スレンダーなシルエットと超絶ガナリヴォイスのギャップで聴き手を魅了するベネチアンマスクがトレードマークの歌い手・超学生。現在、メディアミックスとして4月7日よりTOKYO MX、BS朝日他にて放送開始となったTVアニメ『カワイスギクライシス』のOPテーマを担当している。
楽曲は、オリジナル曲「Untouchable」以来、Jazzin’park(久保田真悟、栗原 暁)と前田 佑が書き下ろした「スペースキャットビッグバン」。同曲の制作に纏わる話を中心に率直な喜びを伝えてくれた。

INTERVIEW & TEXT BY 小町碧音

めちゃくちゃハッピーな方向にIQが低い
――TVアニメ『カワイスギクライシス』のOPテーマを担当することが決定したときの心境はいかがでしたか。

超学生 アニメが大好きで、日頃からアニメの主題歌を担当するのが夢だと口にしていたので、やっと夢が叶って嬉しかったですね。アニメに関わるのは、全オタクの夢だと思います。

――これまでに『カワイスギクライシス』の原作を読んだことはありましたか?

超学生 タイアップのお話をいただいてから、原作を読ませていただきました。僕が普段読むのは、『僕のヒーローアカデミア』や『鬼滅の刃』のように基本的に決闘シーンのある漫画ばかりだったので、こうしたほんわかとした日常を描いている漫画は、かなり新鮮でしたね。

――動物繋がりではアニメ『しろくまカフェ』がお気に入りだとか。

超学生 そうなんです。僕の好きなアニメのトップを競い合うなかでも『しろくまカフェ』だけはかなり異質な部類に入りますね。ストーリー性があまりなく、男の子たちが頑張って敵と戦うものでもない。この作品は生活必需品であり、癒しとして摂取しています。
YouTubeで動物の動画を観ている感覚に近いものがあるというか。

――『しろくまカフェ』と『カワイスギクライシス』で似ているところはありますか?

超学生 基本的に登場人物がめちゃくちゃハッピーな方向にIQが低いことです(笑)。『カワイスギクライシス』は簡単に言うとツッコミ役がいないような漫画だと思っていて。でも『しろくまカフェ』にはツッコミ役のようなキャラがいる。そういう点でも今まで手に取らなかったのが悔やまれるくらい『カワイスギクライシス』も僕好みの漫画でした。

――どのくらい前から『しろくまカフェ』を観ていたのですか?

超学生 今もループで観続けていますけど、たしか高校を卒業した頃に読み始めたと記憶しています。毎日たくさんの制作をするようになってから、癒しとして『しろくまカフェ』が刺さったんじゃないかな、と。

宇宙へ旅立ってしまわないように工夫した声色
――Jazzin’parkさんたちに「スペースキャットビッグバン」を制作してもらう際に要望したことはありましたか?

超学生 前回書き下ろしていただいた「Untouchable」ではJazzin’parkさんの音とのコラボレーションを楽しみたかったので、ある程度要望しつつも自由に作ってくださいと僕はお伝えしました。でも、今回は1回ご一緒したのもあって、お互いによりスリリングなことをしたくなったのか、打ち合わせ自体が前回よりサラッとしていて。それぞれがアイデアを出していきながらの制作となりました。

――どのようなアイデアが飛び出したのでしょう。

超学生 例えば、曲中に猫が出てくるのでアスキーアートの要素を入れてみるとか、宇宙の浮遊感を表現できそうなフューチャーベース風の音作りをしてみるとか、めちゃくちゃ重い音で作る一方で逆にボーカルをふわふわさせるとか。
色んなアイデアが出たあとに御三方で相談しながら制作をしてくれたそうなんです。実は、僕は完成音源をいただいてから初めて曲を聴きました。

――実際に聴いてみて、いかがでしたか?

超学生 さすがの一言に尽きますね。まず、Jazzin’parkさんは自己紹介がかなり上手なアーティストさんだなと僕は思っていて。猫、宇宙が大きなキーワードになっているこの曲の頭から全力疾走で猫、宇宙を感じさせる言葉が散りばめられていたし。華麗に韻を踏むのもJazzin’parkさんの特徴の1つだと思うんです。“キャットウォーク”と“BlackHole”で韻を踏んでいて、猫と宇宙の世界観に聴き手をしっかり引き込むことができていますよね。Jazzin’parkさんの世界がじんじんと伝わってきて感動しました。



――ボーカル表現について工夫されたのはどこでしょうか。

超学生 第1話で主人公の宇宙人・リザが猫カフェに降り立った際に初めて猫という生物を見て、感情が大暴走するシーンがあるんですよ。そこから、リザは感情の起伏がかなり激しい生物だなと感じたので、色々な方向にコロコロ転がっていく感情を歌唱でも表現しようと思いました。なので、普段の歌ってみたではあまりやらないフレーズごとに歌い方を変えることに挑戦してみましたね。


――かわいらしいオノマトペや言葉が多い曲に対して、あえて太めの発声を意識されていたのが個人的には気になりました。

超学生 気付いていただけて嬉しいです!トラックがかなりポップで浮遊感があるフューチャーベースだったので、僕の声がさらにフワフワしていると宇宙へ旅立ってしまうんですよ(笑)。皆さんにはちゃんと重力を感じてもらうために、今回は基本的に敢えて太めの発声を意識しました。

「Jazzin’parkさんたちとのレコーディングはめちゃくちゃ楽しい」
――レコーディング時は、Jazzin’parkさんたちと一緒でしたか?

