INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
今日までの活動の中でTRDが見せたのは「変化」ではなく「進化」
――2021年6月に1stアルバムをリリースされて音楽シーンへと漕ぎ出したTRD。あれから1年半。TRDとして、クリエイターさんや楽曲との出会い、メジャーシーンで活動を始めたからこその意識の変化などで印象的だったことはありますか?
近藤孝行 ユニットとしての変化というよりは、個人的にどれだけスキルを上げられるんだろう、ということに意識が向いていた時間でしたね。若い頃はダンスなどで魅せることもできていましたが、そこから歌で皆さんにお届けしていくことも意識していきたいということで始めたのがTRDだったこともあり、自分の中で「歌のグレードアップ」という部分が常に頭にありました。ほかのアーティストの方々や声優アーティストさんのパフォーマンスを見て刺激をいただいて、自分なりに落とし込んでバージョンアップさせていく期間だったように思います。
――スキルアップのために一番重要だったのはどんなことでしたか?
近藤 「意識」ですね。僕は今までボイスレッスンを受けたことがなかったのですが、初めてボイトレに通ってみようと思ったんです。TRDとしての活動を始めてからそんなふうに気持ちが前向きになっていって、家に防音室を作り自主的に歌を研究していたのですが、その時間がただただ楽しくて。それがスキルアップに繋がっていけばいいなと思ってやっていました。毎日欠かさず、ジャンルを問わず歌うようにしています。それが変化ですね。
――小野さんはいかがですか?
小野大輔 「Strangers」、そして「Cozy Crazy PARTY!」と歌わせてもらって改めて感じたことは、僕らの楽曲がひたすらに希望を歌っている、ということなんです。もっとネガティブなことも含めて楽曲に落とし込んでいくのかなと思っていたら、全然そんなことはなくて。僕ら、ずっとポジティブなんですよ。それは「変化」ではなく「変わらない」ことなんです。そこが僕自身にとっては、TRDの意外なところだったかもしれないです。違った切り口の楽曲もやるのかな、どんなことを曲にして表現していくのかな、と最初の1年は手探りでした。でも一貫して未来に進む曲を僕らは歌っている。それが意外でもあり、でも自分たちの楽曲に背中を押される感覚もあって、ほかでは得られない経験かもしれない。そういう意味でいうと「変化」というよりも「進化」として捉えていることとして「ハーモニー」があります。上達した気がしますし、ハーモニーを奏でることが好きになりました。
――といいますと?
小野 ハーモニーを奏でることは技術的に難しいもので、やっぱり何回やっても慣れない部分があったんです。
――お互いのことについても伺いたいです。近藤さんはこの1年半、TRDでの小野さんをご覧になっていてどのようなことを感じますか?
近藤 良い意味で変わってはいないです。とっても真面目なところや妥協がないところ、真摯に向き合っているところを見ていてもそう思いますね。ライブの構成であったり、アルバムの曲順に至るまですごく考えているところはTRDが始動してから今日まで変わっていない。以前のライブ(TRD Visual Live Event2022”)でも見られた光景でもありました。リハの直前まで曲を聴いていたりするところも変わらずにいてくれているなと思います。
小野 ありがたいです、「変わらない」という評価が。変わらないでいることって案外難しかったりするじゃない?近藤くんも変わらずにストイックだなと感じます。近藤くんが僕について語ってくれたけど、それは僕が思ったことでもありますね。
とにかくハッピーでポジティブなパーティチューン「Cozy Crazy PARTY!」
――そんなTRDが「Strangers」に続き、TRD×アニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』×作詞・畑 亜貴×作編曲・黒須克彦という黄金式で作られた1曲「Cozy Crazy PARTY!」ですが、楽曲を受け取ったときの印象をお聞かせください。
近藤 どこか懐かしい感じも受けましたし、今まで個人的には歌ってきたことのないような曲だったので挑戦でもありました。でも無理やりにというか、否が応にもポジティブになれるのがこの曲の良いところかなと思います。それはレコーディングのときよりもライブのときに強く感じました。歌っていて気持ちが良かったですし、ライブで初披露したときにお客さんもすごく盛り上がってくれたことで確信しましたね。MV撮影のときにも歌っていてものすごく楽しかったです。撮影の思い出も相まって、自分の中では楽しくて思い出深い曲になったかなと思います。
――ラップのパートもありますが、レコーディングもスムーズでしたか?
