INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司
自分らしさと新しい自分、それぞれの挑戦
――『ひろがるスカイ!プリキュア』の主題歌を担当するお二人ですが、ちなみに第1話の放送をご覧になった感想は?(※取材は第1話の放送直後に実施)
吉武千颯 私は「ヒーローだ!」と思って大号泣しました(笑)。『プリキュア』シリーズは毎年、色々なテーマを掲げていますが、今作は今までとはまた違った勢いというか、「第1話からこんなにパワーをぶつけてくるんだ!すごい!」と思って。「ヒーロー」をものすごく感じて大感動でした。
石井あみ 本当にかっこよくて私も感動しました。今も思い出して鳥肌が立っています(笑)。特にアクションシーンが素晴らしかったですし、想いもいっぱい溢れていたので、すぐに第2話が見たくなりました。
吉武 待ち遠しいよね。
――そんな作品にこれから歌で寄り添われていくわけですが、そのきっかけとなったオーディションにどのように臨んだか教えていただけますか? まずは、オープニング主題歌「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」を歌う石井さんから。
石井 オーディションでは自分の力を全部出しきろうと思っていたので、最初から最後までフルパワーで歌うことを意識したのですが、課題でオープニング曲を歌ったときに、1番の最後の“プリキュア”の音を盛大に外してしまって。
吉武 えぇ!? そうだったんだ。音が高いもんね。
石井 でも、スタッフの方は「惜しい」と言ってくださって、井上(洸)プロデューサーも「もう1回歌ってみよう」とチャレンジさせてくださったんです。自分にとって初めてのオーディションだったのですが、自分らしく挑戦できましたし、とてもありがたい貴重な経験をさせていただきました。
吉武 私は『プリキュア』シリーズに関わり始めて5年目ということで、私の歌のすべてを知ってくださっているスタッフさんの前で歌う、他のオーディションとは違う緊張感があったのですが、毎年「去年の自分を超えられるように」と意識しているので、新たなものを出すことを心がけて臨みました。私の中では、年数を重ねていくにつれて、自分でもどうしていいかわからないくらい、プリキュア愛が大きくなっているんです。なので、今年も携わらせていただくことができて、本当に幸せでいっぱいです。
――オーディションではオープニング曲とエンディング曲の両方を歌われたんですか?
吉武 そうですね。毎年、実際に歌う楽曲でオーディションをしています。
――石井さんは初オーディションで大役を射止めましたが、最初に合格の知らせを聞いたときは?
石井 本当に驚きでした。主題歌を歌うこと自体が初めての経験なので。
――石井さんと一緒にエンディング主題歌「ヒロガリズム」を歌う吉武さんはいかがでしたか?
吉武 私もとても嬉しかったです。『プリキュア』シリーズは20年も続いている大きな作品で、そんな作品に携わらせていただけていることは自分でもびっくりですし、本当に幸せだと毎年思います。それに、これまでの4年間、ボーカルアルバムを含めると(北川)理恵さんやMachicoさん、宮本(佳那子)さんなどたくさんの方々とデュエットさせていただいたので、今回は「今まで感じてきたことを繋いでいこう」「今度は私が引っ張っていけるように頑張ろう」という気持ちでした。しかも、シリーズ20周年という大きな節目でもありましたので、これまでを振り返りながら挑んだレコーディングでもありましたね。
――レコーディングで印象に残っていることについておしえてください。
石井 オープニング主題歌の「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」は、かわいらしさを含みつつも、力強さや爽快感がとてもある楽曲なので、井上プロデューサーから「歌い出しの“天高く羽ばたいて”の部分はフルパワーでいきましょう」とディレクションしていただいて、元気よく歌わせていただきました。逆にAメロやBメロは「女の子らしい透明感」を意識するように指示をいただいたのですが、それが私にはとてもイメージしやすくて。意識して歌うだけでこんなにも曲の雰囲気を変えられることを実感できて、とても勉強になりました。
吉武 「ヒロガリズム」は、レコーディングの日があみちゃんとの初対面だったんです。そのとき、「これから一緒に歩んでいくんだ」と嬉しくなりましたし、レコーディング前に直接お話できたことで、どんな歌にしていきたいか、イメージがすごく膨らみました。それと最初に「ヒロガリズム」を聴いたとき、虹が繋がっていくイメージが浮かんだので、『ひろプリ』のモチーフになっている「空」が日本だけではなく世界にも広がっていることも重ねて、歌を通してどこまでも繋がっていく喜びを歌に込められたら、と思いました。
――2人で歌うことでの発見は何かありましたか?
