現在のアニメ音楽シーンを語るうえで欠かせないアーティストが多数所属する音楽レーベル・SACRA MUSIC。その設立5周年を記念し、昨年11月26日・27日に幕張メッセ イベントホールで開催された音楽フェス“SACRA MUSIC FES.2022 -5th Anniversary-”の映像がついにパッケージ化。
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
PHOTOGRAPHY BY 平野タカシ
この日だけの豪華コラボも!熱いステージ連発の前半戦
2017年4月1日に発足したSACRA MUSICには、ベテランから若手まで様々なアーティストが所属。キャリアもジャンルも多種多様で、音楽的にボーダーレスなところが特徴となっている。そのなかでも随一のエモーショナルさを誇るのがPENGUIN RESEARCH。声優としても活躍する生田鷹司をボーカルに擁する5人組ロックバンドだ。コンポーザーでもある堀江晶太(Ba)をはじめメンバー全員がバンド外でも幅広く活動する凄腕のミュージシャンで(キーボードの柴﨑洋輔は“リスアニ!LIVE”のバンドメンバーでもある)、1番手を飾った今回のライブでは「決闘」「千夜祭」の熱量高い2曲を披露。特に公演当時の最新曲だった「千夜祭」での白熱ぶりは、メンバー全員が高め合いながらひとつの音楽を作り上げるバンド特有のマジックが感じられて熱くなること必至だ。
本公演が行われた2022年11月にデビュー5周年を迎えたシンガーのASCAは、共に人気アニメシリーズの関連曲であり、ライブの鉄板曲となっているアップナンバー「Howling」「RESISTER」の2曲をパワフルに歌唱。ミディアムバラードにおける聴き手を楽曲の世界観に引き込むような表現力も魅力の彼女だが、ここでは広いステージを目いっぱい使いながら会場を熱く盛り上げる、アグレッシブかつ華のある彼女の姿を楽しむことができる。
ちなみに今回のフェスでは、黒須克彦(Ba)、山本淳也(Dr)、白井アキト(Key)、三沢崇篤(Gt)、アンジェロ(Gt)から成るバックバンドが各アーティストのステージをサポート。
そんなフェスらしい魅力がギュっと詰まっていたのが、続いて登場したhalcaのステージ。代表曲「センチメンタルクライシス」では、キーボードのしっとりとした前奏が付け足され、ロマンチック度がいつもよりアップ。田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が提供したハイテンションなアップチューン「誰彼スクランブル」の笑顔と元気いっぱいな様も含め、彼女特有の天真爛漫さが堪能できる2曲だ。
楽曲やライブを通じて等身大の自分を表現している声優アーティストの斉藤朱夏は、今回はアニメタイアップ曲でもある「セカイノハテ」と「パパパ」の2曲を披露。爽快かつエモーショナルな歌声を届けた前者、軽快なグルーヴに乗りながら会場に笑顔を振りまく後者、いずれにも彼女らしいポジティブなメッセージが込められていて、その自由で楽しそうな立ち振る舞いを含め、映像を観たらきっと晴れ晴れとした気持ちになれるはずだ。
ボーカルの幹葉によるソロプロジェクトとなったスピラ・スピカは、彼女らしい天真爛漫なステージを展開。「イヤヨイヤヨモスキノウチ!」では自身の出身地・徳島県の伝統芸能である阿波踊りを行うようアピール。観客だけでなくキーボードの白井にも演奏を止めて踊るように呼びかけ、みんなで“踊る阿呆”になって盛り上がる。2022年を代表するアニソンの1つ「燦々デイズ」(TVアニメ『その着せ替え人形は恋をする』OPテーマ)もまさに燦々とした表情で披露し、こちらも思わず笑顔になってしまう。
SACRA MUSICには声優アーティストも複数人所属しているが、楠木ともりはシンガーソングライターとしても高い評価を得ている。自ら作詞したメジャーデビュー曲「ハミダシモノ」(TVアニメ『魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』EDテーマ)ではタイアップ作品に寄り添いながらもアーティストとしての強い意志を歌に乗せて届ける。
