INTERVIEW & TEXT BY 沖 さやこ
「Exist」とOPテーマ「1」の密接な関係性
――『モブサイコ100 Ⅲ』第4話と第6話のEDテーマになった「Exist」は、OPテーマ「1」の電子音と同じキーとテンポのピアノが入っていて、同じメロディの箇所があるなど共通点も多く、「1」と「Exist」が双子の兄弟のような印象を受けました。
松田章男 実は「1」と「Exist」は同じコード進行を原型にした曲なんです。当初は「OPテーマとEDテーマを同時にかけると1つになる」、という仕掛けを思いついて作曲チームに相談したのですが、それをやってしまうと縛りが多くなってしまい、どちらも中途半端になってしまう可能性が高いという意見をいただいたんです。それでまず「1」を仕上げることにしました。その後、「1」と同じコード進行でEDテーマを制作してみたらどうかと打診して、出来上がったのが「Exist」ですね。OPとEDで、モブと裏モブの関係を作れたらという思いはありました。
――では「Exist」は、もう1つのEDテーマの「コバルト」よりも先に出来ていたのでしょうか?
松田 そうです。当初は「Exist」をEDテーマに使うつもりだったんですけど、最初に上がってきたデモの雰囲気がだいぶシリアスで、立川(譲)総監督とも「番組の最後に毎回掛かるには少し重たいかもしれない」という話になって。そこで候補曲の中から「コバルト」が選ばれたんです。
――sanaさんはボーカリストとして「Exist」とどう向き合いましたか?
sana 自分にとってもチャレンジの大きな楽曲でした。松田さんがおっしゃったようにモブくんと裏モブくんの要素をどちらも感じさせるような、二面性を出せるように意識をして。
松田 「コバルト」はどちらかと言うと俯瞰で見たモブの青春像を描いているので、サウンドもストレートなロックに落とし込んでいて。だからボーカルのスタンスもsanaさんの感じたままに歌っていただいたんです。でも「Exist」はモブくんが意志を固めて神樹に1人向かうという決意のシーンで流れる楽曲なので、その心情を歌にも込めてほしいとオーダーしました。
sana 「原作のこの辺りのシーンで流れるのかな」とイメージしながらのレコーディングでした。感情のぶつかり合い、もどかしさを出せたらいいな……と。形になっていたらいいんですけど。
松田 大丈夫。
sana 良かった(笑)。このインタビューを受けている時点ではどんなED映像になっているのかはわからないんですけど、松田さんの考えていたことがどうアニメにハマるのかを放送で観るのがすごく楽しみなんです。
松田 ありがとうございます。常に本編と二人三脚で主題歌を作ってこられたのも、歴代主題歌の関係性を作れたのも、sanaさんが1期から通して主題歌のメインを担ってもらえたからだと思っていますね。
これまでの主題歌が『モブサイコ100』キャラたちの成長ともリンクした
――2016年にTVアニメ1期がスタートして、当時高校生だったsanaさんもボーカリストとしてのキャリアを重ねています。松田さんはsanaさんの成長をどうご覧になっていますか?
松田 sanaさんも1期のときは未知の新人という状態だったので、無我夢中だったんじゃないかと思います。最初のレコーディングで悔しい思いをしたと思うし。
sana ほんと、とんでもないことをしたと思います……。「99」のレコーディング前日にプレッシャーで体調不良になってしまって。当日スタジオには行ったもののちゃんと歌えるわけもなく、「今日録るのは難しいね。日を改めよう」という話になったんです。
松田 それくらい右も左もわからないなか、ボーカリストとして奮闘してくれたと思います。そんな高校生の女の子が「37」名義でシンガーのキャリアをスタートさせて、その後にsajou no hanaというバンドを組んで、そのバンドと一緒にボーカリストとして『モブ』に帰ってきたのが2期の「MOB CHOIR feat. sajou no hana」ですね。sanaさんの成長がそのまま『モブ』の主題歌に反映されている。それが『モブ』の登場人物の成長ともリンクしているといいなと思います。
sana あの時はsajou no hanaとしてデビューをしたばかりで、バンドもちょっとダークな曲が多かったり、今後どんな楽曲を発信していこうかとミーティングを重ねていた時期だったんです。sajou no hanaも『モブ』と関わらせていただいて曲の幅が広がったので、バンドにとってもいいきっかけになりましたね。