石井 吉武さんの歌声には包み込んでくれるような温かさがあるんです。歌詞でも、吉武さんに「おいで」と言ってもらっているような、温かい部分があるので、私は「うん、行くよ」とついていくような気持ちで、実際に隣り合って会話しているような感覚があったのが印象的でした。なので、聴いている方にもそれが伝わったら、と思いながら歌わせていただきました。
吉武 私も同じく、隣り合って歌っているように、というのはすごく意識しました。でも、「2人で歌い方を合わせる必要はなくて、それぞれの個性が重なり合うことを大切にしてほしい」というディレクションをいただいたので、自分が思うことや感じたことを2人で歌うことでもっと大きくする、というところを意識しました。そこは私にとって大きかったです。
――石井さんはデュエット自体も初めてだったかと思いますが。
石井 そうなんです。なので吉武さんからはたくさん学ばせていただいて。
――例えば、どういったところが?
吉武 一緒にいるときに聞くのは恥ずかしいな(笑)。
石井 (笑)。
――吉武さんが、石井さんの歌を聴いて感じたところというと?
吉武 最初に感じたのはギャップでした。私もオーディションで「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」を歌ってすごくキーの高い曲だとわかっていたので、「この曲を歌いこなせるなんてどんな人だろう」と思っていたんです。でも、あみちゃんの歌を聴いたとき、声質はかわいいのに歌うとプリキュアと同じような強さがあって、しかも色々な色が足されていくようなイメージを持ちました。
――よければ、子供たちが「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」と「ヒロガリズム」を歌うときのアドバイスをいただけますか?
石井 「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」はとにかくキーが高くて、音の上下の幅もすごくあるので、音を取るのがとても難しいと思います。特にサビの“イライラも キラキラに”……。
石井・吉武 “チェンジして”!
吉武 この部分は本当に難しいよね。
石井 私自身、たくさん練習した箇所でした。私は障害物競争をしているようなイメージで、音が上がるところでは「次は跳ぶ」、下がるところは「次は網をくぐる」という感じで1つ1つ準備しながら歌うようにしました。
吉武 そうなんだ! イメージしやすいし、楽しいね。「ヒロガリズム」はワクワクした気持ちをそのまま歌に込めていただけると楽しく歌えると思います。
石井 「ヒロガリズム」は、楽器もたくさん使われていて賑やかな雰囲気で、1人ではなくみんなで歌っているような印象が強いんです。しかもデュエット曲なので、プリキュアのみんなが仲良くしているイメージを浮かべながら歌っていて。あと、多分ですが、吉武さんと私の声は少し似ていて……。
吉武 うん。私もそう思う。
石井 それもあって、どういう声質で合わせたら「お友達感」や賑やかさが出るかをすごく意識していたんです。なので子供たちには、お友達との輪がどんどん広がっていくイメージで楽しく歌って踊ってもらえたら、それが1番だと思います。
プリキュアに対する愛、先輩シンガーに対する愛
――石井さんはオーディション合格後、Machicoさんの「日曜日のともだち」(アルバム『Machico♡プリキュアのうた!』収録曲)に北川理恵さんとコーラス参加されました。プリキュアシンガーの先輩方はとても温かいと聞きますが、どのような印象を持ちましたか?
石井 本当に皆さんお優しくて。しかも優しいだけではなく、北川さんもMachicoさんもすごくパワフルさがあって、初めてお会いしたときから、「わー!」「よろしくー!」って気さくにお声がけくださったので、最初は私も戸惑ってしまって……(苦笑)。
――距離感が(笑)。
石井 吉武さんも初めてお会いしたとき、「私はあみちゃんって呼ぶから、私のことはちはちゃんって呼んで」って話しかけてくださいました。
吉武 改めて言われるとすごく恥ずかしい!(笑)。
石井 皆さん本当に温かく迎え入れてくださったので、すぐに馴染むことができましたし、『プリキュア』の現場は居心地が良くて、安心感があって……。先輩方からたくさん学んでいきたいなと、すごく感じています。
――吉武さんも石井さんも小さい頃から『プリキュア』大好きっ子だったとか。いつくらいに『プリキュア』に目覚めたのか、推しのプリキュアは誰か、などを教えてもらえますか? まず吉武さんから。
吉武 私は4~5歳の頃に『ふたりはプリキュア』(シリーズ第1作)が始まってから、ずっと観ていましたし、おもちゃやカード、変身グッズも色々と持っていました。Twitterでもつぶやいたことがあるのですが、幼稚園の卒園アルバムに「一番の宝物はポルンのパソコン(プリティコミューン)」と書いていたり、おばあちゃんの家に行くといまだに私が小さい頃に買ってもらったマグネットが冷蔵庫に貼ってあったり、本当に『プリキュア』と一緒に育った感じでした。『ハートキャッチプリキュア!』(シリーズ第7作)も観ていたので、小学校を卒業するくらいまではずっと観ていました。
――イチ推しプリキュアはキュアブラック(『ふたりはプリキュア』およびシリーズ第2作『ふたりはプリキュアMaxHeart』に登場するプリキュア)とお聞きしました。
吉武 そうですね、キュアブラックのかっこよさにすごく憧れていました。その気持ちはいつまでも変わらないですね。でもキュアミルキー(シリーズ第16作『スター☆トゥインクルプリキュア』(以下、『スタプリ』)に登場するプリキュア)も推しです。
――吉武さんのプリキュア歌手デビューとなる『スタプリ』から。でも、キュアミルキーはキュアブラックとはタイプが違いますよね。推したくなる理由というのは?
