2019年5月のアーティストデビューから約3年。楽曲のリリースと共にライブの経験も重ねてきた土岐隼一が、3枚目のシングルで初めてのアニメOP楽曲を歌う。
現在放送中の『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』のOP「Glorious World」は“これぞアニメのオープニング!”と言いたくなるほどのド王道の幕開け感ある1曲。そんなナンバーを制作する際の話はもちろん、これまでの音楽活動で見つけた自身の歌について、そしてカップリングの1曲についても語ってくれた。

INTERVIEW & TEXT えびさわなち

新たに見つけた「アーティスト・土岐隼一」の表現
――アーティストとして音楽活動を始めてからコンスタントに楽曲制作を続けてこられていますが、そんな日々の中でのご自身の音楽観の変化や新たな感覚、気づきはありましたか?

土岐隼一 多くの楽曲を歌わせていただいてきたのですが、自分が「この歌が好き」というものもあるし、「こういう雰囲気のものを歌ってほしい」という制作側からのリクエストに応える場合もあるなかで、アーティストとしての雰囲気や方向性は定まってきています。ただ、そのなかでも毛色の違う曲とも出会いながら3年間活動を続けてきたのですが、音楽活動を始める前は自分の声に対してどういう楽曲がはまるのかがわかっていなかったんです。

――数多くのキャラクターソングを歌ってきた土岐さんだからこそ?

土岐 やっぱりキャラソンを歌うときにはキャラとして歌いますから。例えば「A3!」で僕を知ってくださった方はかわいらしい歌、「アイドルマスター SideM」の都築 圭として知ってくださる方はオーケストレーションされた荘厳な曲、「プロジェクトセカイ カラフルステージ!」ならミュージカル調と、それぞれの作品の印象から「こういう曲が合う」と言ってくださるんですけど、土岐隼一自身の歌としてはどういうものが合うのかということをあまり理解していなかったというか、自覚をしていなかったんです。でも「僕はこういう歌です」と決めなくてもいいんじゃないかと活動していくなかで思えました。声優というお仕事においても「僕はこういう役をやりたい!」というものが今のところはなくて、マネージャーさんが10年後のビジョンを考えたうえで色んな仕事をバランス良く入れてくださっているんですね。自分でマネージメントするよりも客観的に見てベストなものを振ってくださるので、そうして出会ったお仕事と向き合っていくというスタンスでこの10年、お仕事をしてきています。それと一緒で楽曲に関しても僕の好きな音楽はあるけれど、それだけじゃないものも客観的な意見で提案してもらって歌うことが楽しいんです。それに楽曲を手に取ってくれた人たちが「この曲良いね」と楽しんでくださることも実感できたので、可能性は無限大にあると感じさせてもらっています。

――そういった客観的な意見からの出会いはありましたか?

土岐 例えば「Nonfictional」と出会ってラブソングを歌わせてもらいましたし、僕の大好きなシティポップである「Home」も歌わせてもらいましたが、今回の「Glorious World」のような王道アニソンにも挑戦ができた。
今思うと、キャラソンでもここまで王道のアニメオープニングらしい曲は歌ったことがなかったんです。そんな1曲ですが、公開されたときには「こういう楽曲も土岐さんの真っ直ぐな歌い方に合うね」と色んな人たちに言ってもらえて。自分でどうこう考えて決めるよりも、周囲の人たちの視点をもらって決めていくほうが気持ち良くその曲にノれるなぁと思います。

――キャラソンで様々なタイプの曲を歌われて、ご自身の歌唱表現の幅も広がってきているのでは?例えば「Paradox Live」の征木北斎は土岐さん史上最も低いであろうボイスとか。

