INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
歌詞は斉藤朱夏が全開!
――「僕らはジーニアス」はTVアニメ『齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定』のOPテーマになってますね。
斉藤朱夏 個人的には、中国で先に配信されているアニメだっていうことを大事にしたかったんですね。中国のアニメファンの方がこのオープニングを聞いたときに、中国版を大切にしてくれてるんだなっていうのを少しでも感じてくれたらいいなと思って。だから、イントロにドラを入れたり、衣装も若干中華っぽくしていて。
――アニメの世界観に寄り添った書き下ろしではありますが、同時に斉藤朱夏らしさも溢れてますよね。
斉藤 そうですね。歌詞を見たときに、まんま私だなと思いました(笑)。“やりたいようにやろうぜ”や、“行きたい方に行こうぜ”“面白そうな未来を見てみたいじゃん”とか。私要素がたくさん散りばめられているなっていうのは感じましたね。
――“胸を張って 意地を張って”も朱夏さんっぽいです。
斉藤 あははは。そうですね。基本的には、胸を張って、意地を張って生きているので。ここに“強がって”が入ったらもう完璧ですね。私は自分を強く見せたいから胸を張ってて。たまに挫けてしまって、弱さを出てしまうこともあるけれど、そんな自分は見せたくないという思いで意地を張ってみたりする。私にぴったりハマる歌詞だなと思いましたし、一番いいなと感じたのは、やっぱりタイトルですよね。「僕らはジーニアス」っていう。
――昨年8月にリリースした1stアルバム『パッチワーク』の収録曲「ワンピース」では“天才なんかじゃないし”と歌っていました。
斉藤 “私は”じゃなく、“僕らは”だからこそ言える言葉じゃないかなって思います。昨年1年間で、応援してくださる皆さんがいるから私っていう人間が存在してるんだなということを感じて。ライブでは努力ではどうもこうもできないことが起きたりもするけれど、みんながいるからなんとかなったというか、みんなに助けられたなと感じた瞬間がたくさんあったんですよ。
――昨年春のライブハウスツアー“はじまりのサイン”、夏のライブハウスツアー“キミとはだしの青春”、冬のワンマンライブ“くもり空の向こう側”を経て言えるようになった?
斉藤 そうですね。全部のツアーがすごく大きかったです。特に“キミとはだしの青春”は11都市14公演という初めての挑戦をした長いツアーだったので、すごい得るものが大きくて。みんなから本当に自分の中で消化しきれないくらいのパワーをもらいましたし、「温かいな、この居場所」って感じることも多くて。自分が発した言葉で出来上がっているものでもあるので、より言葉に責任を持とうとも思いましたし、もらったものをこの先にどう活かせばいいんだろうっていう、初めての嬉しい困りもありましたね。
ツアーの熱も入ったライブ感満載の「僕らはジーニアス」
――「僕らはジーニアス」は“くもり空の向こう側”のアンコールで初披露していました。
斉藤 レコーディングもツアー中だったんですよ。常に「元気に!」「やんちゃに!」「悪ガキをもっと入れて」っていうオーダーをされたので、ある意味ライブみたいな感じで歌って。ツアーをやってる最中はずっと気を張っているので、歌入れが終わった瞬間に糸が切れたといいますか。すべての力がなくなって、レコーディング後は、疲れすぎてスタジオで寝ていましたね(笑)。
――(笑)。ツアー中だからこその勢いも入っていますよね。サウンド的にもクラップやコール&レスポンスも入ってるので、ライブも見える曲になっています。
斉藤 ツアーをたくさん回っていたし、ライブも積極的にやっているので、やっぱり私はライブでみんなと会話ができる楽曲を増やしたいし、音楽でみんなとコミュニケーションをとりたいんですよね。最近やっと声出しが解禁になってきたので、今まで溜めていたものがそろそろできるんじゃないかなっていうワクワクもあります。まだ色んなルールがあるけれど、未来のための楽しみを作っている感じですよね。声出しの部分をたくさん作っておいて、いざできるよ!ってなったときにどれだけみんなが爆発するかが楽しみです。
――また、この曲中には自分次第でなんにだってなれるというメッセージも込められてます。朱夏さんはどんな自分になりたいですか。
斉藤 女性として、人間として、かっこ良く強くありたいです。最近は、自分1人で立てるようになりたいなって思いますね。みんなと一緒に手を繋いでいくのも大切だけど、まずは、1人でちゃんと立てるようになりたい。
