作曲家の俊龍による音楽プロジェクト・Sizukの通算3作目となるデジタルシングル「夏を呼ぶ声」が、5月3日に届けられた。俊龍が楽曲ごとに様々なクリエイターや歌い手とコラボレーションを行う本プロジェクト。
INTERVIEW & TEXT BY 河瀬タツヤ
旋律と歌詞が呼び起こす、夏の情景と青春の揺れ動く気持ち
――俊龍さんが今年1月にSizukとしてアーティストデビューしてから早くも3枚目のリリースとなります。今回の新曲「夏を呼ぶ声」は“夏が聴こえる青春歌”というコンセプトですが、ここまでストレートに爽やかな雰囲気は、これまでの俊龍さんの楽曲にはあまりなかったように感じます。
俊龍 たしかに、今回の楽曲のような爽やかさは久しぶりかもしれないですね。この楽曲のリリース時期である5月は春からの延長ではありますが、夏を待ち侘びていたり、夏が一足先に来ていたりという季節なので、夏の切なさがありつつも爽やかでパッと開けるようなメロディとサウンドにしたいと思って作り始めました。
――今回の「夏を呼ぶ声」では、ゲストボーカルにハコニワリリィのKotohaさんを起用していますね。
俊龍 Sizukとしては、今回の「夏を呼ぶ声」のような爽やかな曲はもちろん、女の子らしいかわいい楽曲も作っていきたいという思いがありました。そのどちらも表現できるようなボーカリストを探していたときに、Kotohaさんの(YouTubeの)動画を見つけたんです。Kotohaさんの歌声は透明感やフレッシュさだけではなく、聴いた人が「良い声だな」と思える“何か”があると感じていて、例えるなら、“透明で澄み切った水に、きれいな青色のインクを一滴だけ垂らしたような歌声”で。そんな歌声は自分にとって初めてだったので、もし一緒に作品を作ったら今までとは違う心持ちで作ることができるのではないかと思い、今回お願いしました。
Kotoha ありがとうございます!そういった表現は初めて言われました(笑)。
――逆にKotohaさんは俊龍さんの楽曲にはどんな印象を持っていらっしゃいますか?
Kotoha 俊龍さんの楽曲はすごくポップで耳に残るようなメロディで、歌っていてとても楽しいんです。今回は夏をイメージした爽やかな楽曲で、自分(の歌声)に合うテイストだったのも印象的でした。練習のために何度も今回の楽曲を聴いたんですけど、楽曲を覚えること自体が楽しかったです。
――Kotohaさんがおっしゃるように耳に残るキャッチーさは今作でも存分に発揮されています。今回の「夏を呼ぶ声」について、俊龍さんのイメージは具体的にどういったものだったんでしょうか?
俊龍 簡単に言えば、“若い女性を主人公にした季節感のある青春ソング”を作りたいと思ったんです。この楽曲の主人公は恋をしているのですが、もしかしたらその恋は叶わないかもしれない。でもキラキラした夏の季節はすぐそこまでやってきている。そんな主人公が理由もなく叫びたくなったり、駆け出したくなったりするという衝動と、セミが鳴いているような夏の青い空と白い雲という風景の両方が描ければと思っていました。
――たしかに風景がすごく浮かぶ楽曲です。Kotohaさんは今回の楽曲はどういった曲だと感じましたか?
Kotoha 「夏をテーマにした爽やかな楽曲なので、爽やかなテイストで歌ってほしい」ということだったんですけど、歌詞のところどころに闇がある気がしたんです。歌詞の最初の“きっとまだ 半分しか 正しい答えが わからない”とか、“優しさから 残酷な 影も 生まれるのは なぜ?”とか。夏で爽やかだけど、未来を少し不安に思っている女の子のリアルな気持ちを歌詞に乗せているようで、全部が明るいだけでは終わらない、少し闇を感じるようなこの歌詞が私は好きですね。
――特に2番の歌詞はだいぶ闇を匂わせていますよね。俊龍さんがメロディを作っている時点で、この方向性は狙っていたんですか?