近藤 ラップは苦労しましたね。
――小野さんはいかがでしたか?
小野 受け取ったときには、とにかくハッピーでポジティブなパーティチューンだなと思いました。TRD史上最も明るい楽曲ですね。楽曲の制作にあたって、こんなご時世だからこそ、最後は笑って明るい感覚や幸せに浸れるようなエンディングになるといいね、とお話をしていたのですが、それが音楽になるとまさしく「Cozy Crazy PARTY!」だなって思うんです。暗いニュースも多いから、楽曲くらいは明るくパーティをしようよ、誰でも遊びにおいで、というひたすらにオープンな空間がこの曲には広がっているなと思います。しかも音色にはちょっと懐かしい感じもあって。完全に今の最先端の楽曲というよりは、懐かしい雰囲気のある大人のパーティチューンですね。老若男女問わずここにきて、なにも考えずに楽しもうよ、と歌って、最終的には「また会おうね」と締められる曲です。毎週お送りするテレビアニメシリーズなので、その週の放送が終わったあとに「また来週も会えるよ」と約束をして終わろうという楽曲ですし、古き良きアニメのエンディングの空気感があるのが僕はすごく好きです。作品自体に多幸感がありますよね、理屈抜きの。
――MVもとても楽しい映像になっていますが、撮影はいかがでしたか?前作に続き、海でのお姿。TRDはビーチの似合うユニットだな、と。
近藤 嘘だ。そんなことないと思う(笑)。
小野 MVは毎回千葉に行くよね(笑)。
近藤 たしかに(笑)。ちなみにMVでは冬服を着ているんですけど、撮影は真夏だったんですよ。
小野 そうだった(笑)。
近藤 その状態で走っている!本当に良い思い出ですよ(笑)。
小野 動物役のエキストラさんたちが、すごくぜぇぜぇいっていたのがかわいそうで。無理しないようにしてねと言っていましたが、彼らの頑張りもあって面白いMVになっています。
近藤 僕はファンタジーな世界観が好きなんですよね。2人でTRD以前にやっていたユニットなどは、かっこ良さやダークな世界観、綺麗なところを見せてきたんですが、TRDはそういったものをとっぱらって、等身大の僕らを見てもらうというコンセプトもあって。さらに今回はコミカルな要素もあって面白かったですし、僕は元々舞台出身なので体で芝居をする感じの懐かしさもあり楽しかったです。もちろん苦しいところもありましたよ?真夏に冬服を着て走るなんて。でもそれも含めて良い思い出になっていますし、その楽しさが画面を通して皆さんにも伝わってくれるといいなぁ、と思います。それに純粋に僕の人生における楽しい思い出が増えました。これって素敵なことですよね。
小野 「Strangers」のときには富津に行ったのですが、今回は九十九里のほうへ出かけまして。内房も外房も攻めるという、かなり千葉にゆかりのあるユニットになりましたが(笑)、東京に住んでいると千葉ってなかなか行かないんですよね。自分たちが普通に声優をやっていて、なかなか行かないような場所にも出かけていけることだけでも嬉しいですし、新しい景色を見ることができて、その土地の発見もありました。すごく暑かったですし、たくさん走ったりしてしんどいところもありましたが、楽しかったですね。それに尽きます。ハッピーなMV収録でした。あとは花火もすごく良かった!花火って多幸感の象徴だと思うんです。それがまたすごく良いなぁ、と思いました。
――多幸感ある本作には、どんなTRDが、お二人が息づいていると感じますか?
近藤 年相応ではない感じというか。本来の年齢を考えるともっと落ち着いた感じを目指すべきかもしれないですが、僕たちはこれでいいんだよねっていうありのままのコミカルさが入っていますよね。曲を聴いて、MVを観ていただいて、ハッピーな気持ちになってくれたらいいなぁ、と思います。
――特に「ここにありのままがある」というとどんな場面ですか?
