MAPPA制作によるハイレベルな映像表現で毎週話題を集めるTVアニメ『チェンソーマン』。このEDテーマは、豪華な顔ぶれのアーティストが週替わりで楽曲を担当。
INTERVIEW & TEXT BY 杉山 仁
まさか自分も入れていただけるとは思ってもいなかった
――syudouさんが『チェンソーマン』を知ったきっかけはどんなものだったんでしょう?
syudou 連載が始まってすぐ、2~3話くらいの頃にはもう、SNS上で「『チェンソーマン』がヤバいぞ」という評判が広まっていて。自然と自分の目にも入ってきたので原作を読み始めたら、皆さんが騒いでいるのも納得で「これはすげえぞ」と思ったのが最初でした。
――早い段階から原作を読んでいたんですね。そのとき、どんな魅力を感じたかも教えてもらえますか。
syudou 僕が「週刊少年ジャンプ」作品に持っていた、「整った真っ直ぐな少年マンガ」という勝手なイメージからある意味かけ離れた作品で、しかもかっこよくて面白くて……。いい意味で常識から外れている感覚が印象的でした。これが今の“王道感”なのかなとも思いましたね。しかもその魅力が、主人公・デンジの性格にもわかりやすく出ているとも思います。『チェンソーマン』って主人公が一番クレイジーで、デンジって自分の衝動に素直に生きているじゃないですか。
――そんな『チェンソーマン』がアニメ化することになり、EDテーマについてオファーがあったときはどんな気持ちでしたか?
syudou アニメ化が決まる前から、「アニメがあるとしたら、音楽は誰がやるんだろうね?」とミュージシャン仲間の間でも話題になっていたくらい人気の作品だったんですよ。そこにまさか自分も入れていただけるとは思ってもいなかったので……最初は信じられなくて、実は正式発表の直前まで、壮大なドッキリだと思っていたくらいです(笑)。今回のように元々自分が好きで長期的に読んでいた作品からオファーをいただけたのは嬉しく、光栄に思いました。
――改めて、syudouさんが担当した第5話EDテーマ「インザバックルーム」の制作過程について詳しく聞かせてください。最初のアイデアはどんなものだったんでしょう?
syudou 第5話は、デンジたちが永遠の悪魔にホテルの中に閉じ込められる回でした。まずはその不穏な空気感や、ホテルの階から出られなくなるループ感は大切にしようと思いました。ただ、それだけだと自分がやる意味がないとも思っていたので、自分が『チェンソーマン』に感じるイメ―ジや魅力のようなものをぶつけていって、2つの要素の間のちょうど良いバランスを取っていきました。それと、EDテーマというだけではなく、『チェンソーマン』に捧げる1曲という意味で、あえて行き過ぎた言い方をすると「自分がデンジだったらどんな曲を作るだろう?」ということも意識しています。
――楽曲の構成自体が「永遠の悪魔に閉じ込められたループ感」を表現しているように感じられるのは印象的でした。
syudou 曲の冒頭と最後を繋がるようにしてループさせることで、第5話の不安感を出したいと思っていました。あとは、音自体も(わざと音程を外すような)捉えどころのない電子音を入れていて、そのサウンド感も含めて、他にEDテーマを担当される方ともかぶらないような形にできたらいいな、と思っていましたね。
――サビ前に叫ぶような部分や、終盤の“何度も何度も何度も何度も/何度もあったがここで歌っている”という部分の、五線譜を踏み外すような歌い方も印象的でした。
syudou 『チェンソーマン』の曲だと考えたときに、自分の場合はただ全体に歌のメロディがあるだけの曲では行儀が良すぎると思ったので、その部分は喚き散らすようなシャウトを入れていきました。もちろん、もっとぐしゃぐしゃにすることもできたんですが、同時に自分の曲でもあるということで、その2つのバランスを取って最終的な形に落ち着きました。
『チェンソーマン』の魅力だけでなく、「自身の活動とこれから」も表現したかった
――他に楽曲について工夫したところというと?
