デビュー8周年の“8”から“ハチ”=“Bee”(=“Be”)を連想し、“CHiCO with HoneyWorksのライブをあなたと一緒にみんなで楽しみましょう!”という想いを込めたタイトルを掲げたホールツアー“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks summer hall tour 2022「Bee with U」”。2022年7月の福岡・福岡国際会議場公演からスタートした今年のツアーは、東京、愛知を巡り、10月29日の大阪・オリックス劇場公演でファイナルを迎えた。


TEXT BY 阿部美香

CHiCO with HoneyWorksの確実な成長を感じた“「Bee with U」”ツアーを総括!
CHiCO with HoneyWorks(以下、チコハニ)がライブ活動を始めたのはデビューから2年後の2016年。HoneyWorksのサポートのもとフレッシュな新人アーティストとしてステージに上がっていたCHiCOも、毎年ライブを重ねるたびに歌もステージパフォーマンスも堂々としたアーティストらしさが滲み出るようになり、今年はついに8周年。CHiCO個人がシンガーとしてのスキルアップを果たしていると同時に、彼女を支えるチコハニバンドの“バンドらしさ”も毎年向上。毎回のライブが、それまでのチコハニの集大成とも言える内容を重ねてきたが、今年の“「Bee with U」”ツアーは、それに輪をかけた充実感に満ちていた。

ワンマンライブとしては、昨年夏~秋にかけて開催されたホールツアー“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks summer hall tour 2021 「SEVEN PiECES」”と東京・日比谷野外大音楽堂でその後行われた“「LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks summer hall tour 2021 SEVEN PiECES 秋の陣~我武者羅~」”以来、1年ぶり。7月18日の初日の福岡・福岡国際会議場公演から、しっかりとノリの良い気合いをぶつけていたのも、彼らのバンドとしての結束力の高まりを感じさせてくれた。翌週の“チコハニの聖地”東京・中野サンプラザホールでの2days公演では、両日ともオープニングアクトとして可憐なアイボリーが出演。その後、10月にリリースされた4thアルバム『iは自由で、縛れない。』で意外な選曲として、可憐なアイボリーの「ハンコウ予告」がカバーされていたのも、このときの共演を思い返すと、CHiCOが頼りがいのある先輩アーティストへと成長したようで、感慨深いものがあった。そこから約1ヵ月後の愛知・愛知県芸術劇場公演ではモチベーションをさらに高め、音楽を共有する楽しさを、何より彼ら自身が満喫していることが、リラックスしたMCからも感じられた。

MCでいうと、ツアー日程が進んでいくたびに、バンドメンバーの中西(g)のトークの迷走っぷりに手を焼くHiroki169(b)やCHiCOがキツめのツッコミを入れ、AtsuyuK!(ds)がそれらを取りなしているところを、宇都圭輝(key)やOji(g)が笑いながら見守る……というファンにはお馴染みとなりつつある光景も、このツアーではすっかり定着していた。フレンドリーなトークで笑わせる一方で、演奏になるとガラリと雰囲気を変える、メリハリの効いた“チコハニバンドらしさ”が、“「Bee with U」ツアー”ではより表れていた気がする。

前半から中盤はポップ&キュートな楽曲を中心に、後半はハードめで盛り上がる楽曲を中心としたキャッチーなセットリストも、飾り立てることなくシンプルに歌と演奏を届けることに注力。そこもこのツアーらしさだったと思う。そのテイストの違う楽曲のちょうど折り返し地点に、今までのライブではお目にかかれなかった“セクシーで大人っぽいCHiCO”を思いきり見せつけた「平成バブル」がフィーチャーされていたことで、CHiCOが積み重ねてきたアーティストとしての成長が、新鮮な驚きとともに胸に残されもした。