土岐 Paradox Liveの経験がなかったら「original scenery」のラップっぽい部分は歌えなかったなと思うんです。「きっと、もっと」の明るい雰囲気も「アニドルカラーズ」の土岐結人くんのようなキャラクターをやっていたからこそできた表現だと思いますし、今回の「Glorious World」のカップリング曲「Highway Love」のような大人っぽくもスピーディに言葉が入ってくるような楽曲も色んなキャラクターで歌ってきた経験がなかったらニュアンスの表現の引き出しがなかっただろうと思います。でも、音楽活動を始めた当初はどこかキャラクターの歌い方が出てしまっているんじゃないかと悩みました。歌っている最中に「今、都築さん出てきた」とか、頭の中に「ツキプロ」の衛藤昂輝くんが出てきたりもして、このままでいいのだろうかって。でも音楽活動の先輩である豊永利行さんや羽多野 渉さんに相談をさせてもらったときに「色んなところに色んなキャラが出てくるのも土岐くんにしかできない表現なんだから、それは“土岐隼一”という歌い方になるんじゃない?」って言ってくださったんです。瑠璃川 幸くんでもないし、昂くんでもない。君の中から出てきたものなんだから、その歌い方でいいと思うと言ってもらったときにようやく悩みを飲み干せた感覚があって。だからある種、自分の中で「このフレーズに対するベストな歌い方」というものを、自分がこれまで歌ってきたものでできた表現の引き出しから使っている、というマインドになれたことは大きかったのかなと思います。


ファンタジーだけどリアルな『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』の面白さ
――今回の「Glorious World」はTVアニメ『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』のOP。非常にオープニング感のある1曲となりました。

土岐 音楽活動開始当初からそうでしたが、アニメタイアップのときは僕の「こうしたい」という気持ちはほとんどなくていいと思っているんです。楽曲を含めてのアニメ作品だと思っているので、オープニングもエンディングも「アニメのパーツ」であるべきだと考えています。歌わせていただくときにもアニメの雰囲気や世界観を、できる限り生き生きと感じられるものにしたいというのは、『真夜中のオカルト公務員』の「約束のOverture」から不文律としてずっと抱いているんですね。今回の「Glorious World」に関してもその不文律は変わっていないです。ただ今回はずっとお世話になっていて、僕のことを100%理解してくれているRUCCAさんたちとチームを組んで僕にとって初めてのオープニング曲を作るということもあって、僕からのわがままとして「ド王道のアニソンにしてください」とお願いをしました。

――この曲の王道感は土岐さんのアイディアだったんですね。

土岐 そうなんです(笑)。でもその意向はアニメの制作チームからもあったので、早いうちに方向性も固まりました。この作品はクセがありますが冒険譚でもあるので、オープニングはド王道の雰囲気を入れていこうという話になりました。そして歌詞の中では「人間不信の彼らがここからどんどん希望を掴んでいくストーリーを入れてほしいです」とお願いをしました。
その2つをお伝えして作っていただいたのが「Glorious World」。音楽制作陣の皆さんも「このコード進行がいいよね」とか、RUCCAさんなら「土岐くんはこの母音で伸ばしたいだろうな」というところまでわかってくれているんですよね。RUCCAさんとは「テクノロイド」でもご一緒しているので、お会いするたびに「ここはこういう言葉がいいですよね」と楽曲についてよくお話もしているんです。だからこそサビ終わりのロングトーンや小節ごとの作詞の譜割まで文句のつけようのない超ド王道のオープニング曲になったんじゃないかと思います。



――その『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』という物語の印象はいかがですか?

土岐 小林裕介さんたち役者チームでよく話しているのは、ファンタジーでありながら関係性としてはすごくリアルだし、現実にありそうだよねということ。僕が演じるゼムくんはキャバクラに通い詰めているんですが、よく考えてみればキャバクラに行っていても仕事ができる人はたくさんいるんですよね。ゼムくんも借金をしているとか生活破綻しているわけでもなくて、ちゃんと日々やり繰りしながら通っています。それはゼムくんだけではなく、パーティーにいるキャラクターはみんな同じ。それぞれの仕事はしっかりとこなして、就業後にそれぞれの時間を過ごしているんです。それって現実の人間社会でもよくあることですよね。仕事仲間としてすごく信頼できるし、「この人は本当に仕事をしてくれる」と思っているけど、そんな相手のプライベートは特に知らないし、知っていなくても今の関係性が上手くいっていないわけでもない、というのはよくあることで。それが冒険者のパーティになっただけ。
もしかしたら一番仕事をやりやすいのかもなって思いますよね。そういった現代人っぽさが表現されていて、ファンタジーだけどリアリティがある。そんな不思議な作品だなと思っています。だって彼らは12話を通して、色んな人たちをちゃんと救っていますから。王道の冒険者として。ただ、救ったあとにみんなで飲みに行くわけでもなく「お疲れさまでした!」ってそれぞれの時間へと向かうだけなんです。アイドルを応援したり、競馬をしに行ったり、キャバクラに行ったりする。職業としてド王道な冒険者たちですね。

隅から隅まで大好きだと言いたくなる「Glorious World」
――そんな物語の「顔」となる「Glorious World」。届いたときにはどのような印象がありましたか?