そして斉藤壮馬もまた、声優とシンガーソングライターの2つの顔を持っているアーティスト。今回のフェスには独自のバンドを引き連れて乗り込み、自身もエレキギターを手にして自らの音世界を表現する。憂いを帯びたメロディと歌声にシューゲイザー調のバンドサウンドが激情を加えていく「埋み火」、ドラマチックな曲展開とバンドメンバーによるコーラスが高揚感を演出した「memento」と、ロックなステージングで観客を魅了。彼の声優としての一面しか知らないアニメファンには、ぜひその音楽的魅力も味わってほしい。
麻倉もも、雨宮 天、夏川椎菜によるユニット・TrySailは、何といっても声優でもある3人それぞれの魅力的な三声が折り重なることで生まれる、華やかな歌声のアンサンブルだろう。「ごまかし」でのクールでどこか神秘的な印象も与える表現、そして「はなれない距離」での賑やかな振付も含めたポップで明るいパフォーマンスと、今回はタイプの異なる2曲が収録されているので、彼女たちの多様な魅力に触れることができる。また、珍しく3人とも紫色で合わせた衣装も見どころだ。
フェス前半戦のトリを飾ったのは、2020年、SACRA MUSICにレーベル移籍し仲間入りを果たしたFLOW。アニメのタイアップ曲縛りでライブを行うことができるほど、数々の作品に関わってきた彼らだが、今回の収録曲は『NARUTO -ナルト-』シリーズ関連曲のみで構成。アッパーな「Sign」、沸々と燃え上がる「燈」、藍井エイルを呼び込んでスペシャルコラボで披露した「GO!!!」、そして彼ららしい疾走感と爆発力を備えた「GOLD」を畳みかける。デビュー20周年を感じさせるステージ巧者ぶりと、ベテランになっても変わらないエネルギッシュなパフォーマンスが胸を熱くさせてくれる。
シークレットでLiSAも登場!豪華絢爛な後半戦
シークレットでLiSAも登場!豪華絢爛な後半戦
後半戦のトップバッターを務めたのは、自らを“絶望系アニソンシンガー”と銘打ち、人々が抱く様々な絶望に寄り添う歌を届けるReoNa。その繊細かつ鮮烈な歌声は、今や彼女の代表曲となっている「ANIMA」における渾身のパフォーマンス、絶望の底から光が射していくような照明演出も素晴らしかった「Alive」でたっぷりと堪能することができる。また、4人のダンサーと共に妖しくも魅惑的な世界観を表現した「シャル・ウィ・ダンス?」ではタップダンスも披露。すべての嫌なことを忘れて踊り出したくなるような、彼女らしいアプローチのダンスナンバーになっている。
ボーカリストのみあによる音楽ユニット・三月のパンタシアは、痛くて脆い青春の情景をテーマにした、物語を感じさせる音楽性が特色。特にワンマンライブにおいては、それらの楽曲が連鎖することでひとつの大きなストーリーになっていくところも醍醐味なのだが、楽曲それぞれに備わった魅力はフェスにおいても十分に味わうことができる。本作には、n-buna(ヨルシカ)が提供した「青春なんていらないわ」とTVアニメ『カッコウの許嫁』のEDテーマ「四角運命」の2曲を収録。なかでも後者での揺れる恋心と性急なサウンドを組み合わせた表現は見ものと言えるだろう。
2011年のデビュー以来、数々のアニメ作品の主題歌を歌ってきた藍井エイルは、今回、それぞれ趣きの異なる3曲を伸びやかな美声とともに披露。本公演時の最新曲だった「心臓」での凛としながらも強固な意志が感じられるパフォーマンス、彼女の楽曲では珍しいカントリー調の優しいラブソング「HELLO HELLO HELLO」、そして劇的に展開するバンドサウンドと哀切感を湛えたエモーショナルな歌声がドラマチックな景色を描く「I will…」、そのどれもが心に迫るものになっており、シンガーとしての経験値と表現力の豊かさが伝わる内容だ。
