異世界ファンタジー作品、TVアニメ『神達に拾われた男2』が1月より放送スタート!主人公リョウマを演じる田所あずさが、アーティストとして、第1期のOPテーマ「ヤサシイセカイ」に引き続き、第2期ではEDテーマ「ドラマム式探査機」を担当する。作品に寄り添いつつ、毎日の疲れた心をふわっと軽くして、どこか別の世界へ誘ってくれるような楽曲。
チルミュージックでお洒落な雰囲気も彼女の新たな魅力として楽しめるはずだ。楽曲のことはもちろん、昨年10周年を迎えた自身の活動についても語ってもらった。

INTERVIEW&TEXT BY 塚越淳一

世の中の人が、現世に疲れている
――2022年は、声優デビュー10周年も迎えたり、吹き替えの仕事なども増えて、充実しているように感じましたが、いかがでしたか?

田所あずさ たしかに吹き替えも挑戦させていただきました。連ドラの主人公も初めての経験で、毎朝地上波のテレビから、自分の吹き替えの声が聞こえてくるという、新たな嬉しい体験ができました。それに声優活動10周年を迎えたことで、今までのことを思い出す機会もあったんです。そこで改めてありがたいなと思ったのは、ずっと続いているコンテンツに恵まれているんですよね。『アイドルマスター ミリオンライブ!』はもうすぐTVアニメ化されますし、『アイカツ!』も10周年で、1月20日に劇場アニメ『アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~』が公開されますし、(天津)向さんとのラジオ『田所あずさと天津向のどうせワレワレなんて』も続いている……。ひたすら目の前のことをがむしゃらにやってきたから、後ろを振り向くことってなかったんですけど、振り返ると、本当に長く続くコンテンツに関われていて、嬉しく思いました。

――長く続くコンテンツって、実際は少ないですからね。

田所 そうなんですよ。でも自分としては、一緒にあるのが当たり前になっていて、終わることも考えていなかったというか。でも、声優になってから、終わらないなんてことはないんだということも自覚したし、終わりが存在することを知って改めて、こんなに続いているのはすごいことなんだ!と思ったんです。
BanG Dream!』や『プリンセスコネクト!』もそうですね。『ウマ娘 プリティーダービー』も実際は長いですし、『NYLON JAPAN』のようなファッション雑誌に取材していただいたのは、貴重な体験で、びっくりしました。

――そんな10年で、成長したところや変わったところというと?

田所 う~ん、でもあまり変わらないというか。自分はダメだダメだ、まだまだだ、こんなんじゃダメだ!って、芝居にしても歌にしても毎日思っているんですよね……。でも友人に「それでも底は上がっているんじゃないの?」って言われたんです。一番うまくいったと思うところまでは行けてないとしても、着実に底は上がっているから、成長しているんだよと言われて、たしかにそうだなと思いました。私はまだこんなところにいるのか、まだこれもできないのかって思う日々でしたけど、ちゃんと経験値として刻まれているのかなって思います。

――底が上がっても、目指すところも同じだけ上がっているのかもしれないですね。でも、自分の成長は、自分でも感じられていると思うんですけど……。

田所 いや!どうですかねぇ。自分では認められないんですよね(笑)。

――そういうところも相変わらずで、ちょっとホッとします(笑)。
この10年でのターニングポイントとなる出来事というと、何になりますか?


田所 歌に関しては、やっぱり『Waver』(21年作品)というアルバムが一番大きいです。そのときいっぱい話させてもらったスタッフさんやクリエイターさんとは、グッと仲良くなれたというか。もはや私以上に私を理解してくれていて、私がわからない領域があるんですよ(笑)。私が「こういう感じにしたい!」って言うと、それをブラッシュアップして、私の手の届かないところまで連れて行ってくれるというか。そういうメンバーと、今回の「ドラム式探査機」も作っているんです。

――たしかに、そこから音楽がアーティスティックになってきていますよね。

田所 そうですね。だから今回はジャケットもヤバいですよ。もはや私の顔も写っていないですから(笑)。一応私ではあるんですけど。

――『Waver』からの流れは今作でも感じられて、作詞が大木貢祐さんで、作曲・編曲が神田ジョンさんとなります。この曲はTVアニメ『神達に拾われた男22』のEDテーマですが、田所さんが演じている主人公のリョウマがクリーニング店洗濯屋を開いていたのが第1期でしたけど、だから「ドラム式探査機」という曲名なのですか?