syudou 自分の場合、これまでを振り返ってみると「怪しい雰囲気の曲」と「パンチのある攻撃的な曲」をそれぞれ別に作ってきたように思うんですけど、今回はそうやって培ってきた要素を全部詰め込みたいと思って、1曲の中で不安定なところも攻撃的なところもどちらも表現しようと思いました。そうやって、これまでの自分を全部混ぜて作っていった気がします。
――確かに、序盤のイントロは、例えば「ビターチョコデコレーション」などに通じる不穏な雰囲気で始まりますが、サビになるとAdoさんに提供された「うっせえわ」のように、攻撃的でインパクトのある雰囲気になっていくのが印象的でした。
syudou 今までやってきたことを踏まえた現在地点として、今回の機会に1つ「マーカーを打っておきたい」と思ったんです。歌詞に関しても、『チェンソーマン』の魅力をいかに表現できるかという点と、自分の気持ちやこれまでの活動に関連したストーリー、そしてこれからどうしていきたいかを、どちらも表現できるようにしたいと思っていました。
――曲の中で、特に『チェンソーマン』に寄り添って考えた部分と、syudouさん自身の活動に重ねられている部分とをそれぞれ教えていただけますか?
syudou 歌詞で『チェンソーマン』に特に寄り添っているのは、基本的にアニメ尺でかかっている前半部分で、“一瞬の新興と引き換えに/一生と心臓を渡すのさ”というところや、出口のないループ感のある部分です。そして、自分にまつわる歌詞は、基本的に2番以降の歌詞なんですが、例えば、「ループ」という意味では『チェンソーマン』にも繋がっているんですけど……自分が憧れたり、尊敬する気持ちには出口がない、ずっと続くものだと思うので、後半にはそういった歌詞を入れています。カッコつけて「これだ!」と答えを出すのではなく、むしろ「出口ってないよなぁ」と認めることが一番正直なのかな、と。
――なるほど。『チェンソーマン』の楽曲だからこそ、「きれいごとにはしない」ことが大事だったんですね。
syudou そうですね。そこを正直に書くというのは、この作品だからこそできたことかもしれません。
――制作の中で苦労した瞬間などもあれば教えてください。
syudou 実は最初に作って提出したデモが、(アニメ制作サイドからは)「全然違う」ということになって、今までの仕事の中でもおそらく初めて、楽曲が一度ゼロベースに戻る瞬間がありました。というのも、最初は自分が気合を入れ過ぎていて、「『チェンソーマン』を自分なりに表現した曲を書くぞ!」と、作品全体に寄り添ってしまった結果、第5話にはあまり寄り添えていないものになってしまっていたんです。それはそれでいいアイデアが詰まっていたので、まだどこかで別のものとして形を変えて出せたらいいな、とは思っているんですが。
――ちなみに、「インザバックルーム」というタイトルはどんなふうにできたものなんでしょう?
syudou 第5話のEDテーマとして「出口がない世界」をテーマに楽曲を制作していくときに、「出口がない黄色い壁だらけの世界に入っちゃったらどうしよう」という内容のインターネットミームになっている「The BackRooms」(アメリカから広がったホラー動画の一種)と絡めてみると面白いんじゃないかというアイデアでした。『チェンソーマン』は海外の方にも観てもらえる作品になるだろうと思っていたので、なおさらこのミームとの相性がいいと思ったんです。
――第5話のオンエアをご覧になった感想はいかがですか?「インザバックルーム」に合わせた5話だけのEDアニメーションもすごかったですが。
syudou すごかったですよね。哲学的で、神話になぞらえたカットもあって。「マジで毎週違うんだな……!」と実感しました。1つ前のEDテーマ(「錠剤」)は、楽曲がTOOBOEさんで映像はcoalowlさんでしたけど、それともまた全然違っていて「本当に曲に合わせて変えてくださっているんだな」と嬉しかったです。
今回の経験でミュージシャンとしての覚悟がさらに上がって、意識が変わった
――『チェンソーマン』の音楽には、週替わりのEDテーマをはじめ、大型フェスができるんじゃないかというほど豪華なアーティストの皆さんが参加しています。この作品の音楽全体についてはどう感じていますか?
