸惑いがあって。当時は1人でやることがすべてだと思っていたんです。でも先ほど言ってくださったように、今はプロジェクトとして自分のためはもちろん、誰かの何かのために作ることのほうがすごいなって理解しました。そこがわかってから、“ナナヲアカリをする”ことに意味を見出せた。そこの役割を理解してから、「これも自分なんだ」と受け入れやすくなった。最初は1人ぼっちこそが最強だと思っていたんですけど、そこの認識を飛び越えたから変われたんだと思います。
――「ナナヲアカリをする」っていう言葉が面白いですよね。
ナナヲ ふふふ。私は、ナナヲアカリをしてます。
――つまり自分100%の音楽ではなくて、この作品のためにとか誰かのためにやってる音楽ってことですよね。
ナナヲ そういうことです。それこそナナヲアカリというプロジェクトをやってる感覚です。
――ちなみに、今後はナナヲアカリという存在をどう広めていきた……。
ナナヲ んふふ。
――なんですか?
ナナヲ 難しいですよね、その質問。絶対に聞かれるじゃないですか?最後にどうなりたいですか?って。ないんですよね!
――ハハハ。
ナナヲ 友達とご飯を食べてるときも「必ず将来の夢とか聞かれるけど、ないんだよね!」と言っていて。本当にないんですよ。ナナヲアカリが広まったら嬉しいのかな……?そのへんもわからないんですよね。どうなったら自分が嬉しいのかがわからない。今でこそ不思議な体験をしているのに、これ以上不思議なことなんて想像できない。きっとナナヲアカリをどれだけ続けられるか、だと思うんですよ。もしかしたら来月で終わるかもしれないし、はたまた10年やれるのかもしれないんですけど、そのナナヲアカリ・チャレンジをずっとしてるだけだと思います。
――自分で聞いておいてアレですが「将来の夢」や「今後の展望」って本当に難しいですよね。
ナナヲ 難しい!
――答えている自分もしっくりこないというか。
ナナヲ (手を叩きながら)そう!今までは一生懸命考えて「広い会場でやりたい」と言ってみたんですけど、実際に思ったことはあんまりないので(キッパリ)。ナナヲアカリ・チャレンジを頑張ります!ってことにしといてください(笑)。
INTERVIEW & TEXT BY 真貝 聡
●リリース情報
ナナヲアカリ 5th シングル
「恋愛脳/陽傘」
発売中
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【アーティスト盤:完全生産限定盤(CD+BD)】
価格:¥5,200(税込)
品番:AICL-4260~4261
※トールサイズデジパック仕様
※ナナヲアカリ折込ミニポスター付
<CD>
1.恋愛脳
2.陽傘
3.二度目の花火
4.恋愛脳(Instrumental)
5.陽傘 (Instrumental)
6.二度目の花火 (Instrumental)
<BD>
・ナナヲアカリワンマンライブツアー「NNNN」@ EX THEATER ROPPONGI 2022.1.16
1.Opening
2.ビビっちゃいない
3.ハッピーになりたい
4.おばけのウケねらい
5.ヒステリーショッパー
6.眠らない街、眠りたい僕
7.妄想ハッピーエンド
8.ホントのことを言うのなら
9.ランダーワンド
10.Youth
11.ラブみ
12.アイがあるようでないようである
13.チューリングラブ feat.Sou
14.ディスコミュ星人
15.Higher’s High
16.雷火
17.ダダダダ天使
18.なんとかなるくない?
