様々な“血の通った音楽”を昇華し、比肩なきグルーヴを体現するバンド、ALI。TVアニメ『呪術廻戦』のED テーマであり、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の入場曲としても使われた「LOST IN PARADISE feat. AKLO」を筆頭に、ワールドワイドにその音楽を響かせている。
そんな彼らが、TVアニメ『ゴールデンカムイ』第4期のOPテーマとして「NEVER SAY GOODBYE feat. Mummy-D」を書き下ろした。RHYMESTERのMummy-Dを客演に迎え、「いかにして人が死ぬか」というテーマと向き合ったこの楽曲がどのように生まれ、『ゴールデンカムイ』と力強く共振するに至ったのか。バンドのボーカリストでフロントマンのLEOに語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 三宅正一

提示されたテーマに、音楽家としての人生観を重ねて
――今回、『ゴールデンカムイ』第4期OPテーマのオファーが来たときの率直な気持ちはどうでしたか?

LEO 「週刊ヤングジャンプ」の連載も毎週読んでいて、ずっと好きな作品だったので、めちゃくちゃ嬉しかったですね。『ゴールデンカムイ』は今まで日本の社会や文化がタブー視したり、積極的に触れてこなかったアイヌ文化やそのルーツにも踏み込んでいて。ALIというバンドも日本で埋もれている、あるいは報われていない音楽ジャンルを昇華してそれを世に提示するというマインドを持っているので、僕の中で勝手に『ゴールデンカムイ』と通じるものを感じてるんです。でも、『ゴールデンカムイ』のストーリーには色んな側面があるので、今回、OPテーマのオファーをいただいたときにどこを切り取って曲として描こうかは悩んだし、その戦いがありましたね。

――そこからどのようにこの楽曲が立ち上がっていったんですか?

LEO 最初は「NEVER SAY GOODBYE」とは違う曲を(アニメ制作サイドに)提出したんです。そのもう1つの楽曲は、多幸感が強い感じで……僕の中で『ゴールデンカムイ』の第4期は起承転結の“転”に入り、物語がカオスに向かっていく段階だと思っていて。多幸感に包まれながら色んなキャラクターがカオスに向かう瞬間を曲で描こうと思ったんですね。でも、その曲は先方が求めていたものと違ったようで。そのジャッジの連絡が来たのが楽曲提出の締め切りの前日だったんです。


――相当スリリングですね。

LEO 「これはヤバいぞ」となって。今、一緒に曲を作ってる(今作の共同コンポーザーである)宮田“レフティ”リョウとスタジオに入って新たな曲を作ることになったんですけど、全然曲ができなくて。困ったな、と思っていたところに「いかにして人が死ぬか」というテーマを先方からいただいたんです。今年、僕自身にも双子が生まれたこともあって、いかにして音楽家として生きて、そして終わっていくかということをすごく考えるようになったんですね。それで、そこにグッと焦点を絞って、締め切りまで残り時間が24時間という中、生まれてきたのが「NEVER SAY GOODBYE」だったんです。

――すごい話です。この曲の生まれ方がすでにものすごくドラマティックだったんですね。

LEO 奇跡でしたね。結果、制作サイドも喜んでくれるものになってよかったです。それと今ってKing Gnuとか米津玄師さんの新曲(「KICK BACK」)もそうですけど、オルタナティブなサウンドがトレンドになってるじゃないですか。オルタナティブは僕らもド世代なので。
この曲では僕らなりのオルタナティブに挑んだ実感があります。



――改めて、「NEVER SAY GOODBYE」で歌っていることは、道なき道を歩んでいるALIというバンドの生き様であり、LEOさんの音楽人生のリアルであるとも思います。

LEO ああ、そうですね。僕は10代の思春期のときに「葉隠」という武士道の本を読んでいたり、ロックスターとか三島由紀夫に憧れていて。そのときも「どうやって死ぬか」みたいなことはよく考えていたんです。

――それこそロックスターは27歳までしか生きられない、みたいな発想もあったり?

