ゲームやアニメといったメディアミックス展開している大型アイドルプロジェクト「IDOLY PRIDE」のライブイベント「LAWSON presents IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2023 “未来”」が、2月18日、神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催された。

昨年2月の「IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022“奇跡”」、同年7月の「IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022“約束”」、そして“リスアニ!LIVE SPECIAL EDITION アキヤスミ”を含む対外イベントへの出演などを通じて、輝きに溢れたステージの魅力を世に知らしめてきた「IDOLY PRIDE」。
その先で彼女たちが掴んだ“未来”は、またしても感動的なものとなった。2公演行われたうち、2部公演のレポートをお届けする。

TEXT BY 北野 創(リスアニ!)


待望の声出しライブで真価を発揮!月スト、サニピの輝き
今回の公演でまず特筆すべきポイントは、「IDOLY PRIDE」の単独ライブイベントとしては初めて、観客の声出しが解禁されたこと。2020年2月9日、“ワンダーフェスティバル2020[冬]”内の特設ステージで初イベントが行われたときは、星見プロダクションの新人アイドル10人(当時はサニーピースと月のテンペストのグループ分けもされていなかった)として歓声を浴びながらパフォーマンスしていたが、その後はご存じの通り、コロナ禍の影響でライブでの声出しが禁止される状況となった。アイドルにとってファンの声援は力の源――その意味において今回のライブは、「IDOLY PRIDE」のアイドルたちが初めてその真価を発揮できたステージと言えるだろう。

トップバッターを飾ったのは、橘 美來(長瀬琴乃役)、夏目ここな(伊吹 渚役)、宮沢小春(白石沙季役)、相川奏多(成宮すず役)、日向もか(早坂芽衣役)のミュージックレイン3期生からなる月のテンペスト。
オープニング映像を経て、ステージ上段にスポットが当たると、そこには背中を向けてポージングを取る5人の姿が。1曲目は「裏と表」。2月にリリースされたばかりのアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [未来]』にも収録された、スタイリッシュかつ熱のこもったアップナンバーだ。歌い出しを担当した相川から順に表を向き、曲間で橘が挨拶しつつ客席に檄を飛ばすと、客席は大歓声で応えて早速熱い盛り上がりを見せる。2番でメインステージに駆けおりた5人は、時おりハンドマイクを客席に向けるなど、声出しライブを心から楽しんでいることが伝わってくる。

続いて披露された「クリスマスには君と」は、幸せフィーリングたっぷりのクリスマスソングで、寸劇めいた要素の入った振付も込みで、季節外れながらも嬉しいプレゼントをファンに届ける。
特にラスサビ冒頭の“大好き”のフレーズでは、同パートの歌唱を担当した夏目ここなのウインクにハートを撃ち抜かれた人も多かったことだろう。

MCでは、日向が自身の演じる早坂芽衣のセリフ「芽衣だよ~」で観客とコール&レスポンスを楽しんだかと思えば、相川も成宮すずの印象的な語尾「ですわ」を用いたコール&レスポンスを行い、会場の一体感をさらに高める。そして月ストとしてはこの日最後の楽曲「Daytime Moon」を同楽曲のMVをバックに元気いっぱいに披露して、普段はクールな印象が強い月ストの眩しくたくましい一面を表現する。ラストのフレーズ“ここから未来へ”の箇所では5人が指を高く掲げて締め。本公演のタイトルにも繋がる粋な選曲だった。

月ストメンバーがステージを降壇すると、一ノ瀬怜(CV:結城萌子)と早坂芽衣(CV:日向もか)による期間限定ユニット、マカロンドーナツのトークパートがスタート。
芽衣いわく、この日の会場には怜の父親も観に来ているとのことで、怜が「怜ちゃんのお父さん、ペンライトを振ってくださーい!」とお願いすると、会場にいる自称・怜ちゃんのお父さんたちが一斉にペンライトを振る。「どれが怜ちゃんのお父さんかわかんないね~」という芽衣らしいマイペースな反応で会場を沸かせつつ、2人のユニット曲「ココロDistance」の披露へ。艶やかで大人っぽいメロディが印象的なエレクトロR&Bを、まるで姉妹のように息の合った動きとともにパフォーマンス。最後の“私を見て”のフレーズで目元に手を当てるポーズもバッチリ決まっていた。

そのマカロンドーナツと入れ替わりで、ステージに元気よく登場したのは白石姉妹を演じる、姉の沙季役の宮沢小春と妹の千紗役の高尾奏音。心が弾むようなリズムとメロディが楽しい姉妹デュエット曲「つながる心Binary」を、ときに指切りしたり、手を取り合ったりしながら、快活に歌っていく。
その歌声のみならず、振付の1つ1つの振る舞いまでもがとても愛らしく、姉妹の仲の良さに見ているこちらも思わず心がポカポカしてしまう。2人は歌唱後、ステージを去る際も手を繋いでいて、まさに“つながる心”を体現していた。