俊龍 そうですね。ポジティブになるときと、ネガティブになってしまうときを行ったり来たりするのが “青春あるある” なので、その心情をすごくきれいな言葉で(今回作詞を担当した)松井五郎さんがしたためてくれました。松井さんはこの曲の歌詞に関してTwitterでつぶやいていらっしゃったんですが、あのお言葉にはすごく感動しましたね。
俊龍さんの
プロジェクト
Sizukに作詞で参加
ビジュアルイメージも
添えられた
デモ音源には
どんな世界を
描きたいかが
明確にあって
その意思に
身を委ねれば
然るべき所に
着地できると
思った
メロディに漂う
清涼感とNostalgie
そこには
誰もが一度は見た
風景がある https://t.co/yKw5tZiyi4
— Goro Matsui Works (@GML2014) April 8, 2023
――松井五郎さんは40年以上作詞家として活動している大ベテランで、俊龍さんとも石原夏織さんの「Face to Face」などで一緒にお仕事をされていますね。
俊龍 以前、ゆいかおりの「Intro Situation」という夏の曲でご一緒させていただいたときは、ネガティブさのないかわいい曲に対して、瑞々しく弾けるようなキラキラした歌詞を書いていただいたんです。今回の「夏を呼ぶ声」は、夏の曲というテーマは「Intro Situation」と似ているけれど、テイストは少し違った曲になったので、「この曲にもし歌詞を書いていただけるとしたら、どういう言葉で作品に彩りを与えてくださるだろう?」と思い、今回お願いしました。
――そんな松井さんの歌詞のなかでお気に入りのフレーズはありますか?
俊龍 自分は最初の“風が光を変える”。ただ単にパッと変わるのではなくて、風が吹く時間によって色彩的にも変わっていくのが良いですね。あとは、1番サビの“咲いたひまわりが 夏を連れにゆく”。ひまわりが周り一面に咲いているけど切なさも感じさせるような表現になっていて、ここは歌詞の中で唯一黄色をイメージする言葉なので、(曲全体を)よりカラフルにしていただけたと感じました。
Kotoha このフレーズだけで風景が浮かびますよね。
――ここから2番で“優しさから 残酷な 影も 生まれるのは なぜ?”ですからね。
俊龍 情緒が(笑)。
Kotoha でも曲調はとても爽やかで、サビは結構力強く歌っているので、その対比もすごくいいですよね。
――ちなみに、お二人の青春時代の夏の思い出はありますか?
俊龍 自分は中学生のときに野球をやっていて、泥だらけになったあとに清涼飲料水をみんなで飲んでボーっとしていたり、ほかの部活の何人かの男女とともに話しながら帰ったり、何かあったというわけではないのですが、そういう風景が浮かびます。
Kotoha いいですね!私も“運動部で汗を流してみんなで大会を目指す“みたいな青春を送りたかった(笑)。私は学生時代、美術部や合唱部といった文化部にずっと入っていたんですけど、合唱部の頃は夏休みにみんなで集まって練習したり、文化祭が近づいてくると毎日放課後に演劇や歌の練習をしていたんです。みんなで1つの作品を作り上げたという経験は今でも鮮明に記憶に残っていて、(今振り返ると)経験できてよかったなと思います。
俊龍 そういえば文化祭の前は誰しもソワソワしておかしなモードになりますよね。
Kotoha 同じ部活の中でも、カップルが何組かできていたりとか(笑)
俊龍 冷やかしたくなったりとか、冷やかされたりとか。
――やはりそういったエピソードは世代間共通ですね。
Kotoha 学生時代は誰しも悩みがあるじゃないですか。だからそういった細かい心情の変化が表現されているのはすごいと思いました。
白戸佑輔との初タッグが生んだ新鮮なケミストリー
白戸佑輔との初タッグが生んだ新鮮なケミストリー
――また、今回は白戸佑輔さんが編曲を担当しています。俊龍さんと白戸さんのタッグは今回が初めてですよね?
