声優アーティスト・鈴木愛奈のニューシングル「Dash and Go!」が、5月10日(水)にリリースされた。2ndアルバム『Belle révolte』以来約1年半ぶりのリリースとなる本作、表題曲はOPテーマに起用されたアニメ『アリス・ギア・アイギスExpansion』ともリンクするような、未来への希望を詰め込んだ疾走感あるロックナンバー。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
ライブ映え必至!な爽快感満載の表題曲から、彼女がイメージした光景とは
――リリースとしては久々ですが、その間2ndライブツアー(“Aina Suzuki 2nd Live Tour Belle révolte -Invitation to Conquest-”)や様々なライブイベントへの出演など活動を重ねられてきました。なのでまずは、この約1年半の音楽活動について振り返っていただけますでしょうか。
鈴木愛奈 デビュー直後にコロナ禍が始まってしまい、2ndライブツアーも含めてまだ声出しのできないなかでも色々なライブイベントにも参加させていただいたりと、歌の活動も結構精力的にできていたんじゃないかなとは感じています。そんななかで、今年2月に出させていただいた“Lantis Girls Fes「TRY→ANGLE」”が、ソロとしては約3年ぶりの声出し解禁ライブになりまして。これまでは持ち歌の中でも、声出しライブで歌えていなかった曲のほうが多かったんですけど、このとき久々に「この曲は、絶対ライブで盛り上がるだろうな!」と思っていた曲も歌えましたし、皆さんがすごく盛り上がってくださっているのを肌で感じられたことが本当に嬉しかったですね。
――そのライブでの観客の反応は、どのように感じられましたか?
鈴木 やっぱり最初のほうは皆さん様子見だったり戸惑ったりした部分もあったように感じたんですけど、1stアルバム『ring A ring』収録の「祭リズム」を歌ったとき、溢れんばかりの皆さんの「ソーランソーラン!」っていう声がすごくて(笑)!元々私自身もライブのMCなどで「いつか声出しできたら絶対楽しいと思うんだぁ!」みたいなことを言っていた曲でしたけど、一気に会場の温度が上がったのを感じましたし、終演後にスタッフさんも「すごく盛り上がってたよ!」と言ってくださったんです。
――肌で盛り上がりを感じたポイントになったわけですね。
鈴木 そうですね。だから「そんなふうになるくらい、楽しんでいただけて良かったぁー!」と嬉しくなりましたし、これからもこれを超える盛り上がりを作っていきたい、というか「作っていかないといけないな」という気持ちにもなりましたね!声が出せないなかでも皆さん熱量高く応援してくださっていたとは思うんですけど、声出しが解禁されたからこその「待ってたよ!」という気持ちが、この曲以外でもめちゃめちゃ届いてきて。これからも声出しでのライブができるのであれば、お待たせしていたぶん少しずつでもお返ししていきたいです。
――今回のシングルがその一歩目となるのかなと思うのですが、表題曲「Dash and Go!」は非常に気持ち良い楽曲になっていますね。
鈴木 そうなんです!すごく元気で疾走感のある、素敵な曲で。それこそ晴天のなか、気持ち良い風が吹いているような感じといいますか。私、最初に曲を聴いたときに、勝手にMVのイメージが浮かんだくらいなんです。学校やビルの屋上みたいなところで、バンドさんと輪になって「いえーい!」みたいな感じで歌う、という(笑)。そういう「青空の下で歌う」みたいなものが、私のレコーディングのときのイメージでもあったので、とにかく清々しく「隔てるものは何もないぜ!」みたいな感じで歌わせていただきました。
――ちなみに、この曲がOPテーマとなっている『アリス・ギア・アイギスExpansion』との結び付きは、どのような部分で感じられましたか?
鈴木 レコーディングの前に、今回のアニメは戦いよりも彼女たちのわいわいとした日常に重きを置くようなアニメになるとお聞きしまして。なのでガッツリとゴリゴリなロックでいくというよりは、普段の彼女たちの、未来への期待感のようなイメージで歌っていったんです。そうしたら、「Dash and Go!」自体にある歌詞も含めた明るく真っ直ぐなイメージが、アニメともすごくリンクしたように感じました。
――そんなレコーディングをされてみての感覚を、改めてお聞きできますでしょうか?