2021年にSACRA MUSICへ移籍し、昨年には「第73回NHK紅白歌合戦」に初出場するなど、アーティストとしてさらに大きく羽ばたいているAimerは、その「紅白」でも歌唱した熱狂渦巻くブラスロックチューン「残響散歌」を披露。さらに梶浦由記の作曲らしい大河のように大きくうねる旋律が印象的な「朝が来る」を続けて歌い、『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』の過酷な運命の中に一筋の希望を見出すような世界観を、幕張メッセのステージに現出させる。
クララとカレンによる音楽ユニット・ClariSは、2019年に行われた前回の“SACRA MUSIC FES”にも出演していたが、そのときはまだ仮面を被っての出演だったが、今回は素顔でのパフォーマンス。2022年の最新ヒット「ALIVE」(TVアニメ『リコリス・リコイル』OPテーマ)と、彼女たちの代名詞的ナンバー「コネクト」(TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』OPテーマ)を、動作の1つ1つに意味がある華麗な振付とともに表現していく。その魅力は映像でないと体験できないものだ。また前回のフェスに続いてTrySailとのコラボも実現。TVアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 Final SEASON ー浅き夢の暁ー』最終話EDテーマ「オルゴール」の貴重なライブ初披露ということで、ファンならずとも必見の映像となっている。
フェス本編のトリを飾ったのは、作曲家の澤野弘之によるボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]。澤野自身のピアノを含むバンドの熱量高い演奏、5面の変形スクリーンを用いた映像演出、そして楽曲ごとにその世界観に合ったボーカリストを迎えて表現されるシネマティックなステージは、映像に寄り添う音楽・劇伴というジャンルで絶大な支持を得ている澤野だからこそのライブと言えるだろう。SennaRinが幻想的なボーカルを聴かせた「βios」、Lacoの朗々とした歌声が空まで響き渡る「Hands Up to the Sky」、ReoNaとのダークな「time」、さらにSawanoHiroyuki[nZk]の原点とも言うべきAimerとの「RE:I AM」における深いエモーション。そのすべてが映像として残されていることに感謝したい。
そしてアンコール、シークレットアーティストとしてステージに登場したのが、LiSA。
以上、全16組39曲。そのどれもが見応えのあるステージであるばかりでなく、アニメ音楽シーンの最前線を映すようなラインナップとセットリストになっていることからも、SACRA MUSICに所属するアーティストの幅広さと充実ぶりが伝わるはずだ。またそれと同時に、5周年の先に広がるレーベルの未来をも期待させる一枚となっているので、現場に居合わせた人も、残念ながら行くことのできなかった人も、ぜひ本映像作品でライブを追体験してほしい。
●リリース情報
「SACRA MUSIC FES. 2022 -5th Anniversary-」
発売中
【初回生産限定盤(Blu-ray)】
品番:VVXL-126~7
価格:¥10,000(+税)
【通常盤・初回仕様(Blu-ray)】
品番:VVXL-128
価格:¥7,500(+税)
<収録内容>
01 決闘 / PENGUIN RESEARCH
02. 千夜祭 / PENGUIN RESEARCH
03. Howling / ASCA
04. RESISTER / ASCA
05. センチメンタルクライシス / halca
06. 誰彼スクランブル / halca
07. セカイノハテ / 斉藤朱夏
08. パパパ / 斉藤朱夏
09. イヤヨイヤヨモスキノウチ! / スピラ・スピカ
10. 燦々デイズ / スピラ・スピカ
11. ハミダシモノ / 楠木ともり
12. タルヒ / 楠木ともり
13. 埋み火 / 斉藤壮馬
14. memento / 斉藤壮馬
15. ごまかし / TrySail
16. はなれない距離 / TrySail
17. Sign / FLOW
18. 燈 / FLOW
19. GO!!! / FLOW×藍井エイル
20. GOLD / FLOW