syudou 僕自身、どんな方が参加されるのかが全員知った状態で作っていたわけではなかったんですが、ラインナップのすごさに驚きましたし、参加されている方々のジャンルも幅広く、僕が小学校の頃から聴いてきたような方々も参加されていて。「この中でも、自分のやり方で爪痕を残したい」と思いました。ここに参加するいちアーティストとして、まだまだ若手ではありますが、「自分はどんなふうに戦っていけばいいんだろう?」と考えることになったというか。実際に各話のオンエアを観ても、皆さんそれぞれのかまし方で全力を出している異種格闘技戦のような雰囲気で、全員が本当に容赦なくフルスイングでめまいがします(笑)。
――それぞれにリミッターを外して、全力で暴れているような雰囲気と言いますか。
syudou 本当ですよね。そうさせてくれる『チェンソーマン』ってすごいな、と改めて思いました。
――なるほど。確かに、「自分が一番面白いと思っている笑いはこうだ」というものを各々が持ち寄るような雰囲気には通ずるものがあるように感じます。
syudou お笑い芸人の方々が「M-1」でやっているネタって、その1年だけじゃなくて、「何年もずっと活動してきた中で一番面白いと思えるネタを投げる」ということだと思うので。今回のEDテーマも、『チェンソーマン』という作品に貢献することは第一だとして、それだけではなく、これまでの自分の要素も詰め込みつつ、今後の自分の活動にも絶対に生かさなければいけないぞ、と思いながら作っていました。なので、放送されただけでは終わりでなくて、「ここから何を残すか」が一番大事だと思っているんです。
いざ実際にやらせていただくと、エモくなっている余裕はないし、「まだここで終わりたくない、もっともっとやっていきたい」と、また欲が出てくるというか。多分、そういう気持ちが、曲の後半の“眠れぬ夜や消えぬ後悔が/何度も何度も何度も何度も/何度もあったがここで歌っている”という歌詞に繋がっているのかな、と思います。
――なるほど。
syudou でも同時に、まだ舞台に立っただけなので。それだけじゃ意味がないとも思うんです。今はさらに「ここからまたやっていくしかない」と思って気を引き締めているところですね。
――今回の制作は、syudouさんにとってどんな経験になりましたか?
syudou これは自分を卑下するわけではなくて、「いずれ絶対そこに行く!」という気持ちでいるということなんですけど、自分はまだ、本当の音楽の最前線にひとりで肩を並べられる実力には至っていないと思っているんです。でもそんな中で、今回の『チェンソーマン』では、その最前線にいる方々と一緒に音楽を担当する経験ができました。元々才能や色んなものに恵まれている人たちが、これだけ全力で、フルスロットルでやっている場所に参加できたことで、ミュージシャンとしての覚悟がさらに上がって、意識が変わりました。それこそ、Adoさんとのお仕事でも下駄を履かせていただいて、『チェンソーマン』という素晴らしい作品にも参加させていただいて。これで来年syudouの名前を聞かなくなるようなことがあったら、本当に恥ずかしいぞ、と思っています。
――活動に対するギアがもう1段階上がるような経験になったんですね。今後についてはどんなことを考えていますか?
