DJをテーマに、アニメ、ゲーム、ライブなど様々なメディアミックス展開を行うプロジェクト「D4DJ」。そのTVアニメ2期『D4DJ All Mix』が、2023年1月から放送をスタートした。
連載第3回では、アニメ第4話で地域活性化「招き猫作戦」のピンチをチャンスに変え、見事なステージを披露したユニット・燐舞曲(ロンド)のキャストより、ボーカル担当の加藤里保菜(青柳 椿役)とDJ担当のつんこ(三宅葵依役)、そして「D4DJ」の統括プロデューサーにして、燐舞曲の音楽プロデューサーをeMPIRE SOUND SYSTeMSと共に務める中山雅弘の対談をセッティング。第4話で披露された新曲「ARCANA」の話題をはじめ、これまでの活動について存分に語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
3年半の活動で深まった燐舞曲とキャラクターへの理解
――中山さんは燐舞曲の音楽プロデューサーとして、この3年半のメンバーの頑張りについてどのように感じていますか?
中山雅弘 皆さん、すごく成長したと思います。「D4DJ」に登場するユニットは、いわゆる「DJ」と言われてイメージしやすいサウンド、例えばEDMやクラブミュージック的なデジタル色の強いものが多いのですが、「D4DJ」は生音系を使ったロックも含めオールジャンルを攻めていきたいこともあり、燐舞曲はギターをメンバーに入れたロック系ユニットにしたんです。そのため、“D4DJ 1st LIVE”(2019年7月に開催されたライブイベント)でお披露目した当時は、他のユニットとは役割が違うのでそれぞれの役割を理解していただくのに少し時間はかかったのですが、今はメンバーの認識もより明確になって、どんな指示にも適合しながらライブができるようになったと感じます。いつも褒めると「嘘っぽい」と言われるのですが、これはちゃんと本音です(笑)。
――加藤さんとつんこさんは、自分で成長を感じることはありますか?
加藤里保菜 確かに最初の頃は燐舞曲の(青柳)椿として求められる世界観を表現するのに不安があったのですが、この3年半、ステージを重ねて色んな方から反響をいただくことで、「これが燐舞曲の世界観」というものがしっかりと理解できるようになりました。「本当にこれで私が椿としてかっこよくなれるのかな?」という気持ちはなくなって、今は「自分の椿としての表現はこれだよね」というのが明確にわかってきたように思います。
つんこ 私も最初はユニットやキャラクターへの理解が浅かったので、「ここは(三宅)葵依ならどうするだろう?」と思うことがたくさんあったのですが、ライブやアフレコを経験させていただくなかで、最近は「葵依ならこうするんじゃないかな?」というものがスッと出てくるようになりました。ライブの感想をいただくなかで、自分でも意識していなかったふとした部分に葵依らしさを感じてもらっていたりもするので、昔よりは葵依を表現できるようになったのかなと感じます。
中山 今「理解が浅かった」というお話がありましたが、それは「理解が浅い」のではなく、キャストの皆さんと一緒にキャラクターを作り上げていった部分が大きいからなんですよね。「D4DJ」はマンガや小説のような原作があるのではなく、ライブでキャラクターを表現するところから始まったので、お客さんの反応を受けて方向修正したり、キャストの皆さん自身の個性を入れてみたり、色々と試行錯誤しながら一緒に作り上げてきたんです。
――キャストのお二人は、自分とキャラクターがシンクロすることを感じる機会も増えましたか?
加藤 ライブでは完全にそうなっていると思います。やっぱりなりきらないと、それぞれの役割に徹することができないので、私が椿としてステージに立つときは、完全に椿としての思いを持って立っていて。それはきっとほかのメンバーも同じで、私たち4人は元々の個性が強い人ばかりなので(笑)、最初はなかなかシンクロできない人が多かったと思うんです。でも、今はやっとシンクロできるようになりました。
つんこ 私もライブ中はちゃんと葵依として立っていますが、日常生活で自分に葵依の要素を感じることはまったくなくて。でも、やっぱり燐舞曲として活動していくなかで、葵依の役割に近いことができているのかな?と思うことがたまにあります。葵依は燐舞曲を作り上げてきた人なので、私もみんなで話し合っているときは、なんとなくまとめ役になることが多くて。
――それで言うと、加藤さんは4人でいるときはどんなポジションだったりするのでしょうか。
加藤 私は……多分、一番のまとめ役ですね。
つんこ 嘘をつくな!(笑)。
中山 彼女はこういうふざけたポジションです(笑)。
加藤 はい(笑)。でも、つんこちゃんがまとめてくれたり、(月見山 渚役の)大塚(紗英)さんも説明上手だったりするので、私はみんなに頼ってしまっている部分があって。その意味では、椿も葵依を頼りにしている部分があるので、シンクロしているんじゃないかなと思います。
椿と葵依、それぞれの個性が際立ったアフレコ秘話
――燐舞曲は、2022年夏に放送されたアニメ特別編『D4DJ Double Mix』に続き、TVアニメ第2期『D4DJ All Mix』にも第1話から登場しています。今回の第2期にはどんな印象をお持ちですか?
加藤 『All Mix』というだけあって、第1期とは違って、それぞれのユニットの活躍がしっかりと描かれるうえに、ユニットごとの絆や他ユニットとの関わりがより深く理解できる内容になっていると思います。それと印象深かったのがアフレコで、私は渚が第1話で口笛を上手く吹ききれないところが大好きで(笑)。
つんこ あそこはめっちゃディレクションが入っていたよね。4~5回くらい録っていた気がする。
加藤 そうなんです!そういう細かいところにもこだわって何テイクも録っていたりしたことがすごく印象に残っていて。また1つ素敵な思い出になりました。
つんこ それに今回は、今までのアニメには登場していなかったリリリリちゃん(Lyrical Lily)が主となって、色んなことを巻き込みながらお話が進みますし、第1期では高校生組(Happy Around!、Peaky P-key、Photon Maiden)しかいなかったのが、今回は大学生組(Merm4id、燐舞曲)と高校生組や今までにない組み合わせの絡みも見ることがきて。あと、3Dアニメで動くリリリリちゃんがとにかくかわいくて、表情もめまぐるしく変わるので、シンプルにキャラクターの動きを見ているだけでも楽しいです。
――Lyrical Lilyの「Maihime」ですね。かわいさと躍動感溢れるアニメーションも込みで本当に素晴らしいと思います。
中山 今回のOP・EDテーマに関しては、総監督の水島(精二)さんのなかに最初から構想があったみたいで、OPテーマはTAKU INOUEさんでいきたいというお話だったんです(「Maihime」の作曲・編曲はTAKU INOUEが担当)。そこに中村(航)先生の歌詞が合わさって素晴らしい楽曲になりました。
――そして先日放送された第4話は燐舞曲のメイン回で、お二人が演じる椿と葵依も様々な見せ場がありました。アフレコはいかがでしたか?