21. ANIMA / ReoNa
22. Alive / ReoNa
23. シャル・ウィ・ダンス? / ReoNa
24. 青春なんていらないわ / 三月のパンタシア
25. 四角運命 / 三月のパンタシア
26. 心臓 / 藍井エイル
27. HELLO HELLO HELLO / 藍井エイル
28. I will… / 藍井エイル
29. 残響散歌 / Aimer
30. 朝が来る / Aimer
31. SPARK-AGAIN / Aimer
32. ALIVE / ClariS
33. コネクト / ClariS
34. オルゴール / ClariS×TrySail
35. βios / SawanoHiroyuki[nZk] (Vo. SennaRin)
36. Hands Up to the Sky / SawanoHiroyuki[nZk] (Vo. Laco)
37. time / SawanoHiroyuki[nZk] (Vo. ReoNa)
38. RE:I AM / SawanoHiroyuki[nZk] (Vo. Aimer)
39. 炎 / LiSA
関連リンク
SACRA MUSIC オフィシャルサイト
https://sacramusic.jp/
SACRA MUSIC オフィシャルTwitter
https://twitter.com/sacramusic_jp
2日間にわたる祭典の中から全16組39曲のパフォーマンスを収めたBlu-rayが、4月12日にリリースされた。本稿ではその見どころをアーティストごとに紹介。レビューを通じてSACRA MUSICの特色と魅力に迫る。
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
PHOTOGRAPHY BY 平野タカシ
この日だけの豪華コラボも!熱いステージ連発の前半戦
2017年4月1日に発足したSACRA MUSICには、ベテランから若手まで様々なアーティストが所属。キャリアもジャンルも多種多様で、音楽的にボーダーレスなところが特徴となっている。そのなかでも随一のエモーショナルさを誇るのがPENGUIN RESEARCH。声優としても活躍する生田鷹司をボーカルに擁する5人組ロックバンドだ。コンポーザーでもある堀江晶太(Ba)をはじめメンバー全員がバンド外でも幅広く活動する凄腕のミュージシャンで(キーボードの柴﨑洋輔は“リスアニ!LIVE”のバンドメンバーでもある)、1番手を飾った今回のライブでは「決闘」「千夜祭」の熱量高い2曲を披露。特に公演当時の最新曲だった「千夜祭」での白熱ぶりは、メンバー全員が高め合いながらひとつの音楽を作り上げるバンド特有のマジックが感じられて熱くなること必至だ。
本公演が行われた2022年11月にデビュー5周年を迎えたシンガーのASCAは、共に人気アニメシリーズの関連曲であり、ライブの鉄板曲となっているアップナンバー「Howling」「RESISTER」の2曲をパワフルに歌唱。ミディアムバラードにおける聴き手を楽曲の世界観に引き込むような表現力も魅力の彼女だが、ここでは広いステージを目いっぱい使いながら会場を熱く盛り上げる、アグレッシブかつ華のある彼女の姿を楽しむことができる。
ちなみに今回のフェスでは、黒須克彦(Ba)、山本淳也(Dr)、白井アキト(Key)、三沢崇篤(Gt)、アンジェロ(Gt)から成るバックバンドが各アーティストのステージをサポート。
生演奏だからこその熱気に満ちたパフォーマンス、そして楽曲によっては本公演ならではのアレンジが加えられているところもまた、今回の映像作品の注目ポイントと言えるだろう。
そんなフェスらしい魅力がギュっと詰まっていたのが、続いて登場したhalcaのステージ。代表曲「センチメンタルクライシス」では、キーボードのしっとりとした前奏が付け足され、ロマンチック度がいつもよりアップ。田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が提供したハイテンションなアップチューン「誰彼スクランブル」の笑顔と元気いっぱいな様も含め、彼女特有の天真爛漫さが堪能できる2曲だ。
