声優として活躍する南條愛乃がソロデビュー10周年を記念したアルバム『ジャニーズ・トランク』をリリースした。「旅の途中」というコンセプトの意味から、記念曲にふさわしい楽曲に込めた演出、MV撮影の様子や好評企画「南條一間」の話まで、アルバムの隅々を語ってもらった。
ほかにも「全曲ふりかえりトーク」の話や10周年記念ブック『ROAD OF 10 YEARS』まで、10周年に関した内容盛りだくさんでお届けする。

INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉

アルバムのコンセプトは“旅の途中”
――まずは『ジャニーズ・トランク』というアルバム全体のコンセプトから伺えればと思います。“旅の途中”とされたそうですが、その理由をお聞かせください

南條愛乃 デビューミニアルバム『カタルモア』(2012年12月12日リリース)が「もっと語りましょう」とか「もっと話しましょう」というコンセプトだったのですが、そこを出発点として考えました。ソロワークが始まって5周年のときには、皆さんとのご縁を繋ぐことをテーマにした『・R・i・n・g・ 』(2017年7月12日リリース「サントロワ∴」収録)という曲があり、さらにそこから5年経ち、今の私はどういう状態で立っているんだろうと考えました。そのとき、ファンの方やチームの方がいて活動ができていることをありがたいなと思いつつも、特に「ここに辿り着いたな」という実感は湧かなかったんです。どうしたものかなと思ったのですが、10年の節目として立ち返ったときに、「どこかに辿り着いたという答えがない、ということが答え」なのかなと思って。ソロワーク的には、まだゴールをどこに設定しているかわからないけれど、みんなと一緒に旅をしている途中で、10年という節目ではあるけれども、旅で捉えるとまだ1個の通過点でしかないことをコンセプトにしようという感じで作り始めました。



――今作は『カタルモア』を担当された佐藤純之介さんもディレクターに立たれていますが、久々にソロワークでお仕事をされてみていかがでしたか?

南條 13曲目の『ジャニーズ・トランク』以外は、すべて純之介さんにディレクションしていただきました。やっぱり久々だったので、当時のことを振り返って懐かしい話にも花が咲きました。この数年で私自身の歌い方も変わってきたので、「当時はこんな低い声は出なかったのに、今は出るようになったんだね」といった、今と昔を比べることができるのは純之介さんならではだなと思いました。

――リード曲の「ジャニーズ・トランク」は南條さんが作詞を手がけ、作曲はお馴染みの藤間 仁さん(Elements Garden)が担当されています。藤間さんにはどんなお願いをされましたか?

南條 旅や旅の途中をテーマにしようとしたときに、『カタルモア』に収録した「光」の後日談的なものにしようと考えました。
藤間さんには、「光」の音源を添えて、体に空気がまとわりつくような感じの温度感や湿度感だったり、夜明け前の道を灯台の明かりを頼りに歩いていくようなイメージをお伝えしてお願いをいたしました。そうして仕上げていただいた楽曲は想像以上のものになりました。





――そんな曲に対して南條さんはどんな思いを歌詞に込められましたか?

南條 「光」の後日談という部分を出したかったので、「光」の中で登場している“Seek a way”や“Sing a song”といったワードをサビに用いたり、私からファンの皆さんへという気持ちや、これまでの軌跡という意味で「今日もいい天気だよ」(2016年7月13日リリース『Nのハコ』収録)から“Sunny day”というワードを入れたり、「・R・i・n・g・ 」の“Ring to Ring”を使ったりと、10周年の道のりと、今見えている景色、そしてこれから進んでいくであろう道のりへの希望を込めて書いて。勢いで筆を進めたので、書くまでの時間よりも書いてからしばらく寝かせて、自分に馴染むまでの見直す時間を十分に取りました。





――レコーディングはいかがでしたか?

南條 レコーディング自体はとても順調でした。諸々の仕事やFCイベントやオーケストラコンサートの準備と重なり、立て込んでちょっと焦りはあったものの、曲の良さと振り返りと、今後への希望は精一杯込められたと思います。

――これからまだまだ育てていきたい楽曲ですね。

南條 そうですね。先日“京 Premium Live 2022”で一足早く披露したのですが、やっぱりこの曲は純度の高い皆さんの前で歌って、より育っていく気がするので、ツアーや個人で開催するイベントなどで歌っていくうちに、また今とは違った姿になっていくんだろうなという気がしていて、それもすごく楽しみだなと思っています。

ジャケ写や過去のMVとリンクする「ジャーニーズ・トランク」のMV
――この曲のMVのお話も聞かせてください。作りについて南條さんから何かご意見は出されましたか?

