歌手・声優として活躍する熊田茜音が、アプリゲーム「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚」主題歌 第二弾となる新曲「VISIONS(feat.寺島拓篤)」を配信リリースした。TVアニメ『転生したらスライムだった件 転スラ日記』のOPテーマ「Brand new diary」に続き、寺島拓篤(作詞)×R・O・N(作曲・編曲)が制作し、しかも寺島をフィーチャリングアーティストに迎えた本楽曲。
悩み傷つきながらも前進する覚悟と意志を表現した、力強いロックチューンだ。アーティスト活動3年目の熊田が、この楽曲を通して見せてくれるビジョン、そして今思い描いているビジョンとはどんなものなのか?話を聞いた。

ライブでの経験が気付かせてくれた“音楽”の奥深さ
――今回は10月28日に配信された「VISIONS(feat.寺島拓篤)」についてお話を伺っていきますが、その前に近況をお聞きしたいです。最近はライブイベント続きとのことで、いかがですか?

熊田茜音 「ライブがたくさんできるアーティストになりたい!」とスタッフさんにずっと話していたので、今年はたくさんライブをやらせてもらって嬉しいです。ライブを重ねるたびに「もっとこうしたい!」「できることを増やしたい!」と感じていたんですけど、“リスアニ!LIVE SPECIAL EDITION アキヤスミ”のステージ直後に担当プロデューサーから「自分の音楽に何が足りないか理解していない」「音楽についてもっと学びなさい」と喝を入れられて……それがきっかけで真剣に音楽の勉強を始めました。

――音楽の勉強とは具体的に?

熊田 今までは歌の練習をメインに頑張っていたんですけど、楽器の音を聞き分けられる耳を育てようと思って、自分の楽曲の楽器ごとの音源をいただいて、個々の音を聞き込んでいます。完成版と比較して聴いてみると「ここはこんなふうにベースが鳴っていたんだ」といった気付きも増えて。ほかにもYouTubeで即興ドラムの動画(初めて聴いた楽曲のドラムを即興で演奏する動画)を見たりして、ちょっとずつなんですけど音楽の聴き方が変わってきました。最近は何気なく耳に入った曲に対して「この曲、ドラムがかっこいい!」とか感じるようになって、音楽を聴くのがより楽しくなりました。

――耳が鍛えられていくことで、歌のアプローチが変わっていきそうな予感はありますか?

熊田 すごくあります。それこそデビュー曲の「Sunny Sunny Girl◎」はずっと歌ってきた曲ですけど、デビュー3年目にして「サビのキメの部分で音が鳴ってたんだ」と気付きました(笑)。

――今!?

熊田 はい(苦笑)。
今まではどちらかというと、目の前にいる方にどう届けるかという感情を重視していたんですよ。でも、イベント後の反省会でプロデューサーから「「Brand new diary」の最初のところでお客さんがクラップしてくれるのは何でかわかる?」と聞かれた時、私は今まで自分の楽曲も感覚で捉えてきたから、その理由を説明することができなくて。あとから気付いたのですが、あの部分ではバスドラムがわかりやすく鳴っているから、会場にいる人はそれに合わせて手を叩いてくれるんですね。言われた直後は、めったに落ち込まない私がすごく引きずるくらいだったんですけど(苦笑)、でも、これで聴こえる音が増えてまた一歩成長したし、今はバンドの生演奏をバックに2ndライブをしたいという想いがあるので、あのとき厳しいことを言ってもらえて良かったです。



――愛のムチですね。その勉強を経て、歌い方やステージでの感覚は変わったりしましたか?

熊田 最近スタッフさんから「後ろの音を意識しているのが伝わってきたよ」と言っていただけたくらい、すごく変わりました。あと、10月17日に行われた“maruxenon Live Vol.53「夜間飛行」”というライブで生バンドさんと歌う機会があって、そのときはゆったりとした空間で歌ったんですけど、初めて合わせたバンドさんから「僕たちの音を聴いてくれてありがとう」と言ってもらえたんです。今までバンドさんからそういった言葉を言われたことがなかったし、これまでも音は聴いていましたけど、「今ここで音がゆったりしたな」といった大枠でしかわからなかったんです。それが今回、「今バンドさんが遊んでくれているから、ちょっと乗っかっちゃおう」とか、キメをつくるためのギターソロを私からバンドさんに提案することができて。特に提案は今まで一切できなかったので、言うときは身体がすごく震えたんですけど(笑)、「どんどん言っていいよ」と受け入れてくださって、「音楽はこうやって一緒に作り上げていくものだったんだ」ということに気付けて良かったです。