楽曲やライブを通じて等身大の自分を表現している声優アーティストの斉藤朱夏は、今回はアニメタイアップ曲でもある「セカイノハテ」と「パパパ」の2曲を披露。爽快かつエモーショナルな歌声を届けた前者、軽快なグルーヴに乗りながら会場に笑顔を振りまく後者、いずれにも彼女らしいポジティブなメッセージが込められていて、その自由で楽しそうな立ち振る舞いを含め、映像を観たらきっと晴れ晴れとした気持ちになれるはずだ。
ボーカルの幹葉によるソロプロジェクトとなったスピラ・スピカは、彼女らしい天真爛漫なステージを展開。「イヤヨイヤヨモスキノウチ!」では自身の出身地・徳島県の伝統芸能である阿波踊りを行うようアピール。観客だけでなくキーボードの白井にも演奏を止めて踊るように呼びかけ、みんなで“踊る阿呆”になって盛り上がる。2022年を代表するアニソンの1つ「燦々デイズ」(TVアニメ『その着せ替え人形は恋をする』OPテーマ)もまさに燦々とした表情で披露し、こちらも思わず笑顔になってしまう。
SACRA MUSICには声優アーティストも複数人所属しているが、楠木ともりはシンガーソングライターとしても高い評価を得ている。自ら作詞したメジャーデビュー曲「ハミダシモノ」(TVアニメ『魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』EDテーマ)ではタイアップ作品に寄り添いながらもアーティストとしての強い意志を歌に乗せて届ける。
作詞だけでなく作曲も手がけた「タルヒ」での、誰一人置いていくことのない優しい言葉と歌い口からは、彼女が音楽を通して表現したいことが伝わってくるはずだ。
そして斉藤壮馬もまた、声優とシンガーソングライターの2つの顔を持っているアーティスト。今回のフェスには独自のバンドを引き連れて乗り込み、自身もエレキギターを手にして自らの音世界を表現する。憂いを帯びたメロディと歌声にシューゲイザー調のバンドサウンドが激情を加えていく「埋み火」、ドラマチックな曲展開とバンドメンバーによるコーラスが高揚感を演出した「memento」と、ロックなステージングで観客を魅了。彼の声優としての一面しか知らないアニメファンには、ぜひその音楽的魅力も味わってほしい。
麻倉もも、雨宮 天、夏川椎菜によるユニット・TrySailは、何といっても声優でもある3人それぞれの魅力的な三声が折り重なることで生まれる、華やかな歌声のアンサンブルだろう。「ごまかし」でのクールでどこか神秘的な印象も与える表現、そして「はなれない距離」での賑やかな振付も含めたポップで明るいパフォーマンスと、今回はタイプの異なる2曲が収録されているので、彼女たちの多様な魅力に触れることができる。また、珍しく3人とも紫色で合わせた衣装も見どころだ。
フェス前半戦のトリを飾ったのは、2020年、SACRA MUSICにレーベル移籍し仲間入りを果たしたFLOW。アニメのタイアップ曲縛りでライブを行うことができるほど、数々の作品に関わってきた彼らだが、今回の収録曲は『NARUTO -ナルト-』シリーズ関連曲のみで構成。アッパーな「Sign」、沸々と燃え上がる「燈」、藍井エイルを呼び込んでスペシャルコラボで披露した「GO!!!」、そして彼ららしい疾走感と爆発力を備えた「GOLD」を畳みかける。デビュー20周年を感じさせるステージ巧者ぶりと、ベテランになっても変わらないエネルギッシュなパフォーマンスが胸を熱くさせてくれる。
シークレットでLiSAも登場!豪華絢爛な後半戦
シークレットでLiSAも登場!豪華絢爛な後半戦
後半戦のトップバッターを務めたのは、自らを“絶望系アニソンシンガー”と銘打ち、人々が抱く様々な絶望に寄り添う歌を届けるReoNa。その繊細かつ鮮烈な歌声は、今や彼女の代表曲となっている「ANIMA」における渾身のパフォーマンス、絶望の底から光が射していくような照明演出も素晴らしかった「Alive」でたっぷりと堪能することができる。また、4人のダンサーと共に妖しくも魅惑的な世界観を表現した「シャル・ウィ・ダンス?」ではタップダンスも披露。すべての嫌なことを忘れて踊り出したくなるような、彼女らしいアプローチのダンスナンバーになっている。
