原作・内藤騎之介、小説&コミックスシリーズが累計300万部を突破しているスローライフ・農業ファンタジーアニメ『異世界のんびり農家』。エンディングをVTuber・緋月ゆいが「Feel the winds」で優しく彩っている。
緋月は、Vtuber・渋谷ハル、プロゲーミングチーム・Crazy Raccoon、歌手のまふまふ、そらるがプロデュースするVTuber事務所「Neo-Porte(ネオポルテ)」の1期生。VTuberデビュー以降、「歌ってみた動画」を投稿したり、トーク・ゲーム配信をしたりと積極的に活動してきた。そんな彼女にとってアニメ主題歌を歌うこと、CDをリリースすることは夢の1つだった。そして『異世界のんびり農家』のEDテーマ、さらに2月22日(水)には同作をタイトルとしたメジャーデビューシングルがリリースと、圧倒的な歌唱力と表現力でそのチャンスを掴むこととなる。今回のインタビューでは、緋月ゆいが夢を叶えるまでの道のりを辿った。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
初配信は「緊張がエグかった」
──今日はさかのぼってお話をお伺いできればと思うのですが、まずはVtuberを志したきっかけ、Neo-Porteのオーディションに応募されたきっかけはなんだったのでしょうか。
緋月ゆい 元々配信者さんたちの活動を見ていたことが大きいです。いつか自分もやってみたいな、って。人と話すこと、誰かを笑わせることも好きだったので、自分にもできたらいいなとNeo-Porteに応募しました。それと歌うことも大好きで。Neo-Porteの応募要項に「音楽活動も応援します」といったことが書いてあったので、上手くマッチしたら良いなという思いでした。
──トークの配信と音楽、どちらもお好きだったのですね。
緋月 そうですね。主軸は歌にしたいなとは思っていたのですが、歌だけにするつもりもないし、歌をおろそかにして配信だけにするつもりもなくて。
──2022年3月の初配信のことって覚えていらっしゃいますか?
緋月 緊張がエグかったです。もともとプレッシャーに弱いんです。だから震えていました(苦笑)。直前にツイートをしたことを覚えています。「誰か緊張しない方法を教えて!」って。
──何か良い案はありました?
緋月 何をやってもだめでした(笑)。
──そればかりは無理もないですよね。
緋月 初配信でいきなり歌ったので余計に緊張してしまって。実は初配信が終わったあと、一度も歌の部分を聴き返していないんです。緊張しすぎて声が震えて裏返ってしまったこともあり、聴きたくなくて(苦笑)。
──初配信でいきなりの生歌ってすごい展開ですよね。
緋月 面白いかなと思い、自分で考えた流れではあったんですけど「なんでこうしたんだろう」って(笑)。過去の自分を恨みました。
──Neo-Porteでデビューが決まったときはどのようなお気持ちでしたか?
緋月 『異世界のんびり農家』のタイアップが決まったときもそうだったんですけど、しばらく実感がなかったんです。エンディングロールに自分の名前が出て「あ、いる!」と(笑)。だから1期生としてデビューが決まったときもしばらく実感がなく、皆さんのコメントを見て「あれ?みんな私に向けてこんなにコメントしているんだ……」って。俯瞰して見ている状態でした。
──もう1人の緋月さんが頭の上のほうにいる状態ですね(笑)。
緋月 そうです(笑)。一週間くらいポワポワとしていました。
──逆に実感したきっかけってなんだったんですか?
緋月 一週間経ったあとに「やばい、1期生じゃん!」って(笑)。初配信をしてからはゲームの大会にも参加していたので、怒涛の日々で。それが終わって「あ、配信、これから頑張っていくんだな」って。でも1期生なので……0期生の先輩方はいるんですが、ちゃんとデビューして、っていうのは事務所の中では初めてだったので、自分も含め1期生みんなで事務所を盛り上げられるように頑張らなきゃなって想いはありました。
──そういったお話は1期生(或世イヌ、凪夢夛、夜絆ニウ、水無瀬、天帝フォルテ)の皆さんとされるんですか?