俊龍 初めてです。自分はこれまでアニメ主題歌やアイドルの楽曲で白戸さんの作品をたくさん聴いているのですが、白戸さんは編曲だけの場合でも、「こういう風にしてほしい」という作曲者の想いを汲み取って、さらにグッとくるアレンジにしてくれる方だと感じていたので、かねてからご一緒したいと思っていたんです。あと、白戸さんとは作曲家の飲み会で何回かお会いしていて、自分が1人でポツンとしているときによく話しかけてくれていたんですよ。みんなとすごく仲良くなれる方なので、(オファーしたのは)そういった理由もありましたね(笑)。
――白戸さんのアレンジで印象的な部分はどこでしたか?
俊龍 プレイヤーの方々が自由に楽器を弾いているにもかかわらず、サウンドが「1つのバンド感」のあるまとまり方だったので、それがすごく良かったです。あと、デモ音源は自分の入れたい音を詰め込んでいたのですが、はみ出していた部分を良い感じにならしてくれたり、さらにきめ細かくアレンジしていただいたりしたので、デモ段階とは違ったエモーショナルさが加わったと思います。
――個人的にはピアノの弾むような音色が印象的です。レコーディングはいかがでしたか?
俊龍 レコーディングは白戸さんとKotohaさんがすごく良いタッグでした。
Kotoha 私は白戸さんと初対面だったのですが、とても話しやすくて、歌唱の指示も的確に出してくださったので歌いやすかったです。
俊龍 この楽曲は、イントロは低かったり、サビは高かったり、(歌唱技術的には)色々あるのですが、白戸さんが「こういう感じでトライしてみる?」と投げたボールに対して、Kotohaさんが「わかりました!」と果敢にトライしてくださって。良いキャッチボールをしていましたよね。
Kotoha たくさん褒めてくれたので、私もすごくノッていました(笑)。
――歌い手としても色んな学びがあったんですね。
Kotoha そうですね。この楽曲のイメージに合った夏を表現できるように私なりにすごく意識して、レコーディング中も色々考えて歌いました。そこがしっかりと表現できていればいいなと思います。
俊龍 ビシビシ(夏を)感じましたよ。レコーディングした日は半袖でもいいくらいの暑さだったので、スタッフ含めてみんなが気持ちも乗ってきて同じ方向に向かえました。
――あと、曲のラストのゆっくり終わる部分は、俊龍さんが作ったデモの段階ですでに存在していたのでしょうか?
俊龍 このリタルダンド(※音楽用語で「だんだん遅く」)の部分は、自分のデモの段階からありました。「どんな夏を過ごしても最後には少しだけ大人になっている」というイメージですね。
――Kotohaさんは最後のしっとりする部分を歌うときはどういった部分を意識されましたか?
Kotoha この最後だけ急にゆっくりになって曲調が変わるところは、少し寂しい感じが夏の終わりを感じられるので、私も素敵な終わり方だと思いました。なので、ここまではずっとノリのいい元気な感じで歌っていたんですけど、最後は少し寂しさを交えて歌唱できるように、皆さんのアドバイスも聞きながら進めていきました。
――ほかにお二人が推しておきたいポイントはありますか?