Encore
19.学校だるい学校だるい学校だるい
20.メルヘル小惑星
・リスアニ!LIVE 2022 -2022.1.23 SUNDAY STAGE-
1.ワンルームシュガーライフ
2.Higher’s High
3.チューリングラブ feat.Sou
【アニメ盤:期間生産限定盤(CD+BD)】
価格:¥1,800(税込)
品番:AICL-4262~4263
※TVアニメ「Engage Kiss」キサラ描きおろし4面紙ジャケット仕様
<CD>
1.恋愛脳
2.陽傘
3.二度目の花火
4.恋愛脳 -キサラ(CV:会沢紗弥) ver. –
5.恋愛脳 -TV size ver.-
<BD>
・TVアニメ「Engage Kiss」ノンクレジットエンディング映像
・リスアニ!LIVE2022 -2022.1.23 SUNDAY STAGE-
1.ワンルームシュガーライフ
2.Higher’s High
3.チューリングラブ feat.Sou
●作品情報
オリジナルTVアニメーション『Engage Kiss』
エンディング・テーマ:ナナヲアカリ「恋愛脳」
【放送情報】
TOKYO MX 7月2日(土)より 毎週土曜24:30~
とちぎテレビ 7月2日(土)より 毎週土曜24:30~
群馬テレビ 7月2日(土)より 毎週土曜24:30~
BS11 7月2日(土)より 毎週土曜24:30~
ABCテレビ 7月2日(土)より 毎週土曜26:30~
メ~テレ 7月2日(土)より 毎週土曜26:30~
※放送日時は変更になる可能性がございます。
【配信情報】
dアニメストアにて7月2日より毎週土曜25:00~配信開始。
他各配信プラットフォームでも7月5日より順次配信。
(C)BCE/Project Engage
●ライブ情報
ナナヲアカリワンマンライブ 「DELICIOUS HUNT TOUR 2022」
9/10(土)広島・SECOND CRUCH
9/11(日)香川・DIME
9/18(日)愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
9/19(月・祝)大阪・BIG CAT
10/16(日)東京・EX THEATER ROPPONGI
開場17:00 / 開演 17:30(大阪・東京のみ18:00開演)
【チケット料金】
全自由:¥5,500(税込)
関連リンク
ナナヲアカリ
公式サイト
https://www.nanawoakari.com/
公式Twitter
https://twitter.com/nanawoakari/
公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCrrNHoXQ1uTYsR6v41pDalQ/
「恋愛脳」は現在放送中のTVアニメ『Engage Kiss』のEDテーマを務めており、彼女の楽曲ではお馴染みのナユタン星人(ナユタセイジ名義)による制作プロデュース。アニメに登場するヒロインの目線で書かれたかわいくも少し懐かしさのあるPOPな楽曲となっている。
「陽傘」と「二度目の花火」は、シンガーソングライター・澤田 空海理による楽曲提供で、ナナヲを題材に制作された短編映画「日曜日とマーメイド」の主題歌&劇中歌。今回は楽曲が生まれた背景や、そこに込めた彼女の想いに迫った。
ポップであることが最大の命題
――5thシングル「恋愛脳 / 陽傘」の「恋愛脳」は、どのようにして生まれたのでしょうか?
ナナヲアカリ 実は、かなり前にワンコーラスだけ作っていたんですよ。それでTVアニメ『Engage Kiss』のお話をいただいたときに、この作品のイチ要素でもある緒方シュウくんとキサラちゃんの、めちゃくちゃな感じのラブコメ感が「恋愛脳」の冒頭リフとハマるなと思い、EDテーマに提案させていただきました。
――元々あったというのは、7ヵ月連続リリースの頃?