つんこ 葵依は何か新しいことに踏み出すとき、その理由をしっかりとみんなに説明したうえで、あまり熱くなりすぎず淡々と「みんなならできるよ」と伝えるタイプなのですが、私ならそういうときは「とにかくやるぞ!」って言いたくなるので(笑)、その伝え方の熱量の調節、みんなを支えるようなバランス感で演じるのにすごく苦労しました。水島監督にもしっかりとディレクションをしていただいて。
中山 でも、水島監督はつんこさんのことをすごく褒めていました。つんこさんは全ユニットのメンバーの中でもかなり濃厚なオタクだと思いますが(笑)、とはいえ「D4DJ」に参加するまではキャラクターとして何かを演じる経験はなかった方で。しかも普段は喜怒哀楽の表現が激しいタイプじゃないですか。
つんこ そうですね、よく「ウォー!」ってなります(笑)。
中山 なので葵依としてセリフを表現するのは相当ハードルが高かったと思うのですが、あれだけのセリフ量のなかでキャラクター表現ができていたことを、水島監督はすごく喜んでいましたね。
つんこ え~、嬉しい!でも、やっぱり葵依は難しいです。
中山 葵依は熱いものを内に持っているけれど、それをスッと出さないですからね。「蒼き炎」というのは、そういうことなんです。
――つんこさんと葵依は対照的な性格なんですね。
つんこ そうですね。葵依を見ていると「こんなに落ち着いている人、いるのかな?」って思いますから(笑)。
――加藤さんは、第4話のアフレコはいかがでしたか?
加藤 私も悩んだり考えることはありましたけれど、ライブやゲーム(「D4DJ Groovy Mix」)、『Double Mix』のアフレコを経験してきたことで、以前よりもスッと自分の中から椿としての思いが出てくるようになったと感じました。アフレコでは自分が思った通りの椿を演じたのですが、それが水島監督のイメージにも近かったのか、そこまで大きなディレクションもなく、前回よりも椿と気持ちが近くなったことを実感できました。
中山 椿の場合、ライブでは基本的に燐舞曲を結成したあとの姿、儚いけれども強い意志が見える歌声の印象が強いですが、アニメでは燐舞曲の結成前の人間関係も描かれているんです。『Double Mix』ではMerm4idの瀬戸リカと小中学校の同級生だったこと、今回の第4話では椿とPeaky P-keyの山手響子が昔から(天野)愛莉に歌唱指導を受けていたことが描かれていて、そのなかで椿の実はか弱い一面が見え隠れするのですが、そんな椿が燐舞曲のメンバーと出会ったおかげで今の強さを手に入れたことを考えながら観ていただけるとより面白いと思います。加藤さんには、お芝居的にもそういった椿の強弱を上手く表現していただきました。
――確かに、椿が愛莉さんに指導を受けている場面は、途中で回想シーンもありましたが、椿の気弱な部分が前面に出ていて、キャラ同士の関係性も含めて奥行きが感じられました。
中山 あのシーンでは椿より響子のほうが頼り甲斐があってお姉さんっぽいんですよね(笑)。椿はステージ上だと完璧なパフォーマンスを行うのですが、他ではそういう立ち位置になるところが面白いと思います。
――加藤さんは椿のそういった一面を、どのように受け止めて演じましたか?
加藤 椿は強がって見せていますが、決してクールすぎるわけではなく、弱さや脆い部分を持ち合わせているところに魅力がある子だと思っていて。なので燐舞曲のメンバーや響子のように付き合いのある人たちの前でしか見せない表現を意識して、あまり感情を抑えすぎず、椿としての表現を出すようにしました。
――少し話が逸れますが、加藤さんは椿と自分が似通ってると感じる部分はありますか?
加藤 私もつんこちゃんと一緒で、椿とは対照的だと思います。私が(「D4DJ」のキャラクターを)演じるなら、絶対にHappy Around!の大鳴門むにだと思っていたので(笑)。椿は後ろ向き過ぎるところがある子なので、私ですらセリフを言うときに「なんでそんなこと言うの!」ってもどかしい気持になることが多いんです。だから性格としては真逆だと思うんですけど、今は「私は椿で良かったなあ」と思いますね。
中山 確かにお仕事以外のところではむにっぽいですが、でも、占いで言うと加藤さんはてんびん座のど真ん中なので、椿っぽい加藤さんもたまに出てくるんですよ。
つんこ へえー。
加藤 なるほど。
春の嵐のような新曲「ARCANA」が巻き起こした破壊と創生
――燐舞曲で占いと言えば矢野緋彩(CV:もものはるな)ですが、そういえば中山さんも占いが得意なんでした(笑)。
中山 (TVアニメ第1期の)『First Mix』はHappy Around!の「DJをやってみたい」という初期衝動を軸にしたストーリーでしたが、『All Mix』は各ユニットが1年間を通してライブをやっていくなかで、色んな楽曲を作っていく過程を描いていく内容になっていて、その中で燐舞曲の劇中歌については、水島監督から「春の嵐」というテーマをいただいたんです。
――というのは?
中山 第4話は、本来ライブを行う予定だったステージが使えなくなったときに、葵依の提案で燐舞曲が拠点にしている会員制クラブハウス「ALTER-EGO」を開放するお話になっているのですが、燐舞曲では元々「破壊と創世」で歌を表現する楽曲が多くありますので、伝統を重んじながらも、それを壊してまで新しい世界を作り上げていかなくてはならない時もあるというコンセプトに合致していると思いました。それを「春の嵐」と重ね合わせて、燐舞曲が今回の出来事をきっかけにどんな成長を見せどんな方向に進んでいくのかを、アニメで表現している楽曲となります。
――キャストのお二人は、最初に楽曲を受け取ったときにどんな印象を抱きましたか?