鈴木 いやー!楽しく歌わせていただきました!真っ直ぐな歌詞の中で「期待、しかない!」みたいにマイナスなことをは一切考えずに、楽しいことしか待っていない未来に向かって走り続ける!という印象がすごく強い曲なので、レコーディングでもとにかく笑顔で歌っていた覚えがあります。
――先ほど「屋上でバンドさんと輪になって……」といったイメージもお話されていたくらい、本当にライブ映えしそうな曲でもありますよね。
鈴木 そうなんですよね。
――ということは、レコーディングでもファンの皆さんの姿を想像しながら。
鈴木 そうですね。「ファンの方、言ってくれるかなぁ?」と想像したり、ライブのこともすごく考えながら歌えました。
――そしてこの曲のサビでは、鈴木さんの歌声からも青空が連想されました。それは地声とファルセットのバランスの絶妙さもあってのものだと感じたのですが、レコーディングではその匙加減なども詰めていかれたんですか?
鈴木 はい。まず家で練習していく段階から、そういったファルセットの入れどころについても考えるんですけど、今回はビブラートの入れ方をちょっと細かめにしてみたりと、ちょっとしたことを変えたりしながら作っていきました。
――それは、曲のテンポに合わせて疾走感を出せるように?
鈴木 もちろん、そういう意図もありました。色々な歌い方を当て込んで試していくなかで、疾走感のある爽やかな楽曲だと「こういう入れ方のほうが、この部分はすごく刺さるかも」みたいなことを、家での練習段階から結構考えました。もしそれが違っていたら、レコーディングでディレクションしていただく、みたいな感じでした。
――さて、この楽曲ならではの爽快感といえば、MVでのオープントップバスに乗りながら歌われているシーンでも強く感じられますね。
鈴木 めちゃめちゃ気持ち良かったです!公道での撮影だったので、信号の様子を見ながらスタッフさんが「次、赤になりまーす!」とか「そろそろ行けそうでーす!」と臨機応変に対応してくださって。ちょうどビルに太陽が隠れたりしたときには、撮影コースをぐるっと一周してきてもう1回チャレンジしたりもしていましたね(笑)。ただ、そのなかで1つやり忘れたこともありまして……。
――どんなことですか?
鈴木 バスに乗るとき、スタイリストさんの私物のサングラスをかけてみたら「いいねぇ!」となって、かけてみることになったんですけど……その前に元々決まっていた、「紫の帽子を被るバージョンと被らないバージョンで撮る」ことばかり考えていたら、途中でサングラスのことをすっかり忘れてしまって、「まぁまぁまぁまぁ、次の機会に」となってしまったんです(笑)。
――幻の衣装が生まれてしまった(笑)。
鈴木 はい(笑)。もう1回オープンカーに乗るMVを撮ることって、あるかなぁ?とも思うんですけど(笑)。でもそういうやり取りも含めて、すごく楽しい撮影でした。
――そしてスタジオでの、マイクを持って歌うカットがメインになるシーンもありました。あのシーンでもまた、気持ち良さそうに歌われていますね。
鈴木 コードの繋がったガイコツマイクを使ってパフォーマンスするというところにロックな要素をすごく感じられて、すごく良いですよね!それに、衣装もすごくカラフルですし、初めてガッツリ色んな色を入れたエクステを高めのポニーと一緒に垂らして。自分としては、新しい一面みたいなものを見せられたように思っています。
――そのマイクを使って歌うなかでの、ターンしたあとのコードのかわし方も鮮やかで。
鈴木 いや、それがぜんっぜんなんですよ!本当はもっと勢いのあるターンをやりたかったんですけど、片手でコードを持っていたので絡まりに絡まりまして……(笑)。足をモタモタした感じに見せたくなかったので、くるんと軽やかなターンにしてみました。
自分自身を投影したカップリング曲での、歌声での新たな挑戦とは
――さて、ここからはカップリング曲についてもお伺いできますでしょうか。
鈴木 はい。今回のカップリング曲は2曲とも今の自分の気持ちや、「言葉に出したことはないけれども、ずっと心の中で思っていること」など自分のことを歌詞に落とし込んだ内容になっています。
――そのうち2曲目の「トワイライト・サイダー」は、鈴木さんのソロ楽曲としては少々意外な曲調だという印象を受けました。
鈴木 そうなんです。この曲は「ブラスを取り入れた、ほっこりするような曲にしたい」ということでいただきまして、最初「お洒落なカフェとかジャズバーみたいなところでかかっていてもおかしくない曲だなぁ」と思いました。ただ、おっしゃっていただいたように、そういう曲って歌ったことがないタイプのもので。
――歌い方を見つけるために、どんな研究をされたんですか?