土岐 最初に楽曲が届いて、鐘の音から始まるサウンドから『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』というタイトルがパーンと出てくるところが見えてきたんです。「これだね!」って思いました。満場一致のオープニング感にほとんど修正することもなく楽曲が決まったところで、RUCCAさんが歌詞を作ってくださいました。


――歌詞の印象はいかがでしたか?

土岐 歌詞だけ見たら、マイナスなこともたくさん書いてあるんです。“絶望だけが”とか“疑いに霞んだ”とか、そんな言葉も並ぶのですが、楽曲の気持ちの良い進行のおかげでマイナスな言葉ですら逆境から這い上がっていく力を感じるんです。彼らは後ろ向きではなく前を向いているというニュアンスに繋がる音楽と歌詞になっていて。ただ1ヵ所だけ、ラスサビの“誓って”と音を上げている部分は僕が変えさせてくださいとお願いをしました。

――でもアニメ尺の89秒から先の部分は、この曲のフルバージョンを手にした人だけしか知りえない情報が詰まっているようにも思います。

土岐 そこもまた昔のアニソンっぽさがあると思うんです。昔って「Aメロ、Bメロ、Cメロ、サビ」で終わりではなく途中でなんだかよくわからないDメロが出てきていたんですよね。アニメを見ているだけではカラオケで歌えないパートを入れてくれているのも、この「Glorious World」の王道らしさですね。



――この曲のここが好き!というと?

土岐 全部です!覚えやすいですし、ついつい歌いたくなるわかりやすさと気持ち良さがこの曲で一番好きなところです。サビに向けてどんどん盛り上がって、気持ちを高ぶらせてくれる音楽の進行も歌詞の譜割もそうですし、すべての要素がこの曲の「歌いたくなる」「気持ちが良い」という部分を盛り上げてくれると思っています。みんなにたくさんいっぱい聴いてもらいたいですね。

――歌う際にはどのようなことを意識されたのでしょうか。


土岐 こういった疾走感のあるオープニング曲をこれまで歌った経験がなかったので、収録当日まで結構悩みました。最初の頃の「どうやって歌えば」という悩みとは違うのですが、どう歌えば土岐隼一の歌い方としてはまるのかビジョンが浮かばなかった結果、収録前にYouTubeでめちゃめちゃ(仲村)宗悟の歌を聴きました(笑)。

――なぜ!?

土岐 僕の中での「気持ちの良い王道オープニング」というか、真っ直ぐに歌うかっこ良さが宗悟の歌にあったんです。それぞれの楽曲の世界観の中で自分が歌っている雰囲気をイメージしながら歌い方を把握していくのが僕のスタイルなのですが、「Glorious World」を歌う際に意識するといいなと思ったのはライブでした。実際のライブのときにこの曲をどう歌いたいか、この曲を引っ提げてみんなの前でライブをしたときにどんな雰囲気になるのかな、と思い浮かべたときに「こういう感じかもな」というイメージができて、収録に臨んだら自然と今の形になりました。歌詞も音楽も「みんなに届いてほしい」というニュアンスで歌いました。

――MVの撮影はいかがでしたか?

土岐 最初にジャケット撮影をしたのですが、そのなかでMVはどうしようかという話になり、「MVもド王道にしよう!」ということになったんです。これまでのMVではデビュー曲の「約束のOverture」がフォルクローレ調はありつつも王道に近いものでしたが、以降はそういった雰囲気もなかったですし、ここで原点回帰しよう、という話になった。あのときにできなかったものを詰め込んでみよう、今それを全力でやろう、という挑戦のあるMVでした。



アップデートされたばかりの最新の「土岐隼一」息づく1枚
――そしてカップリングの「Highway Love」です。都会的でお洒落なエレクトロポップにジャズの要素もふんだんに散りばめられた1曲ですが、こちらはいかがでしたか?

