アーティストデビュー10周年を迎え、声優としてもアーティストしても活動の幅を広げているMachicoが、4月からスタートしたTVアニメ『この素晴らしい世界に爆焔を!』のOPテーマ「STAY FREE」を4月26日(水)にリリース!

これまでTVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』シリーズの楽曲を数多く歌ってきた彼女だが、疾走感のあるロックチューンとは少し違い「STAY FREE」はスケールの大きなロックバラードとなる。この楽曲をどのように表現していったのか、話を聞いた。


INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一

『このすば』にはアーティストとしての夢をずっと叶えてもらっている
――サブスクでMachicoさんを検索すると、人気曲にはTVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』の楽曲が並んでいるんですよね。

Machico そうなんですよ。第1期のOPテーマ「fantastic dreamer」もすごかったですけど、MVの再生数は第2期のOPテーマ「TOMORROW」のほうが多かったりするし、数字的にも評価してもらえているのはありがたいことだなと思います。フェスなどでも必ずセットリストに入れますし、『このすば』楽曲は自分の代名詞になっていますね!

――「映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」の「1ミリ Symphony」も素敵な楽曲ですよね。

Machico 本当に!でも最近歌えていなくて……(笑)。映画で描かれた紅魔の里が舞台のスピンオフ『この素晴らしい世界に爆焔を!』がアニメ化されると発表があったとき、実はOPテーマを歌わせていただくことは決まっていたんですけど、言いたくても(解禁前で)言えないから、いちファンとして応援しています、みたいなツイートをしていた気がします(笑)。ただ、『このすば』と言えばMachicoだから歌ってほしい、という声があったのはすごく嬉しかったです!

――実際、歌えると知ったときはいかがでしたか?

Machico もちろん、すごく嬉しかったです。これまでアニメ、映画、ゲームとずっと歌わせていただいているし、私にとって初のアニメタイアップ曲で、みんなに知ってもらえたきっかけでもある作品なんですよね。作品を背負って歌う楽しさも教えてもらったし、映画館で自分の曲が流れたり、オーケストラコンサートで歌ったり、アーティストとしての夢もずっと叶えてもらっている。だから『爆焔』でも歌えると聞いたときは、どんな曲がくるのか本当に楽しみでした。

――「STAY FREE」を聴いたときはどう思いましたか?

Machico これまでは疾走感のあるロックテイストの曲が多かったし、今回は『爆焔』だから、どんな勢いのある曲がくるんだろう!と思っていたんです。でも「STAY FREE」は、どちらかというとスローテンポの曲だったので、すごく意外で。
理由を聞いたら、監督としてはいつもの『このすば』とは違う感じを、主題歌でも打ち出したい!と思っていたみたいなんです。

――「STAY FREE」は、大きなロックという感じでしたね。重量感があるサウンドでしたし。

Machico 「fantastic dreamer」や「TOMORROW」って、地に足をつけて励ます!という感じでしたが、今回は森に風が吹き抜けるみたいな雰囲気というか。同じ目線というより、大きな空間で捉えて、めぐみんたちを支え、時に導くような立ち位置の曲なんですね。なので、これまでのように近くで応援という感じではないんですよ。

――実際歌うときは、どんなことを意識したのですか?

Machico 今回は成長譚のようなもの。そういうイメージで歌ってほしいと言われたので、30年生きてきた人生の先輩として、誰かを導けるような歌を歌えたら良いなと思いました。なので、あまり細かいストーリーがどうとか、『このすば』だからとかはイメージせずに……というよりイメージしたとしても『このすば』って裏切ってくるんですよ!「fantastic dreamer」も、すごい冒険に出そうだなと思って歌ったら、思い切り裏切ってきたし(笑)。歌うにあたって作品の世界観はめぐみんたちの印象だけにとどめておいて、歌は歌で完璧な世界観を仕上げて、そのギャップを楽しんでもらえたらいいなと思っていました。

――たしかに、『このすば』はそういう一面もある作品ですもんね(笑)。

Machico 技術的な部分だと、自分の中で鼻濁音へのこだわりがあるのですが、アップテンポな曲だと、それを強く意識するほどトゲトゲしくなってしまうんです。
なので、この曲は鼻濁音を柔らかく歌うように気をつけていました。そこも長く続けてきたからこそ出せる新たな一面ということで、歌声でも成長を見せられたらと思っています!