俊龍 自分は1番のサビですね。ポジティブな言葉ばかりではないけど、気持ちが盛り上がって駆け出している感じが好きです。あとはサビ頭の“誰を”の部分。楽器が一瞬だけ静かになったところにKotohaさんの主線と上と下のハモリの三声がブワッと来るので、ここは自分でも「キター!」と思います(笑)。
Kotoha やはりサビは疾走感が欲しかったので、私も出だしはかなり気合いを入れて歌いました。あと、サビ終わりの“躓きそうな 坂の途中”の“途中”でかなり声を張っているのですが、ここは苦戦したところで、色んな歌い方を試してみて、白戸さんにも「もう何でも言ってください!」ってお願いしました(笑)。最終的には息感を残す歌い方になりました。ここは疾走感を感じながら聴いてほしいです。
俊龍 Kotohaさんの歌声は、息感はもちろん、すごく近くで歌ってもらっているような聴こえ方をするんです。繊細に、時には弱く歌ったとしてもすごく近くに聴こえるところは、彼女の歌声の魅力の1つだと思います。
――そしてイラストレーターのフライさんの描いたジャケットは、白い積乱雲と青空をバックに制服姿の少女が屋上で佇む、まさに“青春”という感じの1枚になっています。
俊龍 背景に川や橋らしきものが見えているのですが、自分もこんなイメージで楽曲を作っていたので驚きました。きっと日本全国の色んな街にこういう風景があると思うんですよね。「夏を呼ぶ声」というタイトルは松井五郎さんが付けてくださったのですが、その前に自分が付けた仮タイトルは「清涼」で、「清涼飲料水のポスターやCMのようなイメージで作るぞ!」と自分に言い聞かせながら作っていて。このジャケットを使ったMVも作られるので、すごく楽しみです。
Kotoha 私も楽しみです!MVを観ることで、またさらに曲の想像が膨らむかもしれないですね。
――改めて、今回の楽曲はSizukとしてどういう楽曲になりましたか?
俊龍 今回の楽曲は、架空の人物ではなく、例えば学校やバイト先で身近にいる子を思い浮かべて「もしかしたらこういう夏を過ごしているかもな」と思えるような、等身大の主人公を意識しながら制作していたんです。もちろん初めは想像だったのですが、実際にこういう子がいてもおかしくないというか、きっといるに違いないと思える、ノンフィクション的なストーリーを届けられたんじゃないかと思います。
――ちなみに今回は爽やかな楽曲でしたが、かわいい系の楽曲もKotohaさんは合いそうですね。
Kotoha 俊龍さんご自身もお話ししやすい方で、スタッフの皆さんも良い方ばかりだったので、またいつか一緒にお仕事をしたいと私は思っています。私は爽やかな楽曲はもちろん、かわいい楽曲も多く歌っているので、そういった楽曲をぜひ、俊龍さんの楽曲で歌ってみたいです!
俊龍 Kotohaさんはカバー動画などでかわいい楽曲もたくさん歌われていますし、歌声も合うと思うので、実現したらすごく素敵ですね。
●配信情報
3rd Digital Single
Sizuk「夏を呼ぶ声」
5月3日(水)配信開始
歌:Kotoha 作詞:松井五郎 作曲:俊龍 編曲:白戸佑輔
ジャケットイラスト:フライ
▼配信リンクはこちら
▼「夏を呼ぶ声」MUSIC VIDEO(プレミア公開)
▼「夏を呼ぶ声」特典情報
各音楽配信サイトでの「夏を呼ぶ声プレゼントキャンペーン!
https://sizuk.info/?p=371
<収録内容>
M1. 夏を呼ぶ声
M2. 夏を呼ぶ声 Instrumental
■Sizuk情報
―作曲家「俊龍」による音楽プロジェクト「Sizuk」―
アニメ・アイドル楽曲を中心に数々の印象的な曲を生み出し続ける作曲家「俊龍」。
「Sizuk」は作曲家「俊龍」が、歌い手/作詞家/編曲家/イラストレーターetc…、
様々なクリエイターと共に音楽を届けていく「音楽プロジェクト」となります。
関連リンク
Official HP
https://sizuk.info/
YouTube
https://www.youtube.com/@Sizuk_Music
Twitter
https://twitter.com/Sizuk_official
TikTok