――先ほどおっしゃっていた、“2ndライブは生バンドをバックに歌いたい”という目標に向けて、すごく大きな成長ですね。

熊田 3年間気付けなかったので、今から超特急で追いかけていきます!ただ、最初に感情を優先させていたのは自分の性格を考えると良かったとも思っていて。
私の場合は先に技術を磨いてしまうと、多分そればかりを気にして魂を込めて歌えなくなっていたかもしれないので。ファンの方との絆をさらに深めてもっと一緒に遊びたいと思うので、今回切り替えられてことはすごくプラスになりました。

――今までそういったことに気付けなかったのは、熊田さんはデビュー直後から新型コロナウイルスの影響でライブをする機会があまりなかったことも大きかったのかもしれないですね。

熊田 たしかに。最近になってようやく有観客でライブができるようになって、改めてお客さんと一緒の空間にいることの温かさを感じています。“会いたいのに会えない”を積み重ねたからこそ、漏れ出る笑いやクラップといったものすべてが楽しさに転がっていくのをより強く感じますね。やっぱり私のほうが元気をもらっているし、音楽を勉強している時間もファンの方と楽しむためと思えば楽しいですし。

自問自答しながらも前へ――新曲が示してくれたビジョン
――ここからはアプリゲーム「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚」(以下、「まおりゅう」)の主題歌「VISIONS(feat.寺島拓篤)」について聞いていきます。「Brand new diary」に続き、自身2作目の『転スラ』関連のタイアップということで、「Brand new diary」の流れを汲んだ作家陣・曲調になっていますが、お話を聞いたときの第一印象を教えてください。

熊田 すごく嬉しかったですし、びっくりしました。『転スラ日記』の主題歌を歌わせていただけたことが自分の中ですごく大きい出来事だったので、まさかもう1回あるとは思っていなかったんですよ。しかも「まおりゅう」の主題歌というのも嬉しかったですし、「Brand new diary」で作詞をしてくださった寺島さんが今回も作詞をしてくださるうえに、フィーチャリングアーティストとしても参加いただけると聞いて「ええっ!?」と驚いてしまって(笑)。


――「Brand new diary」のときは、寺島さんが作詞をすることはサプライズで教えられたわけですけど、今回もある意味サプライズだったわけですね。楽曲を受け取ったときの印象はいかがでしたか?



熊田 やっぱり「Brand new diary」の雰囲気を少し感じましたね。同じ音ではないのに、こんなに(雰囲気を)受け継ぎながらも違う形になっているというか。楽曲を受け取ったときはまだ歌詞が入っていなかったのですが、最初のピアノの切ない部分や、2番途中の掛け合いの部分など、(作編曲を担当した)R・O・Nさんらしさを感じて、すごくワクワクしました。

――そこから寺島さんの歌詞を受け取ったときはどう感じましたか?

熊田 1度ご一緒しているというのもあって、「Brand new diary」よりも歌詞が少し大人っぽいなと思いました。

――自分もそう感じました。

熊田 そうですよね!「Brand new diary」のときもそうだったんですが、寺島さんは作品愛がすごく強い方なので、作品に寄り添ったワードを引っ張ってきてくださるんですけど、“熊田茜音の歌”として歌ってもファンの方に届けられるように歌詞を作ってくださったんです。『転スラ』に寄り添いつつ、しっかり熊田茜音の曲として成立している。少し大人になったと思ってくださったのかな。

――「Brand new diary」のときよりも「VISIONS(feat.寺島拓篤)」はもう少しリアリティが増した気がします。

熊田 たしかに「Brand new diary」はポジティブワードで固められていて、サウンドも全部キラキラしているんですけど、「VISIONS(feat.寺島拓篤)」はしっとりとして大人っぽい感じがあります。歌詞も少し内にこもるような感じで、例えば“未開の感情は手強くて 自問自答グルグル巡ってる”という部分は、「Brand new diary」のときには出てこなかった言葉だと思うんですよ。
その当時の私は「何も考えずに一歩前へ!」という感じだったので(笑)。ちょうど自分も問題を1つずつ乗り越えていこうと考えているときにこの歌詞をいただいたので、とても共感しました。それが「まおりゅう」ともリンクしていて。主人公のリムルが敵と戦い自問自答しながら、色んな出来事を経て、一番いい形で友好関係を築き上げていく。あと、「まおりゅう」の戦闘シーンのかっこ良さやクールさがサウンド感にも出ているなと思っています。