緋月 いや、自分が勝手に思っているというか(笑)。話すことはあるんですけど、みんなで集まって「よし、頑張ろうな!」ってことはなくて。
──それぞれの中に想いがあるのかもしれませんね。1期生というのは、どの場所においても特別な想いがあるでしょうから。
緋月 そうですね。最近2期生もデビューしたので、より頑張らなきゃなという気持ちです。慕われるような存在になれたらいいな、ならないとなって。
音楽に親しんだ幼少期を経てロックに目覚める
──ではさらにさかのぼってパーソナルなお話を聞かせてください。
緋月 父がずっと音楽をやっていて。バンドでベースをやっていたんですよ。
──プロとしてですか?
緋月 いえ、趣味で音楽をやっていたんです。だから自宅にベースもアコギも(エレキ)ギターもあって。で、母はピアノを弾いていて。それで私も習い事でピアノを始めました。そのあと、アニメ『けいおん!』に出会い、「バンドって良いな」と思って。父のギターを借りて弾いてみて「やりたい!」と。それで自分のギターを買ってもらい、そこから「ギターボーカルかっけえ!」ってなったんです。歌うのって楽しい!と思い、友だちと女の子だけでバンドを組んで……。
──お父様、喜ばれていたのではないですか?
緋月 めちゃくちゃ喜んでいました(笑)。
──そこに至るまでは『けいおん!』の存在が大きかったんですね。
緋月 大きかったです!ガールズバンドが盛り上がっていた時期で、それに乗っかったところもありました(笑)。「かっこいー!」って。ミーハーです(笑)。
──具体的にどのバンドに興味を持たれていたんですか?
緋月 ええと、SCANDALさんだったり、かっこいいなぁって。ONE OK ROCKさんもよく聴いていました。
──ロックがお好きだったんですね。
緋月 そうです。だから歌い方も当時は全然違いました。
──今の歌声になるまではどんな経緯があったのでしょうか。
緋月 その後、バンドを辞めたんですよね。でも何か歌いたいなと思って、家で1人で趣味の範囲でピアノで弾き語りしていた時期があったんです。
──バンドはどれくらい続けられていたんですか?
緋月 4、5年くらいやっていました。オリジナルの曲を作って、みんなで音を合わせて提案して。青春!という感じで楽しかったです。
──なるほど。バンドの良さ、クラシカルな音楽の良さ、どちらも知っているからこそ、今の歌声に辿り着かれたんですね。ちなみにピアノはどれくらい続けられていたんですか?
緋月 10年くらい習っていたんですが……途中から通わなくなり、フェードアウトしてしまって……。
──私も同じタイプです(笑)。10年くらい習っていて、ロックを好きになって、その当時はクラシックに物足りなさを感じるようになってしまい……。
緋月 まさにそうです!(笑)それで自分を弾きたい曲を弾くようになったのですが、(ロックな曲の)伴奏とクラシックピアノの演奏とはまた違うじゃないですか。なので、最初は目コピから入って。YouTubeで弾いている人たちの指を見て「あ、こう弾けばいいのか」「これで押さえるとこの音になるんだ」と覚えてから耳コピをしていきました。
──ギターも耳コピで覚えられたんですか?
緋月 ギターもそうですね。譜面を読むのがめんどくさくて(苦笑)。
──(笑)。基礎はお父様が教えてくれたんですか?
緋月 そうですね。タブ譜の読み方などは父が教えてくれました。バンドメンバーと初めてスタジオに入った日も父が着いてきてくれていたんですよ。一通りの楽器ができるので「ドラムはこうだよ」とメンバーに教えて、帰宅して(笑)。だから最初のコーチは緋月家のお父さんです(笑)。
──お父様すごい。皆さん初心者だったということですよね?
緋月 そうです。だから自宅に帰ったあと、それぞれめちゃくちゃ練習してくれていていました。
──お父様は今回のタイアップが決まったとき、相当喜ばれたのではないでしょうか。
緋月 「え?嘘?」って感じでした(笑)。『異世界のんびり農家』も追ってるらしくて。母もるんるんしながら、放送の一週間くらい前から予約していました(笑)。
──緋月さんの最初のファンがご家族なのかもしれないですね(笑)。ところで、先ほど『けいおん!』のお話がありましたが、その後ハマったアニメはありますか?
