2023年冬クールのTVアニメ『イジらないで、長瀞さん 2nd Attack』のOPテーマは、1期『イジらないで、長瀞さん』同様、ヒロイン長瀞さん役の上坂すみれが歌う。前作では森月キャスと作詞を共作したが、今回は作詞がヨシダタクミ(saji)、作編曲がKoTaという布陣に。
だが今作でも、長瀞(早瀬)さんや作品である『長瀞さん』の特徴を非常に感じ取れる楽曲になっている。カップリングの1曲では作詞を担当した上坂。収録曲3曲をどのような視点で受け取ったのだろうか。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

完成度の高い前作を包括しながらよりパワーアップした楽曲に
――昨年10月の5thフルアルバム『ANTHOLOGY & DESTINY』に続くリリースとなりましたが、今作「LOVE CRAZY」が誕生した時期や経緯、それからどのような楽曲になったと感じているか教えてもらえますか?

上坂すみれ そうですね、TVアニメ『イジらないで、長瀞さん 2nd Attack』はこの1月のアニメなので「LOVE CRAZY」も去年の夏前には制作を始めていました。アフレコが始まる前に今回もオープニングを、というお話はいただいていました。逆にカップリング曲の2曲は割と最近作っていて、「道がわからないのうた」はアルバムの収録曲候補でもありました。「LOVE CRAZY」はコンペで曲を選ばせていただいています。(1期OP主題歌の)「EASY LOVE」の完成度がすごく高かったので、そこから続く世界でありながらパワーアップ感がすごくあると初めて聴いた時に感じて。作詞のヨシダタクミさんは、(杉本紗和役で出演した)TVアニメ『かげきしょうじょ!!』などで青春ポップな歌詞がお得意なイメージがあったので「ヨシダさんがいいです」というお話をしました。

――「EASY LOVE」をパワーアップさせたイメージを感じた、ということですが、歌詞も同様の印象を感じさせますね。

上坂 そうですね。「EASY LOVE」と続けて歌ったらすごく大変そうですが、「EASY LOVE」を包括したような世界観で、でも勢い良く書いてくださっていますよね。
私だと絶対思いつかない譜割りで、とてもポップなサビとちょっと難解なA、Bメロになっていますし。サビは速いので結構難しいのですが、カタルシス的なところもとても強いので、歌っていても弾むような響きの言葉がたくさんあるのがすごく楽しいです。

――歌う前やレコーディング時に意識されたことはありますか?

上坂 今回は長瀞さん要素が強いというか、キャラクターソングではないですが長瀞さんのちょっと積極的な心情が表れていると感じたので、歌い方を少しだけ寄せるのが合うかと思いました。なので、かわいさやいじらしさを表現したり、明るい笑顔感を意識したり、というのはありましたね。「EASY LOVE」はちょっとひねくれていましたが、この曲はもっと視線が真っ直ぐな感じがしました。

――演者としてはどのような声、演技で長瀞さんに向かわれているのでしょうか?

上坂 長瀞さんに関しては、私はこういうスピード感のある、さっぱりした感じの褐色キャラクターをそんなに演じたことなかったので、最初は結構悩みました。自分の地の声でやると合わない気がして。それで“幼いけど低めの声”を色々と探るなかでできていったと思います。

――その意識を少し持ちながら「EASY LOVE」や「LOVE CRAZY」を?

上坂 ただ、キャラソンではない認識はありましたし、あまり難しい歌い方をしてしまうとライブで聴こえ方が全然変わってしまうので、やっぱりうたいやすい歌い方というのは前提にありました。でも、歌詞でもメロディでも長瀞さんを感じる曲なので、ところどころで表情があってもいいのかな、みたいな感じですね。

今準備しているものが終わったらきっとメモリアルな気持ちに
――「LOVE CRAZY」ではMVも作られています。コンセプトやテーマ、ストーリーといったところも教えてもらえますか?

