TEXT BY 須永兼次
クリスマス、生ピアノ……初めての試み詰まった3回目のワンマン
ステージ上に据えられた大きなクリスマスツリーが輝くなか、グロッケンによる「We Wish a Merry Xmas」をinterludeに諏訪が入場。1曲目「記憶ファンタジック」のイントロが流れるなか、「“Give Me Fine Emotion!!”へようこそー!」と呼びかけてライブの幕開けを飾る。その「記憶ファンタジック」をはじめ、序盤はそんなクリスマスの空気を感じさせるような楽曲を中心に構成。ミラーボールを用いたライトの演出や、観客の白のペンライトに彩られながら、白のドレッシーな衣装に身を包んでピュアさいっぱいの歌声を響かせていく。そのまま続けたポップなナンバー「Holy holiday」は、サビでコンパクトな手フリを中心とするダンスも盛り込みつつ、高音部ではファルセットを用いて美しく聴かせていく。天井から差すライトの色が白とパープルという、この曲と彼女のカラーから構成されるという演出もニクい。
ここからは、タイトルに“みたい”の含まれる楽曲三部作を披露。まず、直前からウキウキ感を引き継いだ「溶けるみたい」では、途中にステージ両側のお立ち台にも登って客席を見渡しながらの歌唱。この日を楽しみにしてきたファンたちと目を合わせてコミュニケーションをとっていくと、「揺れてみたい」ではサビで諏訪の先導にあわせてファンが腕振りやクラップで追随。それが落ちサビでは、自然と会場中を包むように沸き起こる。それを引き出した諏訪のパフォーマンスは、コンパクトかつスムーズな腕を回す振付から、ひょいっと足を上げるポイントまで、とにかくかわいさが立つものだ。
こうして一気に5曲を駆け抜けたところで、諏訪は一旦降壇。グロッケンによる「もろびとこぞりて」が流れるなか、生ピアノ演奏を務めるスペシャルゲスト・松坂康司が登場。「ジングルベル」や「We Wish a Merry Xmas」のようなクリスマスソングから、「Wonderland!!」や「Merlot Tears」をはじめとする松坂の提供曲を中心とした諏訪の楽曲を、メドレー形式で次々に演奏していく。そして衣装チェンジした諏訪が登場すると、しばし松坂のピアノ伴奏に乗せて歌声を届ける中盤戦へ。
その1曲目は、倉木麻衣の「Winter Bells」のカバー。椅子に腰掛け、歌い出しこそやや大事に入ったものの、グルーヴィーさのあるアレンジに合わせるように、サビでは自らもタンバリンを用いてクラップを誘って盛り上げる。そのまま続けた「DATE-ALAMODE」は、軽快なピアノの音色と諏訪の歌声との相性の良好さを特に強く感じさせてくれた1曲。原曲よりややテンポもゆるめのアレンジということもあってか、落ちサビでの歌声の抜き方は不意にドキリとさせられる非常に絶妙な、この日限りのバージョンならではのものだった。そしてもう1曲披露したのは、なんと「So Sweet」。デビュー作のリード曲でありド真ん中のダンス・ポップをこのスタイルで披露するという挑戦を盛り込んできた。
3曲披露して、ここで一旦松坂とのトークパート。これまで諏訪の楽曲を10曲提供してきた松坂は、デモの時点から自らピアノを演奏したものを提出しているとのことで、リハで生演奏を目にした諏訪が「本当に弾いてるんだ!」と驚いた、とのこぼれ話も。ちなみに諏訪から「一番好きな曲は?」と問われた松坂が挙げたのが、メドレーでも演奏された「My prologue」。レコーディングで自身の好きなフェードアウトに決まったことと「ライブではフェードアウトではない形にしたい」との自身の希望、両方が叶った曲であることを理由に挙げていた。
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ミニアルバムの制作も発表! 次へと繋がる期待あふれる後半戦に
そんな裏話も飛び出したMCを挟み、ライブは後半戦へ。引き続き松坂のピアノ伴奏とともに、その松坂の思い入れが深い曲と直前のMCで紹介された「Lilac」から。ハイテンポで盛り上がる原曲をピアノバージョンにすることで、勢い任せにせずに曲を届けるという挑戦を込めたこの位置での披露だったのだろうか。左右に肩を揺らしてリラックスしながらも、サビ前はピアノとうまく息を合わせて歌唱していくと、続く「ショコラ フレーズ」からはややせつなめなゾーンへ。ピアノ伴奏のみで歌われることで、サビのメロディのキュンとする感じがより色濃く現出してくる。また、アカペラで始まった大サビにピアノがぐわっと入ってくることで、明確に盛り上がりポイントを提示するようなみせかたも。