syudou まずは2023年の4月に幕張メッセで“syudou Live 2023「我武者羅」”があるので、そこをバシッと決めたいですし、ライブは感覚も掴んできているので、今後もっと増やしていきたいと思っています。あとは、何回も聴いてもらえるようなヒットも飛ばしていきたいですね。来年以降も、自分の歌も、楽曲提供も、ボーカロイドでの楽曲制作も並行してやっていくと思うので、その中で音楽好きの人たちに「syudouヤバいぞ」と思ってもらえるようになれたらいいな、と。
――その結果、何度も「M-1」に出てくるような方になっていけたら最高ですね。
syudou そうなったら嬉しいです。「M-1」の常連になって――。いや、常連で満足していてはダメですね(笑)。いつか優勝して、卒業できるように頑張っていきたいです。
●リリース情報
syudou
「インザバックルーム」
デジタル配信中
https://syudou.lnk.to/In_the_Back_Room
●ライブ情報
syudou Live 2023「我武者羅」
日時:2023年4月8日(土) 開場16:00/開演18:00
会場:幕張メッセイベントホール
チケット料金:全席指定 6,600円 (税込) 特典付
Twitter抽選先行受付:12月12日(月)12:00~12月25日(日)23:59まで
https://twitter.com/syudou_info
お問い合わせ…DISK GARAGE:050-5533-0888(平日12:00-15:00)
●作品情報
TVアニメ『チェンソーマン』
毎週火曜24:00よりテレビ東京系6局ネットにて放送中
毎週火曜25:00よりPrime Videoにて最速配信中
© 藤本タツキ/集英社・MAPPA
関連リンク
syudou公式サイト
https://www.syudou.com
syudou公式Twitter
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syudou公式YouTube
https://www.youtube.com/@syudou_official
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syudou公式アプリ
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TVアニメ『チェンソーマン』公式サイト
https://chainsawman.dog/
さらに楽曲ごとに合わせたEDアニメーションとともにオンエアされている。このうち第5話のEDテーマ「インザバックルーム」を担当したのが、ボカロP/シンガーソングライターのsyudouだ。TVアニメ『月が導く異世界道中』のOPテーマとして話題を集めた「ギャンブル」や、「ビターチョコデコレーション」など自身名義の楽曲、そしてAdoの「うっせぇわ」を筆頭にした提供楽曲でも知られる気鋭の若手クリエイターに、「インザバックルーム」に込めた思いや、楽曲の制作過程を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 杉山 仁
まさか自分も入れていただけるとは思ってもいなかった
――syudouさんが『チェンソーマン』を知ったきっかけはどんなものだったんでしょう?
syudou 連載が始まってすぐ、2~3話くらいの頃にはもう、SNS上で「『チェンソーマン』がヤバいぞ」という評判が広まっていて。自然と自分の目にも入ってきたので原作を読み始めたら、皆さんが騒いでいるのも納得で「これはすげえぞ」と思ったのが最初でした。
――早い段階から原作を読んでいたんですね。そのとき、どんな魅力を感じたかも教えてもらえますか。
syudou 僕が「週刊少年ジャンプ」作品に持っていた、「整った真っ直ぐな少年マンガ」という勝手なイメージからある意味かけ離れた作品で、しかもかっこよくて面白くて……。いい意味で常識から外れている感覚が印象的でした。これが今の“王道感”なのかなとも思いましたね。しかもその魅力が、主人公・デンジの性格にもわかりやすく出ているとも思います。『チェンソーマン』って主人公が一番クレイジーで、デンジって自分の衝動に素直に生きているじゃないですか。
僕自身も常日頃から「モテたい!」と言っている人間なので、そこを臆することなく突き進んでいくデンジはかっこいいなと思いますね。
――そんな『チェンソーマン』がアニメ化することになり、EDテーマについてオファーがあったときはどんな気持ちでしたか?
syudou アニメ化が決まる前から、「アニメがあるとしたら、音楽は誰がやるんだろうね?」とミュージシャン仲間の間でも話題になっていたくらい人気の作品だったんですよ。そこにまさか自分も入れていただけるとは思ってもいなかったので……最初は信じられなくて、実は正式発表の直前まで、壮大なドッキリだと思っていたくらいです(笑)。今回のように元々自分が好きで長期的に読んでいた作品からオファーをいただけたのは嬉しく、光栄に思いました。
――改めて、syudouさんが担当した第5話EDテーマ「インザバックルーム」の制作過程について詳しく聞かせてください。最初のアイデアはどんなものだったんでしょう?