ナナヲ それより前にあったんですよ。良い曲だけどいつ出そうか、みたいな。温めていたものが、温めすぎてどうしようとなっていたときに、ちょうど良く「ここだ!」みたいな(笑)。
――ワンコーラスだけあった原型を、どのように1曲に仕上げていったんですか。
ナナヲ まず、ナユタン星人(ナユタセイジ)さんにフルコーラスを作ってもらって。そのときにポエトリー部分に初のフューチャーベースなサウンドが打ち込まれていて「おお!めっちゃくちゃかわいい!」と。
メロのあるポエトリーにしようとした結果、ほぼラップみたいな仕上がりになり、そういうことを経て形になっていきましたね。
――歌詞の内容については、どんな解釈をされていますか。
ナナヲ 男の子に振り回されているけど、好きなんだろうなっていう女の子の歌詞です。上手いことまだ進展していないけど、すごく好きなんだろうなっていうのが伝わりますよね。こんなに振り回されないですもんね、普通。
――恋愛シンドロームにかかっている人のテンションですよね。
ナナヲ そうそう!渦中にいるんだろうなっていう(笑)。学生の子とかは、やっぱり色んな恋を経験する時期だと思うので、わちゃわちゃになってもらいたいなと思いますね。
――オリジナルMVのほうもYouTubeに投稿してから、すごい勢いで再生されていますね。
ナナヲ いつもの彼女たち(寺田てら、森ノ爺、野良いぬ)が最高のMVにしてくれたので、大満足な映像になりました。
――楽曲とMVを初披露した7月7日の“ナナヲアカリPresentsライブ&パーティー 第十一話 ―770の日―”では「このMVが過去イチ好き」と言ってましたよね。
ナナヲ 最初に聴いたときに平成初期アニメのイメージが降ってきたところから、MVは絶対に4:3のアス比にしようと思って。
レトロ風アニメのオープンエンドというか、あの頃のアニメって独特じゃないですか。その感じを出したいなと思いました。すごく楽しく作れたし、パッとみたら90代のアニメっぽい。そこが一番のお気に入りポイントですね。クレジットも、もうまんまですよね(笑)。あれが感動ポイント!「こういうアニメあるやん!」みたいな。
――スタッフクレジットのフォントまで、あの時代の雰囲気をパッケージしていて。
ナナヲ そうそう!これやん!って感じがすごくお気に入りです。
――YouTubeのコメントを読んでいても、曲とMVと歌声とトータルで皆さん激賞されていましたよね。
ナナヲ ありがたいです!みんなの中で聴きやすく曲・見やすい映像を1つの作品として落とし込めていたら嬉しいですね。
――ナナヲさんってソロアーティストではあるけど、プロジェクトっぽさも感じるんですよね。ちゃんとチームになっているというか。
ナナヲ まさにそう!ソロのくせにソロ感がなくていいですよね(笑)。映像に関してもそうだし、バンドメンバーに関してもそうなんですけど、もはやソロアーティストじゃないなってすごく思います。
――いつから、チーム・ナナヲアカリはできていたんですか。
ナナヲ 初期の「ハッピーになりたい」で野良いぬちゃんと寺田てらちゃんと一緒になって、すごくハマった感じがあったので、そこから始まっているんじゃないかなと思います。あんなにドンピシャで「これだ!」となることがないんですけど、1曲目からそういう人たちに出会えたことは、すごくラッキーだったなと思います。
――曲はもちろん、MVに関してもナナヲさんが中心になってアイデアを出しているんですか?
ナナヲ そうですね。全体的なイメージはナナヲの中で考えがあって、それをどこまで実現可能かをみんなで話し合いますね。
――皆さんの中で「ナナヲアカリのここはブレちゃいけないよね」という共通認識はあるんですか?
