「青春」×「アカペラ」、純度100%の最強ボイスエンタテインメント「アオペラ -aoppella!?-」(以下、「アオペラ」)。まもなく3年目に突入する本コンテンツで私立奏ヶ坂中学高等学校のアカペラユニット・FYA’M’で部長兼バンドリーダーを担う宗円寺朝晴。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 小島マサヒロ
初挑戦のアカペラは、大変さも挑戦も含めて毎回楽しさでいっぱい
——2021年3月4日にプロジェクトがスタートした「アオペラ」ですが、アカペラをやってきた今日までというのはどのような時間でしたか?
佐藤拓也 昨今、声優によるステージパフォーマンスというのはだいぶ一般的になってきたなと思っていたのですが、どんどん裾野が広がっていくなかでまさか「アカペラ」があるとは。そのコンテンツに僕がキャスティングされるというのは、すごく驚きを持って受け取りました。いざやってみると、「声優向き」と言い切ってしまうのも難しいですが、1つずつのパートや声を重ねていきみんなで1つの作品を作るというのは、日ごろ我々がマイク前でやっていることと重なる部分があるなと思いましたし、そういう部分もあってレコーディングを重ねるごとに面白くなっていったなと思っています。
——アカペラで音楽の構造を知っていくことになり、それによってご自身の音楽の聴き方への変化はありましたか?
佐藤 元々音楽を聴くときに、メインボーカルよりもドラムやベースに耳がいくような音楽の好みでもあるんですね。そうするとやっぱりコーラスラインも気になっていくので、各パートの居方や出方も意識してしまうんです。どれくらい前に出ていいものか、という匙加減やバランスについては、宗円寺朝晴として4thリードという場を与えられたときに、どれだけ自分の歌い方を主張していいのかを、改めて音楽を聴くうえでの視点として増えたものだなと思いますね。
——そうして歌に向き合われてきた佐藤さんですが、「アオペラ」で知ったアカペラの面白さと難しさについて教えてください。
佐藤 レコーディングはどうしても1人ずつになるので、ヘッドホンで音源と呼ばれるものを聴くときにも自分のパート+リズムのクリックくらいしか流れていなくて。実際にどうすればこの曲に帰結していくのか、と最初はすごく手探り感があったんですけど、ユニットのみんなの声が集まったものを聴いたときにすごく興奮するんですよね。「みんなで作った!」という達成感と、充実感みたいなものがすごく曲の中に満ちている気がして。
——では、難しさというと?
佐藤 コーラスだからと遠慮しすぎてもいけないし、かといってリードボーカルだからとドンと派手にやっていいのかというとそうでもなくて。一般的な歌唱よりは、自分以外の人たちのことを考える頭の面積を大きくしておかなきゃいけないんですね。歌いながらも人のことを考える。難しさというよりも、これまでにはなかった意識が生まれたなと思いますね。
——同時に魅力に思う部分も伺おうと思ったのですが、面白さも難しさも総じて魅力になっているのかな、と感じますね。
佐藤 難しいから面白い、というところがあるんですよね。何回もチャレンジしていって、その曲の中での最適解みたいなものは自分の中にあるんですけれども、みんなの声をもらったときに「そういうアプローチもあったよね」という発見が毎回あるし、FYA’M’に限らずリルハピもそうですが、他人のパフォーマンスを聴いたときに「素敵だな」「素晴らしいな」と心から拍手したくなる気持ちが生まれるので、それは素敵な共演者の中でやらせてもらっていることが大きいと思います。
——その「アオペラ」で佐藤さんが演じている宗円寺朝晴について、演じる際にはどのようなことを意識されているかをお聞かせください。
佐藤 演じるときは、動じないことを意識しています。ずっとマイペース。
——では歌う際にはどのようなことを意識されていますか?