https://www.tiktok.com/@sizuk_official
Playlist
https://Sizuk.lnk.to/Sizuk
今回は作詞に松井五郎、編曲に白戸佑輔、ジャケットイラストにフライ、そして歌い手にはハコニワリリィでの活動でも知られるKotohaを迎え、風薫る新緑の季節にぴったりの爽やかな“夏が聴こえる青春歌”に仕立てられている。清涼感とほのかな切なさに彩られた本楽曲に込めたこだわりについて、俊龍とKotohaが語り合う。
INTERVIEW & TEXT BY 河瀬タツヤ
旋律と歌詞が呼び起こす、夏の情景と青春の揺れ動く気持ち
――俊龍さんが今年1月にSizukとしてアーティストデビューしてから早くも3枚目のリリースとなります。今回の新曲「夏を呼ぶ声」は“夏が聴こえる青春歌”というコンセプトですが、ここまでストレートに爽やかな雰囲気は、これまでの俊龍さんの楽曲にはあまりなかったように感じます。
俊龍 たしかに、今回の楽曲のような爽やかさは久しぶりかもしれないですね。この楽曲のリリース時期である5月は春からの延長ではありますが、夏を待ち侘びていたり、夏が一足先に来ていたりという季節なので、夏の切なさがありつつも爽やかでパッと開けるようなメロディとサウンドにしたいと思って作り始めました。
――今回の「夏を呼ぶ声」では、ゲストボーカルにハコニワリリィのKotohaさんを起用していますね。
俊龍 Sizukとしては、今回の「夏を呼ぶ声」のような爽やかな曲はもちろん、女の子らしいかわいい楽曲も作っていきたいという思いがありました。そのどちらも表現できるようなボーカリストを探していたときに、Kotohaさんの(YouTubeの)動画を見つけたんです。Kotohaさんの歌声は透明感やフレッシュさだけではなく、聴いた人が「良い声だな」と思える“何か”があると感じていて、例えるなら、“透明で澄み切った水に、きれいな青色のインクを一滴だけ垂らしたような歌声”で。そんな歌声は自分にとって初めてだったので、もし一緒に作品を作ったら今までとは違う心持ちで作ることができるのではないかと思い、今回お願いしました。
Kotoha ありがとうございます!そういった表現は初めて言われました(笑)。
――逆にKotohaさんは俊龍さんの楽曲にはどんな印象を持っていらっしゃいますか?
Kotoha 俊龍さんの楽曲はすごくポップで耳に残るようなメロディで、歌っていてとても楽しいんです。今回は夏をイメージした爽やかな楽曲で、自分(の歌声)に合うテイストだったのも印象的でした。練習のために何度も今回の楽曲を聴いたんですけど、楽曲を覚えること自体が楽しかったです。
――Kotohaさんがおっしゃるように耳に残るキャッチーさは今作でも存分に発揮されています。今回の「夏を呼ぶ声」について、俊龍さんのイメージは具体的にどういったものだったんでしょうか?
俊龍 簡単に言えば、“若い女性を主人公にした季節感のある青春ソング”を作りたいと思ったんです。この楽曲の主人公は恋をしているのですが、もしかしたらその恋は叶わないかもしれない。でもキラキラした夏の季節はすぐそこまでやってきている。そんな主人公が理由もなく叫びたくなったり、駆け出したくなったりするという衝動と、セミが鳴いているような夏の青い空と白い雲という風景の両方が描ければと思っていました。
――たしかに風景がすごく浮かぶ楽曲です。Kotohaさんは今回の楽曲はどういった曲だと感じましたか?
Kotoha 「夏をテーマにした爽やかな楽曲なので、爽やかなテイストで歌ってほしい」ということだったんですけど、歌詞のところどころに闇がある気がしたんです。歌詞の最初の“きっとまだ 半分しか 正しい答えが わからない”とか、“優しさから 残酷な 影も 生まれるのは なぜ?”とか。夏で爽やかだけど、未来を少し不安に思っている女の子のリアルな気持ちを歌詞に乗せているようで、全部が明るいだけでは終わらない、少し闇を感じるようなこの歌詞が私は好きですね。
――特に2番の歌詞はだいぶ闇を匂わせていますよね。俊龍さんがメロディを作っている時点で、この方向性は狙っていたんですか?