ナナヲ “ポップであること”じゃないですかね。もちろん、ちょっとイメージを変えたいときにはあえてポップを外すことはあるんですけど、基本のベースとして「ナナヲアカリはポップであるべき」だと思っているので、そこはブレないようにみんなが意識していると思います。
――お客さんが増えたりキャリアを重ねたりすると、コアなほうにいくケースもあるじゃなですか。ナナヲさんがポップの旗を振り続けられるのは、どうしてなのかなって。
ナナヲ それが向いてるってことを、客観的に自分が理解してるからじゃないですかね? かっこ良くシリアスに、おどろおどろしいのが得意な人っていると思うんですけど、その人たちのマネをしても結局超えられない。
だけど、ポップ1点のところで見れば、飛び抜けてポップな位置にいると思うので。自分が担わなくてもいいところに、あえていかなくてもいいんじゃないかってことを思っている。それをもう1人のアカリちゃんが教えてくれるから、ポップであり続けられるんだと思います。
「陽傘」はナナヲが中高時代に救われていた音楽と似ている
――まさに、そこが際立っている「恋愛脳」ですが、カップリングはまた新しい表情を見せた楽曲になっていますね。
ナナヲ 2曲とも短編映画「日曜日とマーメイド」のために、書き下ろした楽曲です。この映画は、頃安祐良監督がナナヲアカリからインスピレーションを受けて書き下ろしてくださった脚本なんですよ。脚本があってナナヲが曲を制作したんじゃなくて、監督がナナヲアカリの曲と人物像から脚本を書き下ろして、その脚本を読んでナナヲが新たに曲を制作するっていう。なので面白い企画なんですよね。この映画に出てくる女の子がアニメーター志望なのもナナヲがアニメ好きだからですし、内省的な性格というのも投影していただいてます。
――言ってしまえば、原作・ナナヲアカリなんですね。
ナナヲ そうなんです。とはいえナナヲの要素を踏襲しながら、そこに偏り過ぎているわけでもない。
上手いこと取り入れてくださった脚本になっていて、さらに今作は自分もナナヲアカリ役として出演するという、すごく不思議な映画なんですよね。ナナヲアカリとして出演させていただいてるんですけど、映画に出てくるナナヲは、架空のアニメのエンディングを歌っているアーティストの設定で。そこもまた面白くて。
――カップリングの曲は主題歌と劇中歌ですね。どこで流れるのかも、曲作りをするうえでポイントだったのかなって。
ナナヲ 最初はどっちがどうなるかとか、どこで流れるのかがわかっていなくて。とりあえず2曲を作ってみようという感じだったんです。夏という大きな題材で「二度目の花火」を作り、「陽傘」は主人公の女の子2人の葛藤や関係性をよく表した楽曲になっていたので、前者が主題歌で後者が劇中歌になりましたね。
――作詞作曲をされたのは、どちらもシンガーソングライターの澤田 空海理さんです。まず「陽傘」が届いたときは、どんな印象を受けました?
ナナヲ 率直に天才か!と思いました。歌詞といいメロディの美しさといい、すごく好きな感じだったんですよ。世界観というか纏っている空気感が、中高時代にナナヲが聴いて救われていた楽曲の感じなんですよね。
だから当時のことを思い出したし、この曲を聴いてくれた10代とか20代前半の子が救われると言ったら大袈裟かもしれないけど、「これを聴けて良かった」と思ってほしいなって思う曲になりました。
――救われると思うポイントは、特にどこで感じます?
ナナヲ 小学生のときって、みんな怖いもの知らずで無敵だと思うんですよ(笑)。でも中学生になってから先輩後輩みたいな関係値が突然出てきたり、臆病になって失うものもどんどん多くなる。“見えない敵をつくったって 決して生きやすくはならなかった。”というフレーズがすごく好きなんですけど、本当にそうなんですよね。誰かのせいにしようとしても、結局は何も解決しないし、大人じゃないから現状を変えることなんてできない。子供のときって自分の無力さをすごく感じやすいと思うんですよ。逆に、ここまで弱さと未熟さを言葉にせず、鮮明に表現しているのが素晴らしい。こういう曲って、きっと助けになると思うんですよね。
――これって自分だけが抱えている心の闇なのかと思ってしまうと、どうせ他人には理解されないから打ち明けることもできない。そんな袋小路な状態のときに、自分だけじゃないんだと思わせてくれる曲があると、それは救いになりますよね。
ナナヲ 本当にそう。やっぱり“自分の歌がある”って救いになると思うんですよ。これが誰かの自分の歌になってほしいですね。
――「二度目の花火」はどんな楽曲になっていますか。
ナナヲ これはサウンドも歌詞も含めてすべてが王道。映画の内容が女の子2人のもどかしい関係性を表現した作品なので、そこも含めて聴いてもらうと、苦しい感じをより一層楽しんでもらえると思います。でも、それを抜きにしても恋をしたことがある人なら、誰でも胸にチクチクくるストーリー構成になっているので、上手くいかなかったデートの帰り道に1人で聴いてほしい(笑)。
――短編小説のような構成ですよね。
ナナヲ そうなんですよね。ストーリー性が高い歌詞で、シンプルにすごいなと思います。“八月、人混み。合わない歩幅すら、いつか思い出になる。”の箇所はもう天才。今だから「そうだよな!」と思えるんですけど、今恋をしている人はチクチクと辛すぎてわからないと思うんですよ。だけど2、3年後には「ここの3行、まさにそうなんだよな」と気づいてほしいです。
次ページ:“ナナヲアカリをする”ことを見出した
“ナナヲアカリをする”ことを見出した
――改めて「恋愛脳 / 陽傘」はどんな1枚になりましたか?