LEO そう、それもあったし、デビューできなかったら速攻死んでやろう、くらいに思っていて。

――でも、今は死ねない理由がいっぱいある。

LEO 本当にそうです。今思ってるのは「どうやったら100年後にも自分たちの音楽が残り、伝えていけるんだろう?」ということで。そのためにどうやって命を、音楽を次の世代に渡して紡いでいけるか。だからこそ、毎日1回は「もっとやれることがあったな」って反省してます。でも、振り返ると毎日必死に生きていて。
そのうえで「THE FIRST TAKE」もそうですけど、今はたくさんのチャンスをいただいているので、恩返ししていかなきゃなと思ってます。妻と双子の子どもと生活する中で音楽をどうやって作っていくかという環境にも今まさに挑んでいる段階で。楽曲制作においても、今までみたいに「何かが降りてくるのを待つ」というよりは、締め切りまでに「曲を仕留める」みたいな感覚になってます。生活が落ち着いてきたらもっと違うやり方もあると思うけど、今もこれはこれでジョン・レノンみたいで面白いなと思うんですよね。

LEOから見た『ゴールデンカムイ』の魅力の本質とは?
――「NEVER SAY GOODBYE」でMummy-Dさんを客演に迎えた経緯についても聞かせてください。ALI流のオルタナティブを体現するにあたっても大きなポイントだったと思いますが。

LEO まず、アニメ尺に合わせた1分半の曲を作ったんですけど、その時点ではMummy-Dさんを呼ぶことは決まっていなくて。この曲は、ジプシー感もありつつALIにとって初めてのバラードという捉え方もできると思うんですね。オルタナティブで踊れるバラードというか。僕のイメージとしてはエイジアン・ダブ・ファウンデーションやカサビアンに近いような曲だなと思っていて。で、いつかMummy-Dさんを自分たちの曲に迎えるのが夢でもあったので。無理かなと思いつつオファーしたら、「待ってました!」というテンションですごく喜んでくれて。
Mummy-Dさんにラップを入れてもらっている間に、曲のフル尺を作ろうとなって……Mummy-Dさんへの愛を爆発させようと思ってクンビア(コロンビアの民族音楽から派生したラテン音楽の1ジャンル)的な要素がサウンドに加わって。Mummy-Dさんには「いかにして死ぬか」というテーマを伝えて自由にリリックを書いていただきました。めちゃくちゃ丁寧なリリックを返してくれましたね。あと『ゴールデンカムイ』にも絡めて言うと、実はMummy-Dさんって歴史マニアなんですよ。さらに僕にとってMummy-Dさんは土方歳三だと思ってるんで(笑)。

――Mummy-Dさんのヴァースにおける“俺たちは皆Aliens”のラインはALI(Alien Liberty International)に対するエールでもありますよね。

LEO そう、ヤバいですよね。めちゃくちゃ愛を感じましたし、本当のプロですね。とんでもない曲になったなと思います。僕はずっと「海賊みたいなバンドをやりたい」と思って生きてきたんですけど、本当にそういうイメージのものが今回初めて作れたなと。『ゴールデンカムイ』には海賊房太郎というキャラクターもいて、そこにもハマったなと思いました。

――スリリングな制作があらゆる面に功を奏したと言えるかもしれない。


LEO そうですね。去年、バンドの活動休止中にすごい時間をかけて1曲を作ったりもしたんですけど、それが素晴らしいかといったらそうでもなかったり。それは「ミュージシャンあるある」っぽいですね。音楽家は時間があればあるほど、頭の中で鳴っている音を具現化したくなってしまうから。それは森が木で埋まっているようなもので。でも、本当の美しさは森の間から仰ぎ見る空の色とか、そこに棲んでいる動物の存在を通して見えたりするもので。そういう曲はもしかしたら今回のようにタイトなスケジュールの中でのほうが生まれやすいのかなと思ったりもしますね。ちなみに「LOST IN PARADISE」も1週間くらいでできた曲だったんですよ。

――改めて、LEOさんにとってのアニメ版『ゴールデンカムイ』の魅力も聞かせてください。

LEO アニメに関しては、「エンターテインメントとして人を幸せにできるか」という大きなテーマ性を強く感じます。そして僕たち日本人として密接なアイヌ文化をいかにして少しでも多くの人に届けるかという点においてもすごく工夫がされていて。他にもプロレス的な要素とか、色んな要素が入ってるんですけど……本質がハードコアなんですよね。
エンターテインメントであり、ハードコアで、ブルースだし、ロックンロールでもある。そういう作品だと思いますね。



――『ゴールデンカムイ』のファンからも曲に対するリアクションが届いていると思いますが、その辺りはいかがですか?