緋月 最近だと『ぼっち・ざ・ろっく!』です。当時の『けいおん!』の記憶が蘇って、ああ、バンドやりたい!って思いました。
──いつか『ぼっち・ざ・ろっく!』のカバーも聴いてみたいです。
緋月 実はリスナーさんからも今そのリクエストが一番多いです(笑)。
優しくて柔らかい曲 最初は不安も。
──では改めて『異世界のんびり農家』のEDテーマが決まったときのお気持ちを聞かせてください。冒頭に「遅れて感動がやってきた」といったお話がありましたが、最初はどんな反応だったんですか?
緋月 「え?え?見間違いかな」と二、三度見しました(笑)。アニメが好きなので、EDテーマを歌うのは夢の1つでしたし、歌のお仕事をいただくこともデビューしてからの夢だったので……「こんなに早く、夢が叶って良いのかな?」って。それと同時に、私で良いのかなとも思いました。実力不足だとも思っているので、逆に受けてもいいのかなという気持ちもありました。もちろん、やりたいから引き受けさせていただくわけですが、そういった複雑な気持ちもありました。
──原作を読んだときはどのような印象がありましたか?
緋月 キャラクターがみんなかわいくて!仲間がどんどん増えていくので、最初は名前を覚えられなかったんです(笑)。スマホにメモ帳を作って、名前を全部書いていました。久しぶりに出てくるキャラクターがいたらメモと照らし合わせて(笑)。その一方、街が発展していく様子を見守るのも楽しかったです。とにかくザブトンがかわいい!
──かわいいですよね(笑)。
緋月 ザブトンがアニメーションで動くのを一番楽しみにしていました。いつも同時視聴で見ているんですけど、アニメに出てきたときは発狂しました(笑)。
──先ほど街の発展を見守るのが楽しいとおっしゃっていましたが、どんどんと仲間が増え、さらに畑も広がっていき……傍観者的な立場で見られるのが面白いなと。
緋月 そうなんですよね。神視点みたいな感じで見守っています。
──では「Feel the winds」を聴いたときの印象はいかがでしたか?
緋月 仮歌を聴いたときに、優しくて柔らかい曲だなと思いました。物語の世界観とピッタリだなって。最初は「(自分の声に)合うかな」という心配が少しありました。
──内なるロック魂があるから……。
緋月 そうです、「ロックが出ちゃわないかな」と心配になってしまって(笑)。でも曲に合わせて柔らかく歌いたいなと思い、ロックを封じよう、と。
──制作サイドからリクエストはあったんでしょうか。
緋月 収録しながら「こういう感じが良いです」というディレクションを随時いただいていました。最初は原キーっぽい感じというか、内なるロックが溢れ出てしまって(笑)。「もう少し柔らかくいきましょう」というお声をいただいたので、抑えつつ、情景を思い浮かべながら歌いました。
それとレコーディングですごく覚えているのが……配信でも話したのですが、レコーディングブース内で収録中、ノリノリで歌っていて(笑)。その様子を(コントロールルームにいる)皆さんがカメラを通じて見ていたらしくて「腕振ってましたね」的なことを言われて、「え!?どこで見てたんですか?」って(笑)。それが恥ずかしくて、そのあとは動かないようにしていました。
──でもノリたくなる気持ちはわかります。それくらい楽しかったんですね。
緋月 楽しかったです!最初は緊張していましたけど、何回か通しで歌って緊張をほぐしてもらったので、そこからはもう、ひたすらに楽しかったです。トークバックで「良かったよ!」って声をいただけるので、それが嬉しくて。気持ち良く歌わせていただきました。
──フィードバックがあると嬉しいですよね。それこそ、リスナーの皆さんからも「良かったよ!」って声をいただくことが多いと思うんですが、そうした反響をどう受け止められているんでしょうか?