続いては、菅野真衣(川咲さくら役)、結城萌子(一ノ瀬 怜役)、佐々木奈緒(佐伯遙子役)、高尾奏音(白石千紗役)、首藤志奈(兵藤 雫役)によるサニーピースが登場。各キャラクターの印象的なセリフを抜粋したイントロダクションが会場の期待を高めると、「SUNNY PEACE for You and Me!」の麗しいイントロとともにメンバー5人がステージに現れ、同曲をパフォーマンスする。Aメロではそれぞれがサニピらしい明るく前向きな歌を紡いでいき、Bメロでそれらの歌声がハーモニーとなって眩しく重なり、サビでは“この指とまれ!”“You and Me!”の箇所でファンのコール&レスポンスも合わさって、その場にいるすべての人の心が1つに。まるで太陽のように揺るぎない輝きに満ちた、そのステージングはまさにトップアイドルを思わすものであり、ゲームのストーリーでは彼女たちが「BIG4」の一角になったのも頷ける風格ときらめきがそこにはあった。


それに続いて歌われたのが、TVアニメ版『IDOLY PRIDE』においてサニピのデビューステージで披露された楽曲「SUNNY PEACE HARMONY」という構成にもグッときた。1番ではアニメの同ステージのライブシーンがスクリーンに映され、夕焼けを背にして懸命にパフォーマンスするアニメのサニピと、キャストの姿がシンクロしていく。これまでリアルライブでは実現できなかった“サニピー!(サニピー!)”のコール&レスポンスが胸のドキドキをどこまでも高めていくなか、菅野も感極まったのか楽曲終盤で「ありがとう!みんな大好きー!」と呼びかけていたのが、とても印象的だった。

MCではファンとさらに団結するために、アニメでサニーピースが円陣を組むシーンを5人で再現。最後の掛け声「サニーピース!」を会場のみんなと一緒に声出しして一致団結したところで、ラストは「全力で絶対に盛り上がる曲といえば、あれしかないじゃないか!行くぞー!」(菅野)と前振りして「全力!絶対!!カウントダウン!!!」へ。カラフルなライトが華やかさを演出するなか、“スリー!ツー!ワン!サニピー!サニピー!”と高揚感ある掛け合いで会場にパワーを振りまき、出会えたことへの感謝と幸せの気持ちをみんなにお裾分けしてステージを終えた。


ⅢX初登場!そして大きな意味を持つ星見プロの新曲

ⅢX初登場!そして大きな意味を持つ星見プロの新曲
サニピのライブに会場の興奮が冷めやらぬなか、ここでまさかのサプライズが待ち構えていた。なんとアプリゲーム版「IDOLY PRIDE」に登場するアイドルグループ、ⅢX(スリーエックス)が、シークレットゲストとして姿を現したのだ。メンバーはLynn(fran役)、田中あいみ(kana役)、村川梨衣(miho役)の3名。それぞれのキャラクターのビジュアルそのままのイメージのステージ衣装に身を包んだ彼女たちは、アグレッシブなEDM「Top of the Tops」を堂々たる声と態度で披露し、オーディエンスを圧倒するとともに熱狂させる。彼女たちが「IDOLY PRIDE」のライブステージに立つのはこれが初めてのことだが、その佇まいと存在感はまさにⅢXそのもの。別格のオーラを放っている。

「Top of the Tops」の歌唱後、予想外の出来事に騒然となっている会場に向けて、改めて挨拶する3人。客席からの「回って!」という声に応えて、田中はステージを大きく周回するように回ってあざとく衣装をアピールしたり、村川はステージ中央で背中を向けて振り返るポーズを取ったりと、それぞれが演じるキャラクターの性格にも沿った行動や発言でファンを沸かせる。そしてもう1曲、ブロステップ調のゴツゴツしたダンスチューン「Bang Bang」を披露。ディーバ系の伸びやかで飛翔感のある美声を聴かせるLynn、小悪魔のように愛らしくも刺激的な歌声の田中、中~低音域を活かしたボーカルで凄みを表現する村川、それら三者三様のスタイルが混ざり合った圧巻のパフォーマンスに、ファンは万雷の拍手で応えていた。

その後、間を置かずに、赤崎こころ(CV:豊崎愛生)、奥山すみれ(CV:夏川椎菜)、白石千紗(CV:高尾奏音)、成宮すず(CV:相川奏多)、兵藤 雫(CV:首藤志奈)による新ユニット「ぱじゃパ!」のメンバーたちによるトークパートがスタート。こころの無茶振りを受けて、千紗がⅢXメンバー3人のモノマネを披露する一幕もありつつ、ワイワイと盛り上がりながら5人はステージへ。もこもこした素材のパジャマ風上着を羽織った彼女たちは、ゆるふわポエトリーラップ入りのフューチャーベース「パジャマパーティー」で、会場を瞬く間にかわいらしいガールズトーク空間に塗り替える。「ありのままのかわいさ」をコンセプトに結成されたという同ユニットらしいステージングで観客を魅了した。