「ようやく会えた!」想いを込めた“「Bee with U」ツアー”単独ファイナル@大阪
そんな変化を届けつつ、“「Bee with U」ツアー”単独でのファイナルを迎えた10月29日、大阪・オリックス劇場。CHiCO with HoneyWorksの大阪ライブ会場としては、すでにファンにはお馴染みの場所だ。開演が近づく頃には、劇場前の公園にはたくさんのファンが集い、ツアーグッズのタオルを掲げたり、自分が持っているチケットを掲げて入口をバックに自撮りしている人の姿も見える。本来なら9月末に開催されるはずだったこの公演だったが、台風接近による天候不良により約1ヵ月延期。だからこそ「ようやくチコハニに会える!」という嬉しさとワクワク感が、どのファンの顔にも浮かんでいる。同じ想いは、CHiCOとバンドメンバーたちも感じていたに違いない。

開演の17時半。ステージのバックには、ツアータイトルの“Bee”を連想させる蜂の巣を模した六角形の模様が、CHiCO with HoneyWorksのロゴを囲むように配置されている。よく見ると、ステージの上のドラムやキーボードが置かれている台の床も、六角形にデザインされている。
カラフルなライトに合わせて、ダンサブルなBGMが会場にこだまして、手を振りながらバンドが入ってくる。ポジションについたAtsuyuK!が大きな身振りで観客を煽ると、すぐさま大きな手拍子が客席を包む。宇都圭輝がオルガンの音を奏で、クラップが最高潮に達した瞬間、ステージ中央の段差の上にCHiCOが登場。両手を挙げてクルクルと回り、左右にステップを踏みながら「冒険のVLOG」を軽やかに歌い、このツアーこそ全国各地を巡る楽しい冒険の旅だと、オープニングから宣言していた。2番に出てくる世界の地名は行く先々に合わせてコール。この日はもちろん「ヤッホー大阪!」だ。CHiCOの歌声に応えるように客席のペンライトがさらに大きく揺れる。このツアー中、すべての会場でCHiCOとファンが味わってきた最初の感動が、お待ちかねの大阪でパッと花開いた。

CHiCOのプライベートエピソードと共に幸せをお裾分け!
大阪に限らず、今回のツアーのセットリストは、同じポップなナンバーでもブロックごとに違ったテイスト、コンセプトを持ちながら、新旧の人気曲がまんべんなく披露されていたのも印象的だ。この日も2曲目に固定され、明るく元気なボーカルを響かせながら「さぁ、やってきた大阪ファイナル!」「みんな最高!」とCHiCOが満面の笑顔でシャウトした「LOVE FIGHT」は、今年2月にデジタルリリースされたばかりの新曲。大阪では5曲目に披露された「乙女どもよ。」は、会場によって「ぐる恋」や「ツインズ」といったハードポップな楽曲たちとチェンジして歌われるなど、随所にツアーならではのお楽しみが提供された。

そしてCHiCOが今だからこそ歌いたかったナンバーが連なるコーナーが、コンセプチュアルに盛りこまれていたのも“「Bee with U」ツアー”ならではの趣向だ。
それを最も感じたのは、MCから届けられた“結婚”、そして愛に溢れた“家族”をテーマにした「ミスター・ダーリン」「幸せ。」の2曲が、彼女のプラベートエピソートと共に歌われたことだ。

「私には、毎回ゲーム配信やらおしゃべり配信をすると絶対観に来てくれる友達がいるんですけど、その友達が今年の春に結婚式をあげて。ありがたいことにチコハニの楽曲を流してくれました。私の大好きな友達のそんな結婚式の幸せを、このツアー中、皆さんにお裾分けしてきました。大阪でも、今年こんな幸せなことがあったんだと伝えたくて、この楽曲をお届けします」

この日も後半で歌われた、10代の青春の恋を歌ったデビュー曲「世界は恋に落ちている」からスタートしたチコハニ楽曲の歴史。そこから8年が経ち、徐々に“大人”なナンバーが増えていったことで、等身大のCHiCOが今思うこと、伝えたいメッセージが、より楽曲とシンクロするようにもなった。そんな彼女の成長をライブという場所で直接共有できるのが、素直に楽しいと思える瞬間だった。