つんこ 最初は歌詞が付いていない状態の音源を聴かせていただいたのですが、とにかくイントロが印象的で、一発で心を掴まれました。そこから落差があって、サビではめちゃくちゃキャッチーなメロディがきたので、「春の嵐」というテーマはあとから聞いたのですが、まさに嵐のような楽曲に感じました。でも、いつもの燐舞曲らしさも感じられて、自分の中では「新しいステージには行くけど燐舞曲は燐舞曲らしく進む」という風に理解しました。
加藤 私は最初に「春の曲」ということだけを聞いていたのですが、「春の曲」と言えばふわっと優しい風が吹くような、新学期のワクワクが想像できるようなイメージのなか、楽曲を聴いたらイントロから力強く燐舞曲が表現されていて驚きました。完成した楽曲を聴いたときは、「なるほど、燐舞曲としての春はこうなるのか」と腑に落ちましたし、その後にアニメのアフレコ現場で「春の嵐」というテーマを聞いてすごく納得しました。
中山 燐舞曲ではレコーディングの時点で歌詞の一部をフィックスさせてないことは常でして、制作では物語の精度を詰めるためにどの言葉をどう当てはめてストーリーを組み上げるか「前後のテイク、ニュアンス、言葉の響き」で全て判断されてますので、今回は特に難しい作業が続いたと思います。
加藤 燐舞曲のレコーディングは現場で決めていくことが多くて、「ARCANA」も葵依の語りパートにどんな言葉を入れるかを一緒に考えたりしたんです。そのタイミングでももはるさんから「Maria」というアイデアが出てきて。それが今度の2月12日に開催するライブ(“燐舞曲 3rd LIVE -Maria-”)のタイトルにもなっているし、そういう会議とかで出た言葉が後々にどこかで使われるのが新鮮で面白いです。
――「Maria」で思い出しましたが、昨年12月に発表された燐舞曲の楽曲「夢想曲 -Träumerei-」に“No.13”と書いて“マリア”と読ませる歌詞がありましたよね。それこそ今回の「ARCANA」の語りパートにも“この物語の運命はNo.13に委ねられた”というフレーズがありますし、これまでの楽曲との繋がりも感じさせる内容になっていて。
中山 そうなんですよ。曲名の「ARCANA」はタロットカードの言葉なのですが、“No.13”が何を意味するかは、そういったキーワードから想像していただくと「なるほど」となる部分があると思います。特に「夢想曲 -Träumerei-」に関しては「D4DJ Groovy Mix」の2周年曲というのもあって、今までの楽曲との繋がりや今後の楽曲の方向性を示すメッセージのようなものも潜んでいまして。燐舞曲の楽曲では、そういった“楽曲同士の繋がり”部分を考察する楽しみもあると思います。
――その意味では「ARCANA」も、ほかの楽曲との繋がりを探ることで、さらに深く楽しむことができそうです。
中山 「ARCANA」は「春の嵐」をテーマにした楽曲ですが、燐舞曲には「Celsius」という春の歌がすでにありまして、こちらはどちらかと言うと、新生活を不安に感じる人の気持ちを支えてあげるような、柔らかくも背中を押してくれるような楽曲になっているんですね。それに対して今回の「ARCANA」は、まさに燐舞曲の「破壊と創世」というテーマに沿った内容になっています。
――それが第4話の「ALTER-EGO」を開放するか否かというストーリーにもリンクするわけですね。「ARCANA」は椿の歌と葵依・緋彩の語りパートで構成されていますが、レコーディングはいかがでしたか?
加藤 我儘ラキアの星熊南巫さんが作詞に携わってくださっているのですが、星熊さんはご自身が普段から歌っている方なので、今回も実際に歌いながらディレクションをしてくださって、ニュアンスがすごくわかりやすかったですし、色んなテイクを録りました。現場で椿としての歌の方向性を探るうちに、仮歌の音のハメ方とは違う譜割りでも「それだよ!」と採用してもらったのがすごく印象に残っています。
――つんこさんはいかがでしょうか。
つんこ 歌詞がまだフィックスしていない箇所があったので、色々な歌詞のパターンを試しながら、しかも「ここは少年っぽく歌おう」とか「これは呆然とした感じで」みたいに、ディレクションのパターンもたくさんあったので、時間をかけて録りました。燐舞曲のレコーディングは、どのパターンが一番この曲に合っていて素晴らしいものになるかを全部試すんです。だから完成版を聴いたときに「このバージョンが採用されたんだ!」というのを知る楽しみもあるのですが、「ARCANA」は特にたくさん録ったので面白かったです。
――燐舞曲の楽曲は本当に現場で一緒に作り上げていくんですね。それとこの楽曲、アニメのライブシーンでは1番までしか披露されませんが、2番以降の展開も壮絶で、まるで別の楽曲のように豹変しますよね。
中山 少し補足しますと、今回はOPテーマの「Maihime」が中村先生の歌詞とイノタクさんの楽曲が合わさって想像を超えるものになりましたが、「ARCANA」も編曲とMixで初めてMEG(MEGMETAL)さんに参加いただいた楽曲でもあり、eMPIRE SOUND SYSTeMSさんとの良い意味でのバチバチ感が生まれて、最後までストイックにこだわり抜いて作り上げていった楽曲になりました。自分も最初に聴いたときは、「グルミク(D4DJ Groovy Mix)」なら「EXPERT 15」の難易度になるだろうなと思ったのですが、実際にそうなっていたので(笑)。
加藤 「EXPERT 15」は絶対に無理……(笑)。
中山 そんな方でも「グルミク」はオートモードでも楽しめるので、ぜひ曲を聴いてください。
燐舞曲という名のサーガが描き出す運命の行方
――少し話は変わりますが、中山さんは燐舞曲の楽曲をプロデュースするうえで、どんなことを大切にしていますか?
中山 まず「D4DJ」全体のことで言うと、僕は他のユニットも含めて、楽曲の方向性やバランスをできるだけ広げていきたいんです。DJは楽曲のセレクトの幅が広いほど楽しくなるものですし、その自由さが大事だと思っていて。そのなかで燐舞曲はロックジャンルでのサウンド感を含め、他のユニットとは違うものにすることを大切にしています。それは例えば歌詞にしてもそうで、燐舞曲の歌詞は日常感とは少し離れた哲学的な部分がありますし、そういった要素や他の楽曲との繋がりを含め、聴き手が想像できる楽しみを作るようにしていて。eMPIRE SOUND SYSTeMSさんは必ず全体としてのストーリーの繋がりを常に重視していて、それが世界観の濃さになっているんだと思います。
――個々の楽曲がありつつ、全体としては緩やかに繋がっていて物語性が感じられるからこそ、深読みしたくなると言いますか。
中山 それは最初の楽曲「瞬動-movement-」のときから意識してきたことですが、特に「カレンデュラ」に関しては、楽曲を聴いた「グルミク」の開発メンバーから「この楽曲を燐舞曲のストーリーの軸にしたい」という提案があったので、それは楽曲内で描いている設定や世界観にピンとくるものがあったということだと思うんです。そういうやり取りがファンの方ともできれば嬉しいですね。
――キャストのお二人は、そういった燐舞曲の楽曲で描かれる世界観について、どんな魅力を感じますか?
