様々なメディアを横断しながら活躍するオーイシマサヨシ、その真骨頂はライブにこそある! 最新EP「ギフト」を携えて行った神戸・東京でのワンマンライブは、彼の“エンターテイナー”ぶりを目一杯詰め込んだオモチャ箱のようなステージだった。そんな“オーイシマサヨシ ワンマンライブ 2023”。
チケットもソールドアウトし、大勢のファンが詰めかけた2023年3月25日の東京・TOKYO DOME CITY HALL公演を振り返り、アニソンシンガーであり、秀でたエンターテイナーであるオーイシマサヨシのライブの魅力を改めて伝えたい。

TEXT BY 阿部美香

開幕から終演まで、すべてがサプライズに満ちたショータイム!
カタカナ表記の「オーイシマサヨシ」はアニソンシンガーとしてエンターテインメントを追求するんだ!という意思表明を感じさせた1stアルバム『エンターテイナー』から約1年半。この日のTOKYO DOME CITY HALLは、その意思表明をさらに増幅してパッケージングしたかのような、見事なまでに楽しいサプライズの連続だった。

ステージを覆う紗幕にシックな劇場の赤いドレープカーテンが映し出されていた開演前。まず驚かされたのは、客席への注意事項を伝える「影アナ」ボイスを担当したのが、劇場版『グリッドマン ユニバース』にも出演している声優内田真礼だったこと。コロナ禍を経て久々に“声出し解禁”となった喜びをオーディエンスと掛け合いながら伝え、お茶目な語り口で全観客とのコール&レスポンスを練習。早くも色とりどりのペンライトが灯り、今日のライブを象徴するような「一緒に夢のような舞台を作っていきましょう!」の言葉で、客席のテンションがさらに上がる。そんな絶好のタイミングで、パッと紗幕が落ち、真っ白な衣装に身を包んだオーイシが姿を現すと、ビッグヒットナンバー「ようこそジャパリパークへ」を解き放つ。始まったばかりだというのに、これに応えるオーディエンスの気合いの入り方がすごい。ペンライトを振り、オーイシの煽りに応えて共に歌い、手拍子を捧げて飛び跳ねた。

ショーアップされたワクワク感とファンサービスが、セットリストのあらゆる場面に設けられているのもオーイシならではだ。人気ゲーム実況配信者・加藤純一とのコラボ曲「ドラゴンエネルギー」では、コールのセリフを殴り書きしたプラカードを自ら振り上げ、ファンキーな「枕男子」では“電気消して”のコールで会場の照明が消え、オーイシによく似たローディーのタカザワくんが、演出を変えて2度も登場するという、恒例の面白仕掛けも健在。
最新曲「ギフト」では、オーイシの「俺たちの天使です!」という紹介とともに、MVでダンス共演を果たしたキュートなモデル・ウーリャが登場するサプライズも。歌あり、踊りあり、笑えるパフォーマンスも繰り出され、ライブならではのジョイフルを計算し尽くした演出が、オーディエンスの心を掴んで離さない。

そんなエンタメ要素満載のステージ、この日のクライマックスとも言えるド派手なショータイムは、本編後半の「グリッドマン」シリーズ楽曲が惜しみなく披露されたブロックにやってきた。オーイシが「た、大変だみんな!向こうから怪獣が!」と芝居がかった声で叫ぶと、怪獣・ナナシBが出現。オーディエンスとともにダイナゼノンを呼び込んでバトルが展開される中「インパーフェクト」を披露する。続いて、アレクシス・ケリヴとグリッドマンの戦いが繰り広げられた「UNION」。そしてナナシBとグリッドマンがアリーナ席に出現すると、最後はヒーローも敵も一緒にステージに居並ぶ。オーイシの伸びのある輝かしい“ここが僕らのユニバース”の歌声と、勇壮なクワイアコーラスを浴びた劇場版『グリッドマン ユニバース』主題歌「uni-verse」へと、歌でドラマを紡いでいく。ヒーローショーの聖地・東京ドームシティで体感するこの光景は、格別な感慨を与えてくれるものだった。オーイシが作り上げるショータイムは、アニメの世界感を愛する者なら老若男女の誰もが楽しめ、心躍るファンサービスに溢れている。

また、本編終了後のアンコールでは楽曲そのもののサプライズとして、この日はまだ放送前だった4月クールTVアニメ『勇者が死んだ!』のOPテーマ、「死んだ!」も初披露。これもまたファンにとって嬉しいプレゼントとなった。