――今は“僕らはジーニアス”と言ってるけど。
斉藤 いつかは“私が”って言えるようになりたいな。まだなれてないのは自分でもわかっているので、強さがどこにあるんだろう?っていう旅をこれからしていくんだろうなと思います。ステージ上に立っていて、どうしても1人だな、孤独だなって感じる瞬間がたくさんあるんです。でもたとえ1人でも、孤独って思った瞬間でも強くありたい。2023年はそこを目指していきたいです。
――アニメの映像についたものを見てどう感じました。
斉藤 いや、すごいですね。やっぱり、あのクレジットを見る瞬間が一番嬉しいです。名前載っとる!みたいな(笑)。もちろん、アニメ自体も楽しみですが、これが見たいがためにアニメも見てるっていう気持ちもある。それに、オープニングってやっぱりいいなって思いましたね。
――アニメとは別にご自身のMVも公開されています。
斉藤 本当にシュールですよね。一番最初に確認はきていたんですよ。「学生服とヒーロースーツを着ることに対して朱夏さんは大丈夫ですか?」って。私、基本NGはないので、「大丈夫です」って答えて。「イッパイアッテナ」で初めてお会いした監督ともう1回タッグを組ませてもらったので、きっと面白いことをするんだろうなと思っていたら、すべてがシュールすぎて、「何やってんだろう、私……」みたいな。
――(笑)。でも、2019年のデビューミニアルバム『くつひも』の収録曲「ヒーローになりたかった」と歌っていた方が、映像でヒーロースーツを着ているシーンは胸熱でしたよ。天才なんかじゃないし、ヒロインじゃなくヒーローになりたいと言っていた人が、ジーニアスでヒーローになってるっていう。
斉藤 応援してくださる皆さんもそこが刺さっていましたね。「朱夏はヒーローになったんだね」っていう言葉をたくさんいただいて。みんな、どこか安心してくれているようなコメントもあって。私はずっと、みんなから「僕たち私たちにとっては朱夏ちゃんはヒーローです。ひまわりです」って言ってもらっていたのですが、私は「いや、違うから。そんなことないからやめて」って答えていて。それが、ちゃんとイコールになったんですね。やっぱりツアーをやって、この仲間を誰が守るんだろう?と考えたときに、私しかいないなって思ったんですよね。たくさんの仲間が増えたし、私はライブに来てくれる仲間が大切なので、この仲間を傷つける人がいたら私が許さない。それってヒーローがやることだし、「あ、いつの間にか私ってヒーローになってたんだ」って気づいて。みんなはきっと、「いや、朱夏ちゃんはずっと僕たちのヒーローだったよ」って言ってくれると思うんですけど、自分では「ヒーローになりたかった」と言っていたところから、ヒーローになる準備ができたのかなと思っていて。まだ胸を張って「ヒーローです!」とは言えないかもしれないけれど、ヒーロー見習いみたいなところまではやっと階段を上れたんだなって思いますね。
――撮影で印象的な出来事はありましたか?
斉藤 バンドメンバーもいたので、ずっとわちゃわちゃギャーギャー騒ぎながらやっていたので、ライブ感強めだったなと思います。しかも、ワンマンライブ“くもり空の向こう側”が終わって1週間後くらいに撮ったんですよ。だから、ライブが終わったあとも、いつもなら寂しくなって、「早く会いたい」「次はいつ会えるかな?」という気持ちになるんですけど、この時は「すぐに会えるね」って言い合っていて。特に(ギターの)ケイちゃんはずっとキャッキャしていたし、みんな楽しそうにやってましたね。
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悔しさから生まれた「はじまりのサイン」
――カップリングに収録された「はじまりのサイン」は、“くもり空の向こう側”のアンコールの一番最後にプレイした曲でした。そもそもは同名ツアーに向けて作った楽曲でしたよね。
斉藤 最初に、ハヤシケイ(LIVE LAB.)さんに「ライブだけの楽曲を作りたい」という話をして。ライブのときだけしか聞けない曲ってすごく嬉しいじゃないですか。元々は、悔しさから生まれた楽曲だったので、久しぶりに私も歌詞のプロットを見返したんですけど、本当に悔しかったんだなと思いましたね。
――2021年12月のツアー“つぎはぎのステージ”の大阪公演がコロナの影響で中止になったことがきっかけで出来た曲でしたよね。
斉藤 そうですね。私的には約束を守れないことが申し訳ない気持ちでしたし、とにかく悔し過ぎたし、腹が立ったし、もう参っちゃっていたんですよね。横浜パシフィコ公演の前はどん底まで落ちてしまって。まだまだこの状況が続くのかなと思ったときに、絶望過ぎちゃって。やっぱり私はライブがないと生きていけないので、そういった感情から出来上がった楽曲だったんです。
