INTERVIEW & TEXT BY 生内清香
宮野真守が身一つで体現した最高のエンターテインメント
――まず5月31日に映像化のリリースが決まっている、昨年11月~12月に行われた約3年ぶりのツアー“MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022 ~ENTERTAINING!~”はいかがでしたか?
宮野真守 ライブ制作の打ち合わせに入った当時は、コロナ禍でのライブ開催に関して今よりも一進一退の状況で、どういった形のツアーにできるか手探りでした。ただ、どんな形であってもファンのみんなにとってライブの時間はとても尊いものなので、今の自分の最大限の力を出して面白いものを絶対に提供しなければいけないと思いました。コロナ前にやっていたライブよりも演出面での制約はたくさんありましたが、タイトルもあえての“ENTERTAINING!”。エンターテインメントをどう面白く見せられるかはすべて自分にかかっているという使命感を持ってステージに立たないと、みんなを楽しませることなんてできない。縮小されたという印象が残らないような面白いライブをチーム一丸となって作っていきました。でも、エンタメってそういう縛りとか制約があるときにこそ、逆にアイデアやパワーが出たりもするので、今しかできないライブエンターテインメントにできたと思っています。声を出さずにやってみたコール&レスポンスもとても楽しい記憶として残っているし、ファンのみんなが受け入れて一緒に楽しもうとしてくれたことがすごく嬉しかった。僕のライブって、やっぱりファンのみんなとコネクトすることがすごく大事で。例えば、僕が会場に投げキッスする曲もあるじゃないですか。
――「Kiss×Kiss」ですね。
宮野 それに対して、ありがたいことに以前なら声も使って最大の感情を表してくれていたわけじゃないですか。
――幕間映像では遂に漫才に挑戦しましたね。
宮野 コントは“演じる”が入るので役者としてのクッションが入るのですが、漫才はお芝居がきかないからすごくハードルが高いんです。構成作家の伊福部(崇)さんから、時間や規模が限られているなかで何ができるかを考えて漫才はどうかと言われたとき、最初はマジか!と思いました。でも、自分でも納得できたし、やるしかないな、と。漫才師みたいなことやるっていうコントにはなりましたけど(笑)、楽しかったです。
――これまでの幕間映像を振り返って観られたのも楽しかったです。
宮野 そう感じてもらえたのは嬉しいです。
――「制約」という言葉は一切感じないライブでしたよ。
宮野 ライブの印象を聞いた方に「すごく派手でしたね」と言ってもらえたのはすごく嬉しかったです。ビジュアル的な部分でも、今回は衣装の細部まで重要で。舞台装置ではなく、“宮野を派手に飾る”というテーマもありました。だから、ステージを作り込むのではなく、縦のスクリーンを置いて派手な宮野を全身で見てもらえるようにして。スマホを使って、TikTokのような縦型の動画もリアルタイムで映すことしました。
――「TEAM MAMO」の紹介パートですね。終演後に動画サイトにアップもされていたので、帰ってからもう一度余韻に浸ることもできるし、行けない公演の雰囲気を感じることもできて嬉しい演出でした。
宮野 あの動画の発信はツアーならではですよね。次の公演が楽しみになったと思うし。
誰しもが心の中に人知れず燃やす “Quiet explosion”
――そして、23枚目のシングル「Quiet explosion」が発売されました。宮野さんが「ブライアン・ナイトレイダー」役で出演するオリジナルTVアニメ『THE MARGINAL SERVICE』のOPテーマです。出演のお話があったときの作品に対する印象はいかがでしたか?
宮野 すごくワクワクしました。最初はどういう作品になるんだろう?と思いましたが、絶対に面白いものにできると思ったきっかけは、僕の相方を演じるのが森川(智之)さんだったこと。森川さんとのバディは絶対楽しいって想像できました。
――森川さんが演じるゼノ・ストークスに宮野さん演じるブライアン・ナイトレイダーがぶつかっていく関係で。
宮野 ブライアンは無鉄砲な性格のキャラクターなので、思いっきり森川さんにぶつかっていけばいいなと思って、その安心感がありました。バディといってもいがみ合いながら物語が進んでいくので、そこも面白がって観てもらえたらと思います。
――まだ3話が終わったところで、ラバー・スーツの謎もまだまだこれからですが、どんなところが見どころになりそうでしょうか?
宮野 それぞれが抱えているものとか、伏線となるようなエッセンスが張り巡らされてはいるのですが、基本は1話完結で観られる戦いが描かれていくので、ある意味ポップに観ることができると思いますし、ギャグ要素も多いので、そういう部分も楽しんでもらえたらと思います。
――OPテーマの依頼があったときは、曲調などの要望もありましたか?