ここで松坂は降壇。諏訪がステージ中央にスタンドマイクを据えて、せつなく入って一気に開けるナンバー「Merlot Tears」からライブは終盤戦へ。観客もややハードなサウンドに呼応して、Aメロからクラップを起こしたりピンと張った歌声の発信源へとパープルのペンライトを伸ばして、終盤に向けて盛り上げていく。また、引き続きスタンドマイクを用いてのハイスピードなナンバー「My prologue」では、サビの締めなどでは振付も用いながら、この曲でも艶っぽさを醸し出すアプローチで歌い踊っていく諏訪。サビのラストのダンスもとてもよく整理された、綺麗なものだった。そして曲締めでスタンドマイクに手をやると、そのまま力強いロックナンバー「Strawberry Egoist」へ。冒頭のフレーズに呼応して、客席は真っ赤に染まる。力強く歌いながらも、サビのラストのフレーズでは振り付けや息の抜き方に、またも色っぽさが。Dメロのコール・アンド・レスポンスになる部分でも、ドキッとする息の抜き方を込めつつ、上手く魅せていった。
さて、あっという間にライブも終盤。この日唯一の単独MCパートで諏訪は、今日の挑戦の詰まったセットリストを、自分自身で決めたことを明かす。さらに続けて、2023年春発売予定のミニアルバムの制作決定を発表。レコーディングは既に始まっているとのことで、「トリッキーな曲がある」との予告も含めて期待が高まる。そして「また皆さんに、(2023年に)新曲を届けられると思います」とさらなる活動への期待も持たせると、本編ラストナンバーとして最新シングル「Fine Days」を披露。パステルカラーに照らされた諏訪が、その明るい世界の中からポップなナンバーを歌っていく光景は、クライマックスにふさわしい輝かしいもの。曲中では再びお立ち台に登ってファンと視線を交わしながらの歌唱で、本編を締めくくった。
曲が終わって諏訪が降壇したあと、すぐさまアンコールを求めるクラップが場内に響き渡り、「Wonderland!!」のイントロとともに諏訪が再登場。キュートにステップを踏んでダンスを魅せながらのステージを展開することで、アンコールでは“挑戦”や“新しさ”続きだった本編とは違って、これまで大事にしてきたものや、そこから生ずる魅力を提示するような場に切り替えたような印象を受ける。Dメロではこの光景に合うように、この日一番の晴れやかな表情で歌唱。歌詞とリンクした希望を感じさせるステージは、改めて彼女について行きたくなるようなものだ。
「1stライブでは1曲目だったこの曲を、今回はアンコールに……」といたずらっぽく種明かしをすると、この日の本当のラストナンバーとして、ライブのタイトルチューン「Give Me Emotion!!」の披露へ。
久方ぶりのワンマンライブでありながら、クリスマス間近という公演時期を反映したり自身で組んだセットリストを通じた新たな挑戦等を盛り込んだ点から、コンセプトライブのようでもあった今回の公演。この経験を糧に、ソロアーティストとしての彼女の表現がどのように膨らんでいくのか。そして声出しOKの公演と噛み合ったときに、それがどう発揮されるのか。その日が来るのが、楽しみでならない。
“NANAKA SUWA 3rd LIVE~Give Me Fine Emotion!!~”夜公演
2022.12.03@山野ホール
【SET LIST】
M01. 記憶ファンタジック
M02. Holy holiday
M03. 溶けるみたい
M04. 揺れてみたい
M05. ふれてみたい
M06. Winter Bells(倉木麻衣)★Cover
M07. DATE ALAMODE
M08. So Sweet
M09. Lilac
M10. ショコラ フレーズ
M11. ノスタルジック・キネマ
M12. Merlot Tears
M13. My prologue
M14. Strawberry Egoist
M15. Fine Days
EN1. Wonderland!!
EN2. Give Me Emotion!!
関連リンク
諏訪ななか日本コロムビア公式サイト
https://columbia.jp/suwananaka/