近藤 監督に「寝ているときに人が近づいてきたとして、気づくのはどちらが早いの?」って聞かれて、「僕ですね」と答えたことで割り振られたカメラ割とかもあって、よりパーソナルなものに近い作りになっているなと思います。
小野 改めて聴いていると、僕ら2人の「今を生きている感じ」が息づいていると思います。楽曲にもMVにも。過去を振り返らないし、ひたすら前を向いて、今、今日この瞬間を一緒にいる仲間とどれだけ楽しめるかということに尽力して、それがパフォーマンスになって、楽曲になったらどれほど幸せなんだろうということを体現したのが「Cozy Crazy PARTY!」だと思うんです。僕ら自身もどうやったら上手くいくかを色々と考えるんですけど、この楽曲に関しては結果的にその場で楽しいことだけをやっていた気がします。それが正解なんです。今日を目いっぱい楽しく生きたら、また新しい1日も最高にハッピーなんじゃないかな、と。その想いを、この楽曲を受け取った人たちも感じてくれたら嬉しいです。
肩の力の抜けたTRDの、パーソナルに近いカップリング曲「Hope Step」
――そしてカップリングは「Hope Step」。大人な雰囲気のある1曲ですが、この曲の「ここが好き」というポイントを教えてください。
近藤 全部好きです!メロディも歌詞も含めて、本当にこの曲は好き。もちろん「Cozy Crazy PARTY!」も好きなのですが、あの曲はエンターテイメントショー!という感じがありますが、この「Hope Step」は僕らの素により近い感じがします。肩の力を抜いて歌えるというか、そういったところがすごく好きです。ラップのところも、胸にぐっときたんです。“ふとした瞬間こぼした涙 笑顔思い出して 何度も立ち上がろうとする君は美しかった”、僕もそんなふうに頑張っている人を見ると、胸が熱くなるんです。何事も上手くこなせてしまう人よりも、不器用だけどすごく頑張っている人たちの姿と重なって、その想いにインスパイアされる歌詞で。曲を超えたメッセージ性も強く感じさせるところが、この曲の好きなところかな。
小野 軽やかで風のような楽曲だなって思います。近藤くんも言うように、肩に力が入っていないんですよね。僕らの等身大だってことを、僕自身も感じます。そのまんまで、頑張りすぎずに、この時代を風に乗って歩いて行こうという感覚が楽曲から感じられますし、歌っていても本当に気持ちが良いんですよ。楽曲制作にあたってのテーマ出しをしているときに印象的だった言葉があって。「テーマをどうしようか」と言ったときに近藤くんから「風」というキーワードが出たんです。そうしたらサウンドディレクターの西岡和哉さんから「向かい風に立ち向かうというイメージよりも、追い風に乗っかって軽やかに未来に進んでいく、という感じでしょうか」という言葉が出てきたんです。それ、いいなぁって思っていたら、まさしくそのイメージの楽曲が出来上がってきたんですよね。
僕は歌をうたうときにはどうしても力が入ってしまうんです。肩に力が入ってしまうし、ともすると歌に込めすぎたりもするので、そうなると重くなってしまって聞き辛くなることもある。昔はそんなこともあったのですが、この曲はどこまでも軽やかに歌えるんですよね。僕はこの曲のそんなところがすごく好きです。
――2023年のTRDの始まりとなる1曲ですが、2022年の振り返りと共に、ここから先のTRDがどうなっていくのかという展望もお聞かせください。
近藤 このご時世の中においても、昨年は2月にバレンタインイベントを開催させていただいたり、ライブも行えましたし、その間にもレコーディングもあり、MV撮影もあって……2022年は濃い時間を過ごさせてもらいました。どの時間も、どの瞬間も印象深かったですし、このご時世だからこそよりありがたみを増して、刻まれたような気がしています。2023年からのもTRDとしてやってみたいことがありますし、色々なことにチャレンジさせていただきたいと思っております。期待していてください。