セクシーな「平成バブル」のパフォーマンスに新たな一面を観た!
先にも書いたように、今年の“「Bee with U」ツアー”で最もファンを驚かせた楽曲は、間違いなく「平成バブル」だった。リスアニ!WEBのインタビューで、アルバム『iは自由で、縛れない。』についてCHiCOは、「大人になった今だから歌える、挑戦的で自由な曲が詰まった1枚」と語っていたが、“「Bee with U」ツアー”におけるスタイリッシュなパフォーマンスとアレンジで届けられた「平成バブル」は、まさにCHiCOの新しい、大人な一面を垣間見させてくれた。

セットリストの中盤、チコハニナンバーをインストゥルメンタルなアレンジで届けたバンドセッションが終わると、ステージは暗転。スポットライトを浴びた宇都圭輝が、しっとりとローズピアノのサウンドを奏で出す。
ステージ中央の一段高いところ、オープニングで元気にCHiCOが飛び出してきたその場所に、横向きで背もたれのあるチェアに腰かけたCHiCOの姿が映し出される。ジャジーでファンキーなバンドに乗せて、CHiCOが美しいファルセットを響かせると、ゴージャスでアダルトな夜のムードが漂い出す。太いストライプの前開きのワンピースの裾からCHiCOのセクシーな素足が覗く。さっきまで元気にステージを駆け回っていたのとは対照的に、静かにチェアに足を掛け、艶やかに熱唱する姿はとても新鮮だ。どんなテイストの楽曲も自分色に染めあげていくCHiCOのボーカリストとしての力量を、改めて感じた。

その力量の高さは、後半戦でも遺憾なく発揮された。加えて大阪公演が延期されたからこそ、直前にリリースされたアルバム『iは自由で、縛れない。』収録の最新曲「ハートの誓い」を、ライブ初披露したのもこの日のトピックだ。曲タイトルをCHiCOがコールした瞬間、「おお!」という声にならない声が起こり、大きな拍手に包まれた。「ハートの誓い」は女友達同士の心の通い合いを描いた曲。思春期の女の子の心情を、リアルなニュアンスを込めて歌うCHiCOの姿は、さっきまでセクシーな夜の歌を歌っていた人と同一人物とは思えない。幅広い表現力を大仰にひけらかすことなく、楽曲ごとに自然に寄り添わせていけるのも、実力あってのことだと再確認させてくれる。


ライブアンセム「ホーリーフラッグ」が歌われた意味は?
新曲サプライズが与えた熱を逃すことなく、ファンが体を使って参加できる賑やかな楽曲が続いて用意されていたのも嬉しい。CHiCOが直接振付をレクチャーした「それいけ!サラリーマン」も、Ojiが高らかにホイッスルを吹き鳴らす「ラブホイッスル」も、会場の全員に大きな力をくれる。

延期になって来られなくなった人、今日だから来てくれた人、すべてのファンに感謝を述べて「大阪はほんとにあったかい」と感慨深い顔になるCHiCO。「この2年間、みんなの声は聞けてないけど、マスク越しでも伝わるみんなの“ライブを楽しむぞ!”という気持ちが、すごく伝わります、ありがとう」と改めて感謝を告げて、ツアータイトル「Bee with U」に込めた想いを語って「ファイナルを、9月予定していたオリックス劇場で迎えられて嬉しく思います」と振り返る。「私たちは、いつでもステージで待っています、これからも遊びに来てくれたら嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします。また来年遊びましょう」と語って、本編ラストに届けた「我武者羅」に、会場全員の拳が振り上げられた。

そしてアンコールのラストでは、コロナ禍に入ってからのライブでは歌われることがなかったライブアンセム「ホーリーフラッグ」を笑顔で熱唱。以前、リスアニ!WEBの取材時にこっそりCHiCOが、「本当ならみんなと一緒に合唱したい曲だから、ずっと歌うのをためらっていた〈ホーリーフラッグ〉を、今年のツアーはやることに決めました」と誇らしげに語っていたこの曲。 “あなたと一緒に”の意味を託した“「Bee with U」ツアー”で解禁されたことにも、バンドにとっては大きな意味があったはずだ。多彩な楽曲を、チコハニならではのハートウォームなエンターテインメントに昇華していた“「Bee with U」ツアー”。大阪ファイナルのファンからの温かな拍手に、みんなの気持ちがしっかりと込められていた。