宮野 ロックで、「破壊」「打破」「創世」といった言葉を使ってほしいとアニメサイドからオーダーをいただき、なるほどと思いました。最終的には「宮野さんの音楽ラインで作ってください」とも言っていただいたので、例えば「BREAK IT!」とかとはまた違うロックで、今の自分が作る音楽としてもっと踏み込んだ内容にしたいと思ったんです。
――今回は最初からstyさんに頼もうと?
宮野 そうですね。今回作りたい楽曲はstyさんが作るロックがフィットすると思いました。「Quiet explosion」は歌い方がとてもテクニカルなんですが、styさんと作ると、R&Bに入っているようなフェイクや細かいビブラートだったり、そういう技を駆使したロックになるので、とてもおしゃれでかっこいいんです。
――「境界線」など、世界観を象徴する言葉が歌詞にも散りばめられていて。
宮野 “幻と現在(うつつ)の間で”という表現もお洒落ですよね。
――テクニカルな歌という話もありましたが、レコーディングはいかがでしたか?
宮野 40歳手前のここにきて、今までで一番ハイトーンな曲という(笑)。そのヒリヒリ感が戦っている感じとして出て結果的によかったと思っているんですが、今までで一番エモーショナルなハイトーンになっていると思います。
――MVは無機質なセットに赤と青の不穏な光の中で歌う演出でした。
宮野 映像監督から、無骨な鉄骨の前でモードな衣装で歌ったらかっこいいのではないかと提案を最初にもらいました。無骨さと粋な感じがミックスされていて面白い仕上がりになりましたよね。作品が持つアンバランスさや境界線みたいなところが表現されていて、それはCDジャケットのビジュアル作りでも同じで。服装はモードだけど、工事現場のような背景に黄色いボードで境界線の質感を出しています。MVのパフォーマンスにダンスを入れたり火花を散らす案も最初はあったのですが、今回はバンドを従えてシンプルに、自分のパフォーマンスで楽曲のメッセージを伝えることにしました。
様々な形の“究極の愛”を描く「Invincible Love」
様々な形の“究極の愛”を描く「Invincible Love」
――「Invincible Love」は3月まで放送されていたTVアニメ『虚構推理 Season2』のEDテーマ。
宮野 (岩永)琴子と九郎の物語がメインで描かれることはあまりないのですが、それでもやはり二人の関係性は動いていて、それが非常に印象的でした。喧嘩したりつかず離れずのように見えて、こんなにも思い合っているんだということが要所要所でわかるので、そこをEDテーマでも描きたいと思いました。Season1のEDテーマは、アニメサイドから「キャラクターを踊らせたい」という話があって、ジャズがいいなと思ったんです。しかもそれが“LAST DANCE”というのが素敵だし、出会ったばかりで恋の駆け引きをしている状況にジャズがぐっとくる。Season2は2人の関係性が進んでいるので、バラードにしたいなというのは元々ありましたし、演じることでより今回の楽曲の在り方が明確になっていきました。
――歌詞はどのように作っていったのでしょうか?
宮野 タイトルに入っている「Invincible」には「無敵の」とか「究極の」という意味があって。色んな登場人物が出てきて、それぞれの愛の形が描かれていくので、そういうオムニバスにもフィットするようにしたいと思いました。
―― “変えられる明日でも君は変わらないで” “正しさなんて人の数だけ”など、随所に散りばめられていますよね。琴子と九郎の関係性はもちろん、聴く人それぞれが男女間に限らず大切な人を想い浮かべることもできて。
宮野 そうなんです。家族の話も『虚構推理』には出てきますからね。僕が一番すごいと思ったのは、“全て賭けるくらいなら いつだってしてあげるから”という部分で。ロマンチックな歌詞だけど、九郎に当てはめるととても意味を持つ言葉ですよね。彼は死ねない体質で痛みも感じない人物のように描かれるけど、僕はそんなわけはないと思いながら演じているんです。人である以上、痛みはまったくなくなることはないから、すごい覚悟のワンフレーズだなと思って。以前に『亜人』で演じた永井 圭も同じ死ねないキャラクターで、「僕は命をかけることができない。だから、命以外のすべてをかけなきゃ割りに合わない」と泣きながら言うシーンがあるのですが、そういうシーンは演じていてもすごく辛いんです。でも、そこは現実にはないアニメだからこその演じる面白さだし、そういう気持ちも演じる側として理解しなきゃいけない。リアルじゃないものにリアルな気持ちを役者としてフィットさせていく作業は、しんどいことも多いですが面白いですよね。
強欲だけど、自分の信念を信じて進んでいく決意の歌
――3曲目を「Greed」にした経緯は?