佐藤 FYA’M’が比較的大人っぽい楽曲が多いこともありますが、若さの中にある余裕や伸びしろみたいなものを表現できればなと思っていて。それは大きくゆったりかっこよく歌うということではなくて。歌声から朝晴自身もみんなで声を合わせて1つの世界を作るアカペラが大好きなんだなっていうことが滲むことが一番なんですよね。その「楽しい」「好き」という気持ちが、大人っぽい曲の中の若さとして出したい、という意識でいます。
——歌っていて、弟・雨夜の存在を意識されることはありますか?それこそ弟の存在もあって「余裕」が出てくるのかなとも思いますが。
佐藤 僕が朝晴然として歌う際には、そこはカットしていますね。メンバーと、そのパフォーマンスを聴いてくれるであろう人たちのことに集中しているかなぁ、と思います。むしろ弟の存在が常にあると、もしかしたらそこに普段の朝晴くんの、彼が自覚していないけれど持っている弟への甘えみたいなものが生まれてしまう気もするので、そこは努めて考えずに、目の前で行われていることに集中するようにしています。だって朝晴くんを形成している大切な存在ですし、雨夜くんへの甘えってどうしたってあるはずですから。
——双子の弟が別の学校でまったく違うタイプの楽曲を歌っている、というのは朝晴を演じていていかがですか?
佐藤 面白いですよね。お互いにああしろ、こうしろというわけでもなく、変に遠ざけるでも干渉するでもなく、「兄さんはこれが好き」「雨夜くんはこれが好き」みたいな部分も尊重している気がするので、ほぼ見分けのつかない双子であっても個性は確かにあるということを感じられて、僕は素敵だなと思っています。
「FYA’M’のメンバーにはリスペクトしかない」
——ここまで共に音楽を紡いできたFYA’M’ですが、まずはFYA’M’の楽曲の印象を教えてください。
佐藤 高校生なりの、「僕らが憧れている大人ってこういう印象です」みたいなものを頑張って表現していますよね。大人が等身大の、ウェットな世界を表現しているのとは違って、「僕らはこういう大人をかっこいいと思っているんです」という憧れみたいなものを表現しているんだろうなって感じます。リルハピは、彼らのそれまで生きてきて好きだと感じたものをぽんぽんとストレ-トにぶつけるユニットだとするならば、早く大人になってみたい気持ちがある人たちなのかなっていう捉え方をしています。
——メンバーに対してはいかがですか?一緒に曲を紡いで。
佐藤 めちゃめちゃすごいですよ!上手!いや、上手なのはたしかですが、それよりもさらに「まだ持っているのかよ!」と楽曲ごとに驚かされています。(仲村)宗悟くんにしても、濱野(大輝)くんにしても、絶対にあの2人がいれば、彼らの作った土台があれば、その上でどんなに跳ねても踊っても平気だという絶対的な信頼感がある。リード組もそれぞれの音色が違うので、4人いるリードみんなの音がそれぞれ「ここにいるよ」って感じられるときと、それが溶けて交じり合うときの気持ち良さはどちらもやっぱりたまらないなって思っています。どのパートを預けてもやれてしまう人たちなので、メンバーにはリスペクトしかないです。特に濱野大輝という楽器を、ここまでフルスペックで使えるコンテンツってそう多くないと思っていて。
——プロジェクトスタートから共に走ってきたリルハピ、そして新星・VadLipの印象もお聞かせください。
佐藤 リルハピは「アオペラ」という世界の芯ですから。センターチームだと思っていますので、彼らという大黒柱がいてくれるおかげでFYA’M’もVadLipも好き勝手ができると思っています。もちろんリルハピも、自分たちの好きな音楽を追求していると思うんですけど、大人になるとちょっとこそばゆく感じてしまうくらいの爽やかさがあって、それは聴く人の世代によっても感じ方が変わる音楽だと思っています。リアルな年代の人にも素直に受け入れてもらえると思うし、大人の人たちからするとちょっとした懐かしさと共に「こういう気持ちがあったよね」ということを感じて元気をもらえて、また明日に迎えるようなユニットだなって思っています。
——VadLipはいかがですか?