<セットリスト>
2022.10.29(土) 大阪府 オリックス劇場
M01.冒険のVLOG
M02. LOVE FIGHT
M03. ヒカリ証明論
M04. サイダー
M05. 乙女どもよ。
M06. ミスター・ダーリン
M07. 幸せ。
M08. 平成バブル
M09. Love Letter
M10. ヒミツ恋ゴコロ
M11. 世界は恋に落ちている
M12. ハートの誓い
M13. それいけ!サラリーマン
M14. ラブホイッスル
M15. ビビっとラブ
M16. 我武者羅
<ENCORE>
EN01. 私を殺さないで
EN02. 決戦スピリット
EN03. ホーリーフラッグ

CHiCO with HoneyWorksにとってライブ会場には“聖地”が2つある。1つは中野サンプラザホール。もう1つはここ、日比谷野外大音楽堂。全国ツアー本編のファイナルを終えた後、学校の文化祭でいうところの“後夜祭”のように、楽しく賑やかに“お祭り”をしてツアーを締め括る場所として、日比谷野外大音楽堂はもうファンにはお馴染みだ。

そんな野音のお祭りが、“LAWSON presents CHiCO with HoneyWorks summer hall tour 2022「Bee with U ~11月のミツバチ~」”と題し、今年は冬に向かう11月5日に開催された。ハチをモチーフにしたツアータイトルにかけた、いつになくかわいらしいサブタイトルがついているように、今回はなんと初めて、女性アーティストのみがゲストに登場!しかも、これまで野音に来た女性ゲストはレーベルメイトやHoneyWorksファミリーのメンバーだったが、今回は、亜咲花、konoco、三月のパンタシアというファンにとっても新鮮な顔ぶれ。イベントライブやラジオなどでCHiCOとの共演はあっても、こうしてチコハニのワンマンライブでしっかりと顔を合わせるのは、3組とも初めてだ。いつも以上に豪華で新鮮なステージを楽しむことができた。

“「Bee with U」ツアー”の熱を引き継ぐオープニング
涼しい空気が漂う東京・日比谷公園。いつもは静かな公園の一角も、今日ばかりは賑やかだ。鮮やかな青のチコハニスカジャンを着込んでいる人、ゲストアーティストのライブグッズを身につけている人、ペンライトを握り友達と仲が良さそうにおしゃべりをしながら開演を待つ人……1年ぶりの野音のお祭りを、みんなが楽しみにしてここにやって来ているのがよくわかる。ステージの上には、“「Bee with U」ツアー”でもうお馴染みのハニカム模様のセットも健在。季節が深まったことを思い知らせるように、開演の17時を前にして、すでに空は薄暗さを増してきている。

そして待ちに待った開演の時。1年ぶりの日比谷野音に、ツアーでもお馴染みだったBGMが流れてバンドが登場。ツアー中は暗転での登場だったが、今日は野外。にこやかに手を振りながら出てきたOji、AtsuyuK!、宇都圭輝、Hiroki169、中西の表情もよく見える。オープニングナンバーはもちろん、“「Bee with U」ツアー”でもずっと開幕を華やかに飾ってきた「冒険のVLOG」だ。軽やかなイントロと共にCHiCOが颯爽と一段高いステージ中央に立ち、バンド全員でクラップ。それに合わせたオーディエンスのクラップが、穏やかな冬の空に響き渡る。“「Bee with U」ツアー”のためにCHiCOがアイデアを出したという、バンドとお揃いでデニムアイテムをあしらったカジュアルな衣装のブルーは、野外ステージにも良く似合う。東京でのライブ自体も7月下旬の中野サンプラザ公演以来ということもあり、オーディエンスの熱量も高い。Hiroki169の「行くぞ、日比谷―!」の雄叫びから始まった「プライド革命」が、もはやクライマックスかのようだ。