緋月 ただただ嬉しいです。なかには「嬉しくて泣きました」という声をいただくこともあって。「私じゃないのに泣いてくれるの?」って……もっと喜ばせたいから活動をもっともっと頑張ろうという気持ちにさせられます。
──また次のタイアップが決まったら、それこそ……。
緋月 大号泣だと思います(笑)。1週間くらい尾を引いてしまうかもしれない。
──緋月さんが先ほど夢が叶った、とおっしゃってましたけど、ファンの方の夢でもあるのかもしれないですね。
緋月 そうですね。初配信から見てくださっている方が「見守ってきて良かったです」と言ってくれて。私も「ああ、良かったな」って。
──歌詞にちなんで、緋月さんの“変わらぬ大切な場所”をお伺いしたいなと思ったのですが、それはやはり……。
緋月 この流れでお話すると、配信かなと(笑)。
──その流れを期待していました、すみません(笑)。
緋月 でもそれは本当のことです!配信をつけると、毎回来てくださる方がいて、どんなことでも応援してくれる方がいて。今回のように夢を叶えたら一緒に喜んでくれる。配信という場所は、自分にとって大切な場です。それと、自分の部屋ですかね。部屋から配信もできるし、ゲームもできるし、睡眠も取れるので(笑)。
──大切です(笑)。では『異世界のんびり農家』の死の森に緋月さんが転移したとしたらやってみたいことはありますか?
緋月 万能農具がその名の通りめちゃくちゃ万能じゃないですか。疲れはしないですけど、動かなきゃいけないから、そうすると労働が結構多いんですよね。そうと考えると、私は指パッチンで、全部良い感じにならないかなって(笑)。
──指パッチンで畑ができたり、調味料ができたり(笑)。
緋月 動物もパンっ!と加工される、みたいな(笑)。例えば豚がハムに一瞬でなったらいいなぁ。ヒラクさんはめちゃくちゃ頑張って稲も作っていましたけど、それも指パッチンで一気に米に!「万能パッチン」能力がほしいですね。
“楽しい”が源――いつかはライブも!
──今日は1期生にまつわるお話がありました。Vtuberになりたい、という方が増えていますが、これから活動を始める方に、先輩として何かアドバイスをするとしたらいかがでしょうか。
緋月 自分も日々活動していて思うことなんですが……自分が楽しんで配信することが大切だなと。自分が楽しいことをやる。結局“悲しい”も“楽しい”も見ている方には伝わるんですよね。
──声の情報量って多いですもんね。
緋月 そうなんです。だから楽しいものを届ける、楽しいを共有する、という気持ちで配信をしています。やりたくないことを頑張ることも大事だとは思うんですけど、自分の“楽しい”を信じてやったら良いんじゃないかなって。……今この言葉、自分に対しても言ってます(笑)。「楽しそうに歌うね」ってよく言ってもらうんです。実際楽しんで歌っていますが、その気持ちが届いているんだなって実感して、より嬉しい気持ちになります。
──次に挑戦したいことはありますか?
緋月 CDを出すことが夢の1つだったので、こんなにも早く叶うと思わなかったのですが……次はライブができたら良いなって。今回の曲を披露できる場がいつかできたら素敵だなと思っています。でもみんな、大号泣してしまうかも(笑)。
──すると思います(笑)。
緋月 CD発売が決まった時も大号泣してくれていたので、ライブとなったら立てなくなってしまうかもしれません(笑)。音楽方面ではライブが次の夢ですが、もう1つの目標としては、配信者としてもっと活躍することです。みんなにNeo-Porteを知ってもらいたいなって思っています。
──夢がどんどん叶っている状況で。その景色を見るときは意外と早くくるかもしれませんね。
緋月 ファンの皆さんにも、スタッフの皆様にも感謝しかないです。Neo-Porte1期生として今後も頑張りたいなと思っています。
●リリース情報
TV 異世界のんびり農家 ED
緋月ゆい
「Feel the winds」
2023年2月22日(水)リリース
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
価格:¥1,430(税込)
品番:PCCG-70508
≪収録内容≫
01. Feel the Winds
作詞・作曲・編曲:鈴木裕明
02. 閃響
作詞:庄司夏葵・藤原優樹、作曲・編曲:庄司夏葵
03. Feel the Winds[instrumental]
作詞・作曲・編曲:鈴木裕明