佐藤 いやぁ……底知れない。まだ先行の2ユニットほど楽曲がないにも関わらず、圧倒的な存在感を見せつけてきていますよね。それとメンバーが分厚い!分厚すぎる!ということもあって、同じ作品を構成するメンバーとしてもこれほど頼りになる第三勢力もないだろうと思っています。初めてMVで楽曲を聴いたときには、本当に拍手したくなるくらい素晴らしかったので、彼らから学ぶこともたくさんあると思うし、よくぞ来てくれました!という想いです。
3年目に突入し、成長したFYA’M’を感じさせる『アオペラ5』
——その「アオペラ」でたくさんの楽曲を歌ってこられましたが、特に印象的だった曲を教えてください。
佐藤 選ぶのが難しいですよね。
——そして佐藤さんはゴスペラーズの「ひとり」をカバーするメンバーに選ばれておられました。いかがでしたか?
佐藤 本当に光栄でした。
——長年聴いてこられたという本家の楽曲をカバーされるというのは感慨もありますよね。
佐藤 夢にも思わないですよね。正直、「アオペラ」に関わるとなったときに、「いつかゴスペラーズさんと何かできたらいいですよね」くらいの風呂敷は広げたのですが、まさかこんなに近い未来でこんな出来事があるなんて思いもよらず。ましてや僕においては17歳の頃からゴスペラーズさんが大好きで、ずっとCDを買っていましたから。耳に残っている歌い方や染み付いてしまっているアプローチもあって、カバーで歌っているときにもそっちへといきたくなってしまうんですよね。
——今年の春には各ユニットの新曲と新たなドラマを収録した『アオペラ5』がリリースされます。FYA’M’の「カラフル」について、この曲にどんなFYA’M’が出ているのかも含めて予告していただきたいです。
佐藤 卒業した先輩と合宿に行ったんだろうなって感じがします。そういう曲になっているんですよね。僕ら、こういう曲を今度歌おうと思っているんですって持っていったら、一度受け取ってもらえたうえで「もっとこうしたらいいんじゃないの?」って先輩の風を放り込んでもらったような印象のある曲ですね。成長が見えるというよりも、一足飛びに進化したような1曲です。
——zakbeeさんが作曲をされていますが、現場で何かお話はされましたか?
佐藤 この楽曲だから、という特別なことはなくて、いつも通り朝晴として、FYA’M’としてやってほしい、ということでした。ただいつもより大人っぽくというディレクションがありましたね。
——ドラマ部分はいかがでしたか?収録するたびに新しい発見があるかと思いますが。
佐藤 ドラマをやるたびに、この人はこういうことを思っているんだとか、こんなふうに感じるのか、と発見ばかりなので。もちろんアカペラで歌うことを軸にした作品ではあるんですけど、1つの物語としての面白さや人間関係、彼らの年相応の繊細な部分や勢いがどんどん交じり合って。年月という意味ではなく、人生が深まっているなって思います。人と関わり合うことによって彼ら自身の人生が、自覚しないレベルかもしれないですが鮮やかになっていっていると感じられるドラマになっているのではないでしょうか。
——まもなく3年目に突入する「アオペラ」ですが、今後「こんなことをやってみたい」と思うのはどんなことですか?
佐藤 シャッフルをやりたいですね、楽しそう。全然違うことになりそうですよね。
——誰と歌いたいですか?