俊龍 そうですね。ポジティブになるときと、ネガティブになってしまうときを行ったり来たりするのが “青春あるある” なので、その心情をすごくきれいな言葉で(今回作詞を担当した)松井五郎さんがしたためてくれました。松井さんはこの曲の歌詞に関してTwitterでつぶやいていらっしゃったんですが、あのお言葉にはすごく感動しましたね。
俊龍さんの
プロジェクト
Sizukに作詞で参加
ビジュアルイメージも
添えられた
デモ音源には
どんな世界を
描きたいかが
明確にあって
その意思に
身を委ねれば
然るべき所に
着地できると
思った
メロディに漂う
清涼感とNostalgie
そこには
誰もが一度は見た
風景がある https://t.co/yKw5tZiyi4
— Goro Matsui Works (@GML2014) April 8, 2023
――松井五郎さんは40年以上作詞家として活動している大ベテランで、俊龍さんとも石原夏織さんの「Face to Face」などで一緒にお仕事をされていますね。
俊龍 以前、ゆいかおりの「Intro Situation」という夏の曲でご一緒させていただいたときは、ネガティブさのないかわいい曲に対して、瑞々しく弾けるようなキラキラした歌詞を書いていただいたんです。今回の「夏を呼ぶ声」は、夏の曲というテーマは「Intro Situation」と似ているけれど、テイストは少し違った曲になったので、「この曲にもし歌詞を書いていただけるとしたら、どういう言葉で作品に彩りを与えてくださるだろう?」と思い、今回お願いしました。
――そんな松井さんの歌詞のなかでお気に入りのフレーズはありますか?
俊龍 自分は最初の“風が光を変える”。ただ単にパッと変わるのではなくて、風が吹く時間によって色彩的にも変わっていくのが良いですね。あとは、1番サビの“咲いたひまわりが 夏を連れにゆく”。ひまわりが周り一面に咲いているけど切なさも感じさせるような表現になっていて、ここは歌詞の中で唯一黄色をイメージする言葉なので、(曲全体を)よりカラフルにしていただけたと感じました。
Kotoha このフレーズだけで風景が浮かびますよね。
私は本当に選べないくらい好きなフレーズがたくさんあるんですけど、1つ挙げるとすれば、サビの“恋は片方しかない翼 ひとりきりじゃ 羽ばたけない”です。すごく巧みなワードを使って、1人の女の子の片思いの気持ちを歌詞に乗せているところが切なくて好きですね。
――ここから2番で“優しさから 残酷な 影も 生まれるのは なぜ?”ですからね。
俊龍 情緒が(笑)。
Kotoha でも曲調はとても爽やかで、サビは結構力強く歌っているので、その対比もすごくいいですよね。
――ちなみに、お二人の青春時代の夏の思い出はありますか?
俊龍 自分は中学生のときに野球をやっていて、泥だらけになったあとに清涼飲料水をみんなで飲んでボーっとしていたり、ほかの部活の何人かの男女とともに話しながら帰ったり、何かあったというわけではないのですが、そういう風景が浮かびます。
Kotoha いいですね!私も“運動部で汗を流してみんなで大会を目指す“みたいな青春を送りたかった(笑)。私は学生時代、美術部や合唱部といった文化部にずっと入っていたんですけど、合唱部の頃は夏休みにみんなで集まって練習したり、文化祭が近づいてくると毎日放課後に演劇や歌の練習をしていたんです。みんなで1つの作品を作り上げたという経験は今でも鮮明に記憶に残っていて、(今振り返ると)経験できてよかったなと思います。
俊龍 そういえば文化祭の前は誰しもソワソワしておかしなモードになりますよね。
Kotoha 同じ部活の中でも、カップルが何組かできていたりとか(笑)
俊龍 冷やかしたくなったりとか、冷やかされたりとか。
――やはりそういったエピソードは世代間共通ですね。
今回も、世代を超えた共感性の高い歌詞を大ベテランの松井五郎さんが書いてくれていますし。
Kotoha 学生時代は誰しも悩みがあるじゃないですか。だからそういった細かい心情の変化が表現されているのはすごいと思いました。
白戸佑輔との初タッグが生んだ新鮮なケミストリー
白戸佑輔との初タッグが生んだ新鮮なケミストリー
――また、今回は白戸佑輔さんが編曲を担当しています。俊龍さんと白戸さんのタッグは今回が初めてですよね?