――31歳になった直後に配信番組もしていましたけど、年齢を強調していってますね(笑)。

Machico 30代を懸命に生きてます(笑)。そう考えると、日本コロムビアさんにお世話になって7年くらいになるんですよね。こんなに長く一緒にやらせていただいて、『このすば』シリーズでもお世話になって、しかもベースのMachicoチームはそれほど変わっていないんです。

――異動が多いのがレーベルというものなのに!

Machico そうなんです!結構珍しいことだと言われました。でもこうやって長く歌でご一緒できるのは嬉しいし、プライベートでもご飯に行ったりして、仕事だけの関係でない場所というのは、自分でも特別です。さっきもディレクターとキャッチボールをしていましたし(笑)。

――(笑)。ではアレンジ含めて、完成した楽曲を聴いていかがでしたか?

Machico 低い音域で最後までいく感じがMachicoの曲の中では珍しいなと思いましたし、恐らくデビュー当時だったら出ていないキーなんですよ。私は低音が苦手で、女性の歌でもキーを2つくらい上げないと丁度良いキーにならなかったんですけど、歳を重ねると声も低くなってきたみたいで、こういう部分は良かったと思っています。高いキーが出せなくなったわけでもないので。


――単純に音域が広がったんですね。

Machico そうなんです。低音が安定するようになったのが自分的には嬉しくて。キャラソンのレコーディングでも、エンジニアさんに「低音でキャラの声を出すのが安定してきましたね」って褒めていただけて、嬉しかったんです。

――アニメが始まりましたが、Machicoさん的にめぐみんとゆんゆんの関係をどう見ていますか?

Machico お互いツンケンしていますけど、同じ思考だから友達になれるかといったら、そうではないと思っていて。自分の持っていないところであったり、自分の許容範囲内でぶつかれる相手のほうが友情や絆を深められると思うので、無意識に刺激しあっている2人なのかなって思います。

「汚れながら掴み取らないと」
――では「STAY FREE」の歌詞で『爆焔』らしさを感じるところといったらどこでしょう?

Machico めぐみんって自分が憧れている爆烈魔法をネタ魔法と言われて、自分の夢を否定されているわけですよね。現実世界でも夢ってそうそう叶わなかったり、叶えるまでにネガティブな壁がたくさんあるんです。でも、それがあるからこそ目標を達成したときに嬉しさが倍増する。だからこそ、「導く」が自分の中でキーワードだったんです。遠回りすることは無意味じゃないんだよっていうことを、聴いている人にも届けることができたらいいなと思いました。

――Machicoさんも、そういう経験があるからこそこの楽曲を歌えるのでしょうね。


Machico でも私って、夢が運良く叶ってしまったタイプなんですよね。オーディションで引っ掛かって今があるので、「デビューする」という夢を追う時間自体は短かったんです。でもそのぶん、デビューしてからは辛い思いをたくさんいっぱいしたんですけど……(笑)。

――叶えてからが大変な世界ですもんね。

Machico 大変でしたねぇ。同世代の子を見ても、自分より上がいくらでもいたので。ただありがたいことに私は負けず嫌いだったので、絶対に!って思っていました(笑)。だから、頑張っているときにこういう曲があったら、自分もより頑張れたのかなって思いました。年齢のことばかり話してしまいますけど、キャリア的に10周年を迎えて、先輩として振る舞わなければいけないことも出てきて。下の世代を見守るという精神は20代後半ではなかなか難しい感情だったので、今だからこそ大きな視点で、それこそ風になって歌うことができたのかなって思います。

――負けず嫌いというところは、歌詞でいう“泥だらけでもいいよ”などに当たるかもしれないですね。

Machico やっぱり汚れながら掴み取らないと(笑)。
理想としてはきれいに、苦労もなくいきたいですけど、いざそうなったら私は自分を保てないかもしれないです。良かったのは、私の近くにはアドバイスをしてくれる人がいたんですよね。それを言ってくれない現場もあるなかで、何かを言ってくれる人のありがたさを痛感しているというか……褒めてもらうことに慣れてしまったらお終いだと思うんです。怒られなくなったら終わりだし、自分の意見がすべて通るようになってしまったら道を踏み外すと思うので、正直に言ってくれる人のそばにいるようにしています(笑)。

――大事なことだと思います。ちなみに歌詞の話でもう1つ、“爆焔”と書いて“まほう”と歌っているのが良いですね!