加藤 私が人生で絶対に言わなかったであろう言葉が歌詞にたくさん散りばめられていて(笑)、でもその1つ1つが言葉の本来の意味だけで表現されているわけではなく、燐舞曲の今までのストーリーを追えば追うほど違った意味が見えて、楽曲の深みが増すところが面白いなと思います。最初に聴いた印象と、ゲームとかのストーリーを読んだ後だと、歌詞に入っているワードの印象が全く変わるんですよ。
つんこ 私は昔から濃い目のオタクをずっとやっていたのですが(笑)、燐舞曲の楽曲には私の年代のオタクに刺さるクリエイターさんがたくさん参加されているので、自分が本当に好きな音楽や世界観を燐舞曲として表現できているというヤバい状況がまずあって。さっきの「Maria」や「No.13」の話もそうですけど、それこそ私みたいな濃い目のオタクはそういう散りばめられたピースを紐解いて楽しむのが好きだと思いますし、そこがディグラー(※「D4DJ」のファンの呼称)さんたちにも楽しんでいただけているのかなと思います。
――いわゆる「考察が捗る」ってやつですね。
つんこ そうです(笑)。
中山 燐舞曲には大枠としてのストーリーが設定としてあるのですが、それをストレートな言葉で表現しないのが燐舞曲の楽曲で、いわば燐舞曲の根底にあるテーマを壮大なサーガとして描いている感じなんです。1つ1つの楽曲を積み重ねて、燐舞曲という全体として長いストーリーの映画を作っているようなイメージなので、楽曲単体ではわからない部分が相当あります。ただ、僕は新曲を発表したときにエゴサをするのですが、たまに理解の深いファンの方がいて、すごくストレートに言い当てているんですよ(笑)。そういうつぶやきには「いいね」を押したりしています。
――じゃあ中山さんのツイッターを追っていると、燐舞曲のことをより理解できるかもしれませんね(笑)。では最後に、『D4DJ All Mix』をご覧になっているディグラーの皆さんに向けてメッセージをお願いします。
つんこ 燐舞曲の担当回は終わったばかりですが、まだまだ色んなユニットを巻き込んでリリリリちゃんたちが大暴れするので、ぜひ最終話までしっかりじっくり隅々まで観て楽しんでいただければと思います!
加藤 2期ではたくさんの個性豊かなキャラクターたちが登場して、キャラクター同士の繋がりもより深く描かれるので、「D4DJ」のテーマになっている“繋ぐ”をたくさん感じられる作品になっています。色々なところに散りばめられた伏線や、それぞれの思いを見逃さないように最後まで楽しんでいただければと思います。
中山 まず、6話はかなりのトンデモ回なのでぜひ注目していただきたいのですが、それ以降も『Double Mix』で実現した燐舞曲とMerm4idの「FAKE OFF」のように、各ユニットの垣根を超えた意外なコラボ曲が続々登場しますので、ぜひ1話も見逃さないように最後まで楽しんでいただければと思います。それとこれは言い忘れていたのですが、EDテーマの「Around and Around」は加藤さんが“夜な夜な 夜な夜な”と歌うところがすごく良いんですよね。あそこはとても気に入っていて。
加藤 やったあ!
中山 ここは記事ではカットしてください(笑)。
加藤 カットしないでください!(笑)。
●ライブ情報
燐舞曲 3rd LIVE -Maria-
・開催日時:2月12日(日)
昼公演:開場14:15/開演15:00
夜公演:開場18:15/開演19:00
・会場:KT Zepp Yokohama
燐舞曲の3度目の単独ライブが開催決定!
圧倒的な世界観のステージをお楽しみに! 詳細はD4DJ公式HPをチェック!
https://d4dj-pj.com/live-event/post-71
●作品情報
『D4DJ All Mix』
TOKYO MX:1月13日(金) 23:00~23:30
BS日テレ:1月13日(金) 23:00~23:30
KBS京都:1月13日(金) 25:00~25:30
サンテレビ:1月14日(土) 22:30~23:00
AT-X:1月13日(金) 23:00~23:30
配信情報
DMMTV:1月8日(日)~ 毎週日曜 23:00
Hulu:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
Amazon Prime Video:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
U-NEXT:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
dアニメストア:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
ひかりTV:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
アニメタイムズ:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
GooglePlay:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
バンダイチャンネル:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
HAPPY!動画:1月14日(土)~ 毎週土曜 12:00
ビデックス:1月14日(土)~ 毎週土曜 12:00
TELASA:1月16日(月)~ 毎週月曜 24:00
J:COMオンデマンド: 1月16日(月)~ 毎週月曜 24:00
milplus(みるプラス): 1月16日(月)~ 毎週月曜 24:00
auスマートパスプレミアム: 1月16日(月)~ 毎週月曜 24:00
※放送日時・内容は予告なく変更される場合があります。予めご了承ください。
【あらすじ】
奉仕の心を理念とする伝統ある有栖川学院に通う、桜田美夢、春日春奈、白鳥胡桃、竹下みいこは、
みんなを笑顔にする奉仕の一つとしてDJユニット「Lyrical Lily」としての活動を認められていた。
ある日、春奈が商工会に呼ばれ、新年から一年を通して地域活性化イベントの依頼を受けることになる。
自分たちだけで実現出来るか不安になるが、思い浮かんだのは初めてのライブを一緒に成功させた面々、そして来場者の笑顔だった。
奉仕の心、Lyrical Lilyの想いは、DJの祭典《D4 FES.》で共に称えあった各ユニットに次々と繋がり、
ついに新年に相応しい新しいステージが幕を開ける―――
【STAFF】
原作:ブシロード
ストーリー原案:中村 航
キャラクター原案:やちぇ
総監督:水島精二
監督:鈴木大介
シリーズ構成:雑破業
アニメーションキャラクターデザイン:茶之原拓也、八森優香
モデリングディレクター :原岡大輔、髙岡真也、横山貴央
リギングディレクター:矢代 奈津子
色彩設計:松山 愛子 (颱風グラフィックス)
撮影監督:小林俊介
美術監督:池田裕輔
美術設定:綱頭瑛子
編集:榎田美咲
音響監督:長崎行男
音楽:佐高陵平、グシミヤギ ヒデユキ
アニメーション制作統括:松浦裕暁
アニメーション制作:サンジゲン
関連リンク
TVアニメ「D4DJ All Mix」公式サイト
https://anime.d4dj-pj.com/all-mix/
D4DJ公式サイト
https://d4dj-pj.com/
個性豊かな音楽性と魅力を持った6ユニットの活躍が描かれる本アニメを、リスアニ!では連載企画「Diggin’『D4DJ All Mix』」として徹底特集!