鈴木 最初にこの曲を聴いたときに「すごく似合いそうだな」と思ったシンガーさんの曲を、それこそ過去のものから最近のものまで色々聴きまして。それを参考にさせていただいたうえで、どうやって自分として歌いこなすか?という部分が結構難しかったです。
――鈴木さんとしては、どんなところを大事にされたんでしょうか。
鈴木 ちょっとブレッシーな感じといいますか、割と息多めで母音を立てすぎないといいますか、抜いた歌い方って言うんですかね?全体的にハキハキと歌いすぎずに、子音のほうを立てるような歌い方を目指していきました。
――そうした挑戦になるような曲だと、レコーディングでの気付きも普段以上に多かったのでは?
鈴木 そうですね。例えば、実際に歌うなかで「ブレス多めな声だけが、良いわけじゃないんだ」と気付かされたところもありまして。「少しだけ、ほかのところよりもしっかりと歌う感じにしてみて」のようなディレクションをいただいて、聴き比べながら色々と試していただき、「意外と違う歌い方でもハマるんだ」という気付きが多い曲ではありました。
――そういう工夫もされて完成したこの曲、ご自分でも完成形を聴いてメリハリの付け方などは納得はされていますか?
鈴木 そうですね。実際完成版を聴いて、“収まるところにちゃんと収まってくれた感”があるといいますか。私の良さも残してくれつつ、新しい引き出しを開けてくれた曲になったなぁと、すごく感じます!歌詞についても、自分に重ねられるような部分もかなりありまして。サイダーだったり色んなものに例えていただきながら、自分の気持ちを落とし込んでくださったので、そういったところはすごく歌いやすかったです。
――そんな「トワイライト・サイダー」でほのかな葛藤を感じたあとに「いつか振り返るその時に」がくると、組み合わせの妙を感じるすごく良い並びの1枚になったように感じます。
鈴木 たしかに。シングルとしてすごくまとまりがいいですよね。それはこの「いつか振り返るその時に」の歌詞が、「Dash and Go!」みたいに気持ちを結構そのまま素直にさらけ出した、明るすぎず暗くなりすぎずという絶妙なところをついたものになっているからかもしれません。この曲では私のポジティブな部分だけじゃなくて、あまりファンの方の前では出さないような、どちらかというとネガティブな、私の心の中に眠っている気持ちを出した歌になっているんです。そういうふうに「歌という表現としてだったら、こういうふうに出せる」という曲を1つ作っていただけたことは、本当に良かったなぁと思って……いるんですけど、やっぱりそのぶん歌うのが大変で(笑)。
――そういう曲だからこそ、ご自分の気持ちと曲自体の聴かせどころを擦り合わせることに、普段以上の難しさがあったり?