佐藤 端から全部と、まんべんなく組みたいですね。組み合わせを変えることで何千通りもシャッフルユニットが作れそうですよね。わかりやすいところで言えば、僕らにはボイスパーカッションがいるけど、リルハピにはいないですし、それがあるのとないのとではまた違う世界が見えるでしょうし、面白いと思いますね。期待したいです。それと朝晴的には雨夜くんと歌わせてほしいです。「じゃあ」って同じマイクの前に立ったときにはどんな精神で歌に向かうのかが気になります。
——では最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
佐藤 新曲のMVが出るたびにたくさんの方に聴いていただいて、かつ楽しんでいただいているなということを本当に感じられていて。それが次への、我々の活力に、励みになっています。応援、本当にありがとうございます。「まさかこの曲カバーするの⁉」という驚きも毎回あると思いますが、「今度この曲に挑戦してみてはどうでしょう」とか「この曲が好きです」という声も含めて、皆さんの声をもっともっとお寄せいただくことによって我々も想像もしていなかった世界が見えてくるのではないかと思っています。今後とも楽しみにしていてください。
●イベント情報
『アオペラ aoppella!? -2nd Anniversary Party-』
【開催日時】
2023年5月27日(土)
※物販、展示は27日(土)、28日(日)の両日開催
【開催場所】
横須賀市文化会館
【出演キャスト(予定)】
木村良平、柿原徹也、KENN、浦田わたる、仲村宗悟ほか
※昼の部、夜の部のどちらに出演するかは続報をお待ちください
●リリース情報
『アオペラ -aoppella!?-5』
2023年4月21日(金)発売予定
『アオペラ』公式通販サイト、各法人の特典情報の詳細は下記お知らせページをご覧ください。
https://www.aoppella.com/news/5thcd/
【歌唱】
都立音和高校アカペラ部「リルハピ」メンバー
鈴宮 壱(CV:木村 良平)
丹波 燐(CV:逢坂 良太)
雁屋園 道貴(CV:KENN)
四方 ルカ(CV:柿原 徹也)
宗円寺 雨夜(CV:前野 智昭)
私立奏ヶ坂中学高等学校アカペラ部「FYA’M’」メンバー
是沢 舞斗(CV:小野 友樹)
綾瀬 光緒(CV:豊永 利行)
紫垣 明(CV:浦田 わたる)
宗円寺 朝晴(CV:佐藤 拓也)
猫屋敷 由比(CV:濱野 大輝)
深海 ふかみ(CV:仲村 宗悟)
都立蓮雀高校アカペラ部「VadLip」メンバー
春宮 永臣(CV:内田 雄馬)
柊迫 侃(CV:小野 賢章)
大里 帆波(CV:花江 夏樹)
反郷 粋(CV:八代 拓)
雛乃 秀(CV:増元 拓也)
伊佐 良和(CV:武内 駿輔)
●作品情報
『アオペラ -aoppella!?-』
「青春」×「アカペラ」をテーマにメディアミックスで展開していく、KLabが手掛ける音楽原作プロジェクト。
<ストーリー>
————あの日、少年たちは魅了された。
目の前に立つのは、自分達と同じ普通の高校生。華美な衣装もない。
楽器のセットもない。
それなのに、彼らが口を開けた瞬間、変幻自在のハーモニーが溢れ出し、観客は熱狂する。
「僕たちも、あんな風に歌いたい!輝きたい!」
アカペラ≪無伴奏歌唱≫に魅入られた高校生たちが目指す、
高校生限定アカペラコンテスト『アオペラ』
遥かな高みを目指す、彼らの演奏が今、始まる————!
©KLab
関連リンク
「アオペラ -aoppella!?-」公式サイト
https://www.aoppella.com/
「アオペラ -aoppella!?-」公式Twitter
https://twitter.com/aoppella
佐藤拓也
公式Twitter
https://twitter.com/5tAkUyA5
都立音和高校のリルハピでベースを担当する宗円寺雨夜の双子の兄であり、にこやかな笑みをたたえた表情が印象的な朝晴を演じるのは佐藤拓也。コンテンツのスタートからFYA’M’として駆け抜けた時間のこと、ゴスペラーズとの出会いから最新作『アオペラ5』についてまで、余すことなく語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 小島マサヒロ
初挑戦のアカペラは、大変さも挑戦も含めて毎回楽しさでいっぱい
——2021年3月4日にプロジェクトがスタートした「アオペラ」ですが、アカペラをやってきた今日までというのはどのような時間でしたか?
佐藤拓也 昨今、声優によるステージパフォーマンスというのはだいぶ一般的になってきたなと思っていたのですが、どんどん裾野が広がっていくなかでまさか「アカペラ」があるとは。そのコンテンツに僕がキャスティングされるというのは、すごく驚きを持って受け取りました。いざやってみると、「声優向き」と言い切ってしまうのも難しいですが、1つずつのパートや声を重ねていきみんなで1つの作品を作るというのは、日ごろ我々がマイク前でやっていることと重なる部分があるなと思いましたし、そういう部分もあってレコーディングを重ねるごとに面白くなっていったなと思っています。
——アカペラで音楽の構造を知っていくことになり、それによってご自身の音楽の聴き方への変化はありましたか?