超学生 そうですね。Jazzin’parkさんたちとレコーディングエンジニアの方に来ていただいて、皆で録っていきました。

――難しかったところはありましたか?

超学生 セリフの部分ですね。例えば「Untouchable」は「最初に“untouchable”ってダンディな声で言うように」とJazzin’parkさんたちから指示があったんですけど、今回それに相当するのが、単語ですらない“Myao”になっていて。逆にこの“Myao”を太くて艶かしい声で歌うと面白いんじゃないかと思ったんですよね。イメージは固めていたんですけど、なかなかトリッキーなセリフなので声にするのが難しくて。実はこの曲の中で一番録り直している部分でもあります。

――恥ずかしさもあったのでは?

超学生 これまでに歌ってきたボカロ曲には恥ずかしい曲もたくさんあったので、もはや僕の中で恥ずかしいという感覚は死んじゃっていますね(笑)。あとは特に、リズムを取るのが難しかったです。
基本的に4つ打ちの「どんどんどんどん」という進み方なんですけど、時々「2拍223」となったりとか。「どーんどーん」というゆったりとしたリズムなのに、裏ではアルペジオと呼ばれる細かい電子音が動いていたりとかしていて。ただ、それでいて発音自体を楽器として使う要素がかなり大きいんです。例えば“ドックンバックン”とか。韻もたくさん踏んでいるし。リズムが合っていると気持ち良い箇所が何度も登場することを踏まえると、なるべく録音段階で完璧に押さえたい、と挑みました。ディレクションしていただいたJazzin’parkさんたちも同じようなことを強く感じていたと思います。ずっと録っているとだんだん訳がわからなくなってくるので、判断はなるべくJazzin’parkさんたちにお任せしながら進めました。



――ご自身の中で印象に残っている出来事はありますか?

超学生 今回は、プリプロ(レコーディング前に行う準備作業)のときに、「いつも使っているマイクを持っていってみてもいいですか?」とJazzin’parkさんたちにお聞きしてから、トランクケースに入れて持って行ってそれぞれのマイクと比較してみたんですよ。そしたらJazzin’parkさんたちが僕のいつも使っているマイクを「めちゃくちゃ良いね。それにしましょう」と言ってくださって。結果、僕の私物のマイクで録ることになったんです。
録りやすさはもちろん、Jazzin’parkさんたちから見てもこのマイクが合っていると選んでいただけたのがすごく嬉しかったですね。

――全体的に楽しそうなレコーディングですね。

超学生 Jazzin’parkさんたちとの録音はめちゃくちゃ楽しいですよ。みんなでワイワイしながら録るし、良いテイクが録れたときは盛り上がっているのがヘッドホンから聴こえるような現場なんです。御三方ともめちゃくちゃ仲が良いのも素敵だし、どのテイクにするかの判断もすごく早いんですよね。テンポの良さをとっても、Jazzin’parkさんとの現場は特殊なので、今後もまた機会をいただけたら嬉しいなと思っています。

超学生にとっての猫の代替物
――『カワイスギクライシス』にはたくさん猫が登場します。超学生さんは猫が好きですか?

超学生 大好きです。飼ってみたい気持ちもありますけど、1Kに住んでいることもあって、機材で溢れた一部屋しかないんですよ。ずっと大音量の音が出ている部屋で生活してもらうのはかわいそうなので、今は飼えないですね。今後引っ越す機会があって、猫ちゃん用の部屋もほかに用意することができたら、そのとき初めてお迎えできたらいいなと思っています。

――歌い手さんやボカロPさんの猫を飼う確率は高めですよね。


超学生 そうですね。やっぱり、皆さん共通して猫ちゃんが生活しやすそうな大きくて素敵なお家に住んでいますから(笑)。人前でパフォーマンスするお仕事をしていると、インターネットとのギャップに悩まれる方は多いみたいで。もちろん、パートナーの方がいらっしゃったり、ご家族と暮らしていたらいいですけど。1人で生活していると、だんだんと頭がおかしくなってくるんですよ。なので、猫、犬とかの家族がいるのが理想というのがあるみたいです。

――となると、超学生さんにとっての癒しは、やはり。

超学生 僕はずっと頭がおかしくなりながら、代わりに『しろくまカフェ』を心の拠り所として、1人で制作している感じですね(笑)。

超学生は「緊張しない」
――プライベートで、新しくチャレンジしてみたいことはありますか。

超学生 生まれも育ちも東京なので、基本的に東京から全然出ないんですね。強いて言うなら父の実家が千葉なので、遠くに行くことがあってもお隣の千葉に行くくらい(笑)。でもこの前、ラジオなどのプロモーションで大阪と名古屋に行く機会がありすごく楽しかったので、これからは色んなところになるべく行きたいと思っています。今は知り合いのボカロPさんとかと、まずは沖縄に行こうみたいな話をしたり、京都の方が近いから先に京都に行こうと話をしたり。最終的にはオーロラを見たいと話をしているところで(笑)。国内のどこかに足を運んで徐々に行ける場所を広げていって、オーロラまで行きたいです。

――夢のある旅ですね。

超学生 それこそツアーとかの機会をいただいて、色んなところを回ることができると何より嬉しいです。

――今年3月5日に日本青年館で開催された“1stワンマンライブ「入学説明会」”はいかがでしたか?