松田 「MOB CHOIR feat. sajou no hana」として『モブ』に帰ってきたsanaさんは、アーティストとしてデビューしたという自覚を持ったボーカリストだと思いましたね。それから3年経って、今回の3期はボーカルの表現力がさらに豊かになったなと感じています。こちらからのオーダーを自分なりに噛み砕いて表現してくれる、それは1期の段階ではできなかったことだと思います。技術力も備わってきているからこその表現力だと思いますし、度胸も据わってきている。この6年でとても成長していると思います。
sana やっぱり1期のときは自分のことしか考える余裕がなかったんですよね。でも2期でバンドで『モブ』に帰ってきて、それを経てボーカリストとしてより作品と向き合えるようになったとすごく実感していて。今回は『モブサイコ100』のためにすべてを出さないと!という大きな責任を感じながらのレコーディングでした。普通なら1期の時点で「大事なレコーディングをすっ飛ばすような子、もう使えない!」となっちゃうと思うんですよ。それでも2期、3期と皆さんとのあたたかいご縁で続けさせていただけて……。だから『モブサイコ100』にちゃんと恩返ししたいです。
――sanaさんの成長とMOB CHOIRは切っても切れない縁なのかもしれませんね。
sana これまでMOB CHOIRを通していろんなジャンルの曲にチャレンジさせていただきましたが、モブくんがいろんな人と関わって経験を重ねていくことで自分の中に生まれる感情を知り、どんどん成長していく姿を見ながら、私自身も自分の中のいろんな感情に触れ、曲を通してたくさんの引き出しができました。MOB CHOIRはボーカリストとしてもいち人間としても成長を感じられる場所になっています。
――『モブサイコ100 Ⅲ』の放送も折り返し地点を迎えましたが、改めてお二人の今のお気持ちを聞かせていただけますでしょうか。
sana 3期はモブくんの周りの仲間たちもそれぞれが主人公となっている話だと思うんです。みんながどんどん成長していくので、観てくださる皆さんには登場人物全員を見逃さず、それぞれの変化や表情に注目してほしいですね。
松田 3期も非常にいいエピソードがたくさんあるので、楽曲と合わせて楽しんでもらえたらと思いますね。物語はまだ続くので、『モブサイコ100 Ⅲ』の最終回をファンの皆さんと見届けたあとにどんな心境になるのか、自分でもすごく楽しみです。
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●リリース情報
MOB CHOIR
「1」
デジタル配信中
<収録曲>
01. 1
作詞:六ツ見純代 作曲・編曲:前口ワタル
02. コバルト
作詞:六ツ見純代 作曲:amazuti(KEYTONE) 編曲:渡辺拓也
03. Exist
作詞:六ツ見純代 作曲・編曲:前口ワタル
04. 1(Instrumental)
05. コバルト(Instrumental)
06. Exist(Instrumental)
07. 1(TV EDIT)
08. コバルト(TV EDIT)
09. Exist(TV EDIT)
●作品情報
『モブサイコ100 Ⅲ』
毎週水曜 24:00~TOKYO MXほかにて放送中
毎週水曜 25:00 Prime Videoにて見放題独占配信中
<あらすじ>
学校生活に除霊のアルバイトと、忙しい日々をおくるモブ。
一方、霊幻は新人所員・芹沢と、霊とか相談所に次々と舞い込む奇妙な依頼に奔走している。
そんな中、街の中心にそびえ立つ巨大なブロッコリーは、いまや“神樹”として崇拝され街の人々を魅了していた。
再びモブの前から姿を消したエクボに、新たな盛り上がりを見せるサイコヘルメット教……。
街の危険を察知したモブたちはブロッコリーへと向かう。果たして神樹の中では何が起きているのか……!?
“1 and Only One”友情、恋、そして自分自身―― モブの青春が爆発するシリーズ第3弾!
<MOB CHOIR>
『モブサイコ100』のために作られた音楽ユニット。メインボーカル=sanaと楽曲ごとに変わるアーティスト、スタッフによるコーラス編成を加えて構成されている。アニメ第2期では「sajou no hana」とコラボレーション。OPテーマ「99.9」ではキタニタツヤ、エンディング「メモセピア」では渡辺 翔がサウンドプロデュースを手がける。
© ONE・小学館/「モブサイコ100 Ⅲ」製作委員会
関連リンク
『モブサイコ100 Ⅲ』公式サイト
http://mobpsycho100.com/