鈴木 いや、それよりも「自分の気持ちをすべてさらけ出す」ような歌詞を歌で表現していこうとすると、それを出せているポイントと難しさを感じたところとが両方あった、という感じなんです。この曲には、なんだったらビブラートとかもいらないんじゃないか?くらい真っ直ぐさや素直さが合う曲だなぁと感じていたので、もっと「歌う」というよりも「訴えかける」みたいに、スパーン!といきたいなぁと思っていて…今回のシングルで、一番難しかった曲だったような気がしています。
――理想と自分の歌声とのギャップみたいなものが、かなりあったと。
鈴木 そうなんです!“現実と理想は 上手く重ならずに”という、この曲の歌詞通りだなぁと思っています(笑)。
――その部分もですけど、歌い出しの“ああ 夢見るのは 思うほどいいもんじゃない”というフレーズには、一瞬ドキッとする方もいるかもしれないですね。
鈴木 ファンの方の中には「夢をどんどん叶えていく愛奈ちゃんの姿が、かっこよくて応援し始めました」と言ってくださる方もすごく多いんですけど……私自身も夢見てこの世界に飛び込んできたものの、「すべてが良いことばっかりじゃない」と感じていまして。大変なことも多いですし、それこそ何回泣いたか数え切れないくらいで、実際夢を叶えられたから「夢見て良かったぁ」と言えたりもしますけど、叶うまでの間ってどうなるかわからない未来に対して「どうしたらいいだろう?」と悩んだり、それについて考えることの憂鬱感みたいなものがあったんですよね。この曲では、そういうふうに自分の中にも渦巻いていた気持ちみたいなものも表すことができたんです。でも最後の最後には、「でも、これがあってよかったな」と前を向けるような曲にもなっています。
――だからでしょうか、この曲はライブのクライマックスにとても似合うように感じていまして。
鈴木 本当ですか!?実はそれ、今回のディレクターさんもおっしゃっていたんですよ!ライブの最後やアンコールの一番最後に歌うイメージがあって、「そこで歌ったらエモいなぁ」って。それってきっと、自分の人生の生き様みたいなものが詰め込まれた曲になったからなんだろうなぁ、と思うんですよ。セトリの一番最後を飾るというのは、そういうことなのかなぁ…って。言葉では出しにくい気持ちを歌うことのできた曲だから、そういった歌う意味を持つんでしょうし、きっとこれから歌う場所やタイミングごとに、色んな変化のある曲になりそうな予感を強く感じています。
――そしてこのシングルのリリース後も、ソロ3度目となる“Animelo Summer Live 2023 -AXEL-”(以下、アニサマ)出演など、様々な活動が待っていますね。
鈴木 はい!今年は初めての、ソロでの声出しアニサマということで。いやぁ、いざ声出しとなると緊張するなぁ(笑)。
――そんなアニサマも含めた今後のソロでの音楽活動への意気込みを、改めて最後にいただけますか?
鈴木 まずはこうやって3rdシングルが発売されるので、それを引っ提げたイベントやライブはやっていきたいですね。皆さんが求めてくださる限りは、色んなところに行ったりもしたいですし、国内はもちろん海外にも行きたいです。
――コロナ禍も落ち着いてきましたからね。
鈴木 先日、私の2ndライブツアーのBlu-ray発売を記念した、1対1のオンライントーク会がありまして。そこに海外のファンの方も参加してくださったんですよ。なかにはアメリカから「時差があって、今、夜中の3時なんです」という方もいたり。そんな夜中に私と会話してくださることが、すごく嬉しかったんです。世界中の方からそうやって応援の声を届けていただけているので、ソロとしてもいつか私が海外の皆さんのところにも行きたいですね。
●リリース情報
TVアニメ『アリス・ギア・アイギス Expansion』オープニングテーマ
鈴木愛奈
「Dash and Go!」
2023年5月10日(水)発売
■mora
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回限定盤(CD+BD)】
価格:¥2,420(税込)
品番:LACM-34378
仕様:CD+BD(MV+メイキング映像)
ランダムカード3種封入(初回限定盤・通常盤のみ、共通絵柄)
【通常盤】
価格:¥1,540(税込)
価格:LACM-24378
※ランダムカード3種封入(初回限定盤・通常盤のみ、共通絵柄)
【アニメ盤】
価格:¥1,430(税込)
品番;LACM-24379
<INDEX>
01.Dash and Go!