「体冷えてない? ちょっと寒いよね?」とファンを気づかいながら、「11月に野音をやるのは初めてなので、私たちもどんな景色が待っているんだろうとワクワクしながら今日を楽しみにしてきました。チコハニのファンもいらっしゃれば、今日のゲストの方のファンの人もいらっしゃると思います。最初から最後まで楽しんで行きましょう!」と挨拶し、さっそく1組目のゲストが呼び込まれた。

パワフルでハッピーなCHiCO×亜咲花のコラボ
CHiCOに「3人の中で一番パワフルな女の子」と紹介され、ステージ下手から「イェーイ、ヤッホー!」と大きく手を振って登場したのは亜咲花だ。「パワフルガールこと、アニソンシンガーの“亜細亜に咲く花”、亜咲花でーす!パンパンじゃないの、野音!」と、紹介通りの元気な声を響かせる。亜咲花にとっては、初の日比谷野音への出演ということで、テンションも高い。

「実は私とCHiCOちゃんは、今年の“Animelo Summer Live 2022”でコラボさせてもらって、さっき歌ってた〈プライド革命〉を2人で歌いましたー!再びCHiCOちゃんのファンの皆さんの前で熱く歌えるのが嬉しくて、楽しみにしてました!」と亜咲花。ここでCHiCOが思い出したように、ステージに飾ってあった今日の晴天を願ってスタッフが手作りしてくれた『銀魂』キャラクター・エリザベスのてるてる坊主をオーディエンスに見せると、『銀魂』好きの亜咲花も「かわいー!すごい素敵なスタッフさん!雨降らずに良かった!」と感激しきりだ。

そして、さっそく「行くぞ野音―!」と2人でオーディエンスを煽りながら始まった1曲目のwith 亜咲花ナンバーは「アイのシナリオ」。魅力的なハイトーンと抜群の歌唱力に定評のある亜咲花とCHiCOが、疾走感たっぷりに激しくロックする。サビでは二人がハーモニーを重ね、ダブルボーカルならではのアレンジを聴かせる。亜咲花もバンドメンバーと絡みながら、ハードにパフォーマンス。2人の力強い歌声に圧倒される。アニソン好きで知られる亜咲花は、初めて買ったアルバムもチコハニのCD。今回、コラボに「アイのシナリオ」を選曲したのも、プロデビュー前、“歌ってみた” のステージに立ったときに、この曲をカバーしていたからだという。「6~7年経って、好きな人と一緒に歌ってる今日は、今までで一番幸せ!」と嬉しそうだ。

そしてこのライブならではの初コラボ曲をもう1曲。亜咲花が「もし良かったら……ペンライトを緑にして、一緒にこの素敵な夜空の下で、野音で……ゆるっとキャンプをしたいと思います!」と告げて始まったのは、彼女の代表曲でもあるTVアニメ『ゆるキャン△』のOPテーマ「SHINY DAYS」。CHiCOと亜咲花、とても相性のいいのびのびとした歌声が、ゆったりとしたクラップにのって共鳴。サビでは全員が大きくワイパーし、グリーンが揺れる夜の日比谷野音を、温かな陽射しが差し込む草原へと変えていった。

「すごく楽しかったんで、今日を最後にせず、この景色に再び出会えるよう、亜咲花もアニソン歌手として、CHiCOちゃんの大親友としても、頑張ってまいります!」。「CHiCOちゃん大好きー!」の亜咲花の元気な挨拶に、再び大きな拍手が贈られた。