上坂 監督は以前にもお世話になったスミスさんで、画的にはかわいらしいけど何が起こるかわからない、みたいな感じの映像になっています。
「EASY LOVE」に続いて今回も学生がテーマになっていて、いくつかの衣装が出てくるのですが、中盤に出てくる赤いドレスはライブでよく着るようなもので、すごくしっくりきていてお気に入りですね。でも、珍しく私服風の衣装もあって、それは自分でもすごく新鮮でした。制服は2回目なんですけど冬服となるとガラッと印象が変わるので、そちらも好きですね。セーラーって、色々なロリータファッションのモチーフにもなっているので、個人的には制服を着ているというよりもそういうイメージはありました。

――スルメを取り出していましたが、何か意図が隠れているのでしょうか?察しが悪くて申し訳ないのですが。

上坂 いや、私も詳しくはわからなくて。鳩が乗っていたりそれを出したり、激辛の料理が出てきたりというのに大きな意味はないと思いますし、特に説明もなかったです。でも、画的にすごくいいと思って、そのままやっていました。逆に、1つ1つ理解してしまうと違う感じになるのかと思って。



――そこが「CRAZY」感というところですね。カップリング曲については、どのような曲を入れようという考えでしたか?

上坂 カップリング曲は当初普通に制作する予定だったのですが、タイアップのお話をいただいて。その作品の世界観を描く曲をお願いすることになったのが「リベリオン」ですね。


――スマートフォン向けアプリゲーム「マジデス壊 魔法少女マジカルデストロイヤーズ」の主題歌ですね。作詞・作曲・編曲すべてをR・O・Nさんにお願いした理由というのは?

上坂 R・O・Nさんにはアルバムで毎回、「予感」シリーズというInstrumentalをずっとお願いしていたのですが歌ものを発注したことはなくて。でも、デビュー当時からお世話になっていますし、今回は満を持してというか、ぜひR・O・Nさんの楽曲をいただこうと思いました。

――歌ってみた感想も教えてもらえますか?

上坂 かっこ良く呼びかけるような、指導者的な感じがありましたし、はっきりとしたリズムなのでそこにしっかりと乗って歌う、というのが心がけたポイントですね。前向きな意志がある曲なので基本的には力強く、なんてディレクションもR・O・Nさんからいただきました。実は、R・O・Nさんとお会いするのが今回は初めてだったんですよね。

――R・O・Nさんにディレクションいただいたんですね。R・O・Nさんとのやりとりでほかに覚えていることはありますか?

上坂 例えば、“逆心に苛まれそう 裏腹に語る抗争”のくだりはオケが横ノリというか、ガラッと変わるのですが、あまりやったことのない曲調だったんですね。そこは、1つ1つの言葉を立てるというよりも、“苛まれそう”と“抗争”で韻を踏んでいるからそこを立てるといい、といったことは教えていただきました。



――3曲目の「道がわからないのうた」は上坂さんが作詞されています。今回は自身から立候補してでしたか?

上坂 そうですね。これは5thアルバムの候補曲だったもので、アルバムには入りきらなかったんですけど、いつか録りたいと思っていたので今回のタイミングで入れることになりました。
作詞に関しては、とてもかっこいいオケがついていて、すごくかっこ良くもできるけど、かっこ良さを逆手にとったゆるい歌詞でも合うんじゃないかと思ったので、自分で書いてみよう、と。

――ゆるい歌詞のほうがいいと思った決め手というのはありますか?

上坂 「LOVE CRAZY」や「リベリオン」がしっかりと作品に寄り添った楽曲ではあるので、3曲目は自由にやったほうがバランスがいいのかも、とは思いました。なので、なかなかトランス系アニソンでは使わないテーマを歌詞に選びました。

――歌詞の内容は普段からご自身が感じていることですか?

上坂 そうですね。私はずっと方向音痴で、タクシーに乗って「何通りを行きますか?」と聞かれてもわからないですし、迷ったときに電話して「周りに何がある?」と聞かれても「民家がある」と答えてしまうくらいで。なので、私の方向音痴あるあるであって、ほかの方向音痴の人はそうではないかもしれないですが。

――自身の方向音痴を分析すると、どういったところに原因があると思いますか?

上坂 地図を立体的に見られない、というのはあると思います。駅の構内図を見ても理解できないですし。でも、単に苦手なだけで、すごく訓練すれば克服できるのかもしれないんですけど、そのままになってしまっていますね。

――作詞の経験も増えてきましたが、自分なりの工夫があれば教えてもらえますか?