連載第3回では、アニメ第4話で地域活性化「招き猫作戦」のピンチをチャンスに変え、見事なステージを披露したユニット・燐舞曲(ロンド)のキャストより、ボーカル担当の加藤里保菜(青柳 椿役)とDJ担当のつんこ(三宅葵依役)、そして「D4DJ」の統括プロデューサーにして、燐舞曲の音楽プロデューサーをeMPIRE SOUND SYSTeMSと共に務める中山雅弘の対談をセッティング。第4話で披露された新曲「ARCANA」の話題をはじめ、これまでの活動について存分に語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
3年半の活動で深まった燐舞曲とキャラクターへの理解
――中山さんは燐舞曲の音楽プロデューサーとして、この3年半のメンバーの頑張りについてどのように感じていますか?
中山雅弘 皆さん、すごく成長したと思います。「D4DJ」に登場するユニットは、いわゆる「DJ」と言われてイメージしやすいサウンド、例えばEDMやクラブミュージック的なデジタル色の強いものが多いのですが、「D4DJ」は生音系を使ったロックも含めオールジャンルを攻めていきたいこともあり、燐舞曲はギターをメンバーに入れたロック系ユニットにしたんです。そのため、“D4DJ 1st LIVE”(2019年7月に開催されたライブイベント)でお披露目した当時は、他のユニットとは役割が違うのでそれぞれの役割を理解していただくのに少し時間はかかったのですが、今はメンバーの認識もより明確になって、どんな指示にも適合しながらライブができるようになったと感じます。いつも褒めると「嘘っぽい」と言われるのですが、これはちゃんと本音です(笑)。
――加藤さんとつんこさんは、自分で成長を感じることはありますか?
加藤里保菜 確かに最初の頃は燐舞曲の(青柳)椿として求められる世界観を表現するのに不安があったのですが、この3年半、ステージを重ねて色んな方から反響をいただくことで、「これが燐舞曲の世界観」というものがしっかりと理解できるようになりました。「本当にこれで私が椿としてかっこよくなれるのかな?」という気持ちはなくなって、今は「自分の椿としての表現はこれだよね」というのが明確にわかってきたように思います。
つんこ 私も最初はユニットやキャラクターへの理解が浅かったので、「ここは(三宅)葵依ならどうするだろう?」と思うことがたくさんあったのですが、ライブやアフレコを経験させていただくなかで、最近は「葵依ならこうするんじゃないかな?」というものがスッと出てくるようになりました。ライブの感想をいただくなかで、自分でも意識していなかったふとした部分に葵依らしさを感じてもらっていたりもするので、昔よりは葵依を表現できるようになったのかなと感じます。
中山 今「理解が浅かった」というお話がありましたが、それは「理解が浅い」のではなく、キャストの皆さんと一緒にキャラクターを作り上げていった部分が大きいからなんですよね。「D4DJ」はマンガや小説のような原作があるのではなく、ライブでキャラクターを表現するところから始まったので、お客さんの反応を受けて方向修正したり、キャストの皆さん自身の個性を入れてみたり、色々と試行錯誤しながら一緒に作り上げてきたんです。
なので皆さんキャラクターが自分として動いていくまでに時間がかかったと思うのですが、今は本人たちに任せるエチュードのボリュームも増えましたし、皆さんがそれに応えられるようになりました。
――キャストのお二人は、自分とキャラクターがシンクロすることを感じる機会も増えましたか?
加藤 ライブでは完全にそうなっていると思います。やっぱりなりきらないと、それぞれの役割に徹することができないので、私が椿としてステージに立つときは、完全に椿としての思いを持って立っていて。それはきっとほかのメンバーも同じで、私たち4人は元々の個性が強い人ばかりなので(笑)、最初はなかなかシンクロできない人が多かったと思うんです。でも、今はやっとシンクロできるようになりました。
つんこ 私もライブ中はちゃんと葵依として立っていますが、日常生活で自分に葵依の要素を感じることはまったくなくて。でも、やっぱり燐舞曲として活動していくなかで、葵依の役割に近いことができているのかな?と思うことがたまにあります。葵依は燐舞曲を作り上げてきた人なので、私もみんなで話し合っているときは、なんとなくまとめ役になることが多くて。
――それで言うと、加藤さんは4人でいるときはどんなポジションだったりするのでしょうか。
加藤 私は……多分、一番のまとめ役ですね。
つんこ 嘘をつくな!(笑)。
中山 彼女はこういうふざけたポジションです(笑)。
加藤 はい(笑)。でも、つんこちゃんがまとめてくれたり、(月見山 渚役の)大塚(紗英)さんも説明上手だったりするので、私はみんなに頼ってしまっている部分があって。その意味では、椿も葵依を頼りにしている部分があるので、シンクロしているんじゃないかなと思います。
椿と葵依、それぞれの個性が際立ったアフレコ秘話
――燐舞曲は、2022年夏に放送されたアニメ特別編『D4DJ Double Mix』に続き、TVアニメ第2期『D4DJ All Mix』にも第1話から登場しています。今回の第2期にはどんな印象をお持ちですか?
加藤 『All Mix』というだけあって、第1期とは違って、それぞれのユニットの活躍がしっかりと描かれるうえに、ユニットごとの絆や他ユニットとの関わりがより深く理解できる内容になっていると思います。それと印象深かったのがアフレコで、私は渚が第1話で口笛を上手く吹ききれないところが大好きで(笑)。
つんこ あそこはめっちゃディレクションが入っていたよね。4~5回くらい録っていた気がする。
加藤 そうなんです!そういう細かいところにもこだわって何テイクも録っていたりしたことがすごく印象に残っていて。また1つ素敵な思い出になりました。
つんこ それに今回は、今までのアニメには登場していなかったリリリリちゃん(Lyrical Lily)が主となって、色んなことを巻き込みながらお話が進みますし、第1期では高校生組(Happy Around!、Peaky P-key、Photon Maiden)しかいなかったのが、今回は大学生組(Merm4id、燐舞曲)と高校生組や今までにない組み合わせの絡みも見ることがきて。あと、3Dアニメで動くリリリリちゃんがとにかくかわいくて、表情もめまぐるしく変わるので、シンプルにキャラクターの動きを見ているだけでも楽しいです。
特にオープニングは楽曲もとても素敵だし、アニメーションがめちゃくちゃかわいい……!
――Lyrical Lilyの「Maihime」ですね。かわいさと躍動感溢れるアニメーションも込みで本当に素晴らしいと思います。
中山 今回のOP・EDテーマに関しては、総監督の水島(精二)さんのなかに最初から構想があったみたいで、OPテーマはTAKU INOUEさんでいきたいというお話だったんです(「Maihime」の作曲・編曲はTAKU INOUEが担当)。そこに中村(航)先生の歌詞が合わさって素晴らしい楽曲になりました。
――そして先日放送された第4話は燐舞曲のメイン回で、お二人が演じる椿と葵依も様々な見せ場がありました。アフレコはいかがでしたか?
