INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
物語を創造して音楽を作り出すスタイル。背景にはヤン・シュヴァンクマイエル
――リスアニ!には初登場ということで、まずはeddaさんご自身のことを教えてください。「エッダ」とは北欧の神話や詩集を意味しますが、この言葉に名前の由来があるのでしょうか?
edda はい。私自身が曲を作るときに物語を主題にしていくスタイルを取っているので、アーティスト名を付ける時にそれを端的に表す言葉で、かつ呼びやすいということで、この名前にしました。
――物語から曲作りをしていったのはいつ頃から?
edda 物語を作ること自体は子供の頃から好きだったのですが、それと音楽が結びついたのは「音楽塾ヴォイス」(福岡と東京にある音楽教育施設。YUIや絢香、家入レオらを輩出)で課題を出されたことがきっかけでした。最初は日常生活や周りの人を題材に作ったりしていたのですが、全然上手く作れなくて。ある時、おとぎ話をモチーフに作ってみたら、自分でもすごく手応えを覚えたんです。そこからは引き出しが増えたみたいになり、アイデアに困ることはなくなりました。
――音楽的なバックグラウンドや好きな傾向は?
edda 結構ごちゃごちゃしたというか、色んな要素が入っているゲーム音楽みたいな音楽が好きですね。アーティストさんでいうとdetune.さんや、平沢 進さんの音楽性に惹かれます。
――これまでご自身で作詞作曲をされてきましたが、どんなふうに作ることが多いですか?
edda やっぱり物語のバックグラウンドを作ることから始めます。
――これまでのeddaさんの音楽のファンはどんな方が多いですか?
edda 同い年からちょっと私より若い子が多いという印象ですね。ゴシックやダークファンタジーの世界観が好きな方が聴いてくださっていると思います。あとは、歌詞を深読みして、二次創作のテーマ曲として捉えて聴いてくれていて、想像していなかった聴かれ方をしてくれるのは嬉しいですね。
――eddaさんご自身もティム・バートンなどの世界観から影響を受けていらしたそうですね。
edda そうですね。映像作品を観て刺激を受けて曲に落とし込むほうが多いですね。特にチェコのヤン・シュヴァンクマイエルが大好きで、音楽でああいった表現ができればいいのになと思う憧れの存在です。ホコリ臭い感じと、ガーリーだけどゴシックすぎないとか感じは自分の音楽にずっとあって欲しい空気感だなと思っています。
――eddaさんはアニソンは聴いて育ってきましたか?
edda もちろんです。
――eddaさんからご覧になって、アニソンという分野の魅力はどんなところに感じられますか?
edda 私の中では先のようにキャラクター性が高いのがアニソンであるイメージが強くて好きですね。海外の曲やJ-POPの分野だと曲の中に山が1つあれば十分に見られることがあると思うのですが、アニソンは短い時間の中にいくつも山を作って、味が濃いなぁと(笑)。言葉を選ばずに言うと、私はそのダサさが良くて。自分の曲もアニソンではないのに、そういった詰め込み過ぎなところがあります。いたずらに手数を増やしてるわけではないのですが、「ここにこれを入れたほうが良くなるから」という感覚で、全然引き算ができないんです(笑)。
片思い状態だった『まほよめ』の歌を担当。新たな扉を開いたレコーディング経験に
――なるべくして今回のTVアニメ『魔法使いの嫁 SEASON2』(以下、『まほよめ』)のEDテーマを担当することになった感じがしますね。お話が届いたときはどんな思いでしたか?
edda とても嬉しかったです!自分としては歌も世界観も絶対に合うと思っていましたが、片思い状態だったので、実際にお話をいただいたときにはもう本当にビックリしました!