04. 閃響[instrumental]
作詞:庄司夏葵・藤原優樹、作曲・編曲:庄司夏葵
関連リンク
緋月ゆい 公式Twitter
https://twitter.com/yui_hizuki
緋月ゆい 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCuk7vapXKckSw6yCGGDspDg
緋月は、Vtuber・渋谷ハル、プロゲーミングチーム・Crazy Raccoon、歌手のまふまふ、そらるがプロデュースするVTuber事務所「Neo-Porte(ネオポルテ)」の1期生。VTuberデビュー以降、「歌ってみた動画」を投稿したり、トーク・ゲーム配信をしたりと積極的に活動してきた。そんな彼女にとってアニメ主題歌を歌うこと、CDをリリースすることは夢の1つだった。そして『異世界のんびり農家』のEDテーマ、さらに2月22日(水)には同作をタイトルとしたメジャーデビューシングルがリリースと、圧倒的な歌唱力と表現力でそのチャンスを掴むこととなる。今回のインタビューでは、緋月ゆいが夢を叶えるまでの道のりを辿った。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
初配信は「緊張がエグかった」
──今日はさかのぼってお話をお伺いできればと思うのですが、まずはVtuberを志したきっかけ、Neo-Porteのオーディションに応募されたきっかけはなんだったのでしょうか。
緋月ゆい 元々配信者さんたちの活動を見ていたことが大きいです。いつか自分もやってみたいな、って。人と話すこと、誰かを笑わせることも好きだったので、自分にもできたらいいなとNeo-Porteに応募しました。それと歌うことも大好きで。Neo-Porteの応募要項に「音楽活動も応援します」といったことが書いてあったので、上手くマッチしたら良いなという思いでした。
──トークの配信と音楽、どちらもお好きだったのですね。
緋月 そうですね。主軸は歌にしたいなとは思っていたのですが、歌だけにするつもりもないし、歌をおろそかにして配信だけにするつもりもなくて。
──2022年3月の初配信のことって覚えていらっしゃいますか?
緋月 緊張がエグかったです。もともとプレッシャーに弱いんです。だから震えていました(苦笑)。直前にツイートをしたことを覚えています。「誰か緊張しない方法を教えて!」って。
──何か良い案はありました?
緋月 何をやってもだめでした(笑)。
──そればかりは無理もないですよね。
緋月 初配信でいきなり歌ったので余計に緊張してしまって。実は初配信が終わったあと、一度も歌の部分を聴き返していないんです。緊張しすぎて声が震えて裏返ってしまったこともあり、聴きたくなくて(苦笑)。
大変なものを皆さんに聴かせてしまいました。でも歌ったことで吹っ切れて、自己紹介パートに入ってからはすんなり話せました。
──初配信でいきなりの生歌ってすごい展開ですよね。
緋月 面白いかなと思い、自分で考えた流れではあったんですけど「なんでこうしたんだろう」って(笑)。過去の自分を恨みました。
──Neo-Porteでデビューが決まったときはどのようなお気持ちでしたか?
緋月 『異世界のんびり農家』のタイアップが決まったときもそうだったんですけど、しばらく実感がなかったんです。エンディングロールに自分の名前が出て「あ、いる!」と(笑)。だから1期生としてデビューが決まったときもしばらく実感がなく、皆さんのコメントを見て「あれ?みんな私に向けてこんなにコメントしているんだ……」って。俯瞰して見ている状態でした。
──もう1人の緋月さんが頭の上のほうにいる状態ですね(笑)。
緋月 そうです(笑)。一週間くらいポワポワとしていました。
──逆に実感したきっかけってなんだったんですか?
緋月 一週間経ったあとに「やばい、1期生じゃん!」って(笑)。初配信をしてからはゲームの大会にも参加していたので、怒涛の日々で。それが終わって「あ、配信、これから頑張っていくんだな」って。でも1期生なので……0期生の先輩方はいるんですが、ちゃんとデビューして、っていうのは事務所の中では初めてだったので、自分も含め1期生みんなで事務所を盛り上げられるように頑張らなきゃなって想いはありました。
──そういったお話は1期生(或世イヌ、凪夢夛、夜絆ニウ、水無瀬、天帝フォルテ)の皆さんとされるんですか?