ナナヲ ナナヲの幅の広さを1枚で感じてもらえるのはもちろんのこと、恋愛というテーマで1枚にまとまった作品になっているから、すごくもどかしい気持ちでめちゃめちゃになって、悲しくなってほしいですね。心を掻き回されて、1枚聴き終わったときに「わ~……疲れたな」と良い意味で感じてもらいたい。
――どの曲もナナヲさんなんだけれど、どれも違う表情という。
ナナヲ そうなんですよね。そこが面白いと捉えてもらえるか「なんだこいつは?」と思われるかのどっちかなんですけど(笑)。
――でも、昔は「これも自分です」じゃなくて「これが自分です」を求めていましたよね?
ナナヲ そもそも自分で作詞作曲をしてきた人間だから、楽曲提供してもらうことに戸惑いがあって。当時は1人でやることがすべてだと思っていたんです。でも先ほど言ってくださったように、今はプロジェクトとして自分のためはもちろん、誰かの何かのために作ることのほうがすごいなって理解しました。そこがわかってから、“ナナヲアカリをする”ことに意味を見出せた。そこの役割を理解してから、「これも自分なんだ」と受け入れやすくなった。最初は1人ぼっちこそが最強だと思っていたんですけど、そこの認識を飛び越えたから変われたんだと思います。
――「ナナヲアカリをする」っていう言葉が面白いですよね。
ナナヲ ふふふ。私は、ナナヲアカリをしてます。
――つまり自分100%の音楽ではなくて、この作品のためにとか誰かのためにやってる音楽ってことですよね。
ナナヲ そういうことです。それこそナナヲアカリというプロジェクトをやってる感覚です。
――ちなみに、今後はナナヲアカリという存在をどう広めていきた……。
ナナヲ んふふ。
――なんですか?
ナナヲ 難しいですよね、その質問。絶対に聞かれるじゃないですか?最後にどうなりたいですか?って。ないんですよね!
――ハハハ。
ナナヲ 友達とご飯を食べてるときも「必ず将来の夢とか聞かれるけど、ないんだよね!」と言っていて。本当にないんですよ。ナナヲアカリが広まったら嬉しいのかな……?そのへんもわからないんですよね。どうなったら自分が嬉しいのかがわからない。今でこそ不思議な体験をしているのに、これ以上不思議なことなんて想像できない。きっとナナヲアカリをどれだけ続けられるか、だと思うんですよ。もしかしたら来月で終わるかもしれないし、はたまた10年やれるのかもしれないんですけど、そのナナヲアカリ・チャレンジをずっとしてるだけだと思います。
――自分で聞いておいてアレですが「将来の夢」や「今後の展望」って本当に難しいですよね。
ナナヲ 難しい!