――個人的に「VISIONS(feat.寺島拓篤)」は、2月に発売された熊田さんの1stアルバム『世界が晴れたら』で描かれていた心情、「いいんだよ」のように“悩んでしまうこと自体も肯定しながら進んでいく”というテイストを経て作られた印象を受けました。

熊田 アルバムの話になってしまうんですけど、“熊田茜音として出す1stアルバム”としては、少し異色だったと自分では思っていて。元々は「Sunny Sunny Girl◎」のような、“元気・ポジティブ・明るい・爽やか”という側面を見てもらいたいと思っていたので、自分が作詞をした「くらげ」のように、等身大な自分を見せるのは悩んだんです。「こんなに自分を出して大丈夫かな?」って。でも、かっこつけずにさらけ出したことが「VISIONS(feat.寺島拓篤)」に繋がったし、おかげでパフォーマンスも素直になりました。

――そういった意味で、この曲からは今の熊田さんらしさをすごく感じます。特に1番の歌詞。


熊田 すごく嬉しいです。ちなみに1番の歌い出しの部分は結構録り直したんですよ。気持ちを吐露するような歌詞(“朝日が照らした憂鬱なFace 理想の自分には遠いな”)だったので、映像が浮かび上がるくらい感情を込めて歌うようにしようとディレクターさんと話をして。でも、この部分の映像を思い浮かべるということは、何か嫌なことを思い出さなきゃいけないから辛いじゃないですか。だから最初は1番の歌い出しの部分はサラッと録って、それ以外の部分を楽しく録り終えてから再度そこを歌ったんです。押し付けがましくならない、ちょうど良い塩梅を出すのにすごく時間をかけました。

――もしかしたら、寺島さんはアルバムを聴いたうえでこの歌詞を書いたのかもしれませんね。

熊田 もしそうだったら嬉しいです。歌詞に現実感があるのも、私自身が変わろうとしているのを寺島さんが汲み取ってくださったんだと思いますし。以前の自分だったら、壁にぶつかったときは「駄目だ!うわーん!」という感じだったんですけど、今は「駄目なら別の方法でやってみよう」と考えられるようになったんです。それを実行できるかは別の話ですし、結局真っ直ぐにしか進んでないんですけど(笑)、一旦違うところに行ってから戻ってこようと考えられるようになりました。

――ちなみに、この楽曲は寺島さんもフィーチャリングアーティストとして歌唱参加していますが、レコーディングはどういった形で行われたんですか?

熊田 残念ながらご一緒はできなくて、寺島さんが先に録って、私がそれを聴きながら歌うという感じでした。
寺島さんは音遊びがすごく上手なんです。特に英語の歌詞のアクセントや発音がすごく気持ち良くて、「そうくるんだ!」と思いましたし、私が悩んでいる箇所に対して、先輩として「こういう歌い方もあるよ」と道案内をしてくれるような感覚でした。あと、単純に同じ歌詞を歌っていても、込めている感情や持っているものの重さが全然違うから、深みがすごくて。特に掛け合いの部分は一緒に歌って1つの言葉になっているので、(ディレクターから)「そこだけ調子良いね」と言われました(笑)。でも、引っ張られる力を感じたのは初めてかもしれないです。キャラソンの場合はキャラとしてのぶつかり合いなので。

――そういう意味では、寺島さんのリードによって“新しい熊田茜音“がこの曲には表れているのかもしれませんね。

熊田 出ていると思います。この曲はライブ映像も撮影させていただいて、実際にマイクを持って寺島さんと一緒に歌っているんです。そのときに初めて寺島さんと一緒に歌って、歌の最後の部分は寺島さんに支えていただきながらも全然違う形で「新しい未来に向かって進んでいってやる」という、自分主導の意思をすごく出せました。あとは全然打ち合わせしていないのに歌っているときに目が合ったりして。一緒に歌わせていただいたことでやっと完成したと思いましたし、早くライブで歌いたいなと思いました。

――ライブでないと気付かないものもあるでしょうから、その意味では「VISIONS(feat.寺島拓篤)」がライブでどう育っていくのか楽しみですね。

熊田 本当に楽しみです。勝手な予感なんですけど、ライブで「VISIONS(feat.寺島拓篤)」を歌ったときに何かが変わっていくんだろうと、なんとなく思っています。

――それでは最後に、「VISIONS(feat.寺島拓篤)」というタイトルにかけて、熊田さんはこれから先のアーティスト活動に対してどんなビジョンをお持ちですか?

