INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一
「心からの叫びを音にしている感じがする」
――今回、プロデューサーの冨田明宏さんとは何かお話をされたのですか?
内田真礼 いつものように、今思っていることを話しましたね。私自身流動的というか、その瞬間に思っていたことを曲に入れることで満足して次に進んでいることが結構あるので、2022年の後半に思ったことや感じたことは、エッセンスとして入っていると思います。とはいっても、制作期間的には3曲目の「ダストテイル」が一番最近作った曲なので、そこに今やりたい音楽が入っているんです。
――「ダストテイル」でも、また新しい“内田真礼”が聴けましたし、3曲それぞれ雰囲気が全然違うシングルになったと思います。まず、1曲目の「ラウドヘイラー」ですが、作詞・作曲が渡辺 翔さん、編曲が白戸佑輔さんという、アニソン界を牽引するお二人による楽曲です。
内田 この曲は、TVアニメ『冰剣の魔術師が世界を統べる』のEDテーマなので、キャラクターの心情がかなり入っていますし、作品を大事にしながら作っていきました。私がそのキャラクターを演じているわけではないものの、キャラクターたちの鬱屈とした気持ちやなかなか踏み出せない焦燥感などは、主人公たちの気持ちになってぶつけたつもりです。
――溜まっているものを吐き出すような、強い歌詞ですよね。
内田 なかなか上手くいかなかったりすることが多いなかで、「悩みながらも進む」とか、「自分と向き合って成長する」みたいなことがテーマになっているのかなと思いました。
――思春期のもがき、みたいな印象を受けました。
内田 そんな感じですよね。
――内田さんは、色んなしがらみを壊してきた人ですしね(笑)。
内田 今の世の中の、まだ閉塞感がある感じをぶっ壊すぞ!と思ってやってきていて、内田真礼の道で言うならば、「いつか雲が晴れたなら」(2020年11月)を歌っていたときから考えると、ちょっとずつ前進していて、そこから、うわー!って殻を破って出てきているような感じまではきていると思うんです。だから今回のレコーディングも、だいぶ喉を開いて歌っていたりするので、エネルギーは乗っかっている感じがします
――ロックな曲調もたくさん歌ってきましたが、すごく似合うようになってきましたよね。
内田 あまりかっこつけていないみたいな。決めないで暴れているような感じはありますよね。仮歌とは違うけれど、歌ってみてハマったら、それが良いねっていう感じになったりするんですよ。
――それは感覚でやっているのですか?
内田 感覚だと思います。その瞬間にブチンとノれるときがたまにあって、その1回だけできて、もう一度やってと言われてもできないようなテイクが使われることもあるんですよ。2番サビなんかは、まさにそういう感じなんですけど。
――衝動的な感じが出ていますよね。
内田 レコーディングには冨田さんと白戸さんがいたんですけど、かっこいいね~!とか言いながら、わいわい楽しく録りました(笑)。
――始まりが「創傷イノセンス」(2014年4月)で、すごくロックな曲調でしたけど、あれから9年近く経って、自分の中でこういう曲に対する意識が変わってきた感触はあるのですか?
内田 歌いやすくはなってきています。私の活動の中で、100%自分でいられる瞬間って少ないと思っていて、こうやって音楽活動をしていても結局本人のやりたいこと100なわけではないじゃないですか。「創傷イノセンス」のときも、内田真礼のイメージって何だろうねって考えると、『中二病でも恋がしたい!』で演じた小鳥遊六花だったりする。そうなるとかわいさが絶対的に必要で、歌うときに一番出しやすい音ではなく、ちょっとかわいさを乗せるための歌い直しとかもあったりしたんです。それを考えると、今は一番出しやすい音を出しても、誰もそれに対して何も言わなくなったから、すごく歌いやすいんですよ。喉を締めなくていいし、キャラクターソングに近くなくてもいいので。
――自由に歌えるようになってきているんですね。
内田 それまでが嫌だったわけでもちろんなくて、みんなが求めてくれるものを作ることは、私自身も賛成派なんです。ただ、活動も8年経って周りも変わってきたので、今だからできることが出ている感じがします。鎖国が開けたみたいな(笑)。それに、オーディションで女の子をやることが多かったのが、今は男の子をやらせてもらえるようになったり。
――パブリックなイメージってどうしてもあるし、それに寄り添って活動はしていきますからね。
内田 ただそれって、私の一面でしかなくて、私はR・O・Nさんの作る曲が好きだったので「創傷イノセンス」を作曲してもらったんですけど、ELLEGARDENさんのようなロックバンドも好きだし、そういうところと、みんなの思う内田真礼像とをかけ合わせて、当時の内田真礼像ができていたんです。それが自分らしくないとかではないし、それを創り上げていたのは私自身なんだけど、今はもっと解き放たれている感じというか。そもそも、ぶっ壊すぶっ壊すって言ってきちゃったので、色々固めて作ってきたものの上に、それを破って、つるるんとした本当の私が出てきている感じです(笑)。
――だから“似合っている”と感じたんですね。
内田 そうだと思います。最初は声をしっかり作っていたから、声も出しづらかったし、レコーディングの声とライブの声が違いすぎるなと思うことがあって。「ギミー!レボリューション」(2014年10月)とかは、めちゃめちゃかわいい声で歌っていたし……。だから、ライブで歌っても、声が辛くならない曲を作ろうというのが、ここ数年のテーマでした(笑)。
――ライブでは、“内田真礼”で歌っていますよね?