田所 そうです(笑)。
洗濯はキーワードだと思って、ドラム式洗濯機から取っています。洗濯屋の2号店もオープンして、リョウマくんはこれからも洗濯屋として頑張っていくので。

――今回の制作も3人で話し合うところから始めたのでしょうか?

田所 大木さんとジョンさんと電話会議をしまして、本当にまっさらな、ゼロの状態から始めたんですけど、そこで作品のことや、どういう曲を歌いたいかというところまでアイデアを出し合いました。そのときにリョウマくんが洗濯屋をやっているから、洗濯は面白いよねとか。あと、ジャンルが転生モノなので、転生モノがみんなに好かれる理由って何でしょうね?という話をして、世の中の人が現世に疲れているんだってことになったんです。この作品で、自分の代わりに報われていくリョウマくんを見ながら、自分も癒やされるみたいな。毎日ヘトヘトになって家に帰ってきて、明日頑張るためになんとか自分を癒やす……なんだか仕事のために生きている感じになっているのが、今なんじゃないかと思ったんです。

――たしかに最近の異世界モノは戦うだけでなく、スローライフを満喫するものとか、穏やかなものが多いですからね。そこは皆さんで共感できるところだったのですか?

田所 共感はありました。私も家に帰ったら刺激の強いものは見たくない気持ちになっていて、淡々と料理が出来上がっていく動画を見たり、ローファイ・ヒップホップの映像をずっと流していたり、あまり情報を入れすぎないようにして生きているところがあるんですよね。だから、みんなもどこかに連れ出してほしいっていう思いがあるんじゃないかと思って、この曲は、ドラム式洗濯機型宇宙船で、宇宙に連れ出してくれる歌になっているんです。

――ドラム式洗濯機が回っているのをぼんやり見ていたら、いつの間にか宇宙にトリップしていたってことなのかと思っていました。


田所 でも、それもありです!見ているうちにトリップしちゃうでもいいし、脳みそだけ連れて行かれちゃうような感覚でもいいんです。本当に体が軽く、ふわっと浮くような感じが出ればいいのかなと思って、チルミュージックにしているし、私がローファイ・ヒップホップをいつも流しているから、そういうローファイ感も出せればいいなと思いました。

今回はブルーノートに挑戦しました
――曲が届いたときは、いかがでしたか?

田所 デモ音源を聴いたときの興奮はすごかったです!「ジョンさん、良すぎますね!何ですか、これは!」って言いました(笑)。だから一切リテイクもしていないですし、初っ端から最高でした。歌を入れてからブラッシュアップはしていると思いますけど、アレンジのベースは、最初から変わっていないと思います。

――大木さんの歌詞は、あまりアニメ作品に使わないワードも多く入っていて、相変わらず面白いと思いました。

田所 歌詞も最高なんですよ!家にいたところから、サビで宇宙へ投げ出されるところとかはメロディにぴったり合っていて、聴いていると、本当にトリップしちゃうんです。あと、「田所さんは何ジャムが好きですか?」と聞かれて、色々答えたんですけど、フィグジャム(いちじくのジャム)が一番語呂が良かったらしく、採用してくれました。あと、私の家がドラム式洗濯機だから、このタイトルになんです。サビ前に洗濯機の音が入っているんですけど、それは自宅の洗濯機の音をスマホで録音して、ジョンさんに送りました(笑)。

――細かい!歌入れはどうでしたか?

田所 今回はすんなり終わったんです。一発目から「いいじゃん!」と言ってくれて、もしかしたら最短で終わったかもしれない。
今回は声の張り付き感を意識したとおっしゃられていて、マイクなどもこだわって、空間を出せるよう、ジョンさんがセッティングしていました。私としては、グルーヴというか、ジャズっぽいノリを意識していて、たとえばBメロの“なくはないの あなたとのなら”のところとかは、私的に、歌よりノリを優先した感じになってしまったテイクだったんです。でもそれが採用されていて、これでいいんだ!と予想外だったので、これからはもっとノリについて理解しなくちゃいけないなと思いました。それにジョンさんは先生みたいな感じなので、曲をいただくたびに課題をくださるんですよ。

――今回は何に挑戦したのですか?