緋月 いや、自分が勝手に思っているというか(笑)。話すことはあるんですけど、みんなで集まって「よし、頑張ろうな!」ってことはなくて。
──それぞれの中に想いがあるのかもしれませんね。1期生というのは、どの場所においても特別な想いがあるでしょうから。
緋月 そうですね。最近2期生もデビューしたので、より頑張らなきゃなという気持ちです。慕われるような存在になれたらいいな、ならないとなって。
音楽に親しんだ幼少期を経てロックに目覚める
──ではさらにさかのぼってパーソナルなお話を聞かせてください。
音楽を好きになったきっかけはなんだったのでしょうか。
緋月 父がずっと音楽をやっていて。バンドでベースをやっていたんですよ。
──プロとしてですか?
緋月 いえ、趣味で音楽をやっていたんです。だから自宅にベースもアコギも(エレキ)ギターもあって。で、母はピアノを弾いていて。それで私も習い事でピアノを始めました。そのあと、アニメ『けいおん!』に出会い、「バンドって良いな」と思って。父のギターを借りて弾いてみて「やりたい!」と。それで自分のギターを買ってもらい、そこから「ギターボーカルかっけえ!」ってなったんです。歌うのって楽しい!と思い、友だちと女の子だけでバンドを組んで……。
──お父様、喜ばれていたのではないですか?
緋月 めちゃくちゃ喜んでいました(笑)。
──そこに至るまでは『けいおん!』の存在が大きかったんですね。
緋月 大きかったです!ガールズバンドが盛り上がっていた時期で、それに乗っかったところもありました(笑)。「かっこいー!」って。ミーハーです(笑)。
──具体的にどのバンドに興味を持たれていたんですか?
緋月 ええと、SCANDALさんだったり、かっこいいなぁって。ONE OK ROCKさんもよく聴いていました。
──ロックがお好きだったんですね。
緋月 そうです。だから歌い方も当時は全然違いました。
──今の歌声になるまではどんな経緯があったのでしょうか。
緋月 その後、バンドを辞めたんですよね。でも何か歌いたいなと思って、家で1人で趣味の範囲でピアノで弾き語りしていた時期があったんです。
ピアノに合う歌い方はどんなものだろう?と思って、色々なアーティストさんの曲を聴いたり、歌い方を変えてみたり、自分なりに模索していって今の歌声になりました。
──バンドはどれくらい続けられていたんですか?
緋月 4、5年くらいやっていました。オリジナルの曲を作って、みんなで音を合わせて提案して。青春!という感じで楽しかったです。
──なるほど。バンドの良さ、クラシカルな音楽の良さ、どちらも知っているからこそ、今の歌声に辿り着かれたんですね。ちなみにピアノはどれくらい続けられていたんですか?
緋月 10年くらい習っていたんですが……途中から通わなくなり、フェードアウトしてしまって……。
──私も同じタイプです(笑)。10年くらい習っていて、ロックを好きになって、その当時はクラシックに物足りなさを感じるようになってしまい……。
緋月 まさにそうです!(笑)それで自分を弾きたい曲を弾くようになったのですが、(ロックな曲の)伴奏とクラシックピアノの演奏とはまた違うじゃないですか。なので、最初は目コピから入って。YouTubeで弾いている人たちの指を見て「あ、こう弾けばいいのか」「これで押さえるとこの音になるんだ」と覚えてから耳コピをしていきました。
──ギターも耳コピで覚えられたんですか?
緋月 ギターもそうですね。譜面を読むのがめんどくさくて(苦笑)。
──(笑)。基礎はお父様が教えてくれたんですか?
緋月 そうですね。タブ譜の読み方などは父が教えてくれました。バンドメンバーと初めてスタジオに入った日も父が着いてきてくれていたんですよ。一通りの楽器ができるので「ドラムはこうだよ」とメンバーに教えて、帰宅して(笑)。だから最初のコーチは緋月家のお父さんです(笑)。
──お父様すごい。皆さん初心者だったということですよね?
緋月 そうです。だから自宅に帰ったあと、それぞれめちゃくちゃ練習してくれていていました。
──お父様は今回のタイアップが決まったとき、相当喜ばれたのではないでしょうか。
緋月 「え?嘘?」って感じでした(笑)。『異世界のんびり農家』も追ってるらしくて。母もるんるんしながら、放送の一週間くらい前から予約していました(笑)。
──緋月さんの最初のファンがご家族なのかもしれないですね(笑)。ところで、先ほど『けいおん!』のお話がありましたが、その後ハマったアニメはありますか?