佐藤 元々音楽を聴くときに、メインボーカルよりもドラムやベースに耳がいくような音楽の好みでもあるんですね。そうするとやっぱりコーラスラインも気になっていくので、各パートの居方や出方も意識してしまうんです。どれくらい前に出ていいものか、という匙加減やバランスについては、宗円寺朝晴として4thリードという場を与えられたときに、どれだけ自分の歌い方を主張していいのかを、改めて音楽を聴くうえでの視点として増えたものだなと思いますね。
——そうして歌に向き合われてきた佐藤さんですが、「アオペラ」で知ったアカペラの面白さと難しさについて教えてください。
佐藤 レコーディングはどうしても1人ずつになるので、ヘッドホンで音源と呼ばれるものを聴くときにも自分のパート+リズムのクリックくらいしか流れていなくて。実際にどうすればこの曲に帰結していくのか、と最初はすごく手探り感があったんですけど、ユニットのみんなの声が集まったものを聴いたときにすごく興奮するんですよね。「みんなで作った!」という達成感と、充実感みたいなものがすごく曲の中に満ちている気がして。
そうすると「次も頑張りたいよね」という意識へと繋がっていく。それが面白さだと思いますね。
——では、難しさというと?
佐藤 コーラスだからと遠慮しすぎてもいけないし、かといってリードボーカルだからとドンと派手にやっていいのかというとそうでもなくて。一般的な歌唱よりは、自分以外の人たちのことを考える頭の面積を大きくしておかなきゃいけないんですね。歌いながらも人のことを考える。難しさというよりも、これまでにはなかった意識が生まれたなと思いますね。
——同時に魅力に思う部分も伺おうと思ったのですが、面白さも難しさも総じて魅力になっているのかな、と感じますね。
佐藤 難しいから面白い、というところがあるんですよね。何回もチャレンジしていって、その曲の中での最適解みたいなものは自分の中にあるんですけれども、みんなの声をもらったときに「そういうアプローチもあったよね」という発見が毎回あるし、FYA’M’に限らずリルハピもそうですが、他人のパフォーマンスを聴いたときに「素敵だな」「素晴らしいな」と心から拍手したくなる気持ちが生まれるので、それは素敵な共演者の中でやらせてもらっていることが大きいと思います。
——その「アオペラ」で佐藤さんが演じている宗円寺朝晴について、演じる際にはどのようなことを意識されているかをお聞かせください。
佐藤 演じるときは、動じないことを意識しています。ずっとマイペース。
かといってリーダーだから、と超然としているかというと必ずしもそうではなくて、年齢相応の脆さみたいなものも内包している人なので、大人になりきらないけれど周りからみるとすごく大人っぽく見えるよね、という塩梅を探っています。でも周りが朝晴を盛り立ててくれて、信頼してくれていることが大前提としてあるので、全部を自分で決めるというよりも周りのみんなを信頼して任せるようなところがあって。いざとなったら口を出すくらいの匙加減の人なので、俺様タイプというよりも陰の実力者というリーダー像でもあります。
——では歌う際にはどのようなことを意識されていますか?