熊田 ここ最近は、もっと歌をうたっていきたいと改めて感じています。色んなことに興味を持つタイプだし、色んなことが経験に繋がっていくと思っていますけど、やっぱりライブをしているときが一番楽しいし、自分の中で歌に対する気持ちは特別で。どうしても楽しいんですよ。

――「どうしても楽しい」って熊田さんらしい言葉ですね(笑)。

熊田 めちゃめちゃ叱られてもいんです。しょうがない!だって好きなんですもん。ファンの方と一緒に音楽で遊んでいる時間が1番楽しいから、未来でもずっと歌っていたいなと思いますし、とにかくライブをたくさんしたいです。

――それこそ、楽器の音を気にして聞けるようになったことで、こういうライブをしたいという理想をより具体的にしていけるはずですしね。

熊田 確かに、段々やりたいことが明確になってきた気がします。この前、ファンの方に「“元気で明るい熊田茜音”だけじゃない部分からも元気をもらっています」と言ってもらえたんです。「えっ!そうなの!?知らなかった!」と思って(笑)。なので、元気なライブだけじゃなくて、しっとりなライブも、ロックに振り切ったライブも、DJイベントのような縦ノリで楽しめるライブも全部やりたいです。今までは「色んなことをやりたい」でしたけど、これからは「“音楽の中で”色んなことをやりたい」と思います。

INTERVIEW BY 北野 創(リスアニ!)
TEXT BY 河瀬タツヤ

●配信情報
「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚」主題歌 第2弾
「VISIONS(feat.寺島拓篤)」

作詞:寺島拓篤 作曲・編曲:R・O・N
歌:熊田茜音
配信URLはこちら

©川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会©柴・伏瀬・講談社/転スラ⽇記製作委員会
©Bandai Namco Entertainment Inc. Developed by WFS

●リリース情報
『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』
「永遠の絆」
2022年11月25日発売

【流通限定盤(ドラマCD付)】
品番:LACZ-10119~20
価格:¥3,300(税込)

【通常盤】
品番:LACA-25024
価格:¥2,420(税込)

<CD>

Disc1
1.Make Me Feel Better(『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』 主題歌)
作詞・作曲:Misaki (SpecialThanks) 編曲:小山 寿
歌:MindaRyn
2.浄歌(『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』 挿入歌)
作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:加藤裕介
歌:TRUE
3.SPARKLES(『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』 挿入歌)
作詞・作曲・編曲:R・O・N
歌:STERO DIVE FOUNDATION
4.VISIONS(feat. 寺島拓篤)(スマートフォンゲームアプリ『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚』主題歌 第二弾)
作詞:寺島拓篤 作曲・編曲:R・O・N
歌:熊田茜音
5.CALL YOUR NAME
作詞:松井洋平 作曲:丸山真由子 編曲:清水武仁
歌:リムル(CV.岡咲美保), 三上 悟(CV.寺島拓篤)
6.Make Me Feel Better (Instrumental)
7.浄歌 (Instrumental)
8.SPARKLES (Instrumental)
9.VISIONS feat.寺島拓篤 (Instrumental)
10.CALL YOUR NAME (Instrumental)

Disc2
ドラマCD 「ヴェルドラとミリムのお留守番」(流通限定盤のみ)

【初回生産分限定封入特典】
スマートフォンゲームアプリ
「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚(まおりゅう)」
“★4以上確定スカウトチケット”シリアルコード入りチラシ封入

関連リンク
熊田茜音 公式サイト
https://kumaka.jp/

熊田茜音 公式Twitter
https://twitter.com/official_kumaka

「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚」公式サイト
https://ten-sura-m.bn-ent.net/

「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚」公式Twitter
https://twitter.com/tensura_m_game
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