土岐 佐野仁美さんが作ってくださったのですが、アニメを見て「この曲いいな」とCDを買ってくださった方たちに向けて、この「Highway Love」は「どうも!アーティスト・土岐隼一です」と名刺代わりな、僕らしさ全開の曲にしようと作りました。ジャズっぽさもありつつボカロっぽさのあるイマドキな雰囲気も織り交ぜて、なおかつ「Love」とついているだけに大人の恋の歌という要素もある。ある種「Nonfictional」からの延長線上の“今の土岐隼一”ですね。アーティストとしてこういう曲も歌っていますよ、という看板として作っていただいた1曲です。ちなみに「Glorious World」では王道の気持ちよさに挑戦をしていますが、「Highway Love」では「これくらいはできるでしょう?」という佐野さんたちクリエイター陣からのハードルの高い1曲の歌唱に挑戦させてもらいました。ファルセットから地声に変化させる部分やメロディの進行にしてもテクニカルな部分が散りばめられていて、歌うのが難しい曲でした。

――振り幅の大きな2曲を収録したシングルが1月25日(水)にリリースとなる2023年。どんな年にしたいですか?

土岐 2021年には『東京リベンジャーズ』との出会いがあったり、色んなYoutubeチャンネルにおじゃまさせてもらったり、Kis-My-Ft2の宮田俊哉くんと出会ってテレビ番組に呼んでいただいたり、と初めての経験をたくさんやらせてもらったことを受けて、この年の終わりには「2022年はこの経験を“良い経験だったな”というただの感想で終わらせずにちゃんと実りのあるものにしたい」と話をしていたんです。その2022年を過ごしてきて、ありがたいことに『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』をはじめ、2023年も様々な作品に出演させていただくことになりました。2021年の経験を経た2022年があったからこそなんです。『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』は1月スタートのアニメで、しかも初めてのオープニングを歌わせてもらえているので、始まりから大きなうねりとなるこの波を、僕の成長グラフとしてさらに発展させていきたいと思っています。

――最後に「Glorious World」を読者の皆さんにレコメンドしてください。

土岐 この曲で僕を知ってくださった方も、元々応援してくださっている方もいらっしゃると思いますが、「Glorious World/Highway Love」は2023年の土岐隼一として、僕自身が一番アップデートされている状態で、最も新しい土岐隼一を堪能できる2曲となっています。この2曲を聞けばアーティスト・土岐隼一の今が解像度100%で感じられますので、興味のある方はぜひ聴いてください!僕もこのシングルを1年のスタートダッシュにしていきたいと思っております。5月7日の僕の誕生日には横浜でライブもありますので、ぜひそちらにも遊びに来てください。みんなで一緒に盛り上がりましょう!

●リリース情報
TVアニメ『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』OP主題歌
土岐隼一 3rdシングル
「Glorious World」
2023年1月25日(水)リリース

【初回限定盤(CD+DVD)】

品番:PCCG.02172
価格:¥2,090(税込)

■初回限定盤仕様
オリジナル12Pブックレット
特典:「Glorious World」Music Video,Jacket Making Movie

【通常盤(CD)】

品番:PCCG.02173
価格:¥1,760(税込)
仕様:オリジナル4Pブックレット

【アニメ盤(CD)】

品番:PCCG.02174
価格:¥ 1,870(税込)
仕様:アニメオリジナル描きおろしジャケット、オリジナル4Pブックレット
★「Glorious World (TV edit)」を収録

【きゃにめ限定盤(CD+DVD)】

品番:SCCG.00105
価格:¥2,860(税込)
きゃにめ限定盤仕様:オリジナル24Pブックレットほか
特典: 「Glorious World」Music Video,Jacket Making Movie,MV Making Movie

<INDEX>
1.Glorious World
作詞 RUCCA  作曲/編曲 作曲/編曲:アッシュ井上(Dream Monster)
2.Highway Love
作詞 佐野仁美  作曲:YCM/佐野仁美 編曲:YCM/中村純一
3.Glorious World(Instrumental)
4.Highway Love(Instrumental)
※アニメ盤は上記に「Glorious World」TVEdit版が入ります。

●ライブ情報
土岐隼一 Birthday Live2023「Glorious World」(仮)

日時:2023年5月7日(日)昼夜2回公演予定
会場:KT Zepp Yokohama
出演:土岐隼一

料金:
グッズ付きチケット12,100円(税込)
グッズなしチケット 8,800円(税込)
チケット優先販売申込券は3rdシングル「Glorious World」に封入!

関連リンク
土岐隼一
公式サイト
https://tokishunichi.com/

公式Twitter
https://twitter.com/tokishunichi

公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCcCPvG75U2G108Ekt-ASubQ
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