syudou 第5話は、デンジたちが永遠の悪魔にホテルの中に閉じ込められる回でした。まずはその不穏な空気感や、ホテルの階から出られなくなるループ感は大切にしようと思いました。ただ、それだけだと自分がやる意味がないとも思っていたので、自分が『チェンソーマン』に感じるイメ―ジや魅力のようなものをぶつけていって、2つの要素の間のちょうど良いバランスを取っていきました。それと、EDテーマというだけではなく、『チェンソーマン』に捧げる1曲という意味で、あえて行き過ぎた言い方をすると「自分がデンジだったらどんな曲を作るだろう?」ということも意識しています。
――楽曲の構成自体が「永遠の悪魔に閉じ込められたループ感」を表現しているように感じられるのは印象的でした。
syudou 曲の冒頭と最後を繋がるようにしてループさせることで、第5話の不安感を出したいと思っていました。あとは、音自体も(わざと音程を外すような)捉えどころのない電子音を入れていて、そのサウンド感も含めて、他にEDテーマを担当される方ともかぶらないような形にできたらいいな、と思っていましたね。
ただ、同時に作品としては不安感だけが重要なわけではなくて、デンジを含めたメンバーたちはこれから永遠の悪魔と戦うことになるので、サビに向けてグワッと盛り上げるような構成にもしています。
――サビ前に叫ぶような部分や、終盤の“何度も何度も何度も何度も/何度もあったがここで歌っている”という部分の、五線譜を踏み外すような歌い方も印象的でした。
syudou 『チェンソーマン』の曲だと考えたときに、自分の場合はただ全体に歌のメロディがあるだけの曲では行儀が良すぎると思ったので、その部分は喚き散らすようなシャウトを入れていきました。もちろん、もっとぐしゃぐしゃにすることもできたんですが、同時に自分の曲でもあるということで、その2つのバランスを取って最終的な形に落ち着きました。
『チェンソーマン』の魅力だけでなく、「自身の活動とこれから」も表現したかった
――他に楽曲について工夫したところというと?
syudou 自分の場合、これまでを振り返ってみると「怪しい雰囲気の曲」と「パンチのある攻撃的な曲」をそれぞれ別に作ってきたように思うんですけど、今回はそうやって培ってきた要素を全部詰め込みたいと思って、1曲の中で不安定なところも攻撃的なところもどちらも表現しようと思いました。そうやって、これまでの自分を全部混ぜて作っていった気がします。
――確かに、序盤のイントロは、例えば「ビターチョコデコレーション」などに通じる不穏な雰囲気で始まりますが、サビになるとAdoさんに提供された「うっせえわ」のように、攻撃的でインパクトのある雰囲気になっていくのが印象的でした。
syudou 今までやってきたことを踏まえた現在地点として、今回の機会に1つ「マーカーを打っておきたい」と思ったんです。歌詞に関しても、『チェンソーマン』の魅力をいかに表現できるかという点と、自分の気持ちやこれまでの活動に関連したストーリー、そしてこれからどうしていきたいかを、どちらも表現できるようにしたいと思っていました。
――曲の中で、特に『チェンソーマン』に寄り添って考えた部分と、syudouさん自身の活動に重ねられている部分とをそれぞれ教えていただけますか?