――“それでも聞こえた 届いた それは君の声”というフレーズが印象的です。
斉藤 大阪公演をやるはずだった日に、私は家の中で1人でセットリストをやったんです。MCまで全部完璧にやったんですよ。開演の予定時間に合わせて、最初から最後まで全部やって。家で何してるんだろう?と思いましたけど(笑)、その時に、声やクラップが聞こえたり、ハンドサインが見えて。そこで“サイン”という言葉を大切にしたいなと思って。まだ声が出せない状況で、ハンドサインが私たちが今できるコミュニケーション方法の1つだなと思って。
――ライブのステージでお客さんに対して感じたことが書かれていますよね。
斉藤 それまでは声があるライブしか私は経験をしたことがなかったので、2021年のライブハウスツアー“真夏のハイウェイ”や“つぎはぎのステージ”では、どれだけハンドサインに助けられてるのかっていうことを感じて。私にとって、今、背中を押してくれるのは“キミ”のハンドサインだったんですね。だからこそ、テーマも「はじまりのサイン」にして、どうしたらこの楽曲をみんなに届けられるかっていうことを考えてて、でも、すごく悔しかったですね、今、思い返しても。
――今となっては、去年1年間のツアーとライブの思い出も入ってた曲になりましたよね。
斉藤 そうですね。そもそも昨年は、“はじまりのサイン”というライブツアーから始まって、“くもり空の向こう側”を「はじまりのサイン」で終わるっていうのはもう4月のタイミングで既に自分の中で決めてて。2022年は「はじまりのサイン」が大きなテーマだなと個人的には思っていましたし、ここでハンドサインを送り合うのは、そろそろおしまいにしたいなっていう願いもありました。今年がどうなるかは正直まだ何も決まってないですけど、終わればいいなっていう未来の自分の思いも込めてたので、初めて歌った「はじまりのサイン」から12月の「はじまりのサイン」はまったくもって別物の顔だったので、なんだか不思議でしたね。こんなに色んな表情を出してくれるんだと思ったし、これからのライブでもきっと色んな顔を見せてくれる楽曲になるだろうなと思います。
大切な“ズッ友”を想って書いた「最強じゃん」
――そして、もう1曲、「最強じゃん」ですが……。
斉藤 この楽曲の説明難しいんですね。「朱夏さんはギャルだったんですか?」から始まっちゃうので。
――(笑)。朱夏さんがギャルだったんですか?
斉藤 あははは。これは私の中3の時の一番の親友のことを書いててて。本当に中学時代のことをそのまま書いているんですけど、その子も破天荒ではあったけど、ギャルっていうわけではなくて。ただ、本当に週8くらい一緒にいる存在で、「ウチらはおばあちゃんになってもずっと仲良しでいようね」とか、「もし結婚できなかったら一緒に住もう」っていう約束をしていたし、中学時代は「やっぱマジでウチら最強じゃん」ってよく言っていたんですよ。根拠はないんですよ。ただ言いたいだけなんで(笑)。「ウチらってなんでもできるし、ヤバいよね」って言っていたことをまんま曲にしちゃいましたね。
――やっぱりギャルですよね。先の2曲は一人称が“僕ら”でしたけど、この曲は“ウチら”になってますし。
斉藤 プリクラにはよく“ズッ友”とか、“仲仔”とか、“2co1”とか、“いつめん”とか書くタイプではありましたね(笑)。ケイさんはギャルを知らないので、「どうしたらもっとギャルになりますか?」って聞かれて。“集合ねっ”に小さい“っ”を入れるとギャルみが増すので、歌詞を変えたりして。そうやって生まれた楽曲だったので、歌詞のプロットもスラスラって書けました。私の中学時代こんな感じですみたいな感じだったんですけど、友達曲がなかったっていうのが肝だったかなと思います。親友のことを歌にしたいなって気持ちから生まれた楽曲ですね。
――朱夏さんにとってその親友とはどんな存在ですか。
斉藤 2年間くらい連絡をとらなかった時期もあったんです。私が「ズームイン!!サタデー」でお天気お姉さんをやったタイミングで、携番からメッセージが来て。「元気?」から始まって、レコ発ワンマンライブで久しぶりに再会して。本当に2年間くらい連絡を取らなかったのに、会った瞬間に当時に戻るっていうのが、本当にすごいことだなと感じて。中学時代にプリクラによく“双子”って書いていたんですけど、本当に双子みたいな存在なんですよね。私にとってはずっといてほしいし、おばあちゃんになってもずっと一緒にいる存在なんだろうなって思っています。
――親友には聞かせました?