ボーカリストのみあによる音楽ユニット・三月のパンタシアは、痛くて脆い青春の情景をテーマにした、物語を感じさせる音楽性が特色。特にワンマンライブにおいては、それらの楽曲が連鎖することでひとつの大きなストーリーになっていくところも醍醐味なのだが、楽曲それぞれに備わった魅力はフェスにおいても十分に味わうことができる。本作には、n-buna(ヨルシカ)が提供した「青春なんていらないわ」とTVアニメ『カッコウの許嫁』のEDテーマ「四角運命」の2曲を収録。なかでも後者での揺れる恋心と性急なサウンドを組み合わせた表現は見ものと言えるだろう。
2011年のデビュー以来、数々のアニメ作品の主題歌を歌ってきた藍井エイルは、今回、それぞれ趣きの異なる3曲を伸びやかな美声とともに披露。本公演時の最新曲だった「心臓」での凛としながらも強固な意志が感じられるパフォーマンス、彼女の楽曲では珍しいカントリー調の優しいラブソング「HELLO HELLO HELLO」、そして劇的に展開するバンドサウンドと哀切感を湛えたエモーショナルな歌声がドラマチックな景色を描く「I will…」、そのどれもが心に迫るものになっており、シンガーとしての経験値と表現力の豊かさが伝わる内容だ。
2021年にSACRA MUSICへ移籍し、昨年には「第73回NHK紅白歌合戦」に初出場するなど、アーティストとしてさらに大きく羽ばたいているAimerは、その「紅白」でも歌唱した熱狂渦巻くブラスロックチューン「残響散歌」を披露。さらに梶浦由記の作曲らしい大河のように大きくうねる旋律が印象的な「朝が来る」を続けて歌い、『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』の過酷な運命の中に一筋の希望を見出すような世界観を、幕張メッセのステージに現出させる。
さらにTVアニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』のEDテーマ「SPARK-AGAIN」を熱唱。その独特の陰影を帯びた歌声の魅力にぜひ浸ってほしい。
クララとカレンによる音楽ユニット・ClariSは、2019年に行われた前回の“SACRA MUSIC FES”にも出演していたが、そのときはまだ仮面を被っての出演だったが、今回は素顔でのパフォーマンス。2022年の最新ヒット「ALIVE」(TVアニメ『リコリス・リコイル』OPテーマ)と、彼女たちの代名詞的ナンバー「コネクト」(TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』OPテーマ)を、動作の1つ1つに意味がある華麗な振付とともに表現していく。その魅力は映像でないと体験できないものだ。また前回のフェスに続いてTrySailとのコラボも実現。TVアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 Final SEASON ー浅き夢の暁ー』最終話EDテーマ「オルゴール」の貴重なライブ初披露ということで、ファンならずとも必見の映像となっている。
フェス本編のトリを飾ったのは、作曲家の澤野弘之によるボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]。澤野自身のピアノを含むバンドの熱量高い演奏、5面の変形スクリーンを用いた映像演出、そして楽曲ごとにその世界観に合ったボーカリストを迎えて表現されるシネマティックなステージは、映像に寄り添う音楽・劇伴というジャンルで絶大な支持を得ている澤野だからこそのライブと言えるだろう。SennaRinが幻想的なボーカルを聴かせた「βios」、Lacoの朗々とした歌声が空まで響き渡る「Hands Up to the Sky」、ReoNaとのダークな「time」、さらにSawanoHiroyuki[nZk]の原点とも言うべきAimerとの「RE:I AM」における深いエモーション。そのすべてが映像として残されていることに感謝したい。