佐藤 FYA’M’が比較的大人っぽい楽曲が多いこともありますが、若さの中にある余裕や伸びしろみたいなものを表現できればなと思っていて。それは大きくゆったりかっこよく歌うということではなくて。歌声から朝晴自身もみんなで声を合わせて1つの世界を作るアカペラが大好きなんだなっていうことが滲むことが一番なんですよね。その「楽しい」「好き」という気持ちが、大人っぽい曲の中の若さとして出したい、という意識でいます。
——歌っていて、弟・雨夜の存在を意識されることはありますか?それこそ弟の存在もあって「余裕」が出てくるのかなとも思いますが。
佐藤 僕が朝晴然として歌う際には、そこはカットしていますね。メンバーと、そのパフォーマンスを聴いてくれるであろう人たちのことに集中しているかなぁ、と思います。むしろ弟の存在が常にあると、もしかしたらそこに普段の朝晴くんの、彼が自覚していないけれど持っている弟への甘えみたいなものが生まれてしまう気もするので、そこは努めて考えずに、目の前で行われていることに集中するようにしています。だって朝晴くんを形成している大切な存在ですし、雨夜くんへの甘えってどうしたってあるはずですから。
——双子の弟が別の学校でまったく違うタイプの楽曲を歌っている、というのは朝晴を演じていていかがですか?
佐藤 面白いですよね。お互いにああしろ、こうしろというわけでもなく、変に遠ざけるでも干渉するでもなく、「兄さんはこれが好き」「雨夜くんはこれが好き」みたいな部分も尊重している気がするので、ほぼ見分けのつかない双子であっても個性は確かにあるということを感じられて、僕は素敵だなと思っています。
「FYA’M’のメンバーにはリスペクトしかない」
——ここまで共に音楽を紡いできたFYA’M’ですが、まずはFYA’M’の楽曲の印象を教えてください。
佐藤 高校生なりの、「僕らが憧れている大人ってこういう印象です」みたいなものを頑張って表現していますよね。大人が等身大の、ウェットな世界を表現しているのとは違って、「僕らはこういう大人をかっこいいと思っているんです」という憧れみたいなものを表現しているんだろうなって感じます。リルハピは、彼らのそれまで生きてきて好きだと感じたものをぽんぽんとストレ-トにぶつけるユニットだとするならば、早く大人になってみたい気持ちがある人たちなのかなっていう捉え方をしています。
——メンバーに対してはいかがですか?一緒に曲を紡いで。
佐藤 めちゃめちゃすごいですよ!上手!いや、上手なのはたしかですが、それよりもさらに「まだ持っているのかよ!」と楽曲ごとに驚かされています。(仲村)宗悟くんにしても、濱野(大輝)くんにしても、絶対にあの2人がいれば、彼らの作った土台があれば、その上でどんなに跳ねても踊っても平気だという絶対的な信頼感がある。リード組もそれぞれの音色が違うので、4人いるリードみんなの音がそれぞれ「ここにいるよ」って感じられるときと、それが溶けて交じり合うときの気持ち良さはどちらもやっぱりたまらないなって思っています。どのパートを預けてもやれてしまう人たちなので、メンバーにはリスペクトしかないです。特に濱野大輝という楽器を、ここまでフルスペックで使えるコンテンツってそう多くないと思っていて。
「ずるいな、素敵だな、めちゃくちゃ良いじゃん!」って思っています。
——プロジェクトスタートから共に走ってきたリルハピ、そして新星・VadLipの印象もお聞かせください。
佐藤 リルハピは「アオペラ」という世界の芯ですから。センターチームだと思っていますので、彼らという大黒柱がいてくれるおかげでFYA’M’もVadLipも好き勝手ができると思っています。もちろんリルハピも、自分たちの好きな音楽を追求していると思うんですけど、大人になるとちょっとこそばゆく感じてしまうくらいの爽やかさがあって、それは聴く人の世代によっても感じ方が変わる音楽だと思っています。リアルな年代の人にも素直に受け入れてもらえると思うし、大人の人たちからするとちょっとした懐かしさと共に「こういう気持ちがあったよね」ということを感じて元気をもらえて、また明日に迎えるようなユニットだなって思っています。
——VadLipはいかがですか?