CHiCO×三月のパンタシアは“青春”の香り
亜咲花とのコラボコーナーのあとは、バンドメンバーとのトークも弾む。この日のために新しいドラムセットを投入したと自慢げなAtsuyuK!のはしゃぎように、Hiroki169がツッコミを入れて笑いを誘う。この日のチコハニパートのセットリストは“「Bee with U」ツアー”の人気曲を軸に構成されていたが、ここで大阪ファイナルで初披露された最新曲「ハートの誓い」を、今度は東京のオーディエンスにもプレゼント。ツアーでは後半に置かれていた「それいけ!サラリーマン」でエールを贈り、ポップな「ヒミツ恋ゴコロ」でさらにテンションをアップさせる。

そしてここで、2組目のゲストを呼ぶ。先ほどの亜咲花とは対照的に、モードな衣装に身を包んだ三月のパンタシアのボーカルを務めるみあが、「こんばんは~」と緊張気味にステージに歩いてくる。客席の熱気に「すごいね」と面食らったような顔をするみあ。亜咲花と同じく、彼女も野音は初体験。「こうやって歌うのは初めてなので、すごく嬉しいです」と語り、客席のペンライトを指して「みんなの……光ってる棒が」と独特の語り口でオーディエンスの応援の様子を楽しんでいる。ここでCHiCOが、ペンライトを“みあちゃんカラー”の青に替えてみて!とお願いすると、客席一面がブルーに。ペンライトをあまり見たことがないらしいみあがまた、「すごーい」と感心する。普段のチコハニライブにはない、ゆったりとしたトークがまた新鮮だ。

そしてお待ちかねのコラボ曲コーナー。1曲目はチコハニのミドルバラード「ノスタルジックレインフォール」だ。繊細なみあの歌声が、CHiCOの歌声と溶け合い、優しい世界を彩る。聴き慣れているはずのこの曲だが、普段の三月のパンタシアの楽曲にはあまり登場しないだろう、オチャメなセリフ調のメロディをみあが歌うことにも、ハッとさせられた。

2人がブレイクで手のフリを合わせていたのも印象的だったが、一緒にフリを付けることはみあからの提案だったそう。「お客さんも一緒にやってくれて、すごく気持ち良かった」とみあも嬉しそうだ。そして今回、どのチコハニナンバーをコラボしたいかという選曲は、みあが「ノスタルジックレインフォール」の他に「世界は恋に落ちている」「私、アイドル宣言」というジャンルの違う3曲を提案したのだそうだ。「(〈私、アイドル宣言〉は)アイドルCHiCOちゃんでしょ? みあもアイドルみあになってみたかったの」とみあが言うと、「じゃあ、次(にコラボをする時)はアイドルみあ、見せてください」とCHiCOが提案。客席から拍手が巻き起こった。

続いては、CHiCOからリクエストした三月のパンタシアの楽曲を。「素敵な楽曲が多くて1曲にしぼれなくて。たくさん悩んだ結果、この曲を!」と告げたのは、みあ書き下ろしの小説を軸にした自主企画から生まれたヒットナンバー「青春なんていらないわ」。透明感の中に憂いを含んだみあの歌声が、真っ直ぐなCHiCOの歌声と温かくシンクロ。二人が音楽の大切なテーマにしている“青春”の息吹きが、チコハニバンドの生演奏によりさらに際立っていた。

ワイルド&ハードな選曲にも驚いたCHiCO×konoco
三月のパンタシアコラボのあとは、またも嬉しいプレゼント。発売されたばかりのニューアルバム『iは自由で、縛れない。』から、「8周年を迎えて、さらに大人になったCHiCO with HoneyWorksを感じてもらえると思います」と語って歌われたのは、これもライブでは初披露となる「きっと別れるよ」。続いてこの季節にぴったりの「11月の雨」と情感を込めたバラードナンバーが続き、日比谷野音がしっとりとした空気に包まれる。ここでCHiCOがいったんステージを降り、ツアーでも好評だったバンドセッションのコーナーだ。さまざまにバンドアレンジされたインストのチコハニナンバーが楽しい。

そして、ツアーでもみんなを驚かせたセクシーナンバー「平成バブル」をここでも披露。ツアー中はエレガントな衣装で歌われたこの曲だが、野音バージョンは、オーバーサイズのジャケットにホットパンツと黒のロングブールを組み合わせたマニッシュな雰囲気。椅子を使った演出はそのままに、アダルトなチコハニの世界を見せつけた。