作詞:畑亜貴 作曲・編曲:菊田大介(Elements Garden)
02.トワイライト・サイダー
作詞:春ねむり 作曲・編曲:佐藤厚仁(Dream Monster)
03.いつか振り返るその時に
作詞・作曲・編曲:塚田耕平
04.Dash and Go! -Instrumental-
05.トワイライト・サイダー -Instrumental-
06.いつか振り返るその時に -Instrumental-
関連リンク
鈴木愛奈
公式サイト
https://suzukiaina.jp
公式Twitter
https://twitter.com/aina_suzuki723
公式Instagram
https://www.instagram.com/ainasuzuki_info/
公式YouTubeチャンネル
https://youtube.com/@suzuki_aina
一方でカップリング2曲には今の鈴木の想いを反映しつつ、歌唱面でも新たな挑戦を取り入れた意欲的な作品にも仕上がっている。今回はそのシングルの話題を中心に、久々の声出しライブへ出演しての感慨など、ここ最近のアーティスト活動の振り返りも含めてたっぷりと語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
ライブ映え必至!な爽快感満載の表題曲から、彼女がイメージした光景とは
――リリースとしては久々ですが、その間2ndライブツアー(“Aina Suzuki 2nd Live Tour Belle révolte -Invitation to Conquest-”)や様々なライブイベントへの出演など活動を重ねられてきました。なのでまずは、この約1年半の音楽活動について振り返っていただけますでしょうか。
鈴木愛奈 デビュー直後にコロナ禍が始まってしまい、2ndライブツアーも含めてまだ声出しのできないなかでも色々なライブイベントにも参加させていただいたりと、歌の活動も結構精力的にできていたんじゃないかなとは感じています。そんななかで、今年2月に出させていただいた“Lantis Girls Fes「TRY→ANGLE」”が、ソロとしては約3年ぶりの声出し解禁ライブになりまして。これまでは持ち歌の中でも、声出しライブで歌えていなかった曲のほうが多かったんですけど、このとき久々に「この曲は、絶対ライブで盛り上がるだろうな!」と思っていた曲も歌えましたし、皆さんがすごく盛り上がってくださっているのを肌で感じられたことが本当に嬉しかったですね。
――そのライブでの観客の反応は、どのように感じられましたか?
鈴木 やっぱり最初のほうは皆さん様子見だったり戸惑ったりした部分もあったように感じたんですけど、1stアルバム『ring A ring』収録の「祭リズム」を歌ったとき、溢れんばかりの皆さんの「ソーランソーラン!」っていう声がすごくて(笑)!元々私自身もライブのMCなどで「いつか声出しできたら絶対楽しいと思うんだぁ!」みたいなことを言っていた曲でしたけど、一気に会場の温度が上がったのを感じましたし、終演後にスタッフさんも「すごく盛り上がってたよ!」と言ってくださったんです。
――肌で盛り上がりを感じたポイントになったわけですね。
鈴木 そうですね。だから「そんなふうになるくらい、楽しんでいただけて良かったぁー!」と嬉しくなりましたし、これからもこれを超える盛り上がりを作っていきたい、というか「作っていかないといけないな」という気持ちにもなりましたね!声が出せないなかでも皆さん熱量高く応援してくださっていたとは思うんですけど、声出しが解禁されたからこその「待ってたよ!」という気持ちが、この曲以外でもめちゃめちゃ届いてきて。これからも声出しでのライブができるのであれば、お待たせしていたぶん少しずつでもお返ししていきたいです。
――今回のシングルがその一歩目となるのかなと思うのですが、表題曲「Dash and Go!」は非常に気持ち良い楽曲になっていますね。
鈴木 そうなんです!すごく元気で疾走感のある、素敵な曲で。それこそ晴天のなか、気持ち良い風が吹いているような感じといいますか。私、最初に曲を聴いたときに、勝手にMVのイメージが浮かんだくらいなんです。学校やビルの屋上みたいなところで、バンドさんと輪になって「いえーい!」みたいな感じで歌う、という(笑)。そういう「青空の下で歌う」みたいなものが、私のレコーディングのときのイメージでもあったので、とにかく清々しく「隔てるものは何もないぜ!」みたいな感じで歌わせていただきました。
――ちなみに、この曲がOPテーマとなっている『アリス・ギア・アイギスExpansion』との結び付きは、どのような部分で感じられましたか?
鈴木 レコーディングの前に、今回のアニメは戦いよりも彼女たちのわいわいとした日常に重きを置くようなアニメになるとお聞きしまして。なのでガッツリとゴリゴリなロックでいくというよりは、普段の彼女たちの、未来への期待感のようなイメージで歌っていったんです。そうしたら、「Dash and Go!」自体にある歌詞も含めた明るく真っ直ぐなイメージが、アニメともすごくリンクしたように感じました。
――そんなレコーディングをされてみての感覚を、改めてお聞きできますでしょうか?