南條 いつもお世話になっているmochigome監督だったので、打ち合わせの最初から意見を求められました。今回のテーマが“旅”ということで、どこかを移動している感じは出したいというお話はさせていただき、それをどのように実現するかの話し合いに一番時間をかけました。
服装がファンタジックなので、リアルな風景や街並みというよりも、スタジオで過去のモチーフを登場させながら、ジャケ写ともリンクするように作っていく方向性でまとめていきました。

――背景には切り絵のような造形物がターンテーブルで回っていて、その前を歩く様子が幻燈のようでまさにファンタジックでした。

南條 そうですね。これは、mochigome監督からのアイデアで、最初は想像がつかなかったのですが、実際に撮影現場に行って「こういうことか!」と納得しました。背景が白いから照明によっても全然雰囲気が変わったり、プロのお仕事を存分に示していただきました。途中にはアニメーションのカットもあり、かわいいイラストで描かれた私が地図を持って歩いていて、そこがジャケ写とも繋がっていて。本当にさすがのお仕事でした。

――また、映像の中には過去のMVをコラージュしたシーンもあります。また、このアルバムと同時発売のMV集「ジャーニーズ・トランク~Memorial Music Clips~」でもこれまでのMVが1枚にまとまりました。ご自身で改めて振り返っていかがですか?

南條 「過去のMVを投影した背景の中で歌いたい」と最初に私が言い出して、それを監督に実現していただきました。コラージュになったことで一画面にいくつものMVが次々と登場し、こうして並んだものを見てみると、「10年ってあっという間だなぁと思っていたけど色々作ってきたなあ」と感慨深くなりました。過去のMVの総まとめというか、今までの曲たちとも一緒に歩いているところが映像としても表れています。
そして収録曲の最後に「ジャニーズ・トランク」があることできれいにまとまる感じもあります。

――色んな場所・セットで、様々なアイデアを映像にしてきましたね。

南條 そうですね。やっぱりそれぞれの曲に合わせた画作りをしたいという考えでいるので、パッと見て表情から衣装を含め様々な人物像作りをしてきましたし、こうしてMV集でまとめて観ると、よりそれが際立った感じがしました。1枚で続けて観ることで楽しめる部分もあると思いますし、曲ごとに雰囲気も変わっているので、続けて観たら見応えがあるんじゃないかなと思います。MV集としても面白い1枚になったと思ってます。



今回もダラダラ感満載の「南條一間」は必見!?
――そして今回も特典映像で『南條一間』が収録されます。もうシーズン6なんですね。

南條 最初は私がこたつの中で1人ダラダラと皆さんからのお便りを読むという内容でした。初期はまだピンときてなくて「これで番組になるのかな?」って(笑)。「リスアニ!TV」内のコーナーから現在のシリーズになってからは、天の声が進行してくれるお陰でよりダラダラできるようになりました(笑)。

――すごくリラックスしていて、素に近い南條さんを見せているような印象を受けたのですが、収録はどんなようすですか?

南條 家にいても隙あらば寝転がっちゃうので、本当にそのままというか(笑)。
じじい役の鷲崎 健さんはデビュー間もない頃からご一緒している方なので、気心知れた間柄という感じがありますね。トークや進行で暴投しても平気なんです(笑)。何かを始めようとする流れのときに、普通だったら「わかりました。やってみましょう」と言うところを、あえて「やっぱり嫌だ」と言ってみて、それを鷲崎さんが「オイ!なんでだよ!」と突っ込んでくれたり(笑)。鷲崎さんの話を私が理解せずに話が噛み合わないまま進んだりもして。畳敷きの上にちゃぶ台と布団と鷲崎さん。この一揃いで番組になっている感じがしますね(笑)。

――「南條一間」というタイトルが本当に良くできていて、ここまで素に近いところを番組で出せる方はそう多くないのではと思います。

南條 本当にそうですね。ファンの方が完璧できれいな南條愛乃像を求めていないからこそ、できるんじゃないかなと(笑)。これは鷲崎さんや構成作家の渡邊純也さんと話したことなんですけど、「この番組でやっていることはYouTuberのはしりだよね」と。こういったなんでもない日常を観たいというニーズは実は高かったんですよね。
ここまで続くと最近は地味ネタを探すのが結構大変ですけど(笑)。

――これまでの番組企画で南條さんが初めて体験したことはありますか?