小野 2022年はユニットとしてやれることは、要所要所でやらせていただいた、充実した1年でした。振り返ると、ラジオもやって、ライブもやって、イベントも打って、グッズも作っていて、たくさん精力的な活動ができたことで満たされていました。本当にありがたい想いですね。ポニーキャニオンさんをはじめとして、楽曲を作る制作チームも僕たちにアイデアをくれるので、その風に乗っかっていくだけ、僕はそんな感覚です。それを受けて2023年はどんな風が吹くのだろうな、とワクワクしています。追い風であることを願いますが、このユニットについては向かい風のイメージはないんですよね。今後の展望としては、新しい出会いはもちろんですが西岡さんをはじめとして、ずっと楽曲を作ってくれているクリエイター陣、この1年半を共に戦ってきた仲間たちとこれまでとは違う楽曲を作ってみたいですね。アイデアをいただいて、みんなで膨らませて、「こんな曲、やったことないよ!」という楽曲を生み出せたらいいなぁ、と思います。
――これからの活動も楽しみです。では最後に「Cozy Crazy PARTY!」を読者の皆さんへレコメンドしてください。
近藤 まずは、アニメ『吸血鬼すぐ死ぬ2』のEDテーマとなっているこの「Cozy Crazy PARTY!」を、アニメと共に楽しんで聴いていただきたいと思います。そして余力がありましたらぜひMVも見ていただいて、私たちをより知っていただきたいと考えています。そしてさらにもっと興味が湧いた方は「Hope Step」も聴いていただいて、TRDの沼に落ちていただきたい。それくらい良いシングルが出来ましたので、その一歩を踏み出していただきたいです。僕らと共にTRDという道を歩んでください。
小野 『吸血鬼すぐ死ぬ2』という作品に寄り添うように、タイアップ曲として生まれた楽曲ですが、作品のテーマ性と相まって今この時代を生きる人たちがポジティブな気持ちになって前を向けるような、とにかく明るい楽曲になりました。音楽って、理屈抜きで、受け取った人たちの気持ちを上げるものであってほしいと思っていますし、そんな曲を僕らが歌ったという自負や自信という満足感があります。もしも受け取っていただけるのであれば、皆さんもひたすらにポジティブに明るく、前を向いていただけたら嬉しいです。一緒にハッピーになりましょう。よろしくお願いいたします!
●リリース情報
TRD 2ndシングル
「Cozy Crazy PARTY!」
2023年2月15日(水)発売
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:PCCG.02154
価格:¥2,200(税込)
■仕様
12Pオリジナルブックレット
「Cozy Crazy PARTY!」Music Video
ジャケットメイキングムービー
【通常盤(CD)】
品番:PCCG.02155
価格:¥1,760(税込)
■仕様
4Pオリジナルブックレット
【アニメ盤(CD)】
品番:PCCG.02156
価格:¥1,870(税込)
■仕様
アニメオリジナル描きおろしジャケット
「Cozy Crazy PARTY!(TVedit)」を収録
【きゃにめ限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:SCCG.00103
価格:¥3,520(税込)
■仕様
24Pオリジナルブックレット
「Cozy Crazy PARTY!」Music Video
ジャケットメイキングムービー
MVメイキングムービー
■外付け特典
盆ノ木先生描きおろしアクリルキーホルダー(ドラルク&ロナルド&ジョン)
※内容・仕様などは変更になる場合がございます。
<収録曲>
M1.Cozy Crazy PARTY!
作詞:畑亜貴 作曲:黒須克彦 編曲:西岡和哉
M2.Hope Step
作詞/作曲:菅谷豊 編曲:西岡和哉
M3.Cozy Crazy PARTY! (Instrumental)
M4.Hope Step (Instrumental)
アニメ盤は上記に加え「Cozy Crazy Party TVedit」が入ります。
●イベント情報
TRD 2ndシングル「Cozy Crazy PARTY!」発売記念イベント
イベント内容:サイン会
開催日時:2023年4月16日(日)
開催場所:都内某所
開場・開演時間/応募券配布対象店舗
【1回目】
開場12時30分・開演13時00分/全国アニメイト(通販含む)
【2回目】
開場15時00分・開演15時30分/きゃにめ
詳細はこちら
TRD スペシャルイベント
2023年7月16日(日) 第1部・第2部予定
会場:山野ホール
東京都渋谷区代々木1-53-1
内容:トーク&ミニライブ(予定)
詳細はこちら
関連リンク
TRD オフィシャルサイト
https://trd-music.com/
TRD 公式Twitter
https://twitter.com/TRD_music