ファンを仲間にしてしまう「距離感の近いMC」の楽しさ
手厚いファンサービスは、MCパートでも遺憾なく発揮される。アーティストとしての顔以外にも、様々な顔を持つオーイシ。特にアニソンシンガー・オーイシマサヨシ名義においては、“アニソン界のおしゃべりクソメガネ”と自称するように、バラエティ番組にも難なく対応できるトークスキルの高さも魅力だ。そのトークによってファンとの濃密なやりとりが生まれていくのも、彼のライブのお楽しみだ。

この日も、冒頭に「ようこそジャパリパークへ」~「世界が君を必要とする時が来たんだ」の2曲を歌い終えた最初のMCから「MC始まって2秒で“クソメガネ”言われてますけども!」と指摘するオーイシに、(主に男性ファンからの)愛あるヤジが飛びまくる。「ちょちょちょ待って、ガチの悪口言うてるヤツおらへん?」「お前ら、大好きなアーティストさんにそんな悪口吐けるなんて訳分からへん!とか言われてんねんで?」と反撃すると、客席は大きな笑いに包まれる。そして「まぁまぁまぁ、それも含めて愛やんな」と微笑み、「リスペクトを忘れないこと。人に迷惑をかけないこと。この2つ守ってくれたら、どんな汚いヤジも悪口も、オーイシマサヨシが受け身を取って、笑いと涙と感動に変えていきたいと思います!」と宣言する。

そこには、何年かぶりに声出し解禁になった喜びもあっただろう。オーイシの柔らかな関西弁の語り口で織りなされるファンとの無邪気な戯れは、これまでいくつものライブを重ねて築き上げたファンコミュニティの温かさを感じさせる。「ギフト」~「オトモダチフィルム」と軽快なダンスを披露した後では、ステージ中央の椅子に背中を丸めてへたり込んで酸素缶をシューシューと吸い込む姿もありのままに共有。
そんな面白い景色が見られるのも、リアルライブの楽しさだ。MCパートのたびに、ステージがどんどん温かい空気に包まれていくのがよく分かる。

そんなファンコミュニティの力が最も感じられたのは、アンコール後に待っていたこの日の最大のサプライズ、2024年3月2日の日本武道館ワンマンライブ決定をファンに報告してからの光景だった。「みんなと一緒に武道館ワンマンを成功させたいと思いますんで……ついてきてください」と、ついに夢を叶えられる感動を分かち合ったその後。改めてファンに感謝の言葉を告げて深々と頭を下げ、終演後の会場に響き渡った「ようこそジャパリパークへ」のBGMに合わせて、客席から湧き上がった大合唱と手拍子。オーイシは嬉しそうに目を細めながら声を重ね、ステージを歩きながら大きく手を振る。この最高にハッピーなエンディングに、ファンとの確かな絆が見えた。

思わず聴き惚れ見惚れる、卓越した歌唱力と演奏力
オーイシ流エンターテインメントを詰め込んだ “オーイシマサヨシ ワンマンライブ 2023”。この日、今さらながら痛感したのは、アニソンシンガーという肩書きを超えた“アーティスト”・オーイシマサヨシの卓越した実力だ。ローからハイまでテンションを自在に操るダイナミクスに満ち、湧き上がるグルーヴに溢れたキレのある歌声は、どんな曲調であっても(例えダンスを踊りながらでも!)決して揺るがず、オーディエンスを音楽に浸りきる世界へと鮮やかに誘ってくれる。

どの楽曲にも聴き惚れてしまった今回のステージだが、特に圧巻だったのは、ガットギターを弾き語る優しい歌声の「ぼうやの夢よ」でインターバルを置いた後に披露された、「碧い砲撃」から「英雄の歌」のブロックだ。「碧い砲撃」では激しいロックサウンドを射抜くように、目も覚める強烈なハイトーンが叩きつけられ、シンフォニックな「英雄の歌」では、伸びやかでクリアな歌声が、彼の特徴である深いビブラートによってキラメキとスケールを増していく。
ヒーローソングらしくパワフルな「グリッドマン」シリーズの楽曲でも感じることだが、オーイシのナチュラルにブライトな高音は、どんな苦難に襲われようとも強い意志を持って希望に向かう、といったテーマが多いアニメソングというジャンルにとてもよく似合う。