Machico 『このすば』は毎回タイトルを彷彿させるワードが歌詞に入っているので、歌詞カードを見ないと届かないサプライズなメッセージになっています。

――そしてMVでは、マチルダ先生としてお芝居をしていますね。

Machico 今回はMVも今までと雰囲気を変えたいと思い、監督も女性の方で、ストーリー仕立てのMVになっています。子役の演者さんに頑張っていただいたので、私の出番はほぼなくてこんなにスムーズに撮影が終わるのか!みたいな感じでした(笑)。待っている時間のほうが長かったかも。ストーリーは、引っ込み思案な子が、自分の個性を信じきれずに魔法を出せずにいるんですけど、学校がピンチになって部屋の明かりが欲しいときに、自分の個性の火の魔法を使い、周りのみんなに認められるというものになっています。

――ストーリー仕立て、というのは誰の案だったんですか?

Machico 私です!MVについては監督と一緒に打ち合わせをしました。
今回はファッションの相談もしたのが新鮮で、監督がイメージした案を元にチームで衣装を発注したり、一緒に1つの作品を作り上げていく感じがすごく楽しかったです。あと、撮影では子役たちのアドリブ力がすごかったんですよ!私は決められたことしかしゃべれないんですけど、子どもたちはアドリブでお芝居するんです。しかも体と表情を使って!子どもたちから刺激をもらいましたね。

――カップリングの「星の旅は夢うつつ」も、ゆったりとしたお洒落な楽曲でしたね。

Machico 「STAY FREE」がバラードなので、どういう曲にしようか悩んだんですけど、今回はカップリングもスローテンポなものがいいのかもしれないと思いまして。最近はボカロPさんの楽曲に勢いがあるし、自分も好きだから、今っぽいものに挑戦したいという話になり、Airaさんにお願いすることになりました。実際、すごく大人っぽさもあり、最近のサウンド感もある。初めて聴いたときから、なんてきれいな曲なんだろうと思いましたね。オルゴールっぽいイントロも素敵だし、澄んだ音がすごく良くて。ただメロディは難しくて、リズムの取り方や高音が多いのは大変でした。私が譜割りを間違えて覚えてしまっていたこともあり、レコーディング当日はかなり苦労をした記憶があります。

――歌詞については、どう捉えて表現をしたのでしょうか。

Machico 大切な人を失ってしまったけれど、自分はこの世界でいなくなった君の分まで前へ進んでいくから、傍で見ていてね、という気持ちで歌っているんです。大人だからこそ、我慢の裏にある必死さとかを、歌で表現できたらいいなと思いながら歌いました。

――その解釈はAiraさんに聞いたのですか?

Machico 実は聞いてないんですよ。なので、これはMachico個人の解釈ですと書いておいてください(笑)。

●リリース情報
TVアニメ『この素晴らしい世界に爆焔を!』オープニング・テーマ
Machico
「STAY FREE」
4月26日(水)発売

■mora
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【限定盤(CD+DVD)】

品番:COZC-1996~7
価格:¥2,090(税込)

【通常盤(CD)】

品番:COCC-18112
価格:¥1,430(税込)

<CD>
1.STAY FREE(TVアニメ『この素晴らしい世界に爆焔を!』OPテーマ)
作詞・作曲:岩崎貴文 編曲:水口浩次
2. 星の旅は夢うつつ
作詞・作曲・編曲:Aira
3. STAY FREE(off vocal ver.)
4. 星の旅は夢うつつ(off vocal ver.)

<DVD>
「STAY FREE」ミュージックビデオ+メイキング映像

関連リンク
Machico オフィシャルサイト
https://machi.co/

Machico 公式Twitter
https://twitter.com/MachicoOfficial
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