上坂 オケが本当にかっこ良いので、サビは特にかっこ良くしようと思いました。サビまで方向音痴の話を引きずってしまうと、決めポイントがなくなってしまうので。ま、よく見るとサビも、迷っている人をかっこ良く書いているだけなんですけど。
ただ、そこの対比はわかりやすくしたかったので、歌はかっこ良く、を心がけていますね。あとは、A、Bメロの方向音痴あるあるでは口語体を意識したというか、平たい文章を歌詞にする違和感を楽しんでもらおうとしています。

――会心の一撃のフレーズは?

上坂 そうですね。私で一番問題なのは、出口を出てとにかく右に歩く、という習性だと思うので、そこをサビ前に持ってきて盛り上がるとしたのは良かったと思います。

――今月にはアーティストデビュー10周年を迎え、準備などで色々と動かれているところかと思いますが、ご自身の中にメモリアルな気持ちって存在されていますか?

上坂 メモリアルはすごく感じるんですけど、おっしゃるように今は色々なものを仕込み中で。かなり動き回っているので、メモリアルを感じるのはそれが終わったあとなのかな、とは思います。だからまだ、10年経ってしみじみするというよりは、この1年間でどれだけのことができるか、みたいな感じですね。

――周年が終わったあと、どのような思いが去来しそうですか?

上坂 今準備しているものを無事に終えることができたら、頑張ったな、良かったな、と思えるとは思いますね、はい。本当に10年で色々なことに挑戦してきたので。

――周年を盛り上げるイベントの1つに、“リスアニ!LIVE 2023”も加えさせていただきありがとうございました!上坂さんはソロ名義では初めての出演で、今作「LOVE CRAZY」も初披露していただきました。最後に当日のステージの感想を伺えますか。

上坂 アーティストデビュー10周年というメモリアルな一年の、素晴らしいライブ初めになりました!久々のフェス出演なので緊張もありましたが、皆さまが温かく迎えてくださって、本当にうれしく楽しい空間になりました。
新曲「LOVE CRAZY」も皆さまで盛り上がれて最高でした~!

●リリース情報

13th SINGLE
「LOVE CRAZY」
発売中

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:KICM-92123
価格:¥2,200(税込)

【期間限定アニメ盤(CD)】

品番:KICM-92124
定価:¥1,430(税込)
キャラクターデザイン・鈴木美咲描き下ろしジャケット仕様

【通常盤(CD)】

品番:KICM-2123
定価:¥1,430(税込)

<CD>
01. LOVE CRAZY
作詞:ヨシダタクミ(saji) 作曲・編曲:KoTa
★TVアニメ「イジらないで、長瀞さん 2nd Attack」OPテーマ
02. リベリオン
作詞・作曲・編曲:R・O・N
★「マジデス壊 魔法少女マジカルデストロイヤーズ」主題歌
03. 道がわからないのうた
作詞:上坂すみれ 作曲・編曲: 渡辺 徹(Blue Bird’ s Nest)
04. LOVE CRAZY(off vocal ver.)
作曲・編曲:KoTa
05. リベリオン(off vocal ver.)
作曲・編曲:R・O・N
06. 道がわからないのうた(off vocal ver.)
作曲・編曲:渡辺 徹(Blue Bird’ s Nest)

<Blu-ray>
「LOVE CRAZY」Music Video
「LOVE CRAZY」MAKING

●ライブ情報
「SUMIRE UESAKA LIVE 2023 TALES OF SUMIPE 運命の書/同人の書」

【DAY1:運命の書】
2023年3月18日(土)
17:00開場/18:00開演

【DAY2:同人の書】
2023年3月19日(日)
16:00開場/17:00開演

会場:立川ステージガーデン
チケット代金:8,800円(全席指定・税込)
※2階、3階席の最前列は⽴⾒での観覧ができませんので予めご了承ください。

詳細はこちら

・本公演は行政機関及び会場の規定に基づき、収容人数を設定しております。そのため、最大収容人数での開催となる場合やチケットが連番のお客様同士でお席の間隔が空く場合がございます。

関連リンク
上坂すみれ 公式サイト
http://king-cr.jp/artist/uesakasumire

上坂すみれ 公式Twitter
https://twitter.com/uesaka_official

上坂すみれ 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCmXM_8KLt9B1X2oW94QfAyg
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