宮野 3曲入りのシングルが前提としてまずあって、「Invincible Love」はデジタルシングルとして先に配信をしていて、CDになっていないからこのタイミングで入れましょうということになり。さてもう1曲はどうしようとなったとき、ちょうど「TEAM」(前作のアルバム『THE ENTERTAINMENT』収録)を作っていて、作家のTSUGEさんとロックの話になったんです。「TSUGEさんのロックが歌いたいですよ」なんて、冗談半分本気半分で話していたら、TSUGEさんがかっこいいデモを作ってきてくれたので、今回のシングルに入れさせてもらいました。歌詞については考えていなかったので、TSUGEさんがどういう気持ちでこの曲を作ったのか聞いてみようと思ったのですが、いやちょっと待ってよ、と。こういうとき、いつもどうやって歌詞の方向性を決めていたかなって考えたら、その時々の自分の状況を歌詞にしていたことを思い出して。自分のレギュラーラジオで毎年年始に今年の目標を書くのですが、そこで「五兎を追う者は五兎を得る」という謎の名言を残していたんです(笑)。本当は「二兎を追う者は一兎をも得ず」だけど、僕は五兎を追っているな、と。それこそバラエティの初レギュラーがあったり、ドラマや舞台、そして声優と歌にとバラエティに多くの経験をさせてもらっていて、1つの場所にとどまらない自分が強欲だと思ったんです。でも、僕にとって「強欲」って前向きな言葉で。『鋼の錬金術師』で演じたリン・ヤオはグリードと関わりがあってとても馴染みのある言葉でもある。何でもかんでもの「Greed」ではなくて、自分が請け負うとなったものにちゃんと責任を持つというかっこいい言葉で僕は捉えていて、そういうイメージの歌詞を作れないかなと思ってAmonさんにお願いしたら、よりそれを膨らませた歌詞にしてくれました。
――“誰も歩いてない道を拓くなら”というのがまさに宮野さんだと思いました。
宮野 「拓いてやるぜ」じゃなくて、「拓くならブレないで行こう」というところがまたいいですよね。ちゃんと自分の信念を信じていくという決意の歌。“I’m the KING of my own life”という部分は少しびっくりしたというか、「KING」という言葉を遂に使ったか……と(笑)。歌うには勇気がいる言葉でしたけど、自分の人生の中でのKINGだからいいかなと思って。
――これを歌う宮野さんの姿に勇気づけられる人もいると思います。
宮野 「Quiet explosion」は応援をする歌でしたけど、「Greed」は宮野真守はこういう人間です!と歌う曲。だからこの曲を聴いて自分も頑張ろうと思ってもらえるとしたらそれはすごく嬉しいです。
――最後に、6月3日には“宮野真守アニバーサリーライブ~REQUESⅢ~”が開催されます。宮野さんの誕生日も近いですし、ファンの皆さんはいつにも増して楽しみにしていると思います。
宮野 リクエストライブは、カバー曲を歌わせていただけるのもあり、僕自身もいつも真新しい気持ちで楽しめるライブです。今回も色んな曲を歌います。新しいものから、僕が好きだった方の曲とか、宮野のルーツも感じられると思いますし、バラエティに富んだ内容になっています。昼と夜で少しずつ楽曲を変える予定なので、たくさん楽しんでもらえればと思っています。
――15周年の年でもありますし、今年も活躍を楽しみにしています。
宮野 周年というくらいですから、このアニバーサリーライブの先も“強欲”に頑張っていきます!
●リリース情報
23th Single
「Quiet explosion」
4月26日発売
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
品番:KICM-2127
定価:¥1,430(税込)
M1. Quiet explosion(TVアニメ「THE MARGINAL SERVICE」OPテーマ
M2. Invincible Love(TVアニメ「虚構推理 Season2」EDテーマ)
M3. Greed
MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022 ~ENTERTAINING!~
5月31日発売
【Blu-ray】
品番:KIXM-540~1
価格:¥9,350(税込)
初回製造分のみ:スペシャルBOX仕様
Blu-ray特典:ビジュアルコメンタリー
【DVD】
品番:KIBM-965~6
価格:¥9,350(税込)
初回製造分のみ:スペシャルBOX仕様
<DISC1>
MAMORU MIYANO ARENA LIVE TOUR 2022 ~ENTERTAINING!~
2022.12.25 日本ガイシホール
THE ENTERTAINMENT
光射す方へ (Brighter ver.)
Butterfly
ZERO to INFINITY
LAST DANCE (Maozon REMIX)
Theme of ENTERTAINING!
EVERLASTING
透明
Xmas to you
そっと溶けてゆくように
行こう!
Dirty Orange 2022 REMIX
ジャーニー
オルフェ
EXCITING!
TEAM
Kiss×Kiss
MILESTONE
アンコール
<DISC2>
ARENA LIVE TOUR 2022 ~ENTERTAINING!~ SPECIAL EDITION
バックステージメイキングなどを収録予定
関連リンク
宮野真守 オフィシャルサイト
https://www.miyanomamoru.com/
宮野真守 公式Twitter
https://twitter.com/miyanomamoru_PR
宮野真守 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCHzevlEL9JfsBIm86uNCJqg