――以前からこの作品をご覧になっていたそうですね。
edda はい。SEASON1のOPテーマをMay’nさんが歌っていらして、CDをいただいたことをきっかけに観始めました。元々魔法のある世界観が好きなのですが、従来の日本のアニメのファンタジーの世界観とは異なる、英国の厳かなテイストにハマって観ていました。
――お話はどんなきっかけで?
edda 私はビクターのカラフルレコードからデビューしたのですが、そこが6年前にコンベンションライブを開催した時に『まほよめ』の音楽ディレクターの佐藤正和さんがいらっしゃっていて、私のことを覚えていてくださったそうで、今回のSEASON2製作に合わせてご連絡をいただきました。今回私は歌唱担当という形で、逆にほかの制作部分にタッチせず歌だけに意識を向けるという経験は初めてで新鮮でした。
――「無伴奏」というタイトルについての印象はいかがでしたか?
edda 実際には伴奏があるのに「無伴奏」と付けるところに潔さというか、かけ離れた行間に色々詰め込める感じがしました。すごく幅があって、でも抽象的ではくキャッチーな言葉。(作詞の)岩里祐穂さんは「実はずっと温めていたタイトル名だった」とおっしゃっていました。曲がしなやかで、英語の部分があるにも関わらず漢字三文字なところが、私がこの曲の中で一番好きな部分の人を表してるようで、いいなと思いました。
――歌詞の読み取りはいかがでしたか?
edda 説明的だったり、わかりやすい歌詞ではないぶん結構難しかったです。正直に言うと、収録までに意味を掴みきれない部分があったのですが、ディレクターの佐藤さんが歌うときの気持ちやニュアンスを上手く伝えてくれました。ラスサビ前にAメロと同じフレーズが来るところがあるんですが、その前をすごく大きく歌った後に、グッと抑えてAメロと同じ部分を歌うんです。でも、周りのサウンドは最初とはまったく違うボルテージになっている。そこについて、「小さい穴の中に体をねじ込んで、その先にいる人を助けたいみたいな気持ちで歌って」とおっしゃったのが特に印象に残っています。その後は「嵐の中を真っ直ぐに進んでいくイメージで歌って」と説明をされました。
――指示の出され方も映像的ですね。
edda そうなんです。佐藤さんはそういう感情に訴えかけるのが上手くて、なるほどと思わせてくれる言葉をポンとくれるんです。曲は盛り上がって壮大になっているのですが、実際レコーディングのときは部屋の中で1点を見つめるような意識で歌っていました。指示を受けながら歌うのは初めての経験だったのですが、お陰でとてもスムーズに表現ができました。普段の私は自分の曲では少し荒っぽく、言葉尻を投げるように歌うのが好きなんですけど、この曲ではまさに魔法を使うときの術式を組むように、すごく丁寧に言葉を置いていく感じでした。感情としては煮えているんだけど、表面は全部綺麗にスッとしないといけないみたいなイメージだったので、佐藤さんの指示をしっかり聞いて歌う形でした。
クセになるフレーズで惹きつける!sajou no hanaのsanaとのライブも開催
――2曲目の「存在の証明」も、作詞作曲がご自身ではない方によるものですが、こちらの曲はどのように作られたのかを教えていただけますか。
edda この曲も佐藤さんが「普段のeddaがやらないことをやってみてほしくてその曲を歌ってほしい」と、コンペをして作っていただきました。いただいた曲は私の中であまり聴いてこなかったジャンルで、どうなったらこの曲にとって一番良いのかわからなかったのでディレクションが頼りでした。ただ、歌い方についてはこれまでのガナったり、投げ捨てるような感じが適用できそうな曲だなと思いました。本当に自分の声を楽器のように扱って、収録もとてもスムーズでした。
――そして3曲目の「シェイプシフター」は、ご自身の楽曲です。どんな着想から作っていきましたか?
edda 「シェイプシフター」というのは、姿を様々な形に変える妖怪のことなのですが、私は人の顔を覚えるのが苦手で、親しい人でも「どんな顔だったっけ?」とか、「よく見たら全然違って見える」といった経験を結構していて。それを楽曲にしてみました。「姿を変えている」と言っているけれども、実はおかしいのは相手ではなく自分。大切な人を思い浮かべようとしても上手くできない様を歌っています。
――そうしたご自身の体験を歌に盛り込むことは多いですか?
edda 曲を作るにあたってのきっかけは割と日常生活に溢れているなと思います。この曲であれば自分が得意でないことから着想して、それをもっと味を濃くして物語にして、自分とはかけ離れたものに仕立てていきます。そうすると勝手に物語が始まって膨れ上がっていくことはあります。
――そのように膨らませるコツみたいなものはありますか?