つんこ 葵依は何か新しいことに踏み出すとき、その理由をしっかりとみんなに説明したうえで、あまり熱くなりすぎず淡々と「みんなならできるよ」と伝えるタイプなのですが、私ならそういうときは「とにかくやるぞ!」って言いたくなるので(笑)、その伝え方の熱量の調節、みんなを支えるようなバランス感で演じるのにすごく苦労しました。水島監督にもしっかりとディレクションをしていただいて。
中山 でも、水島監督はつんこさんのことをすごく褒めていました。つんこさんは全ユニットのメンバーの中でもかなり濃厚なオタクだと思いますが(笑)、とはいえ「D4DJ」に参加するまではキャラクターとして何かを演じる経験はなかった方で。しかも普段は喜怒哀楽の表現が激しいタイプじゃないですか。
つんこ そうですね、よく「ウォー!」ってなります(笑)。
中山 なので葵依としてセリフを表現するのは相当ハードルが高かったと思うのですが、あれだけのセリフ量のなかでキャラクター表現ができていたことを、水島監督はすごく喜んでいましたね。
つんこ え~、嬉しい!でも、やっぱり葵依は難しいです。
中山 葵依は熱いものを内に持っているけれど、それをスッと出さないですからね。「蒼き炎」というのは、そういうことなんです。
――つんこさんと葵依は対照的な性格なんですね。
つんこ そうですね。葵依を見ていると「こんなに落ち着いている人、いるのかな?」って思いますから(笑)。
――加藤さんは、第4話のアフレコはいかがでしたか?
加藤 私も悩んだり考えることはありましたけれど、ライブやゲーム(「D4DJ Groovy Mix」)、『Double Mix』のアフレコを経験してきたことで、以前よりもスッと自分の中から椿としての思いが出てくるようになったと感じました。アフレコでは自分が思った通りの椿を演じたのですが、それが水島監督のイメージにも近かったのか、そこまで大きなディレクションもなく、前回よりも椿と気持ちが近くなったことを実感できました。
中山 椿の場合、ライブでは基本的に燐舞曲を結成したあとの姿、儚いけれども強い意志が見える歌声の印象が強いですが、アニメでは燐舞曲の結成前の人間関係も描かれているんです。『Double Mix』ではMerm4idの瀬戸リカと小中学校の同級生だったこと、今回の第4話では椿とPeaky P-keyの山手響子が昔から(天野)愛莉に歌唱指導を受けていたことが描かれていて、そのなかで椿の実はか弱い一面が見え隠れするのですが、そんな椿が燐舞曲のメンバーと出会ったおかげで今の強さを手に入れたことを考えながら観ていただけるとより面白いと思います。加藤さんには、お芝居的にもそういった椿の強弱を上手く表現していただきました。
――確かに、椿が愛莉さんに指導を受けている場面は、途中で回想シーンもありましたが、椿の気弱な部分が前面に出ていて、キャラ同士の関係性も含めて奥行きが感じられました。
中山 あのシーンでは椿より響子のほうが頼り甲斐があってお姉さんっぽいんですよね(笑)。椿はステージ上だと完璧なパフォーマンスを行うのですが、他ではそういう立ち位置になるところが面白いと思います。
――加藤さんは椿のそういった一面を、どのように受け止めて演じましたか?
加藤 椿は強がって見せていますが、決してクールすぎるわけではなく、弱さや脆い部分を持ち合わせているところに魅力がある子だと思っていて。なので燐舞曲のメンバーや響子のように付き合いのある人たちの前でしか見せない表現を意識して、あまり感情を抑えすぎず、椿としての表現を出すようにしました。
――少し話が逸れますが、加藤さんは椿と自分が似通ってると感じる部分はありますか?
加藤 私もつんこちゃんと一緒で、椿とは対照的だと思います。私が(「D4DJ」のキャラクターを)演じるなら、絶対にHappy Around!の大鳴門むにだと思っていたので(笑)。椿は後ろ向き過ぎるところがある子なので、私ですらセリフを言うときに「なんでそんなこと言うの!」ってもどかしい気持になることが多いんです。だから性格としては真逆だと思うんですけど、今は「私は椿で良かったなあ」と思いますね。
中山 確かにお仕事以外のところではむにっぽいですが、でも、占いで言うと加藤さんはてんびん座のど真ん中なので、椿っぽい加藤さんもたまに出てくるんですよ。
つんこ へえー。
加藤 なるほど。
春の嵐のような新曲「ARCANA」が巻き起こした破壊と創生
――燐舞曲で占いと言えば矢野緋彩(CV:もものはるな)ですが、そういえば中山さんも占いが得意なんでした(笑)。
さて、ここからは、第4話のライブシーンで披露された新曲「ARCANA」についてお聞かせください。そもそもどういったオーダーで制作されたのでしょうか。
中山 (TVアニメ第1期の)『First Mix』はHappy Around!の「DJをやってみたい」という初期衝動を軸にしたストーリーでしたが、『All Mix』は各ユニットが1年間を通してライブをやっていくなかで、色んな楽曲を作っていく過程を描いていく内容になっていて、その中で燐舞曲の劇中歌については、水島監督から「春の嵐」というテーマをいただいたんです。
――というのは?
中山 第4話は、本来ライブを行う予定だったステージが使えなくなったときに、葵依の提案で燐舞曲が拠点にしている会員制クラブハウス「ALTER-EGO」を開放するお話になっているのですが、燐舞曲では元々「破壊と創世」で歌を表現する楽曲が多くありますので、伝統を重んじながらも、それを壊してまで新しい世界を作り上げていかなくてはならない時もあるというコンセプトに合致していると思いました。それを「春の嵐」と重ね合わせて、燐舞曲が今回の出来事をきっかけにどんな成長を見せどんな方向に進んでいくのかを、アニメで表現している楽曲となります。
――キャストのお二人は、最初に楽曲を受け取ったときにどんな印象を抱きましたか?