syudou 歌詞で『チェンソーマン』に特に寄り添っているのは、基本的にアニメ尺でかかっている前半部分で、“一瞬の新興と引き換えに/一生と心臓を渡すのさ”というところや、出口のないループ感のある部分です。そして、自分にまつわる歌詞は、基本的に2番以降の歌詞なんですが、例えば、「ループ」という意味では『チェンソーマン』にも繋がっているんですけど……自分が憧れたり、尊敬する気持ちには出口がない、ずっと続くものだと思うので、後半にはそういった歌詞を入れています。カッコつけて「これだ!」と答えを出すのではなく、むしろ「出口ってないよなぁ」と認めることが一番正直なのかな、と。
もしデンジだったら、それを正直に言うだろうとも思ったので、「出れないけど頑張るぜ」じゃなくて、「出れないな」ということを書こうと思っていました。
――なるほど。『チェンソーマン』の楽曲だからこそ、「きれいごとにはしない」ことが大事だったんですね。
syudou そうですね。そこを正直に書くというのは、この作品だからこそできたことかもしれません。
――制作の中で苦労した瞬間などもあれば教えてください。
syudou 実は最初に作って提出したデモが、(アニメ制作サイドからは)「全然違う」ということになって、今までの仕事の中でもおそらく初めて、楽曲が一度ゼロベースに戻る瞬間がありました。というのも、最初は自分が気合を入れ過ぎていて、「『チェンソーマン』を自分なりに表現した曲を書くぞ!」と、作品全体に寄り添ってしまった結果、第5話にはあまり寄り添えていないものになってしまっていたんです。それはそれでいいアイデアが詰まっていたので、まだどこかで別のものとして形を変えて出せたらいいな、とは思っているんですが。
――ちなみに、「インザバックルーム」というタイトルはどんなふうにできたものなんでしょう?
syudou 第5話のEDテーマとして「出口がない世界」をテーマに楽曲を制作していくときに、「出口がない黄色い壁だらけの世界に入っちゃったらどうしよう」という内容のインターネットミームになっている「The BackRooms」(アメリカから広がったホラー動画の一種)と絡めてみると面白いんじゃないかというアイデアでした。『チェンソーマン』は海外の方にも観てもらえる作品になるだろうと思っていたので、なおさらこのミームとの相性がいいと思ったんです。
――第5話のオンエアをご覧になった感想はいかがですか?「インザバックルーム」に合わせた5話だけのEDアニメーションもすごかったですが。
syudou すごかったですよね。哲学的で、神話になぞらえたカットもあって。「マジで毎週違うんだな……!」と実感しました。1つ前のEDテーマ(「錠剤」)は、楽曲がTOOBOEさんで映像はcoalowlさんでしたけど、それともまた全然違っていて「本当に曲に合わせて変えてくださっているんだな」と嬉しかったです。
今回の経験でミュージシャンとしての覚悟がさらに上がって、意識が変わった
――『チェンソーマン』の音楽には、週替わりのEDテーマをはじめ、大型フェスができるんじゃないかというほど豪華なアーティストの皆さんが参加しています。この作品の音楽全体についてはどう感じていますか?
syudou 僕自身、どんな方が参加されるのかが全員知った状態で作っていたわけではなかったんですが、ラインナップのすごさに驚きましたし、参加されている方々のジャンルも幅広く、僕が小学校の頃から聴いてきたような方々も参加されていて。「この中でも、自分のやり方で爪痕を残したい」と思いました。ここに参加するいちアーティストとして、まだまだ若手ではありますが、「自分はどんなふうに戦っていけばいいんだろう?」と考えることになったというか。実際に各話のオンエアを観ても、皆さんそれぞれのかまし方で全力を出している異種格闘技戦のような雰囲気で、全員が本当に容赦なくフルスイングでめまいがします(笑)。
――それぞれにリミッターを外して、全力で暴れているような雰囲気と言いますか。
syudou 本当ですよね。そうさせてくれる『チェンソーマン』ってすごいな、と改めて思いました。
もちろん、その中で僕の楽曲も、ちゃんと届いていたら嬉しいです。まだ放送は途中ではありますけど、他の方の楽曲を聴きながら、「自分はこれからこんな人たちとも戦っていかなくちゃいけないんだ」とも改めて思っています。もともと音楽に優劣はないと思っているんですけど、今後活動していく上でも「もうきれいごとじゃ済まないぞ」と思うようになったというか。こんなに素晴らしい機会をいただいたのならば、これからより「戦っていかなければいけない」と思っています。僕はお笑いが好きなので、お笑いでたとえると……『チェンソーマン』の音楽を担当できることって、ある意味「M-1グランプリ」の決勝に残ったようなものじゃないかな、と思うので。