LEO 『ゴールデンカムイ』は日本のファンが多い作品でもあるから、僕も日本人として日本の人たちに届けたいという思いがいつも以上にあって。というのも、今までの活動や曲が届いている先は90%以上が海外の人たちで。それはもちろん嬉しいことなんですけど、同時に日本の人たちに届いていないという寂しさもあって。でも、今回は『ゴールデンカムイ』とのコラボレーションということもあり、日本の方たちのリアクションが多く届いていて。それがすごく嬉しいです。

――最後に今後のALIの展望についても語っていただけたら。

LEO 今、メジャー1stアルバムを作ってるんです。そこにこの「NEVER SAY GOODBYE」や「LOST IN PARADISE」、「Wild Side」といった今まで出してきたシングルが入ります。ただ、今は単にシングルの寄せ集めのようなアルバムよりも、アーティストが本当に作りたくて作ったアルバムのほうがちゃんと届くと思うんですよね。だから、そこにフォーカスを絞ることにして、アルバムの曲もほとんどできていた状況から、半分くらいボツにして作り直したんです。すごいアルバムができそうな予感があります。

――ライブに関してはいかがですか?「NEVER SAY GOODBYE」はスタジアムクラスの会場でも映えそうなスケール感がありますよね。

LEO そうですね。ライブについては去年サウジアラビアに行かせてもらったんですけど、11月に台湾に行ったり、他にも海外からのオファーがきていて。昔から世界中を回りながら音楽を届けたいというのがひとつの大きな夢でもあったので、それを丁寧に実現させつつ、日本でも2年以内に日本武道館まで辿り着きたいと思ってます。僕、ようやく売れたいなって思うようになったんですよ。これまでは「かっこいい音楽を作っていればそれでいい」と思っていたけど、フェスとかに出て色んな先輩方と接しているうちに本気で売れたいと思うようになって。このバンドは事件があって活動休止したり特殊なニュースばかりが先行していましたけど、ここからいいニュースばかり届けていきたいですね。頑張ります。

●リリース情報
ALI
「NEVER SAY GOODBYE」
2022年11月16日発売

【通常盤/CD】

品番:SRCL-12279
価格:¥1,320(税込)

【初回生産限定盤/CD+BD】

品番:SRCL-12277~12278
価格:¥3,520(税込)

<収録楽曲>
M1. NEVER SAY GOODBYE feat. Mummy-D
M2. LOST IN PARADISE feat. AKLO – from THE FIRST TAKE
M3. TEENAGE CITY RIOT feat. R-指定- from THE FIRST TAKE
M4. Wild Side feat. Kazuo – from THE FIRST TAKE

<初回生産限定盤 収録映像>
・LIVE AT BLUE NOTE TOKYO『LOVE, MUSIC AND DANCE 2022』
・TVアニメ「ゴールデンカムイ」第4期オープニング ノンクレジット映像

<商品の予約はこちら>

【ALIプロフィール】
ボーカルでリーダーのLEOを中心にした全員ハーフの多国籍バンド。東京/渋谷発。
FUNK、SOUL、JAZZ、LATINなどのルーツミュージックを ベースにHIP HOP、ROCK、SKAなどをミックスしたクロスオーバーな音楽性で注目を集めている。
TVアニメ『呪術廻戦』第1期EDテーマの「LOST IN PARADISE feat. AKLO」が日本のみならず世界的にバイラルヒットとなった。

●作品情報
TVアニメ『ゴールデンカムイ』第四期
第三十七話~第四十二話
Prime Videoにて見放題独占配信中

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

関連リンク
ALI公式サイト
https://alienlibertyinternational.com/

ALI公式Twitter
https://twitter.com/ALI_MUSIC_DANCE

TVアニメ『ゴールデンカムイ』公式サイト
https://www.kamuy-anime.com/

TVアニメ『ゴールデンカムイ』公式Twitter
https://twitter.com/kamuy_anime
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