edda 架空のキャラクターに対してQ&Aをぶつけていきます。「こういうふうにしようかな?」「なんでそうなるの?」「それはこうだから」……と。実際には言葉ではなくもっと自分の潜在意識に訴えるような形で繰り返していくと、輪郭が浮かび上がってきます。
――なるほど。それに対してこのメロディを当てていったわけですね。
edda はい。この曲はバラエティに富んだ2曲がある今作の3曲目らしく大仰な曲にしないように、構成としてはAメロ+(AメロBメロ)×2+サビにしようと最初から決めて、そこにふさわしい音を探る感じでした。
――編曲の齋藤優輝さんにはどんなご希望を出されましたか?
edda 割と明確なイメージがあったので、リファレンス曲をたくさんお渡ししてお伝えしました。イメージとしては、部屋から始まって部屋で終わるみたいな曲で、楽器もほとんどなくて小さいワンルームでボヤいている感じが続いて、そこからだんだん音が入ってきて、部屋にいるまま木が生えてきて、どんどん深い森になっていく。シュヴァンクマイエルの「ジャバウォッキー」という短編作品のようなイメージでとお願いしました。
――仕上がりを聴いていかがでしたか?
edda 齋藤さんに頼めば間違いないという確信が自分の中にあったのですが、今回も想定以上のものになりました。音が増えていくところや、サビの開けていく感じがありつつも、序盤では窮屈そうにホコリ臭い感じを残してくれて、さすがだなと思いました。
――今回の1枚はご自身ではどんなものになったと捉えていますか?
edda 今までのeddaの楽曲を聴いてくださった方にとっては、結構衝撃的なシングルになっている気がします。作家さんによる楽曲が2曲もあり、そこでは音としてのプロダクションも含めてとても洗練された楽曲になっていますし、「シェイプシフター」では従来からの私らしさのある楽曲も収録されています。1枚を通して聴き応えがあるものになっていますし、聴くごとに癖になっていくパターンが結構あるので、ぜひ何度も聴いていただければと思います。
――最後にご自身と同じ『まほよめ』のファンに対してのメッセージを。
edda 私自身も『まほよめ』が好きで、同じ“好き”の部分を、今までもこれからも音楽に含めていくので、今回『まほよめ』をきっかけに私と曲を知ってくださった方はぜひほかの曲も聴いていただけると、きっと感性が合うものが見つかると思いますので、あなたに合った楽曲を愛していただければと思います。
――6月にはeddaさんの歌をライブで聴ける機会があるそうですね。
edda はい。sajou no hanaのsanaさんとアコースティックライブを行います。アニソンを主戦場とされている方とコラボしたことはこれまでなかったのですが、『まほよめ』放送中ということで、初の試みをさせていただきます。ライブをきっかけにファンになっていただけた方も多いので、きっと楽しんでいただけるステージになるのではないかと思います。私は音源として収録するときは結構、細かなニュアンスまで作り込むタイプなのですが、ライブのときはより声の生々しさを届けるように歌っています。すでに音源で聴かれている曲もだいぶ変わった感じに聴いていただける思うので、そこも楽しみにして来ていただければと思います。
●リリース情報
「無伴奏」
5月24日発売
品番:VVCL-35358
価格:¥1,540(税込)
01.無伴奏
作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:白戸佑輔
02. 存在の証明
作詞:宮川 弾 作曲:清田直人 編曲:椿山日南子
03. シェイプシフター
作詞・作曲:edda 編曲:齋藤優輝
04. 無伴奏(without edda)
05. 存在の証明(without edda)
06. シェイプシフター(without edda)
●ライブ情報
edda自主企画アコースティックライブ『くものくろーる page.2』
会場:LOFT HEAVEN
日時:6月8日(木) OPEN19:00 / START19:30
出演:edda / sana(sajou no hana)
料金:前売り 3,800円 (ドリンク代別)
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関連リンク
edda オフィシャルサイト
https://eddavilla.jp/
edda オフィシャルTwitter
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edda オフィシャルYouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCwxUsBnC4gVTWUNFs-DFZeQ