――なるほど。確かに、「自分が一番面白いと思っている笑いはこうだ」というものを各々が持ち寄るような雰囲気には通ずるものがあるように感じます。
syudou お笑い芸人の方々が「M-1」でやっているネタって、その1年だけじゃなくて、「何年もずっと活動してきた中で一番面白いと思えるネタを投げる」ということだと思うので。今回のEDテーマも、『チェンソーマン』という作品に貢献することは第一だとして、それだけではなく、これまでの自分の要素も詰め込みつつ、今後の自分の活動にも絶対に生かさなければいけないぞ、と思いながら作っていました。なので、放送されただけでは終わりでなくて、「ここから何を残すか」が一番大事だと思っているんです。
いざ実際にやらせていただくと、エモくなっている余裕はないし、「まだここで終わりたくない、もっともっとやっていきたい」と、また欲が出てくるというか。多分、そういう気持ちが、曲の後半の“眠れぬ夜や消えぬ後悔が/何度も何度も何度も何度も/何度もあったがここで歌っている”という歌詞に繋がっているのかな、と思います。
「色々あるけど、とにかくここには辿り着いたぞ」と。
――なるほど。
syudou でも同時に、まだ舞台に立っただけなので。それだけじゃ意味がないとも思うんです。今はさらに「ここからまたやっていくしかない」と思って気を引き締めているところですね。
――今回の制作は、syudouさんにとってどんな経験になりましたか?
syudou これは自分を卑下するわけではなくて、「いずれ絶対そこに行く!」という気持ちでいるということなんですけど、自分はまだ、本当の音楽の最前線にひとりで肩を並べられる実力には至っていないと思っているんです。でもそんな中で、今回の『チェンソーマン』では、その最前線にいる方々と一緒に音楽を担当する経験ができました。元々才能や色んなものに恵まれている人たちが、これだけ全力で、フルスロットルでやっている場所に参加できたことで、ミュージシャンとしての覚悟がさらに上がって、意識が変わりました。それこそ、Adoさんとのお仕事でも下駄を履かせていただいて、『チェンソーマン』という素晴らしい作品にも参加させていただいて。これで来年syudouの名前を聞かなくなるようなことがあったら、本当に恥ずかしいぞ、と思っています。
――活動に対するギアがもう1段階上がるような経験になったんですね。今後についてはどんなことを考えていますか?
syudou まずは2023年の4月に幕張メッセで“syudou Live 2023「我武者羅」”があるので、そこをバシッと決めたいですし、ライブは感覚も掴んできているので、今後もっと増やしていきたいと思っています。あとは、何回も聴いてもらえるようなヒットも飛ばしていきたいですね。来年以降も、自分の歌も、楽曲提供も、ボーカロイドでの楽曲制作も並行してやっていくと思うので、その中で音楽好きの人たちに「syudouヤバいぞ」と思ってもらえるようになれたらいいな、と。
――その結果、何度も「M-1」に出てくるような方になっていけたら最高ですね。
syudou そうなったら嬉しいです。「M-1」の常連になって――。いや、常連で満足していてはダメですね(笑)。いつか優勝して、卒業できるように頑張っていきたいです。
●リリース情報
syudou
「インザバックルーム」
デジタル配信中
https://syudou.lnk.to/In_the_Back_Room
●ライブ情報
syudou Live 2023「我武者羅」
日時:2023年4月8日(土) 開場16:00/開演18:00
会場:幕張メッセイベントホール
チケット料金:全席指定 6,600円 (税込) 特典付
Twitter抽選先行受付:12月12日(月)12:00~12月25日(日)23:59まで
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お問い合わせ…DISK GARAGE:050-5533-0888(平日12:00-15:00)
●作品情報
TVアニメ『チェンソーマン』
毎週火曜24:00よりテレビ東京系6局ネットにて放送中
毎週火曜25:00よりPrime Videoにて最速配信中
© 藤本タツキ/集英社・MAPPA
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