俊龍 初めてです。自分はこれまでアニメ主題歌やアイドルの楽曲で白戸さんの作品をたくさん聴いているのですが、白戸さんは編曲だけの場合でも、「こういう風にしてほしい」という作曲者の想いを汲み取って、さらにグッとくるアレンジにしてくれる方だと感じていたので、かねてからご一緒したいと思っていたんです。あと、白戸さんとは作曲家の飲み会で何回かお会いしていて、自分が1人でポツンとしているときによく話しかけてくれていたんですよ。みんなとすごく仲良くなれる方なので、(オファーしたのは)そういった理由もありましたね(笑)。
――白戸さんのアレンジで印象的な部分はどこでしたか?
俊龍 プレイヤーの方々が自由に楽器を弾いているにもかかわらず、サウンドが「1つのバンド感」のあるまとまり方だったので、それがすごく良かったです。あと、デモ音源は自分の入れたい音を詰め込んでいたのですが、はみ出していた部分を良い感じにならしてくれたり、さらにきめ細かくアレンジしていただいたりしたので、デモ段階とは違ったエモーショナルさが加わったと思います。
――個人的にはピアノの弾むような音色が印象的です。レコーディングはいかがでしたか?
俊龍 レコーディングは白戸さんとKotohaさんがすごく良いタッグでした。
Kotoha 私は白戸さんと初対面だったのですが、とても話しやすくて、歌唱の指示も的確に出してくださったので歌いやすかったです。
俊龍 この楽曲は、イントロは低かったり、サビは高かったり、(歌唱技術的には)色々あるのですが、白戸さんが「こういう感じでトライしてみる?」と投げたボールに対して、Kotohaさんが「わかりました!」と果敢にトライしてくださって。良いキャッチボールをしていましたよね。
Kotoha たくさん褒めてくれたので、私もすごくノッていました(笑)。
――歌い手としても色んな学びがあったんですね。
Kotoha そうですね。この楽曲のイメージに合った夏を表現できるように私なりにすごく意識して、レコーディング中も色々考えて歌いました。そこがしっかりと表現できていればいいなと思います。
俊龍 ビシビシ(夏を)感じましたよ。レコーディングした日は半袖でもいいくらいの暑さだったので、スタッフ含めてみんなが気持ちも乗ってきて同じ方向に向かえました。
――あと、曲のラストのゆっくり終わる部分は、俊龍さんが作ったデモの段階ですでに存在していたのでしょうか?
俊龍 このリタルダンド(※音楽用語で「だんだん遅く」)の部分は、自分のデモの段階からありました。「どんな夏を過ごしても最後には少しだけ大人になっている」というイメージですね。
歌詞が分断しないように、頭の中でKotohaさんが歌っているのを想像しながら、最後はどういう感じでゆっくりにするのか、色々試してみて。さらに白戸さんがキラキラした要素を少し入れてくれました。
――Kotohaさんは最後のしっとりする部分を歌うときはどういった部分を意識されましたか?
Kotoha この最後だけ急にゆっくりになって曲調が変わるところは、少し寂しい感じが夏の終わりを感じられるので、私も素敵な終わり方だと思いました。なので、ここまではずっとノリのいい元気な感じで歌っていたんですけど、最後は少し寂しさを交えて歌唱できるように、皆さんのアドバイスも聞きながら進めていきました。
――ほかにお二人が推しておきたいポイントはありますか?