吉武 初めての「宇宙人のプリキュア」というところですね。地球とは全然違う文化の星から来たのに、みんなと仲良くなれて色々なものを築いていくところに、『スタプリ』のテーマだった「多様性」をすごく感じました。それから、声を担当されている声優の小原好美さんの人柄も大好きなので(笑)。プリキュアプリティストア(『プリキュア』シリーズの公式ショップ)でキュアミルキーのグッズを買ったりもして……それはどのプリキュアもそうではありますけど(笑)。
――石井さんはいかがですか?
石井 私は3歳くらいの頃に『ふたりはプリキュア』を観始めたのですが、本当に大好きで、私もおもちゃをいっぱい買ってもらっていました。誕生日はいつもプリキュアのグッズをお願いしていて。
吉武 うんうん、そんな感じだよね、
石井 はい。で、最初はキュアブラックもキュアホワイト(『ふたりはプリキュア』『ふたりはプリキュアMaxHeart』に登場するプリキュア)も同じくらい好きで選べなかったんですけど、『ふたりはプリキュア Max Heart』が始まったら、シャイニールミナス(『ふたりはプリキュアMaxHeart』に登場するプリキュア)が加わって!
吉武 かわいいよねー!
石井 もうかわいくて仕方なくて。あまりにも好きすぎて、多分、「自分はシャイニールミナスなんだ」と思っていて、毎日あの髪型をマネして幼稚園に通っていました(笑)。
吉武 かわいい!(笑)。
石井 ポルンちゃん(シャイニールミナスのパートナーの妖精キャラクター)の、プリティコミューンに変身できるグッズをどこにでも持って行っていました。「ポルン、変身ポポ」のセリフがずっと頭から離れなかったです。幼稚園の行事で「プリンセスの格好をしてきてください」と言われたときも、みんながドレスを着てくるなか、私はシャイニールミナスのなりきりコスチュームで行ったことをよく覚えています。やる気満々で(笑)。そのあとも『プリキュア』シリーズは観ていたのですが、実は私の従妹がちょうど『スタプリ』世代で「パぺピプ☆ロマンチック」(吉武が歌唱を担当した『スタプリ』の前期EDテーマ)が大好きだったんです。
吉武 えーっ!嬉しい!
石井 なのでデュエットが決まったときはすごくびっくりしました。
――『ひろプリ』ではスカイトーンというアイテムも登場しますので、お二人と「音(tone)」や「音楽」というところについてもお聞きしたいと思います。ちなみに、お二人は憧れているアーティストはいますか?
吉武 私はずっと言っていますけど、北川理恵さんです。『スタプリ』でデビューしてから1年間、理恵さんを身近で見させていただいたことは、自分が芸能活動をしていくうえでとても大きかった経験で。アーティストとして歌の幅もお芝居の幅もすごく広いですし、スタッフさんへの対応や子供たちへの接し方といった人柄も含めて、人としてこうなりたいと思っています。すべてにおいて理恵さんは憧れですね。
石井 私はMachicoさんが大好きで。声優アーティストとして活動されている歌も聴かせていただいているのですが、かわいらしい楽曲も、かっこいい楽曲も、しんみりとした楽曲も、なんでも歌いこなされていますし、自分の良さを活かしながらも1つの作品として歌い上げる素晴らしさがあって、アーティストとしても女性としても完璧な印象です。なのでずっと目標にしています。実はスマホのロック画面もMachicoさんにしていて……。
――ご本人には伝えました?