そしてアンコール、シークレットアーティストとしてステージに登場したのが、LiSA。
事前に出演は告知されていなかったが、やはり彼女抜きでは“SACRA MUSIC FES”を締め括ることはできない。LiSAがこの祝祭の結びの楽曲として選んだのは「炎」。『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』の主題歌であり、同アニメとともに大反響を巻き起こした名バラードだ。いくつもの光芒が彼女を囲むように照らされるなか、内に秘めた炎のように熱い想いと願いを届けるように、LiSAは力強く歌唱する。まさに大トリを飾るにふさわしい名演だった。
以上、全16組39曲。そのどれもが見応えのあるステージであるばかりでなく、アニメ音楽シーンの最前線を映すようなラインナップとセットリストになっていることからも、SACRA MUSICに所属するアーティストの幅広さと充実ぶりが伝わるはずだ。またそれと同時に、5周年の先に広がるレーベルの未来をも期待させる一枚となっているので、現場に居合わせた人も、残念ながら行くことのできなかった人も、ぜひ本映像作品でライブを追体験してほしい。
●リリース情報
「SACRA MUSIC FES. 2022 -5th Anniversary-」
発売中
【初回生産限定盤(Blu-ray)】
品番:VVXL-126~7
価格:¥10,000(+税)
【通常盤・初回仕様(Blu-ray)】
品番:VVXL-128
価格:¥7,500(+税)
<収録内容>
01 決闘 / PENGUIN RESEARCH
02. 千夜祭 / PENGUIN RESEARCH
03. Howling / ASCA
04. RESISTER / ASCA
05. センチメンタルクライシス / halca
06. 誰彼スクランブル / halca
07. セカイノハテ / 斉藤朱夏
08. パパパ / 斉藤朱夏
09. イヤヨイヤヨモスキノウチ! / スピラ・スピカ
10. 燦々デイズ / スピラ・スピカ
11. ハミダシモノ / 楠木ともり
12. タルヒ / 楠木ともり
13. 埋み火 / 斉藤壮馬
14. memento / 斉藤壮馬
15. ごまかし / TrySail
16. はなれない距離 / TrySail
17. Sign / FLOW
18. 燈 / FLOW
19. GO!!! / FLOW×藍井エイル
20. GOLD / FLOW
21. ANIMA / ReoNa
22. Alive / ReoNa
23. シャル・ウィ・ダンス? / ReoNa
24. 青春なんていらないわ / 三月のパンタシア
25. 四角運命 / 三月のパンタシア
26. 心臓 / 藍井エイル
27. HELLO HELLO HELLO / 藍井エイル
28. I will… / 藍井エイル
29. 残響散歌 / Aimer
30. 朝が来る / Aimer
31. SPARK-AGAIN / Aimer
32. ALIVE / ClariS
33. コネクト / ClariS
34. オルゴール / ClariS×TrySail
35. βios / SawanoHiroyuki[nZk] (Vo. SennaRin)
36. Hands Up to the Sky / SawanoHiroyuki[nZk] (Vo. Laco)
37. time / SawanoHiroyuki[nZk] (Vo. ReoNa)
38. RE:I AM / SawanoHiroyuki[nZk] (Vo. Aimer)
39. 炎 / LiSA
関連リンク
SACRA MUSIC オフィシャルサイト
https://sacramusic.jp/
SACRA MUSIC オフィシャルTwitter
https://twitter.com/sacramusic_jp
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