気分が一新されたところで、3組目のコラボコーナーへ。軽やかで刺激的なイントロが流れ、CHiCOのコールで登場したのは、真っ白なキュート&ガーリーな衣装に身を包んだkonoco!「皆さん、初めましてkonocoでーす!後半も盛り上がっていきましょう!」と元気にステージに現れたkonocoとCHiCOが歌声を重ねたのは、跳ねるリズムが心地よいkonocoの刺激的な大人気ダンスチューン「LUNDI」だ。高速で言葉を紡ぐkonocoとCHiCOのデュエットは実にフレッシュ。「一緒に手を振って!」のkonocoの声にオーディエンスが応え、飛び跳ねた。

「自分で作詞・作曲した曲。これは絶対CHiCOちゃんと歌いたいと思いました」とkonocoが言えば、CHiCOも「こういうジャンルの曲はなかなか歌う機会がなかったから、コラボで一緒に歌わせてもらえて新鮮だったんじゃないでしょうか!カッコいいよね!」と嬉しそう。前の2人と同じく、野音で歌うのは初めてだとおいうkonoco。三月のパンタシアのときと同じようにペンライトでkonocoカラーの白を照らしてもらうと、楽しそうな笑顔がこぼれる。続いてCHiCOが「皆さんぶち上げる準備はできてますか?」と煽って歌われたkonoco選曲によるチコハニナンバーは、ネット発の人気アーティスト・konocoのイメージにもぴったりのアッパーナンバー「スーパーアイドル(笑)」だ。かわいいルックスの2人から放たれるワイルドな“俺様”ボーカルに、オーディエンスの熱もますます上がる。“アイラブユー”のコーラスでは2人が手でハートを作って飛ばし、ラストは派手にジャンプを決めた。

「この曲、歌いたかったのすごく!」と嬉しそうに語るkonoco。かわいいルックスとギャップのある歌声にCHiCOが感激していると、konocoが「”CHiCOの女感”を出したくて」と一言。それを聞いたCHiCOは「嬉しー!」と叫んでkonocoの肩を引き寄せ、会場も湧いていた。

「Bee with U」の締め括りは圧巻の全員コラボ
3組とのコラボが終わり、バンド紹介を挟んで、ここからはチコハニらしいラストスパートが炸裂した。スペシャルなステージらしく、ニューアルバムの新曲が随所で披露されたこの日。ラストブロックの最初の1曲を飾ったのも、ライブ初披露となる新曲「リベンジゲーム」だった。チコハニお得意のこのストレートなロックチューンは、聴く人誰もにエールを贈る、アガる1曲。客席から巻き起こるクラップをCHiCOが両手を広げて受け取り、「我武者羅」「決戦スピリット」と迫力あるバンドと共にキラーチューンを叩き込んだ。
大きな拍手に迎えられたアンコールも、アッパーな「ヒカリ証明論」からスタート。会場の熱を冷めることなく盛り上げていく。

「この野音をもって「Bee with U」が終演となります。夏から冬まで、あなたと一緒に、みんなと一緒に「Bee with U」楽しんでくれて、ありがとうございます! 来年は、ニューアルバム『iは自由で、縛れない。』を引っ提げたZeppツアーも待っているので、ぜひとも来年もCHiCO with HoneyWorks、そしてニューアルバムをたくさん愛してもらえると嬉しいです!」

ツアーを無事に走り終えた感謝の気持ちを改めて伝えて、最後に今日の全ゲストを再びステージに招く。口々に、チコハニにとって特別なステージで一緒に歌えたことを喜ぶ3人。そして、またCHiCOと同じステージに立てる日が来て欲しいと、温かい言葉を綴ってくれた。そしてもう1曲、ゲスト3人とチコハニが一緒に歌い上げたのは、ロック名1曲「今日もサクラ舞う暁に」。1人1人が個性的な歌声を聴かせ、パートごとに相手を替えながら二人ずつがデュエットするというレアなコラボレーションに、オーディエンスも大喜び。最後は客席も全員でジャンプ。楽しく超ハッピーな“Bee with U ~11月のミツバチ~”は、冬の寒さをすっかりと忘れさせてくれた。