南條 初めてハリネズミに会ったり、ドローンを操縦させてもらったりとか、ほぼすべての企画が初体験だと思います。日常ではまずしないことを、仕事として番組の中でできるのが楽しいですね。阿修羅像を絵でなぞる回は、私が地味な作業が大好きなのですごく楽しかったですし、ほかにも地味なもので言うと、10円玉磨きとか。だいたいのことは「これ、どうやるの?」からスタートしますね。





――これだけ長く続いてきましたが、南條さんの中でこの番組はどんな位置付けにありますか?

南條 ネタ探しを常にしておいたほうがいいのかなと思っている、そんな位置づけ(笑)。正直、こんなに続くとは…。意外と需要があるもんなんだなと。当初は機会も限られていたのですが、今回を含めアルバムの特典に付く流れができてからは、また収録できるかなと楽しみにしています。

様々な形で振り返る10年の軌跡
――ソロデビュー10周年を迎えられた際に様々な活動をなさってきたなか、ご自身による楽曲解説とファンの方から各曲にまつわるエピソードを紹介するYouTubeでの番組「全曲ふりかえりトーク」も印象的でした。この番組をふりかえっていかがでしたか?

南條 かなりの時間と労力を割いた企画でした。解説のために当時のことを思い出すメモを作成したり、当時の制作メモを発掘したりだとか、毎回の時間は短めですがボリュームのある内容になりました。
私からの目線だけでなく、ファンの方から見た10年やファンの方がどのように曲と接していたのか、垣間見えるきっかけになりました。時間の関係上、すべてをご紹介できなかったのですが、お便りはすべて目を通しています。平日毎日更新の形にしたのも、日常の中の隙間時間に5分でも10分でも、曲に触れてもらう時間があってほしかったから。おかげさまで、大勢のファンの方にご覧いただき、この企画に対しての感想も多数お寄せいただきました。通勤中や通学中に聞いてくださったりしている声も届いていたので、大変でしたがやって良かったなと思っています。



――12月12日の10周年記念日には『南條愛乃10周年記念BOOK「ROAD OF 10 YEARS」』という記念ブックが発売されました。どんな内容の本かご紹介いただけますか?

南條 まず、出身地である静岡県での、リラックスした表情の撮り下ろしがたくさん載っていたり、子供の頃の写真も載っていたりと、ちょっとした写真集としても楽しんでもらえそうな本です。あとは先ほどのYouTubeで話していたセルフレビューも文字としてまとまっていて、じっくりご自身の好きな時間に読んでいただけます。15000字あるロングインタビューも、10周年に関して他所ではあまりない切り口で興味深い質問をしていただき、とても読み応えがあります。井内舞子さん(作曲家)・桑島由一さん(作詞家)の対談も新鮮で、作家さんからの目線で見られた私という企画も面白いですね。ツアーの振り返り写真や衣装さんやグッズ担当とも話していたり、私が当時描いた衣装のラフを引っ張り出してきて、作られていく過程が見えるなど、裏側フェチの人も楽しんでもらえると思います。ごきんじょさん(ファンクラブ会員の呼称)からのメッセージもたくさんあり、1日や2日で読めないほどのボリュームで、この年末年始にじっくりと腰を据えて読んでもらえたら嬉しいなと思います。

――では最後に、来年のツアーに向けてのお気持ちをお聞かせください。

南條 『ジャニーズ・トランク』を引っ提げてのツアーになりますが、その中でもこれまでの歩みや振り返りを感じられる作りになるといいなと思っているので、ぜひ一緒に旅をする感じで楽しんでもらえたらなと思っています。