石井 いえ、言っていないです。恥ずかしいので秘密にしておいてください……。
――いや、Machicoさんは絶対喜ぶと思います。
石井 だと嬉しいです(笑)。
――では最後に。お2人にとって「音楽」がどういった存在であるのか、そして今後の目標について教えていただけますか? では、吉武さんから。
吉武 小さい頃から音楽が好きで、ずっと歌い続けていきたいというのが自分の夢だったので、本当に「ないと困る存在」です。プリキュアの歌に限らず、どんな歌でも、聴くと一瞬でそのときの思い出や気持ちが蘇ってくるところが音楽のすごいところだと思っていて。だから、歌を聴くことで、楽しい気持ちも悲しい気持ちも、色々な感情と共に過ごしていけるところが音楽の魅力だと思います。目標は……たくさんありますけど、でもやっぱり、これからもずっとプリキュアの歌を歌っていきたいです。私は歌でも芝居でも「好きだーっ!」と思ったことに猪突猛進するタイプなのですが、『プリキュア』に対しても「これは愛だ!」と感じていて。なので、この感情を繋げていきたいです。
――ちなみに、オープニング主題歌を歌ってみたい気持ちはありますか?
吉武 とてもあります!
――でも、エンディング主題歌の最多歌唱記録も伸ばしたいですよね。
吉武 はい! エンディング主題歌は毎年ダンスが付くので、子供たちとより近いところが魅力だと思うんです。イベントでもエンディング曲を歌う前にダンスレッスンをしたりするので、オープニング曲は一緒に歌える楽曲、エンディング曲は一緒に踊れる楽曲、みたいなイメージがあります。どちらにも魅力はいっぱいあるので、「毎年歌わせていただけて本当に幸せだな」と思います。
――石井さんはいかがですか?
石井 私は大学で声楽コースに通っていて歌を学んでいるのですが、そのなかで「歌」というものは、言葉にできない感情や想いを含んでいる、ただ言葉にするよりももっと強い「言葉」だと感じているんです。今回、歌手デビューさせていただき、その「言葉」をより多彩に表現していきたい気持ちになりました。それと、先ほど「tone」と仰られていましたが、私は、人が歩く音や車の音、水が流れたり服がこすれたりする音のような、自然に生まれる音がすごく好きなんです。そういった1つ1つの小さな音に耳を傾けることで、感覚も想いも研ぎ澄まされていくように思っているので、そういう気持ちを大切に歌っていきたいと思っています。目標は、まずはこの1年間を走りきること。
吉武 うんうん。
石井 初めてのことだらけですが、やっぱり『プリキュア』が大好きなので。たくさんの方々から色々と吸収させていただいて、これからも『プリキュア』に関わっていけるように頑張りたいです。
●リリース情報
『ひろがるスカイ!プリキュア』主題歌シングル
3月22日発売
【CD+DVD】
品番:MJSS-09337~8
価格:¥2,200(税込)
<CD>
01. ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~
歌:石井あみ 作詞:青木久美子 作曲・編曲:森いづみ
02.ヒロガリズム
歌:石井あみ・吉武千颯 作詞:六ツ見純代 作曲・編曲:ハマダコウキ
他各楽曲カラオケ・TVサイズを含む全6曲収録
<DVD>
TVオープニング・エンディングノンテロップ映像を収録
【通常盤】
品番:MJSS-09339
価格:¥1,320(税込)
<CD>
01. ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~
歌:石井あみ 作詞:青木久美子 作曲・編曲:森いづみ
02.ヒロガリズム
歌:石井あみ・吉武千颯 作詞:六ツ見純代 作曲・編曲:ハマダコウキ
他各楽曲カラオケ・TVサイズを含む全6曲収録
【初回特典】
・キャンバスブロマイド(スーパーアート6色印刷)
・「めざせ!あこがれのわたし♡ プリキュアミラーパッド!オールスター」専用二次元コード(キュアスカイからのおてがみ)
・購入者限定リリース記念ライブ申込券
【永久仕様】
・ひろがるスカイ!プリキュア TVシリーズ全CD商品購入特典「ひろがるスカイ!ボックス(くるみ三方背)」応募券
©ABC-A・東映アニメーション
関連リンク
TVアニメ『ひろがるスカイ!プリキュア』オフィシャルサイト
https://www.toei-anim.co.jp/tv/precure/
石井あみ Twitter
https://twitter.com/ishiiami154cm
吉武千颯 Twitter
https://twitter.com/chiha_yoshitake