――答えている自分もしっくりこないというか。
ナナヲ (手を叩きながら)そう!今までは一生懸命考えて「広い会場でやりたい」と言ってみたんですけど、実際に思ったことはあんまりないので(キッパリ)。ナナヲアカリ・チャレンジを頑張ります!ってことにしといてください(笑)。
INTERVIEW & TEXT BY 真貝 聡
●リリース情報
ナナヲアカリ 5th シングル
「恋愛脳/陽傘」
発売中
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【アーティスト盤:完全生産限定盤(CD+BD)】
価格:¥5,200(税込)
品番:AICL-4260~4261
※トールサイズデジパック仕様
※ナナヲアカリ折込ミニポスター付
<CD>
1.恋愛脳
2.陽傘
3.二度目の花火
4.恋愛脳(Instrumental)
5.陽傘 (Instrumental)
6.二度目の花火 (Instrumental)
<BD>
・ナナヲアカリワンマンライブツアー「NNNN」@ EX THEATER ROPPONGI 2022.1.16
1.Opening
2.ビビっちゃいない
3.ハッピーになりたい
4.おばけのウケねらい
5.ヒステリーショッパー
6.眠らない街、眠りたい僕
7.妄想ハッピーエンド
8.ホントのことを言うのなら
9.ランダーワンド
10.Youth
11.ラブみ
12.アイがあるようでないようである
13.チューリングラブ feat.Sou
14.ディスコミュ星人
15.Higher’s High
16.雷火
17.ダダダダ天使
18.なんとかなるくない?
Encore
19.学校だるい学校だるい学校だるい
20.メルヘル小惑星
・リスアニ!LIVE 2022 -2022.1.23 SUNDAY STAGE-
1.ワンルームシュガーライフ
2.Higher’s High
3.チューリングラブ feat.Sou
【アニメ盤:期間生産限定盤(CD+BD)】
価格:¥1,800(税込)
品番:AICL-4262~4263
※TVアニメ「Engage Kiss」キサラ描きおろし4面紙ジャケット仕様
<CD>
1.恋愛脳
2.陽傘
3.二度目の花火
4.恋愛脳 -キサラ(CV:会沢紗弥) ver. –
5.恋愛脳 -TV size ver.-
<BD>
・TVアニメ「Engage Kiss」ノンクレジットエンディング映像
・リスアニ!LIVE2022 -2022.1.23 SUNDAY STAGE-
1.ワンルームシュガーライフ
2.Higher’s High
3.チューリングラブ feat.Sou
●作品情報
オリジナルTVアニメーション『Engage Kiss』
エンディング・テーマ:ナナヲアカリ「恋愛脳」
【放送情報】
TOKYO MX 7月2日(土)より 毎週土曜24:30~
とちぎテレビ 7月2日(土)より 毎週土曜24:30~
群馬テレビ 7月2日(土)より 毎週土曜24:30~
BS11 7月2日(土)より 毎週土曜24:30~
ABCテレビ 7月2日(土)より 毎週土曜26:30~
メ~テレ 7月2日(土)より 毎週土曜26:30~
※放送日時は変更になる可能性がございます。
【配信情報】
dアニメストアにて7月2日より毎週土曜25:00~配信開始。
他各配信プラットフォームでも7月5日より順次配信。
(C)BCE/Project Engage
●ライブ情報
ナナヲアカリワンマンライブ 「DELICIOUS HUNT TOUR 2022」
9/10(土)広島・SECOND CRUCH
9/11(日)香川・DIME
9/18(日)愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
9/19(月・祝)大阪・BIG CAT
10/16(日)東京・EX THEATER ROPPONGI
開場17:00 / 開演 17:30(大阪・東京のみ18:00開演)
【チケット料金】
全自由:¥5,500(税込)
関連リンク
ナナヲアカリ
公式サイト
https://www.nanawoakari.com/
公式Twitter
https://twitter.com/nanawoakari/
公式YouTubeチャンネル
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