●リリース情報
南條愛乃5thオリジナルアルバム
『ジャーニーズ・トランク』
12月21日発売

【2CD+Blu-ray】

品番:GNCA-1629
価格:¥7,150(税込)
初回生産分特典:特製スリーブケース仕様/フォトブック付き

<Disc1/CD>
01. blue -青の記憶-
作曲:shilo 編曲:祖堅正慶
02. 最初の10歩
作詞:KOTOKO 作曲・編曲:丸山真由子
03. 雨音と潮騒
作詞:松井洋平 作曲・編曲:丸山真由子
04. シンプル
作詞:yozuca* 作曲・編曲:黒須克彦
05. EVOLUTiON:(TVアニメ「進化の実~知らないうちに勝ち組人生~」OPテーマ)
作詞:yozuca* 作曲・編曲:黒須克彦
06. この胸に名もなき星
作詞:川田まみ 作曲・編曲:齋藤真也
07. 静夜行
作詞:石川夏子 作曲・編曲:祖堅正慶
08. IRO
作詞:山本メーコ 作曲・編曲:未知瑠
09. ヒトリとキミと(TVアニメ「天才王子の赤字国家再生術」EDテーマ)
作詞:rino 作曲・編曲:橋本由香利
10. ヨルゴト
作詞:rino 作曲・編曲:安瀬 聖
11. Lonely voyage
作詞:黒崎真音 作曲・編曲:井内舞子
12. ハートリップ
作詞・作曲:やなぎなぎ 編曲:長田直之
13. ジャーニーズ・トランク
作詞:南條愛乃 作曲・編曲:藤間 仁(Elements Garden)

<Disc2/CD -Cover Songs->
01. 鏖鋸・シュルシャガナ/『戦姫絶唱シンフォギアG』月読 調
作詞・作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:鈴木ぷよ
02. SENSE OF DISTANCE/『戦姫絶唱シンフォギアGX』月読 調
作詞・作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:長田直之
03. 冬がくれた予感/スマートフォンゲーム『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』BiBi~絢瀬絵里西木野真姫矢澤にこ from μ’s~
作詞:畑 亜貴 作曲:佐伯高志 編曲:安瀬 聖
04. Lost Heaven/PCゲーム『シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち』リィズ・ホーエンシュタイン
作詞:RUCCA 作曲:Evan Call 編曲:長田直之
05. ココロノエデン/『探偵オペラ ミルキィホームズ』明智小衣
作詞:こだまさおり 作曲:藤末 樹、YUMIKO 編曲:八木沼悟志

<Disc3/Blu-ray>
・ジャーニーズ・トランク MV (short ver.)
・南條一間 ~シーズン6~(全6話)

初回生産分特典
・特製スリーブケース仕様
・フォトブック(28P)
・「南條愛乃 Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~」ライブ先行予約応募用紙(シリアルコード付)

南條愛乃Music Clip Collection
『ジャーニーズ・トランク ~Memorial Music Clips~』
12月21日発売

【Blu-ray】

品番:GNXL-1009
価格:¥6,050(税込)

<Blu-ray>
・blue
・君が笑む夕暮れ
・あなたの愛した世界
・黄昏のスタアライト
・きみを探しに
・ゼロイチキセキ
・光のはじまり
・一切は物語
・君のとなり わたしの場所
・サヨナラの惑星
・藪の中のジンテーゼ
・believe in myself -acoustic arrange making MV-
・涙流るるまま
・A Tiny Winter Story MV version
・A Tiny Winter Story Lyric Video version
・EVOLUTiON:
・ヒトリとキミと
・ジャーニーズ・トランク
上記映像を収録予定

*初回生産分特典:特製スリーブケース

●ライブツアー情報
南條愛乃 Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~
2023年4月23日(日)神奈川・相模女子大学グリーンホール
2023年4月30日(日) 大阪・NHK大阪ホール
2023年5月3日(水・祝)愛知・刈谷市総合文化センター 大ホール
2023年5月7日(日)東京・立川ステージガーデン

アルバム「ジャーニーズ・トランク」購入者先行受付実施中
受付期限:2023年1月15日(日)23:59まで
その他ライブツアーに関する詳細はこちら
https://www.gokinjolno.jp/

●書籍情報
南條愛乃10周年記念BOOK「ROAD OF 10 YEARS」
発売中

発行・発売:株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ

[掲載内容]
・幼少期を過ごした静岡県清水区を巡るフォトジャーニー
・セルフレビューで振り返るDISCOGRAPHY
・写真と対談で振り返るライブアーカイブ
南條愛乃×前田千佳子(スタイリスト)/南條愛乃×川崎圭介(グッズ担当)
・南條愛乃ロングインタビュー
・井内舞子(作曲家)と桑島由一(シナリオライター/作詞家)が
楽曲制作の現場を振り返る
・“ごきんじょさん”と仕事仲間からのお祝いメッセージ

詳しくはこちら
https://www.lisani.jp/0000218248/

関連リンク
南條愛乃 公式サイト
http://nbcuni-music.com/yoshino_nanjo/

南條愛乃 公式Twitter
https://twitter.com/nanjolno

南條愛乃 公式Instagram
https://www.instagram.com/nanjolno/

オフィシャルファンクラブ「ごきんじょるの友の会」
https://www.gokinjolno.jp/
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