緋月 最近だと『ぼっち・ざ・ろっく!』です。当時の『けいおん!』の記憶が蘇って、ああ、バンドやりたい!って思いました。
──いつか『ぼっち・ざ・ろっく!』のカバーも聴いてみたいです。
緋月 実はリスナーさんからも今そのリクエストが一番多いです(笑)。
優しくて柔らかい曲 最初は不安も。
──では改めて『異世界のんびり農家』のEDテーマが決まったときのお気持ちを聞かせてください。冒頭に「遅れて感動がやってきた」といったお話がありましたが、最初はどんな反応だったんですか?
緋月 「え?え?見間違いかな」と二、三度見しました(笑)。アニメが好きなので、EDテーマを歌うのは夢の1つでしたし、歌のお仕事をいただくこともデビューしてからの夢だったので……「こんなに早く、夢が叶って良いのかな?」って。それと同時に、私で良いのかなとも思いました。実力不足だとも思っているので、逆に受けてもいいのかなという気持ちもありました。もちろん、やりたいから引き受けさせていただくわけですが、そういった複雑な気持ちもありました。
──原作を読んだときはどのような印象がありましたか?
緋月 キャラクターがみんなかわいくて!仲間がどんどん増えていくので、最初は名前を覚えられなかったんです(笑)。スマホにメモ帳を作って、名前を全部書いていました。久しぶりに出てくるキャラクターがいたらメモと照らし合わせて(笑)。その一方、街が発展していく様子を見守るのも楽しかったです。とにかくザブトンがかわいい!
──かわいいですよね(笑)。
緋月 ザブトンがアニメーションで動くのを一番楽しみにしていました。いつも同時視聴で見ているんですけど、アニメに出てきたときは発狂しました(笑)。
──先ほど街の発展を見守るのが楽しいとおっしゃっていましたが、どんどんと仲間が増え、さらに畑も広がっていき……傍観者的な立場で見られるのが面白いなと。
緋月 そうなんですよね。神視点みたいな感じで見守っています。
──では「Feel the winds」を聴いたときの印象はいかがでしたか?
緋月 仮歌を聴いたときに、優しくて柔らかい曲だなと思いました。物語の世界観とピッタリだなって。最初は「(自分の声に)合うかな」という心配が少しありました。
──内なるロック魂があるから……。
緋月 そうです、「ロックが出ちゃわないかな」と心配になってしまって(笑)。でも曲に合わせて柔らかく歌いたいなと思い、ロックを封じよう、と。
──制作サイドからリクエストはあったんでしょうか。
緋月 収録しながら「こういう感じが良いです」というディレクションを随時いただいていました。最初は原キーっぽい感じというか、内なるロックが溢れ出てしまって(笑)。「もう少し柔らかくいきましょう」というお声をいただいたので、抑えつつ、情景を思い浮かべながら歌いました。
それとレコーディングですごく覚えているのが……配信でも話したのですが、レコーディングブース内で収録中、ノリノリで歌っていて(笑)。その様子を(コントロールルームにいる)皆さんがカメラを通じて見ていたらしくて「腕振ってましたね」的なことを言われて、「え!?どこで見てたんですか?」って(笑)。それが恥ずかしくて、そのあとは動かないようにしていました。
──でもノリたくなる気持ちはわかります。それくらい楽しかったんですね。
緋月 楽しかったです!最初は緊張していましたけど、何回か通しで歌って緊張をほぐしてもらったので、そこからはもう、ひたすらに楽しかったです。トークバックで「良かったよ!」って声をいただけるので、それが嬉しくて。気持ち良く歌わせていただきました。
──フィードバックがあると嬉しいですよね。それこそ、リスナーの皆さんからも「良かったよ!」って声をいただくことが多いと思うんですが、そうした反響をどう受け止められているんでしょうか?