佐藤 いやぁ……底知れない。まだ先行の2ユニットほど楽曲がないにも関わらず、圧倒的な存在感を見せつけてきていますよね。それとメンバーが分厚い!分厚すぎる!ということもあって、同じ作品を構成するメンバーとしてもこれほど頼りになる第三勢力もないだろうと思っています。初めてMVで楽曲を聴いたときには、本当に拍手したくなるくらい素晴らしかったので、彼らから学ぶこともたくさんあると思うし、よくぞ来てくれました!という想いです。
3年目に突入し、成長したFYA’M’を感じさせる『アオペラ5』
——その「アオペラ」でたくさんの楽曲を歌ってこられましたが、特に印象的だった曲を教えてください。
佐藤 選ぶのが難しいですよね。
今回は容易かったな、ということはないんですよ。毎回試されているな、と思うことばかりなのでどれも印象に残っています。でも空気感で一番好きな曲は「Let it snow,Let it snow,Let it snow」ですね。それこそさっきもお話したような「僕らはこういう曲が好きなんです」と背伸びをした男の子たちの気持ちと、等身大のかわいさみたいなものが上手く両立している曲だな、という意味でもこの曲を推したいです。大人っぽいと言われるFYA’M’の中でも透き通るかわいさみたいなものがある曲なので、個人的にすごく好きです。
——そして佐藤さんはゴスペラーズの「ひとり」をカバーするメンバーに選ばれておられました。いかがでしたか?
佐藤 本当に光栄でした。
——長年聴いてこられたという本家の楽曲をカバーされるというのは感慨もありますよね。
佐藤 夢にも思わないですよね。正直、「アオペラ」に関わるとなったときに、「いつかゴスペラーズさんと何かできたらいいですよね」くらいの風呂敷は広げたのですが、まさかこんなに近い未来でこんな出来事があるなんて思いもよらず。ましてや僕においては17歳の頃からゴスペラーズさんが大好きで、ずっとCDを買っていましたから。耳に残っている歌い方や染み付いてしまっているアプローチもあって、カバーで歌っているときにもそっちへといきたくなってしまうんですよね。
そこはレコーディングのときに「すまないけれど、17~18歳のときの佐藤を一度供養させてもらってから朝晴として立ち向かわせてもらえないだろうか」と思いっきり歌ったうえで、気が済んで、朝晴として歌い直したという経緯がありました。でもMVを観ていて、村上てつやさんの声が入ってきたときには鳥肌もので。よく物真似番組である演出の、後ろから本人が出てきちゃった感じで。幸福感いっぱいでした。まさか対談までさせてもらえるとは!あの対談映像を見たときには、ただのファンがいちゃったので、自分では見るに堪えない映像になってしまいましたが(笑)。楽曲を書きおろしていただくことなどになっていくとは思ってもみなかったので、幸せだなと思っています。
——今年の春には各ユニットの新曲と新たなドラマを収録した『アオペラ5』がリリースされます。FYA’M’の「カラフル」について、この曲にどんなFYA’M’が出ているのかも含めて予告していただきたいです。
佐藤 卒業した先輩と合宿に行ったんだろうなって感じがします。そういう曲になっているんですよね。僕ら、こういう曲を今度歌おうと思っているんですって持っていったら、一度受け取ってもらえたうえで「もっとこうしたらいいんじゃないの?」って先輩の風を放り込んでもらったような印象のある曲ですね。成長が見えるというよりも、一足飛びに進化したような1曲です。
——zakbeeさんが作曲をされていますが、現場で何かお話はされましたか?
佐藤 この楽曲だから、という特別なことはなくて、いつも通り朝晴として、FYA’M’としてやってほしい、ということでした。ただいつもより大人っぽくというディレクションがありましたね。
——ドラマ部分はいかがでしたか?収録するたびに新しい発見があるかと思いますが。
佐藤 ドラマをやるたびに、この人はこういうことを思っているんだとか、こんなふうに感じるのか、と発見ばかりなので。もちろんアカペラで歌うことを軸にした作品ではあるんですけど、1つの物語としての面白さや人間関係、彼らの年相応の繊細な部分や勢いがどんどん交じり合って。年月という意味ではなく、人生が深まっているなって思います。人と関わり合うことによって彼ら自身の人生が、自覚しないレベルかもしれないですが鮮やかになっていっていると感じられるドラマになっているのではないでしょうか。
——まもなく3年目に突入する「アオペラ」ですが、今後「こんなことをやってみたい」と思うのはどんなことですか?