超学生 練習したことが100%出せたライブになりました。2年前くらいまでは呼んでいただいたライブに出演するとき、すごく緊張していたんです。今年はありがたいことに色々なライブに呼んでいただくことも増えてきていて。そんななかでどこかを境に一切緊張しなくなっちゃったんですよ。多少は、緊張した方がいいと聞くので、初のワンマンで緊張して120%出すことを期待して挑んだんですけど、結果、一切緊張しなくて……(笑)。100%という状態で、特別目立った大きなハプニングとかトラブルが起きることもなかったので、ひとまず良かったかなと思っています。

――例えば、今年、天月-あまつき-さんの実写動画で共演されていましたが、有名な歌い手さんたちとご一緒するときも緊張はしないのですか?

超学生 YouTubeはカメラが目の前にあるだけなので特に緊張しないですね。でも、横に天月-あまつき-さんがいらっしゃることに対する緊張はもちろんありますよ。今年の3月に代々木第一体育館で開催された天月-あまつき-さんのワンマンライブにゲストとして出演させていただいたときも特に緊張はしなくて、むしろかなり楽しめましたね。そこで初めてトロッコに乗ったんですよ。テンションがめちゃくちゃ上がっていたので、もしかしたら101%ぐらいは出せていたかもしれないですね(笑)。

今、叶っているのは“オタクの夢”
――昨年10月28日にPrime Video「仮面ライダーBLACK SUN」の主題歌として起用された「Did you see the sunrise?」でメジャーデビューをされて、歌い手さんたちとの交流も増えてきたなかで今感じていることとは?

超学生 僕は基本的に歌い手の友達が昔はいなかったので、友達がたくさんできてきたことが嬉しいです。今年はありがたいお話をたくさんいただいたおかげで、生活に潤いが出てきている感じがしますね。「ご飯行きましょう」とかお誘いいただくこともあって、今までに経験してこなかった歌い手の人たちとワイワイすることができているのが、純粋に嬉しくて。あとは、10年前から画面の中で見ていたそらるさん、まふまふさん、__(アンダーバー)さんをはじめとした方々と関わることができているのが、ずっと夢のような感覚なんですよ。今回の『カワイスギクライシス』はアニメオタクの夢を叶えさせてもらった形ですけど、最近ゲストで出演させていただくライブとかは歌い手オタクの夢が叶っているような状態なので。どちらも別の視点からありがたいなと思っています。



――いずれにしてもオタクであることには変わりない、と(笑)。

超学生 やっぱり根本がオタクなので(笑)。

――では、最後に「スペースキャットビッグバン」を聴いてくれる人たちに向けてメッセージをお願いします。

超学生 『カワイスギクライシス』のファンの方と、超学生のファンの方も曲を聴いて、思ったこと、感想などをたくさん投げていただけたらありがたいなと思っています。今回は『カワイスギクライシス』のファンの方に喜んでいただけるのが一番なので、『カワイスギクライシス』のファンの方からのコメントをとても楽しみにしています。超学生のファンの方は、超学生が夢を叶えた『カワイスギクライシス』をオープニングからエンディングまでカットせずに観ていただけたら嬉しいです。

――EDテーマは声優アーティストユニット・DIALOGUE+さんの「にゃんぼりーdeモッフィー!!」。元気でかわいいらしい雰囲気の曲でまたガラリと印象が変わりますね。

超学生 OPテーマは、先ほどお話したような解釈で、結果ゴリゴリの低音になったんです。大丈夫かなと心配していたところ、EDテーマでDIALOGUE+の皆さんがしっかりとかわいい声で歌ってくれたので、安心しました(笑)。

●配信情報
超学生
「スペースキャットビッグバン」
作詞・作曲・編曲:栗原暁(Jazzin’park)、久保田真悟(Jazzin’park)、前田 佑

配信リンクはこちら

©城戸みつる/集英社・カワイスギクライシス製作委員会

●ライブ情報
超学生 2nd LIVE

2023年9月10日(日)大阪国際交流センター大ホール
2023年10月22日(日)パシフィコ横浜国立大ホール

関連リンク
超学生
公式サイト
https://chogakusei.com/

公式Twitter
https://twitter.com/tyougakusei

TVアニメ『カワイスギクライシス』公式リンク集
https://lit.link/kawaisugicrisis
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