鈴木 いやー!楽しく歌わせていただきました!真っ直ぐな歌詞の中で「期待、しかない!」みたいにマイナスなことをは一切考えずに、楽しいことしか待っていない未来に向かって走り続ける!という印象がすごく強い曲なので、レコーディングでもとにかく笑顔で歌っていた覚えがあります。
――先ほど「屋上でバンドさんと輪になって……」といったイメージもお話されていたくらい、本当にライブ映えしそうな曲でもありますよね。
鈴木 そうなんですよね。
だから私も、例えばサビ前の“(Happy happy days, Dash and Go!)”みたいな部分も、ファンの方と一緒に盛り上がれたらいいなと思っていまして。今までの私の持ち曲には、皆さんからレスポンスを返していただける部分のあるものってそこまで多くはなかったんですよ。でもこの曲にはそういった掛け声になるようなフレーズがすごくたくさん盛り込まれているので、私としても煽っていきやすいですし(笑)、ライブではファンの皆さんとより一体になって絶対に盛り上がれる曲になりそうだなと感じています。
――ということは、レコーディングでもファンの皆さんの姿を想像しながら。
鈴木 そうですね。「ファンの方、言ってくれるかなぁ?」と想像したり、ライブのこともすごく考えながら歌えました。
――そしてこの曲のサビでは、鈴木さんの歌声からも青空が連想されました。それは地声とファルセットのバランスの絶妙さもあってのものだと感じたのですが、レコーディングではその匙加減なども詰めていかれたんですか?
鈴木 はい。まず家で練習していく段階から、そういったファルセットの入れどころについても考えるんですけど、今回はビブラートの入れ方をちょっと細かめにしてみたりと、ちょっとしたことを変えたりしながら作っていきました。
――それは、曲のテンポに合わせて疾走感を出せるように?
鈴木 もちろん、そういう意図もありました。色々な歌い方を当て込んで試していくなかで、疾走感のある爽やかな楽曲だと「こういう入れ方のほうが、この部分はすごく刺さるかも」みたいなことを、家での練習段階から結構考えました。もしそれが違っていたら、レコーディングでディレクションしていただく、みたいな感じでした。
でも基本的には「いいね」と言っていただけたので、私が持っていったところから大幅に変えずに歌えていたように思います。
――さて、この楽曲ならではの爽快感といえば、MVでのオープントップバスに乗りながら歌われているシーンでも強く感じられますね。
鈴木 めちゃめちゃ気持ち良かったです!公道での撮影だったので、信号の様子を見ながらスタッフさんが「次、赤になりまーす!」とか「そろそろ行けそうでーす!」と臨機応変に対応してくださって。ちょうどビルに太陽が隠れたりしたときには、撮影コースをぐるっと一周してきてもう1回チャレンジしたりもしていましたね(笑)。ただ、そのなかで1つやり忘れたこともありまして……。
――どんなことですか?
鈴木 バスに乗るとき、スタイリストさんの私物のサングラスをかけてみたら「いいねぇ!」となって、かけてみることになったんですけど……その前に元々決まっていた、「紫の帽子を被るバージョンと被らないバージョンで撮る」ことばかり考えていたら、途中でサングラスのことをすっかり忘れてしまって、「まぁまぁまぁまぁ、次の機会に」となってしまったんです(笑)。
――幻の衣装が生まれてしまった(笑)。
鈴木 はい(笑)。もう1回オープンカーに乗るMVを撮ることって、あるかなぁ?とも思うんですけど(笑)。でもそういうやり取りも含めて、すごく楽しい撮影でした。
――そしてスタジオでの、マイクを持って歌うカットがメインになるシーンもありました。あのシーンでもまた、気持ち良さそうに歌われていますね。
鈴木 コードの繋がったガイコツマイクを使ってパフォーマンスするというところにロックな要素をすごく感じられて、すごく良いですよね!それに、衣装もすごくカラフルですし、初めてガッツリ色んな色を入れたエクステを高めのポニーと一緒に垂らして。自分としては、新しい一面みたいなものを見せられたように思っています。
――そのマイクを使って歌うなかでの、ターンしたあとのコードのかわし方も鮮やかで。
鈴木 いや、それがぜんっぜんなんですよ!本当はもっと勢いのあるターンをやりたかったんですけど、片手でコードを持っていたので絡まりに絡まりまして……(笑)。足をモタモタした感じに見せたくなかったので、くるんと軽やかなターンにしてみました。
自分自身を投影したカップリング曲での、歌声での新たな挑戦とは
――さて、ここからはカップリング曲についてもお伺いできますでしょうか。
鈴木 はい。今回のカップリング曲は2曲とも今の自分の気持ちや、「言葉に出したことはないけれども、ずっと心の中で思っていること」など自分のことを歌詞に落とし込んだ内容になっています。
――そのうち2曲目の「トワイライト・サイダー」は、鈴木さんのソロ楽曲としては少々意外な曲調だという印象を受けました。
鈴木 そうなんです。この曲は「ブラスを取り入れた、ほっこりするような曲にしたい」ということでいただきまして、最初「お洒落なカフェとかジャズバーみたいなところでかかっていてもおかしくない曲だなぁ」と思いました。ただ、おっしゃっていただいたように、そういう曲って歌ったことがないタイプのもので。
普段の自分の歌い方だとミスマッチかもしれないとも感じたので、まずは「歌い方をどう変えたらいいんだろう?」と悩んで、研究するところから始まりました。
――歌い方を見つけるために、どんな研究をされたんですか?