内田 今はそうですね。
――パンツ初めてだったんですね!ジャケット、すごくかっこ良かったです。
内田 最初はもっと足を広げていたんですよ(笑)。殿!みたいな感じになっていたんですけど、それはさすがにやりすぎだと思ってやめました。
――ロックな曲調だからって黒でないところがいいなと思って。
内田 そう!あえてのピンク、みたいな。私がアニメで演じているキャラクターのキャロル=キャロラインのカラーがピンクというのはあるんですけど、ロックっぽいゴシックな感じでなく。実は今回の服はお腹とかも出ているんです。ちょっとスポーティな感じがあったり、透けていたりする。
――そして、工場夜景をバックに歌うMVもクールでした。
内田 川崎の工場地帯で撮影したんですけど、夜景がすごくきれいでした!緑のサテンっぽいスーツを着ているんですけど、それも新しい感じですよね。歌の吐き出すような感じが、映像からも伝わってくると思います。この曲は「c.o.s.m.o.s」のMVを撮ってくれた監督で、いつも素敵なMVを撮ってくださるんですけど、今回も映像の色味もすごくきれいで、とてもかっこいいMVになったと思います。
2023年は、色んな仕事をがむしゃらに頑張る!
――カップリングの「CHASER GAME」は、ドラマ「チェイサーゲーム」のOPテーマでしたが、「ラウドヘイラー」と比較すると、だいぶかわいい曲だなと思いました。
内田 この曲は私の中でも、まさに内田真礼の音ってこれだよね!という印象があります。フェスに出たときに、みんなで歌ったりすると思うんですけど、そういうときに自分の声が一番引き立つ感じの曲。これはドラマの主題歌なので、内容はすごくドラマに寄っていて、“缶ビール”とか、今までにない歌詞が出てきたりしているんです。
――ドラマに寄っているけど、すごく共感性は高い歌詞ですよね。
内田 聴いていると元気が出てくる曲だと思います。あと、これは手振りのダンス動画を出したので、TikTokとかで踊ってくれている人がいて嬉しかったです。
――そして3曲目が「ダストテイル」で、作詞がmido(THE BINARY)さん、作曲・編曲がTeddyLoidさんでした。エレクトロロックな印象で、クラブなどでかけても盛り上がりそうな楽曲でした。
内田 私は初めての作家さんだったんですけど、すごく素敵ですよね!2コーラス目以降もすごくかっこいいんですよ。元々こういう音楽が好きで、やりたいねという話をしていたんです。バチバチにライブで映える曲だけど、バンドサウンドではない感じ。それこそクラブっぽいサウンドの曲があってもいいよねって。「c.o.s.m.o.s」のようなEDMっぽい曲もよくライブで歌っているので、そういう曲を目指して作っていったんです。
――新しさもありました。
内田 日本語で歌っているのか、英語で歌っているのかもわからないところがポイントだったりして、そこはもしかしたら今までの感じから脱却しよう!という気持ちはあったかもしれないです。これまではセリフとかも多かったし、歌詞を届けるぞ!という感が強かったんですよ。そうやって歌詞を届けることをしてきたけど、「ダストテイル」に関してはサビの最後くらいしか何を言っているかわからない、みたいな。届けたい部分だけ、グッと聴こえてきて、あとは音楽として気持ち良いものを届けるというのはこれまでの活動ではなかったので、それは新しくて楽しいなと思いました。
――歌詞を見たら、“諸行無常”と言っているんだ!みたいな。ただ、それでも声優さんというのもあって、聴こえてはきましたよ(笑)。
内田 ホントですか!レコーディングでは、「もっともっと緩く、歌詞が聞こえないくらいでいいです」と言われていたんですよ。「同じ感じで韻を踏んでほしいから、もう言えてなくていいです」って(笑)。でも、たしかに声優さんってパキパキしゃべるから、それは職業病に近いのかも。特にマイク前に立つとそうなっちゃうので、この曲はそこから脱却して、音楽を楽しむというフェーズに行くというのを目標にしていた楽曲になります。
――そうやって毎回刺激があるのがいいですね。