それに続いてステージに1人で登場したのは、菅野真衣。先ほどのサニピのときとは別の衣装を纏った彼女は、たむらぱんこと田村歩美が書き下ろした川咲さくらのソロ曲「もういいよ」を歌唱する。開放感に満ちたアップテンポな曲調とは裏腹に、自分の中にいるもう1人の自分と対話するような、内省的な歌詞が特徴的な本楽曲。それは「胸の鼓動」に従ってアイドルの道を選び、ここまで歩んできた川咲さくら自身の境遇に重なるわけだが、その「もう1人の自分」との決別を、力強く、晴れやかに歌う菅野の歌唱力と表現力には目を見張るものがあった。特にDメロでの“ぐっばい”という言葉を繰り返しエモーショナルに歌い上げたあとの、しばしの無音と沈黙、そしてそこから希望に満ちたラスサビを一気に駆け上がっていく展開をニュアンスたっぷりに表現する箇所は素晴らしく、最後の“もういいよ”というフレーズでの優しく語りかけるような歌い口と飛び切りの笑顔もまた、川咲さくらの新しい一歩を示すかのようで感動的だった。

そしてライブ本編のトリを飾ったのは、雨宮 天(天動瑠依役)、麻倉もも(鈴村 優役)、夏川椎菜(奥山すみれ役)によるTRINITYAiLE。白色を基調とした揃いの衣装に身を包んだ彼女たちは、TVアニメ版『IDOLY PRIDE』第10話でも披露された「les plumes」でライブをスタート。彼女たちの楽曲には欠かせないkz(livetune)製のキラキラしたシンセサウンドと鼓動を高めるビート、そして麗しく重なる三声の煌めきが、観る者すべてを最高の場所に連れて行ってくれる。

ラストは華麗にポージングして締めると、MCではTRINITYAiLEの通称とトリをかけて「“トリ”エルですね」(雨宮)と、高尾奏音やこの日は出演できなかった井川 葵役の高垣彩陽のお株を奪うダジャレで場を沸かせつつ(夏川いわく「横浜が揺れたね」とのこと)、最後の曲へ。この日がライブ初披露となる、初音ミクとのコラボレーションでも話題となった「Magical Melody」を、最新アルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [未来]』にも収録されたTRINITYAILEバージョンで披露。スクリーンに投影された映像が未来的な空間を演出するなか、昂揚感に満ちたエレクトロハウスと透明感のある歌声が、会場の気持ちを一体にしていく。ステップを踏みながらフォーメーションを移動する、TRINITYAiLEらしい流麗かつ気品に溢れたパフォーマンスとともに、ライブ本編を見事に締め括ってみせた。

アンコールは、星見プロダクションの10人のアイドルたちによるトークパートからスタート。「私たちがこの曲をアンコールで歌うなんて……震える」(兵藤 雫)、「原作の本、お姉ちゃんが好きで、よく読み聞かせてくれたんだ」(長瀬琴乃)といった会話の内容から推測するに、何やら琴乃の姉で伝説のアイドル・長瀬麻奈(CV:神田沙也加)に関わる楽曲のようだが……。最後に10人で掛け声をしてトークパートが終了すると、ステージには星見プロダクションのキャスト10名が横並びで登場。そして本邦初公開の新曲「Gemstones」が披露される。バラード風のしっとりとした曲調に乗せて歌われるのは、誰かの借り物ではない“自分の色”を見つけることの大切さと、それぞれの個性を尊重し合いながら夢を目指して共に歩んでいく連帯感。メンバー各々が自身のキャラクターカラーの衣装を着ていること、サビで10人の声が重なることが、その歌詞の意味をさらに強調してくれる。またサビで10人が手の指でステップを駆け上がっていくような仕草を行うのも印象的。これはおそらく長瀬麻奈の楽曲「First Step」のサビの振付をオマージュしたものだったのではないだろうか。その後のMCによると、この楽曲はやはり長瀬麻奈にまつわる内容になっており、5月24日にリリースされる星見プロダクションのニューシングルに収録されるという。その全貌が明らかになるのを楽しみに待ちたいところだ。

そしてアンコールの最後に歌われたのは、TVアニメ版『IDOLY PRIDE』最終話のEDテーマでもあった星見プロダクションの楽曲「Pray for you」。例えどんなに辛いことがあったとしても、その道が険しかったとしても、同じ夢を目指す仲間と共に歩んでいきたい――そのかけがえのない、祈りにも似た想いが、10声の美しいハーモニーとなって昇華されていく。十人十色、それぞれが“私なりのプライド”をしっかりと魅せて、この日のライブ“未来”は幕を閉じた。だが、当然のことながら彼女たちの物語はまだ完結していない。先述のニューシングル発売に加えて、7月15日(土)・16日(日)には幕張メッセ イベントホールで2デイズライブの開催も決定している。そう、“新しい物語のページ”は、すでに開かれようとしているのだ。これからも立ち止まることなく進み続ける、彼女たちアイドルのプライドを見届けていきたい。

●ライブ情報
新規ライブ決定!
2023年7月15日(土)・16日(日)
幕張メッセ イベントホール

関連リンク
『IDOLY PRIDE』公式サイト
https://idolypride.jp/

『IDOLY PRIDE』公式Twitter
https://twitter.com/idolypride

『IDOLY PRIDE』公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCOuzrlRFF7aSkooORw0XWRA