田所 はじめて“ブルーノート”に挑戦しているんです。歌い方の技法で、ちょっとだけフラット(半音下げる)する歌い方なんですけど、わかりやすいところだと、“音沙汰なくて”とか“機械と水” “柔軟剤”あたりになります。

――ちょっとおしゃれに聴こえますよね。

田所 そうなんです。ジャジーな感じというか。そのひと手間で、すっごくおしゃれになるんだなと思ったので、やっていても楽しかったです。

――おしゃれなのに“柔軟剤”という歌詞なのが、やはりすごいセンスです。

田所 ホントですよ(笑)。
探査機にする発想力もすごいし、“転生しか…”って、転生って言っちゃってるのもおしゃれですよね。そこは避けないんだ!っていうところが良いスパイスになっていて、めっちゃお気に入りです。

――今回は1曲だけですけど、今後も曲は作っていく感じですか?

田所 今年は色々曲も作っていけたらいいなと思っています。実はもう動いてはいるんですけど……。私は暗めな曲が多いので、今回みたいなノリのいい曲も作っていけたらいいなと思っています。ジャズっぽい曲もやりたいんですよね。ブルーノートもちゃんと会得したいですし。

――ジャズでしたら、ビルボード東京とかで、夜景をバックに歌えたら楽しそうですね。

田所 そういうところで歌って合いそうな曲もできたらいいですよね!

――ちなみに今回の曲も、大木さんや神田さんに褒められましたか?

田所 ちゃんと褒めてくれました(笑)。レコーディングが終わって帰路につくときにLINEが来て、「歌、最高だな!」って言ってくれるんです。そこから1ヶ月くらい、定期的に「めっちゃ曲良くない?」って連絡をくれるんですよ。だからみんなで音楽を作るのは楽しいです。実際に本当に良いですし、嘘偽りなく、心から最高だと私も思っています!

――毎年、年始だと目標とかを聞かれると思うのですが、2022年に立てた目標は達成できました?

田所 毎年目標とか抱負を聞かれるから何かしら立てるんですけど、何を立てたかを忘れちゃうんですよね(笑)。でも、よく言っているのは思い切るとかかな。それで言うと、思い切れなかったかもしれない(笑)。思い切るって本当に難しいですよね。人生の課題です。どうしても不安になってしまって、失敗したらどうしようと思って飛び込めないから、そんなこと気にせずに飛び込んで、やるときは堂々とやれるようになりたい。緊張して思うようにできないことが多い人生だから、もっと伸び伸びと、肝っ玉をデカくしたいです(笑)。

――ドームとか、大きなステージを何度も経験してきているから、もう肝っ玉はあると思いますよ。

田所 たしかに!正気じゃないですよね(笑)。でも実は、会場が大きければ大きいほど、私のことなんて見ていないだろうという気持ちになるんですよ。大きすぎて、みんなの視線が色んなところにいくと思うから、逆に緊張しないんです。

――そうなんですね!では最後に、2023年の抱負を聞いておきましょう!

田所 休む。10年やって、これまでを振り返ってみて、心を一旦落ち着かせようと思ったんです。生き急ぐじゃないですけど、10年がむしゃらにやってきたからこそ、視野を広げる意味でも力を抜いて、一つ一つのことを楽しむくらいの余裕を持ちたいと思いました。かと言って、いろんな予定はすでに決まっているんですけど、そういう目標を掲げるだけで、休むぞ!という気持ちになれると思うので、今年は休息の1年にしたいです。



●楽曲情報
TVアニメ『神達に拾われた男2』EDテーマ
「ドラム式探査機」
作詞:大木貢祐 作・編曲:神田ジョン
歌:田所あずさ
1月9日配信開始

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●作品情報
TVアニメ『神達に拾われた男2』
放送中

【キャスト】
リョウマ:田所あずさ
エリアリア:桑原由気
ミーヤ:高野麻里佳
ミヤビ:巽 悠衣子

【スタッフ】
原作:Roy『神達に拾われた男』(HJノベルス/ホビージャパン)
監督:柳瀬雄之
シリーズ構成:山田由香
キャラクター原案:りりんら
キャラクターデザイン・総作画監督:出口花穂
アニメーション制作:MAHO FILM

©Roy・ホビージャパン/『神達に拾われた男2』製作委員会

関連リンク
田所あずさオフィシャルサイト
http://www.horipro-international.com/artist/musician/tadokoro

TVアニメ『神達に拾われた男2』公式サイト
https://kamihiro-anime.com/
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