佐藤 シャッフルをやりたいですね、楽しそう。全然違うことになりそうですよね。
——誰と歌いたいですか?
佐藤 端から全部と、まんべんなく組みたいですね。組み合わせを変えることで何千通りもシャッフルユニットが作れそうですよね。わかりやすいところで言えば、僕らにはボイスパーカッションがいるけど、リルハピにはいないですし、それがあるのとないのとではまた違う世界が見えるでしょうし、面白いと思いますね。期待したいです。それと朝晴的には雨夜くんと歌わせてほしいです。「じゃあ」って同じマイクの前に立ったときにはどんな精神で歌に向かうのかが気になります。
——では最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
佐藤 新曲のMVが出るたびにたくさんの方に聴いていただいて、かつ楽しんでいただいているなということを本当に感じられていて。それが次への、我々の活力に、励みになっています。応援、本当にありがとうございます。「まさかこの曲カバーするの⁉」という驚きも毎回あると思いますが、「今度この曲に挑戦してみてはどうでしょう」とか「この曲が好きです」という声も含めて、皆さんの声をもっともっとお寄せいただくことによって我々も想像もしていなかった世界が見えてくるのではないかと思っています。今後とも楽しみにしていてください。
●イベント情報
『アオペラ aoppella!? -2nd Anniversary Party-』
【開催日時】
2023年5月27日(土)
※物販、展示は27日(土)、28日(日)の両日開催
【開催場所】
横須賀市文化会館
【出演キャスト(予定)】
木村良平、柿原徹也、KENN、浦田わたる、仲村宗悟ほか
※昼の部、夜の部のどちらに出演するかは続報をお待ちください
●リリース情報
『アオペラ -aoppella!?-5』
2023年4月21日(金)発売予定
『アオペラ』公式通販サイト、各法人の特典情報の詳細は下記お知らせページをご覧ください。
https://www.aoppella.com/news/5thcd/
【歌唱】
都立音和高校アカペラ部「リルハピ」メンバー
鈴宮 壱(CV:木村 良平)
丹波 燐(CV:逢坂 良太)
雁屋園 道貴(CV:KENN)
四方 ルカ(CV:柿原 徹也)
宗円寺 雨夜(CV:前野 智昭)
私立奏ヶ坂中学高等学校アカペラ部「FYA’M’」メンバー
是沢 舞斗(CV:小野 友樹)
綾瀬 光緒(CV:豊永 利行)
紫垣 明(CV:浦田 わたる)
宗円寺 朝晴(CV:佐藤 拓也)
猫屋敷 由比(CV:濱野 大輝)
深海 ふかみ(CV:仲村 宗悟)
都立蓮雀高校アカペラ部「VadLip」メンバー
春宮 永臣(CV:内田 雄馬)
柊迫 侃(CV:小野 賢章)
大里 帆波(CV:花江 夏樹)
反郷 粋(CV:八代 拓)
雛乃 秀(CV:増元 拓也)
伊佐 良和(CV:武内 駿輔)
●作品情報
『アオペラ -aoppella!?-』
「青春」×「アカペラ」をテーマにメディアミックスで展開していく、KLabが手掛ける音楽原作プロジェクト。
<ストーリー>
————あの日、少年たちは魅了された。
目の前に立つのは、自分達と同じ普通の高校生。華美な衣装もない。
楽器のセットもない。
それなのに、彼らが口を開けた瞬間、変幻自在のハーモニーが溢れ出し、観客は熱狂する。
「僕たちも、あんな風に歌いたい!輝きたい!」
アカペラ≪無伴奏歌唱≫に魅入られた高校生たちが目指す、
高校生限定アカペラコンテスト『アオペラ』
遥かな高みを目指す、彼らの演奏が今、始まる————!
©KLab
関連リンク
「アオペラ -aoppella!?-」公式サイト
https://www.aoppella.com/
「アオペラ -aoppella!?-」公式Twitter
https://twitter.com/aoppella
佐藤拓也
公式Twitter
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