俊龍 自分は1番のサビですね。ポジティブな言葉ばかりではないけど、気持ちが盛り上がって駆け出している感じが好きです。あとはサビ頭の“誰を”の部分。楽器が一瞬だけ静かになったところにKotohaさんの主線と上と下のハモリの三声がブワッと来るので、ここは自分でも「キター!」と思います(笑)。
Kotoha やはりサビは疾走感が欲しかったので、私も出だしはかなり気合いを入れて歌いました。あと、サビ終わりの“躓きそうな 坂の途中”の“途中”でかなり声を張っているのですが、ここは苦戦したところで、色んな歌い方を試してみて、白戸さんにも「もう何でも言ってください!」ってお願いしました(笑)。最終的には息感を残す歌い方になりました。ここは疾走感を感じながら聴いてほしいです。
俊龍 Kotohaさんの歌声は、息感はもちろん、すごく近くで歌ってもらっているような聴こえ方をするんです。繊細に、時には弱く歌ったとしてもすごく近くに聴こえるところは、彼女の歌声の魅力の1つだと思います。
――そしてイラストレーターのフライさんの描いたジャケットは、白い積乱雲と青空をバックに制服姿の少女が屋上で佇む、まさに“青春”という感じの1枚になっています。
俊龍 背景に川や橋らしきものが見えているのですが、自分もこんなイメージで楽曲を作っていたので驚きました。きっと日本全国の色んな街にこういう風景があると思うんですよね。「夏を呼ぶ声」というタイトルは松井五郎さんが付けてくださったのですが、その前に自分が付けた仮タイトルは「清涼」で、「清涼飲料水のポスターやCMのようなイメージで作るぞ!」と自分に言い聞かせながら作っていて。このジャケットを使ったMVも作られるので、すごく楽しみです。
Kotoha 私も楽しみです!MVを観ることで、またさらに曲の想像が膨らむかもしれないですね。
――改めて、今回の楽曲はSizukとしてどういう楽曲になりましたか?
俊龍 今回の楽曲は、架空の人物ではなく、例えば学校やバイト先で身近にいる子を思い浮かべて「もしかしたらこういう夏を過ごしているかもな」と思えるような、等身大の主人公を意識しながら制作していたんです。もちろん初めは想像だったのですが、実際にこういう子がいてもおかしくないというか、きっといるに違いないと思える、ノンフィクション的なストーリーを届けられたんじゃないかと思います。
――ちなみに今回は爽やかな楽曲でしたが、かわいい系の楽曲もKotohaさんは合いそうですね。
Kotoha 俊龍さんご自身もお話ししやすい方で、スタッフの皆さんも良い方ばかりだったので、またいつか一緒にお仕事をしたいと私は思っています。私は爽やかな楽曲はもちろん、かわいい楽曲も多く歌っているので、そういった楽曲をぜひ、俊龍さんの楽曲で歌ってみたいです!
俊龍 Kotohaさんはカバー動画などでかわいい楽曲もたくさん歌われていますし、歌声も合うと思うので、実現したらすごく素敵ですね。
●配信情報
3rd Digital Single
Sizuk「夏を呼ぶ声」
5月3日(水)配信開始
歌:Kotoha 作詞:松井五郎 作曲:俊龍 編曲:白戸佑輔
ジャケットイラスト:フライ
▼配信リンクはこちら
▼「夏を呼ぶ声」MUSIC VIDEO(プレミア公開)
▼「夏を呼ぶ声」特典情報
各音楽配信サイトでの「夏を呼ぶ声プレゼントキャンペーン!
https://sizuk.info/?p=371
<収録内容>
M1. 夏を呼ぶ声
M2. 夏を呼ぶ声 Instrumental
■Sizuk情報
―作曲家「俊龍」による音楽プロジェクト「Sizuk」―
アニメ・アイドル楽曲を中心に数々の印象的な曲を生み出し続ける作曲家「俊龍」。
「Sizuk」は作曲家「俊龍」が、歌い手/作詞家/編曲家/イラストレーターetc…、
様々なクリエイターと共に音楽を届けていく「音楽プロジェクト」となります。
関連リンク
Official HP
https://sizuk.info/
YouTube
https://www.youtube.com/@Sizuk_Music
https://twitter.com/Sizuk_official
TikTok
https://www.tiktok.com/@sizuk_official
Playlist
https://Sizuk.lnk.to/Sizuk
編集部おすすめ