つんこ 最初は歌詞が付いていない状態の音源を聴かせていただいたのですが、とにかくイントロが印象的で、一発で心を掴まれました。そこから落差があって、サビではめちゃくちゃキャッチーなメロディがきたので、「春の嵐」というテーマはあとから聞いたのですが、まさに嵐のような楽曲に感じました。でも、いつもの燐舞曲らしさも感じられて、自分の中では「新しいステージには行くけど燐舞曲は燐舞曲らしく進む」という風に理解しました。
加藤 私は最初に「春の曲」ということだけを聞いていたのですが、「春の曲」と言えばふわっと優しい風が吹くような、新学期のワクワクが想像できるようなイメージのなか、楽曲を聴いたらイントロから力強く燐舞曲が表現されていて驚きました。完成した楽曲を聴いたときは、「なるほど、燐舞曲としての春はこうなるのか」と腑に落ちましたし、その後にアニメのアフレコ現場で「春の嵐」というテーマを聞いてすごく納得しました。
中山 燐舞曲ではレコーディングの時点で歌詞の一部をフィックスさせてないことは常でして、制作では物語の精度を詰めるためにどの言葉をどう当てはめてストーリーを組み上げるか「前後のテイク、ニュアンス、言葉の響き」で全て判断されてますので、今回は特に難しい作業が続いたと思います。
加藤 燐舞曲のレコーディングは現場で決めていくことが多くて、「ARCANA」も葵依の語りパートにどんな言葉を入れるかを一緒に考えたりしたんです。そのタイミングでももはるさんから「Maria」というアイデアが出てきて。それが今度の2月12日に開催するライブ(“燐舞曲 3rd LIVE -Maria-”)のタイトルにもなっているし、そういう会議とかで出た言葉が後々にどこかで使われるのが新鮮で面白いです。
――「Maria」で思い出しましたが、昨年12月に発表された燐舞曲の楽曲「夢想曲 -Träumerei-」に“No.13”と書いて“マリア”と読ませる歌詞がありましたよね。それこそ今回の「ARCANA」の語りパートにも“この物語の運命はNo.13に委ねられた”というフレーズがありますし、これまでの楽曲との繋がりも感じさせる内容になっていて。
中山 そうなんですよ。曲名の「ARCANA」はタロットカードの言葉なのですが、“No.13”が何を意味するかは、そういったキーワードから想像していただくと「なるほど」となる部分があると思います。特に「夢想曲 -Träumerei-」に関しては「D4DJ Groovy Mix」の2周年曲というのもあって、今までの楽曲との繋がりや今後の楽曲の方向性を示すメッセージのようなものも潜んでいまして。燐舞曲の楽曲では、そういった“楽曲同士の繋がり”部分を考察する楽しみもあると思います。
――その意味では「ARCANA」も、ほかの楽曲との繋がりを探ることで、さらに深く楽しむことができそうです。
中山 「ARCANA」は「春の嵐」をテーマにした楽曲ですが、燐舞曲には「Celsius」という春の歌がすでにありまして、こちらはどちらかと言うと、新生活を不安に感じる人の気持ちを支えてあげるような、柔らかくも背中を押してくれるような楽曲になっているんですね。それに対して今回の「ARCANA」は、まさに燐舞曲の「破壊と創世」というテーマに沿った内容になっています。
――それが第4話の「ALTER-EGO」を開放するか否かというストーリーにもリンクするわけですね。「ARCANA」は椿の歌と葵依・緋彩の語りパートで構成されていますが、レコーディングはいかがでしたか?
加藤 我儘ラキアの星熊南巫さんが作詞に携わってくださっているのですが、星熊さんはご自身が普段から歌っている方なので、今回も実際に歌いながらディレクションをしてくださって、ニュアンスがすごくわかりやすかったですし、色んなテイクを録りました。現場で椿としての歌の方向性を探るうちに、仮歌の音のハメ方とは違う譜割りでも「それだよ!」と採用してもらったのがすごく印象に残っています。
――つんこさんはいかがでしょうか。
つんこ 歌詞がまだフィックスしていない箇所があったので、色々な歌詞のパターンを試しながら、しかも「ここは少年っぽく歌おう」とか「これは呆然とした感じで」みたいに、ディレクションのパターンもたくさんあったので、時間をかけて録りました。燐舞曲のレコーディングは、どのパターンが一番この曲に合っていて素晴らしいものになるかを全部試すんです。だから完成版を聴いたときに「このバージョンが採用されたんだ!」というのを知る楽しみもあるのですが、「ARCANA」は特にたくさん録ったので面白かったです。
――燐舞曲の楽曲は本当に現場で一緒に作り上げていくんですね。それとこの楽曲、アニメのライブシーンでは1番までしか披露されませんが、2番以降の展開も壮絶で、まるで別の楽曲のように豹変しますよね。
中山 少し補足しますと、今回はOPテーマの「Maihime」が中村先生の歌詞とイノタクさんの楽曲が合わさって想像を超えるものになりましたが、「ARCANA」も編曲とMixで初めてMEG(MEGMETAL)さんに参加いただいた楽曲でもあり、eMPIRE SOUND SYSTeMSさんとの良い意味でのバチバチ感が生まれて、最後までストイックにこだわり抜いて作り上げていった楽曲になりました。自分も最初に聴いたときは、「グルミク(D4DJ Groovy Mix)」なら「EXPERT 15」の難易度になるだろうなと思ったのですが、実際にそうなっていたので(笑)。
加藤 「EXPERT 15」は絶対に無理……(笑)。
中山 そんな方でも「グルミク」はオートモードでも楽しめるので、ぜひ曲を聴いてください。
燐舞曲という名のサーガが描き出す運命の行方
――少し話は変わりますが、中山さんは燐舞曲の楽曲をプロデュースするうえで、どんなことを大切にしていますか?
中山 まず「D4DJ」全体のことで言うと、僕は他のユニットも含めて、楽曲の方向性やバランスをできるだけ広げていきたいんです。DJは楽曲のセレクトの幅が広いほど楽しくなるものですし、その自由さが大事だと思っていて。そのなかで燐舞曲はロックジャンルでのサウンド感を含め、他のユニットとは違うものにすることを大切にしています。それは例えば歌詞にしてもそうで、燐舞曲の歌詞は日常感とは少し離れた哲学的な部分がありますし、そういった要素や他の楽曲との繋がりを含め、聴き手が想像できる楽しみを作るようにしていて。eMPIRE SOUND SYSTeMSさんは必ず全体としてのストーリーの繋がりを常に重視していて、それが世界観の濃さになっているんだと思います。
――個々の楽曲がありつつ、全体としては緩やかに繋がっていて物語性が感じられるからこそ、深読みしたくなると言いますか。
中山 それは最初の楽曲「瞬動-movement-」のときから意識してきたことですが、特に「カレンデュラ」に関しては、楽曲を聴いた「グルミク」の開発メンバーから「この楽曲を燐舞曲のストーリーの軸にしたい」という提案があったので、それは楽曲内で描いている設定や世界観にピンとくるものがあったということだと思うんです。そういうやり取りがファンの方ともできれば嬉しいですね。
――キャストのお二人は、そういった燐舞曲の楽曲で描かれる世界観について、どんな魅力を感じますか?