鈴木 最初にこの曲を聴いたときに「すごく似合いそうだな」と思ったシンガーさんの曲を、それこそ過去のものから最近のものまで色々聴きまして。それを参考にさせていただいたうえで、どうやって自分として歌いこなすか?という部分が結構難しかったです。
――鈴木さんとしては、どんなところを大事にされたんでしょうか。
鈴木 ちょっとブレッシーな感じといいますか、割と息多めで母音を立てすぎないといいますか、抜いた歌い方って言うんですかね?全体的にハキハキと歌いすぎずに、子音のほうを立てるような歌い方を目指していきました。
――そうした挑戦になるような曲だと、レコーディングでの気付きも普段以上に多かったのでは?
鈴木 そうですね。例えば、実際に歌うなかで「ブレス多めな声だけが、良いわけじゃないんだ」と気付かされたところもありまして。「少しだけ、ほかのところよりもしっかりと歌う感じにしてみて」のようなディレクションをいただいて、聴き比べながら色々と試していただき、「意外と違う歌い方でもハマるんだ」という気付きが多い曲ではありました。
――そういう工夫もされて完成したこの曲、ご自分でも完成形を聴いてメリハリの付け方などは納得はされていますか?
鈴木 そうですね。実際完成版を聴いて、“収まるところにちゃんと収まってくれた感”があるといいますか。私の良さも残してくれつつ、新しい引き出しを開けてくれた曲になったなぁと、すごく感じます!歌詞についても、自分に重ねられるような部分もかなりありまして。サイダーだったり色んなものに例えていただきながら、自分の気持ちを落とし込んでくださったので、そういったところはすごく歌いやすかったです。
――そんな「トワイライト・サイダー」でほのかな葛藤を感じたあとに「いつか振り返るその時に」がくると、組み合わせの妙を感じるすごく良い並びの1枚になったように感じます。
鈴木 たしかに。シングルとしてすごくまとまりがいいですよね。それはこの「いつか振り返るその時に」の歌詞が、「Dash and Go!」みたいに気持ちを結構そのまま素直にさらけ出した、明るすぎず暗くなりすぎずという絶妙なところをついたものになっているからかもしれません。この曲では私のポジティブな部分だけじゃなくて、あまりファンの方の前では出さないような、どちらかというとネガティブな、私の心の中に眠っている気持ちを出した歌になっているんです。そういうふうに「歌という表現としてだったら、こういうふうに出せる」という曲を1つ作っていただけたことは、本当に良かったなぁと思って……いるんですけど、やっぱりそのぶん歌うのが大変で(笑)。
――そういう曲だからこそ、ご自分の気持ちと曲自体の聴かせどころを擦り合わせることに、普段以上の難しさがあったり?