斉藤 まだ聞かせてないんですよ。でも、歌詞のプロットは送りました。「なんかめっちゃ懐かしいんだけど。ウチら、こういうことしてたよね」みたいな。彼女は今は看護師をしているんですけど、久しぶりに会うと、学生時代の話ばかりするんですよね。当時の先生の癖を思い出して、ケラケラ笑っていると思ったら、たまに今の仕事のことを話したり、急に真面目な顔をして、「本当に朱夏のことを尊敬してて」って言い出したり。「うん、ありがとうね。てへっ」みたいな感じがありますので、それがすべてグッと楽曲に入ったなというのもあるし、きっと聞いてくださる皆さんにもこういう友達がいると思うんですよ。くだらない話をたくさんして、毎回、同じ話で大爆笑したりとか。学生時代の「ああだったな」「こうだったな」っていうのを思い出して、少しでも肩の力が抜けたらいいなと思いますね。
――僕らは天才から始まって、ウチらは最強で締めるシングルが出来上がりました。
斉藤 あははは。2023年のスタートにふさわしいシングルだなと思いますね。“天才”っていう言葉をシングルのタイトルにするのは結構強気かもしれない。もちろん、アニメの世界観を引き連れての楽曲ではあるけれど、強くありたいという私自身の気持ちが反映されている楽曲ですし、本当にいいスタートが切れるシングルだなと思います。
――そして、4月にはライブハウスツアーも決定しています。
斉藤 本当にびっくりしてます、始まってしまうことに(笑)。応援してくださる皆さんから「早くライブで遊びたい」っていうメッセージがたくさんくるんですね。私、全部見ているので、みんなが持っててくれているんだなというのを実感していて。また昨年同様4月に開催するので、“はじまりのサイン”とはまた違うライブにしたいですし、サウジアラビアのイベントに出演した時は、みんなが無邪気に素直に、開放的に音楽を楽しんでくれたんです。その経験をしたからこそ、日本でもより自由で開放的なライブがしたい。自分自身もそうですが、来てくださる皆さんも開放してほしいんですよね。とにかく2022年はすごく強気でいこうと決めていましたが、2023年はそれ以上に強気にいきたいし、1人の人間として、1人の女性として、かっこ良く強くなれるような準備をしていきたいです。
●リリース情報
斉藤朱夏 4th Single
TVアニメ「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定」OPテーマ
「僕らはジーニアス」
発売中
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回生産限定盤(CD+BD)】
価格:¥2,500(税込)
特製スリーブケース仕様
品番:VVCL-2210~2211
【期間生産限定盤】
価格:¥2,000(税込)
品番:VVCL-2213 ~ VVCL-2214
【通常盤(CD)】
価格:¥1,650(税込)
品番:VVCL-2212
<CD>
01. 僕らはジーニアス
作詞・作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:黒須克彦
02. はじまりのサイン
作詞・作曲・編曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.)
03. 最強じゃん?
作詞・作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
04. 僕らはジーニアス -Instrumental-
05. はじまりのサイン -Instrumental-
06. 最強じゃん? -Instrumental-
<BD>
僕らはジーニアス -Music Video-
はじまりのサイン -Music Video-
【期間生産限定盤(CD+DVD)】
価格:¥2,000(税込)
アニメ絵柄描き下ろしジャケット
品番:VVCL-2213~2214
<CD>
僕らはジーニアス
はじまりのサイン
最強じゃん?
僕らはジーニアス -TV size-
僕らはジーニアス -Instrumental-
<DVD>
TVアニメ「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定」ノンクレジットオープニングムービー
●ライブ情報
朱演2023 LIVE HOUSE TOUR「かんちがいの冒険者」
4月22日(土)ダイアモンドホール(愛知)
OPEN 17:00 / START 18:00
4月23日(日)BIGCAT(大阪)
OPEN 17:00 / START 18:00
4月30日(日)CLUB CITTA’(神奈川)
1部 OPEN 14:00 / START 15:00
2部 OPEN 18:00 / START 19:00
チケット料金:立見 7,000円(税込/ドリンク代別)
※未就学児入場不可
※枚数制限 2枚(複数公演申し込み可能)
©bilibili ©Kaisei Enomoto, Syugao / KADOKAWA 2022
関連リンク
斉藤朱夏 オフィシャルサイト
http://www.saitoshuka.jp
斉藤朱夏 オフィシャルTwitter
https://twitter.com/Saito_Shuka
斉藤朱夏 オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCNZixANYOD3NyepS2lsAArg
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