加藤 私が人生で絶対に言わなかったであろう言葉が歌詞にたくさん散りばめられていて(笑)、でもその1つ1つが言葉の本来の意味だけで表現されているわけではなく、燐舞曲の今までのストーリーを追えば追うほど違った意味が見えて、楽曲の深みが増すところが面白いなと思います。最初に聴いた印象と、ゲームとかのストーリーを読んだ後だと、歌詞に入っているワードの印象が全く変わるんですよ。
つんこ 私は昔から濃い目のオタクをずっとやっていたのですが(笑)、燐舞曲の楽曲には私の年代のオタクに刺さるクリエイターさんがたくさん参加されているので、自分が本当に好きな音楽や世界観を燐舞曲として表現できているというヤバい状況がまずあって。さっきの「Maria」や「No.13」の話もそうですけど、それこそ私みたいな濃い目のオタクはそういう散りばめられたピースを紐解いて楽しむのが好きだと思いますし、そこがディグラー(※「D4DJ」のファンの呼称)さんたちにも楽しんでいただけているのかなと思います。
――いわゆる「考察が捗る」ってやつですね。
つんこ そうです(笑)。
中山 燐舞曲には大枠としてのストーリーが設定としてあるのですが、それをストレートな言葉で表現しないのが燐舞曲の楽曲で、いわば燐舞曲の根底にあるテーマを壮大なサーガとして描いている感じなんです。1つ1つの楽曲を積み重ねて、燐舞曲という全体として長いストーリーの映画を作っているようなイメージなので、楽曲単体ではわからない部分が相当あります。ただ、僕は新曲を発表したときにエゴサをするのですが、たまに理解の深いファンの方がいて、すごくストレートに言い当てているんですよ(笑)。そういうつぶやきには「いいね」を押したりしています。
――じゃあ中山さんのツイッターを追っていると、燐舞曲のことをより理解できるかもしれませんね(笑)。では最後に、『D4DJ All Mix』をご覧になっているディグラーの皆さんに向けてメッセージをお願いします。
つんこ 燐舞曲の担当回は終わったばかりですが、まだまだ色んなユニットを巻き込んでリリリリちゃんたちが大暴れするので、ぜひ最終話までしっかりじっくり隅々まで観て楽しんでいただければと思います!
加藤 2期ではたくさんの個性豊かなキャラクターたちが登場して、キャラクター同士の繋がりもより深く描かれるので、「D4DJ」のテーマになっている“繋ぐ”をたくさん感じられる作品になっています。色々なところに散りばめられた伏線や、それぞれの思いを見逃さないように最後まで楽しんでいただければと思います。
中山 まず、6話はかなりのトンデモ回なのでぜひ注目していただきたいのですが、それ以降も『Double Mix』で実現した燐舞曲とMerm4idの「FAKE OFF」のように、各ユニットの垣根を超えた意外なコラボ曲が続々登場しますので、ぜひ1話も見逃さないように最後まで楽しんでいただければと思います。それとこれは言い忘れていたのですが、EDテーマの「Around and Around」は加藤さんが“夜な夜な 夜な夜な”と歌うところがすごく良いんですよね。あそこはとても気に入っていて。
加藤 やったあ!
中山 ここは記事ではカットしてください(笑)。
加藤 カットしないでください!(笑)。
●ライブ情報
燐舞曲 3rd LIVE -Maria-
・開催日時:2月12日(日)
昼公演:開場14:15/開演15:00
夜公演:開場18:15/開演19:00
・会場:KT Zepp Yokohama
燐舞曲の3度目の単独ライブが開催決定!
圧倒的な世界観のステージをお楽しみに! 詳細はD4DJ公式HPをチェック!
https://d4dj-pj.com/live-event/post-71
●作品情報
『D4DJ All Mix』
TOKYO MX:1月13日(金) 23:00~23:30
BS日テレ:1月13日(金) 23:00~23:30
KBS京都:1月13日(金) 25:00~25:30
サンテレビ:1月14日(土) 22:30~23:00
AT-X:1月13日(金) 23:00~23:30
配信情報
DMMTV:1月8日(日)~ 毎週日曜 23:00
Hulu:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
Amazon Prime Video:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
U-NEXT:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
dアニメストア:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
ひかりTV:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
アニメタイムズ:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
GooglePlay:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
バンダイチャンネル:1月13日(金)~ 毎週金曜 23:00
HAPPY!動画:1月14日(土)~ 毎週土曜 12:00
ビデックス:1月14日(土)~ 毎週土曜 12:00
TELASA:1月16日(月)~ 毎週月曜 24:00
J:COMオンデマンド: 1月16日(月)~ 毎週月曜 24:00
milplus(みるプラス): 1月16日(月)~ 毎週月曜 24:00
auスマートパスプレミアム: 1月16日(月)~ 毎週月曜 24:00
※放送日時・内容は予告なく変更される場合があります。予めご了承ください。
【あらすじ】
奉仕の心を理念とする伝統ある有栖川学院に通う、桜田美夢、春日春奈、白鳥胡桃、竹下みいこは、
みんなを笑顔にする奉仕の一つとしてDJユニット「Lyrical Lily」としての活動を認められていた。
ある日、春奈が商工会に呼ばれ、新年から一年を通して地域活性化イベントの依頼を受けることになる。
自分たちだけで実現出来るか不安になるが、思い浮かんだのは初めてのライブを一緒に成功させた面々、そして来場者の笑顔だった。
奉仕の心、Lyrical Lilyの想いは、DJの祭典《D4 FES.》で共に称えあった各ユニットに次々と繋がり、
ついに新年に相応しい新しいステージが幕を開ける―――
【STAFF】
原作:ブシロード
ストーリー原案:中村 航
キャラクター原案:やちぇ
総監督:水島精二
監督:鈴木大介
シリーズ構成:雑破業
アニメーションキャラクターデザイン:茶之原拓也、八森優香
モデリングディレクター :原岡大輔、髙岡真也、横山貴央
リギングディレクター:矢代 奈津子
色彩設計:松山 愛子 (颱風グラフィックス)
撮影監督:小林俊介
美術監督:池田裕輔
美術設定:綱頭瑛子
編集:榎田美咲
音響監督:長崎行男
音楽:佐高陵平、グシミヤギ ヒデユキ
アニメーション制作統括:松浦裕暁
アニメーション制作:サンジゲン
関連リンク
TVアニメ「D4DJ All Mix」公式サイト
https://anime.d4dj-pj.com/all-mix/
D4DJ公式サイト
https://d4dj-pj.com/
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