鈴木 いや、それよりも「自分の気持ちをすべてさらけ出す」ような歌詞を歌で表現していこうとすると、それを出せているポイントと難しさを感じたところとが両方あった、という感じなんです。この曲には、なんだったらビブラートとかもいらないんじゃないか?くらい真っ直ぐさや素直さが合う曲だなぁと感じていたので、もっと「歌う」というよりも「訴えかける」みたいに、スパーン!といきたいなぁと思っていて…今回のシングルで、一番難しかった曲だったような気がしています。
――理想と自分の歌声とのギャップみたいなものが、かなりあったと。
鈴木 そうなんです!“現実と理想は 上手く重ならずに”という、この曲の歌詞通りだなぁと思っています(笑)。
――その部分もですけど、歌い出しの“ああ 夢見るのは 思うほどいいもんじゃない”というフレーズには、一瞬ドキッとする方もいるかもしれないですね。
鈴木 ファンの方の中には「夢をどんどん叶えていく愛奈ちゃんの姿が、かっこよくて応援し始めました」と言ってくださる方もすごく多いんですけど……私自身も夢見てこの世界に飛び込んできたものの、「すべてが良いことばっかりじゃない」と感じていまして。大変なことも多いですし、それこそ何回泣いたか数え切れないくらいで、実際夢を叶えられたから「夢見て良かったぁ」と言えたりもしますけど、叶うまでの間ってどうなるかわからない未来に対して「どうしたらいいだろう?」と悩んだり、それについて考えることの憂鬱感みたいなものがあったんですよね。この曲では、そういうふうに自分の中にも渦巻いていた気持ちみたいなものも表すことができたんです。でも最後の最後には、「でも、これがあってよかったな」と前を向けるような曲にもなっています。
――だからでしょうか、この曲はライブのクライマックスにとても似合うように感じていまして。
鈴木 本当ですか!?実はそれ、今回のディレクターさんもおっしゃっていたんですよ!ライブの最後やアンコールの一番最後に歌うイメージがあって、「そこで歌ったらエモいなぁ」って。それってきっと、自分の人生の生き様みたいなものが詰め込まれた曲になったからなんだろうなぁ、と思うんですよ。セトリの一番最後を飾るというのは、そういうことなのかなぁ…って。言葉では出しにくい気持ちを歌うことのできた曲だから、そういった歌う意味を持つんでしょうし、きっとこれから歌う場所やタイミングごとに、色んな変化のある曲になりそうな予感を強く感じています。
――そしてこのシングルのリリース後も、ソロ3度目となる“Animelo Summer Live 2023 -AXEL-”(以下、アニサマ)出演など、様々な活動が待っていますね。
鈴木 はい!今年は初めての、ソロでの声出しアニサマということで。いやぁ、いざ声出しとなると緊張するなぁ(笑)。
――そんなアニサマも含めた今後のソロでの音楽活動への意気込みを、改めて最後にいただけますか?
鈴木 まずはこうやって3rdシングルが発売されるので、それを引っ提げたイベントやライブはやっていきたいですね。皆さんが求めてくださる限りは、色んなところに行ったりもしたいですし、国内はもちろん海外にも行きたいです。
――コロナ禍も落ち着いてきましたからね。
鈴木 先日、私の2ndライブツアーのBlu-ray発売を記念した、1対1のオンライントーク会がありまして。そこに海外のファンの方も参加してくださったんですよ。なかにはアメリカから「時差があって、今、夜中の3時なんです」という方もいたり。そんな夜中に私と会話してくださることが、すごく嬉しかったんです。世界中の方からそうやって応援の声を届けていただけているので、ソロとしてもいつか私が海外の皆さんのところにも行きたいですね。
●リリース情報
TVアニメ『アリス・ギア・アイギス Expansion』オープニングテーマ
鈴木愛奈
「Dash and Go!」
2023年5月10日(水)発売
■mora
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回限定盤(CD+BD)】
価格:¥2,420(税込)
品番:LACM-34378
仕様:CD+BD(MV+メイキング映像)
ランダムカード3種封入(初回限定盤・通常盤のみ、共通絵柄)
【通常盤】
価格:¥1,540(税込)
価格:LACM-24378
※ランダムカード3種封入(初回限定盤・通常盤のみ、共通絵柄)
【アニメ盤】
価格:¥1,430(税込)
品番;LACM-24379
<INDEX>
01.Dash and Go!
作詞:畑亜貴 作曲・編曲:菊田大介(Elements Garden)
02.トワイライト・サイダー
作詞:春ねむり 作曲・編曲:佐藤厚仁(Dream Monster)
03.いつか振り返るその時に
作詞・作曲・編曲:塚田耕平
04.Dash and Go! -Instrumental-
05.トワイライト・サイダー -Instrumental-
06.いつか振り返るその時に -Instrumental-
関連リンク
鈴木愛奈
公式サイト
https://suzukiaina.jp
公式Twitter
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公式Instagram
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