歌の素晴らしさと同時に再確認されたのが、アコースティックギタリストとしての鮮やかなテクニックだ。バンド・Sound Scheduleのギターボーカルとしてのアンサンブルを経て、“漢字・大石”こと弾き語りにこだわるシンガーソングライター・大石昌良としての音楽活動で長年培われてきた見事な演奏技術は、オーイシ名義のアニソンもよりゴージャスに彩る。うねるラテングルーヴの「楽園都市」、ブラスサウンドも輝かしい超ファンキーな「枕男子」ではキレのいいギャロッピングとカッティングが光り、本編ラストを多幸感たっぷりに飾った「君じゃなきゃダメみたい」では、1音1音が粒立つ、おなじみの見事なスラッピングで魅了した。もちろん、そんな彼のステージを支えるバンドメンバーもテクニシャン揃い。オーイシのライブは、生でしか味わえないハイレベルのアンサンブルを聴く楽しみも大きい。

「40歳で辞めようと思った」オーイシが見せる次の景色は?
技術力、演出力、そしてオーイシ本人のバラエティに富んだパフォーマンス力で、一分の隙もないエンターテインメント空間を構築した“オーイシマサヨシ ワンマンライブ 2023”東京公演。アンコールのMCでは、アニソンシンガーとして活動を始めた10年前のことを振り返った。

「一番最初のイベントが神宮球場。32歳か33歳の時、2万人の前で(TVアニメ『ダイヤのA』の)OP主題歌を歌ったときのキラメキが、今でも忘れられないんです。でも同時に思ったんです。こんなキラキラした世界、40歳まで歌えるか歌えへんかくらいやなぁと。
本当に、40歳でアニソンシンガー辞めようと思ったんです。でも気づいたら今、43……やっちゃってますねぇ!」と自らを語ったオーイシ。彼が今もオーイシマサヨシとしてアニソンシンガーを続けている理由は「みんなの喜ぶ顔とか、キラキラしてる顔を見たくて見たくて、気づいたら辞め時を見失ってました」。そして「このままもう、おじいちゃんになるまでアニソンシンガーになっちゃおうかな、って今思ってます」と言葉を繋げ、大きな喝采を浴びていた。

最新楽曲のタイトルのように、彼からの“ギフト”に満ちた素晴らしいステージを届けたこの日。今年秋からのオーイシマサヨシ10周年イヤー、そのアニバーサリーを祝う場所として選ばれた約束の地は、来年3月の日本武道館だ。オーイシファンはもちろん、アニソンを愛するすべての人の喜ぶ顔、キラキラした顔を見るために、今度はどんな素敵な仕掛けが用意されるだろうか。大いに期待したい。

オーイシマサヨシ ワンマンライブ 2023
2023年3月25日(土)TOKYO DOME CITY HALL

<セットリスト>
1. ようこそジャパリパークへ
2. 世界が君を必要とする時が来たんだ
3. ドラゴンエネルギー
4. 恋はエクスプロージョン
5. 楽園都市
6. 枕男子
7. ギフト
8. オトモダチフィルム
9. ぼうやの夢よ
10. 碧い砲撃
11. 英雄の歌
12. インパーフェクト
13. UNION
14. uni-verse
15. ロールプレイング
16. 君じゃなきゃダメみたい
(アンコール)
EN1. Hands
EN2. 死んだ!
EN3. エンターテイナー

<バンドメンバー>
Guitar:奈良悠樹
Bass:工藤 嶺
Drums:坂本暁良
Keyboard:岸田勇気
Trumpet:Atsuki(FIRE HORNS)
Saxophone:黒川和希(FIRE HORNS)
Dancers:きぬこ、藤 晃菜

ゲスト:グリッドマン、ダイナゼノン
サプライズゲスト:ウーリャ

●ライブ情報

さよなら中野サンプラザ音楽祭
日時:2023年6月1日(木)開場 17:30/開演18:30
会場:中野サンプラザ(東京)

オーイシマサヨシ 日本武道館ワンマンライブ
日程:2024年3月2日(土)
会場:日本武道館

関連リンク
大石昌良(オーイシマサヨシ)公式サイト
https://www.014014.jp/

大石昌良(オーイシマサヨシ)公式Twitter
https://twitter.com/Masayoshi_Oishi
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