緋月 ただただ嬉しいです。なかには「嬉しくて泣きました」という声をいただくこともあって。「私じゃないのに泣いてくれるの?」って……もっと喜ばせたいから活動をもっともっと頑張ろうという気持ちにさせられます。
──また次のタイアップが決まったら、それこそ……。
緋月 大号泣だと思います(笑)。1週間くらい尾を引いてしまうかもしれない。
──緋月さんが先ほど夢が叶った、とおっしゃってましたけど、ファンの方の夢でもあるのかもしれないですね。
緋月 そうですね。初配信から見てくださっている方が「見守ってきて良かったです」と言ってくれて。私も「ああ、良かったな」って。
──歌詞にちなんで、緋月さんの“変わらぬ大切な場所”をお伺いしたいなと思ったのですが、それはやはり……。
緋月 この流れでお話すると、配信かなと(笑)。
──その流れを期待していました、すみません(笑)。
緋月 でもそれは本当のことです!配信をつけると、毎回来てくださる方がいて、どんなことでも応援してくれる方がいて。今回のように夢を叶えたら一緒に喜んでくれる。配信という場所は、自分にとって大切な場です。それと、自分の部屋ですかね。部屋から配信もできるし、ゲームもできるし、睡眠も取れるので(笑)。
──大切です(笑)。では『異世界のんびり農家』の死の森に緋月さんが転移したとしたらやってみたいことはありますか?
緋月 万能農具がその名の通りめちゃくちゃ万能じゃないですか。疲れはしないですけど、動かなきゃいけないから、そうすると労働が結構多いんですよね。そうと考えると、私は指パッチンで、全部良い感じにならないかなって(笑)。
──指パッチンで畑ができたり、調味料ができたり(笑)。
緋月 動物もパンっ!と加工される、みたいな(笑)。例えば豚がハムに一瞬でなったらいいなぁ。ヒラクさんはめちゃくちゃ頑張って稲も作っていましたけど、それも指パッチンで一気に米に!「万能パッチン」能力がほしいですね。
“楽しい”が源――いつかはライブも!
──今日は1期生にまつわるお話がありました。Vtuberになりたい、という方が増えていますが、これから活動を始める方に、先輩として何かアドバイスをするとしたらいかがでしょうか。
緋月 自分も日々活動していて思うことなんですが……自分が楽しんで配信することが大切だなと。自分が楽しいことをやる。結局“悲しい”も“楽しい”も見ている方には伝わるんですよね。
──声の情報量って多いですもんね。
緋月 そうなんです。だから楽しいものを届ける、楽しいを共有する、という気持ちで配信をしています。やりたくないことを頑張ることも大事だとは思うんですけど、自分の“楽しい”を信じてやったら良いんじゃないかなって。……今この言葉、自分に対しても言ってます(笑)。「楽しそうに歌うね」ってよく言ってもらうんです。実際楽しんで歌っていますが、その気持ちが届いているんだなって実感して、より嬉しい気持ちになります。
──次に挑戦したいことはありますか?
緋月 CDを出すことが夢の1つだったので、こんなにも早く叶うと思わなかったのですが……次はライブができたら良いなって。今回の曲を披露できる場がいつかできたら素敵だなと思っています。でもみんな、大号泣してしまうかも(笑)。
──すると思います(笑)。
緋月 CD発売が決まった時も大号泣してくれていたので、ライブとなったら立てなくなってしまうかもしれません(笑)。音楽方面ではライブが次の夢ですが、もう1つの目標としては、配信者としてもっと活躍することです。みんなにNeo-Porteを知ってもらいたいなって思っています。
──夢がどんどん叶っている状況で。その景色を見るときは意外と早くくるかもしれませんね。
緋月 ファンの皆さんにも、スタッフの皆様にも感謝しかないです。Neo-Porte1期生として今後も頑張りたいなと思っています。
●リリース情報
TV 異世界のんびり農家 ED
緋月ゆい
「Feel the winds」
2023年2月22日(水)リリース
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
価格:¥1,430(税込)
品番:PCCG-70508
≪収録内容≫
01. Feel the Winds
作詞・作曲・編曲:鈴木裕明
02. 閃響
作詞:庄司夏葵・藤原優樹、作曲・編曲:庄司夏葵
03. Feel the Winds[instrumental]
作詞・作曲・編曲:鈴木裕明
04. 閃響[instrumental]
作詞:庄司夏葵・藤原優樹、作曲・編曲:庄司夏葵
関連リンク
緋月ゆい 公式Twitter
https://twitter.com/yui_hizuki
緋月ゆい 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCuk7vapXKckSw6yCGGDspDg
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