<セットリスト>
2022.11.05(土)東京 日比谷野外大音楽堂
M01. 冒険のVLOG
M02. プライド革命
M03. アイのシナリオ(with 亜咲花)
M04. SHINY DAYS(with 亜咲花)
M05. ハートの誓い
M06. それいけ!サラリーマン
M07. ヒミツ恋ゴコロ
M08. ノスタルジックレインフォール(with 三月のパンタシア)
M09. 青春なんていらないわ(with 三月のパンタシア)
M10. きっと別れるよ
M11. 11月の雨
M12. <BAND JAM>
M13. 平成バブル
M14. LUNDI(with konoco)
M15. スーパーアイドル(笑)(with konoco)
M16. リベンジゲーム
M17. 我武者羅
M18. 決戦スピリット
<ENCORE>
EN01. ヒカリ証明論
EN02. 今日もサクラ舞う暁に(with 亜咲花・konoco・三月のパンタシア)

TEXT BY 阿部美香

●リリース情報
『iは自由で、縛れない。』
発売中

<CD>
■DISC1 ※初回生産限定盤A/B、通常盤全3形態共通内容
M01. リベンジゲーム
M02. ヒミツ恋ゴコロ
M03. 冒険のVLOG
M04. 我武者羅
M05. 醜い生き物
M06. ハートの誓い
M07. ビビっとラブ
M08. それいけ!サラリーマン
M09. LOVE FIGHT
M10. きっと別れるよ
M11. あなたは恋をしてない
M12. スーパーアイドル(笑)
M13. ハンコウ予告
M14. ロボット
M15. 大人になったね
M16. 鬼ノ森

【初回生産限定盤A/2CD+Blu-ray Disc+ライトノベル小説+特典】
品番:SMCL 790-793
価格:¥4,840(税込)

<CD>
■DISC2
「ヒミツ恋ゴコロ (Bee with U at nakano sunplaza hall)」
「ヒカリ証明論 (Bee with U at nakano sunplaza hall)」
「サイダー (Bee with U at nakano sunplaza hall)」

<Blu-ray Disc>
全13曲入りMV集
「鬼ノ森」「醜い生き物」「冒険のVLOG」「我武者羅」「ビビっとラブ」「ヒミツ恋ゴコロ」「幸せ。」「私を殺さないで」「Marie」「ぐる恋」「世界は恋に落ちている / THE FIRST TAKE」「幸せ。/ THE FIRST TAKE」「LOVE FIGHT -女子力高めな獅子原くんコラボver.-」

【初回生産限定盤B/2CD+Blu-ray Disc+ライトノベル小説+特典】
品番:SMCL 794-797
価格:¥4,840(税込)

<CD>
■DISC2
「ヒミツ恋ゴコロ (Bee with U at nakano sunplaza hall)」
「ツノルキモチ (Bee with U at nakano sunplaza hall)」
「ホーリーフラッグ (Bee with U at nakano sunplaza hall)」

<Blu-ray Disc>
2020年12月25日開催のオンラインライブ“CHiCO with HoneyWorks ONLiNE LiVE @BUDOKAN『COME! COME! ONiON』”で披露された全15曲を収録

【通常盤/CD+特典(初回仕様のみ)】
品番:SMCL 798
価格:¥3,080(税込)

関連リンク
CHiCO with HoneyWorks オフィシャルサイト
https://www.chicoxxx.com/

CHiCO with HoneyWorks オフィシャルTwitter
https://twitter.com/CwHW_official

CHiCO オフィシャルTwitter
https://twitter.com/chicoxxx_tweet

CHiCO with HoneyWorks オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/c/chicoxxx/featured
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