内田 新しいことをやれているので、今すごく良い感じで、充実している感覚があるんです。自分のやりたいことをやってオッケーなんだと思えているので。この曲のディレクションもmidoさんが細かくしてくださり、これまでの固定観念を打ち破ってくれて、「こういうことをやっていいんだ!」って、キャラソンでもやっていないようなことができたんですよね。「こういうの、あまりやったことがないと思うんですけど……」って言われると、「やります!覚えます!」ってなっちゃうタイプなので(笑)。
――あははは(笑)。内田さん、挑戦するの好きですよね。
内田 難しい曲とかはやり甲斐がありますから。「またこれか~」ってならないところは、冨田プロデューサーの手腕だと思うのですごいなと思います。だから「ダストテイル」は早くライブで歌いたい!
――さて、このシングルからスタートする2023年は、どんな1年にしたいですか。
内田 2022年は「恩返し」を目標にしていたんです。オフィシャルサイトのプロフィールにも「おんがえし」って書いていたんですけど、振り返ると色んな区切りがあった年でもあって。デビュー当時からお世話になっている方がチームを離れたり、私の中での大きな別れが続いたんですね。しかも私が何を言ったところで変わらない、抗えない現実みたいな。なのでこれは一度リセットしなさいっていうことなんだなと思いながら12月を終えたので、2023年は、また種まきの年になるのかな?2014年のデビュー時から目標は書いているんですけど「土をならす」とか「大地を整える」とか「花を咲かす」とか、そんなことをずっと言ってきて、やっと2022年の「おんがえし」まで来たんです。つまり木が1本育ったんですよね。それが2022年の後半、バシッ!って切られるようなことが起きたので(笑)、2023年は、そこからまた親戚付き合いみたいなことをしなければなっていう。
――でも、一度木ができたことは消えないですからね。
内田 そうそう。1本できたから、それを何かに変えていきたいですよね。船とか車とかにする。それまでやってきたことを自分の武器にして、新しいものを作ろうかなと。恩返ししたいと思える味方やファンの皆さんも私にはいると思えているし、みんなに感謝したいと思ったので、その1つとしてリバイバル公演も昨年したんです。今年はまた改めて攻めていって、色んな仕事をがむしゃらに頑張っていきたいです。
――声優としてのキャリアが10年以上になる人が、がむしゃらに頑張るって、若手にとっては大変ですよ(笑)。
内田 あははは(笑)。ここからまたスタートします!とか言ってますからね。まだスタートする気ですか!?ってなりますよね。でも、振り向いている時間はないから、これまでと変わらずにがむしゃらに頑張っていきます!
●リリース情報
内田真礼14thシングル
「ラウドへイラー」
2023年1月25日(水)リリース
【初回限定盤(CD+BD)】
品番:PCCG-02214
価格:¥2,750(税込)
■封入特典
フルカラーブックレット
特典Blu-ray
ラウドヘイラー Music Video
off shot
Making of Music Video
【通常盤】
品番:PCCG-02215
価格:¥1,650(税込)
■封入特典
描き下ろしアニメイラストアナザージャケット
<収録曲>
ラウドヘイラー
作詞・作曲:渡辺 翔 編曲:白戸佑輔
CHASER GAME
作詞:山本メーコ 作曲・編曲:y0c1e
ダストテイル
作詞:mido(THE BINARY) 作曲・編曲:TeddyLoid
ラウドヘイラー – TV Size Ver.-
ラウドヘイラー -Instrumental-
CHASER GAME -Instrumental-
ダストテイル -Instrumental-
関連リンク
内田真礼
公式サイト
http://uchidamaaya.jp/
YouTube Official Channel
https://www.youtube.com/channel/UCJFEXIRB6DP_2FQJzv7pbXg
公式Twitter
https://twitter.com/maaya_taso