『ぼっち・ざ・ろっく!』ならびにバンド音楽の素晴らしさを改めて実感させてくれる、最高のライブだった。5月21日、Zepp Haneda (TOKYO)で開催されたライブイベント“結束バンドLIVE-恒星-”。
結束バンドのキャストである青山吉能(後藤ひとり役)、鈴代紗弓(伊地知虹夏役)、水野 朔(山田リョウ役)、長谷川育美(喜多郁代役)の歌と生バンドによる演奏、そしてオーディエンスの熱狂が織り成す、この日だけの特別な輝き、恒星のように揺るぎない光が、そこには確かに存在していた。新曲を含む結束バンドの全レパートリーが披露された、本公演のレポートをお届けする。

TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
PHOTOGRAPHY BY 田村 与、内田 藍

キャストとバンドの熱演が生む“結束バンド”のリアルライブ
2022年10月クールに放送されて人気を博したTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』にとって初めての、全編ライブのみで構成されたイベントとなった本公演。4月23日に行われたアニメのスペシャルイベント“ぼっち・ざ・ろっく!です。”でも、ミニライブコーナーでキャストたちの歌唱パフォーマンスは披露されたが、この日の会場は数々のバンドが熱いステージを繰り広げてきた場所であるZepp Haneda (TOKYO)。しかも客席の1Fフロアはオールスタンディング、さらにアニメ系のライブイベントとしては珍しいことにペンライトを使った応援は控えるようにアナウンスされ、完全なるバンドライブ仕様に。パンパンに詰めかけたオーディエンスも、結束バンドのグッズ(Tシャツやタオル、そしてリストバンドならぬ“結束バンドの結束バンド”など)を身に着けて臨戦態勢はバッチリだ。

やがて照明が暗転し、ブルージーなSEと共にこの日の演奏を受け持つバンドメンバー、生本直毅(Gt/バンドマスター)、五十嵐勝人(Gt)、山崎英明(Ba)、石井悠也(Dr)が登場。三井律郎ら結束バンドの楽曲レコーディングに参加したメンバーとは異なるが、その“オリジナルメンバー”と縁の深いミュージシャンが揃っており(特に山崎はかつて比田井 修とSchool Food Punishmentで活動を共にし、現在はヒグチアイのライブサポートを務めている)、まずは肩慣らしとばかりに各々がワイルドな演奏を聴かせて観客の期待を高める。

そして結束バンドのメインボーカル担当・喜多郁代役の長谷川育美が登壇してステージ中央にスタンバイすると、「ひとりぼっち東京」からライブをスタート。出だしから堂々とした佇まいで、スタンドマイクを握りしめ、バンドの熱い演奏に身を揺らせてノリながら、彼女特有のクリアかつ芯のある歌声を会場中に響き渡らせる。

歌唱後、喜多ちゃんの声音で「こんばんは、結束バンドです」と名乗り、そのまま休む間もなく「ギターと孤独と蒼い惑星」に突入。
TVアニメの第5話、ライブハウス・STARRYのオーディションのシーンで披露された、最初のライブ曲ということもあり、観客もあのギターリフが流れた瞬間に大歓声で反応する。火花の演出が熱気をさらに上昇させるなか、長谷川もスタンドからハンドマイクに切り替えて、さらに力強く、激しくその身を動かしながら、焦燥と衝動に彩られた楽曲を表現する。特に2サビ終わりの“心臓”、ラスサビの“聴けよ”というフレーズでの、力みさえもエモーションに転換させるような歌唱には心を動かされた。

そこからクラップや“嫌だ 嫌だ 嫌だ”の大合唱で会場中が一体になった「ラブソングが歌えない」に繋げ、冒頭から3曲連続でロッキンなステージングを見せると、MCで「ここからはガラッと雰囲気を変えて、明るく元気に歌っていきたいなと思います」(長谷川)と予告して、谷口 鮪(KANA-BOON)が楽曲提供したアニメ第1~3話のEDテーマ「Distortion!!」へ。スクリーンにエンディングアニメが流れるなか、ステージ前に出てきたギタリストと向き合いながら楽しそうに歌う長谷川の姿に、観ているこちら側も思わず笑顔になってしまう。続く「ひみつ基地」ではステージを左右に動き回りながら明るく伸びやかに歌唱。2番の歌詞“だめゼッタイ”のところで両手をクロスしてバッテンマークを作ったり、間奏で客席に「い・く・よ!」と呼びかけてにこやかに腕を振ったりと、そのキラキラとしたパフォーマンスからは結束バンド随一の陽キャ・喜多ちゃんらしさが溢れ出ていたように思う。

その曲の最後で、長谷川が手を振りながらステージ袖に捌けると、入れ替わるように山田リョウ役の水野 朔が登場。客席が沸くなか、変拍子のインパクトあるイントロが奏でられる。もちろん彼女が歌ったのは、リョウがボーカルを担当する第4~7話のEDテーマ「カラカラ」。tricotの中嶋イッキュウが楽曲提供した、トリッキーかつ不思議な浮遊感がクセになるナンバーだ。正直歌いこなすのは難しい楽曲だと思うが、水野は儚さも感じさせるふんわりした高音を織り交ぜつつ、サビではレコーディング音源以上に熱のこもった歌唱を聴かせて、ライブならではの本楽曲の魅力を引き出していた。
ちなみにMCでの水野は、他のキャスト陣が「こんな朔は今まで見たことない!」と口を揃えて語るほどハイテンションで、観客にウェーブをしてもらってバンドライブ感を味わうなどして大変喜んでいたのが印象的だった。

そんな水野に代わって長谷川が再びステージに立ち、バンドのやや緊張感を感じさせるインスト演奏に続き、生本がステージ前に出てくると、アニメ第8話のライブシーンでぼっちこと後藤ひとりがバンドを立て直すために弾いた、あの鮮烈なギターソロを再現!その熱狂的なプレイから「あのバンド」に雪崩れ込み、緊迫感と疾走感に溢れるバンドの演奏に乗せて、長谷川も激しくアクションしながら焦燥感あるボーカルを叩きつける。あの日、STARRYにいた僅かの観客だけが体験できた、結束バンドの覚醒の瞬間を、実際に目の当たりにしているような感覚に陥ったのは、きっと自分だけではなかったはずだ。

その後、穏やかなマーチング風からストレートなバンドサウンドへと移り変わっていく「小さな海」でドラマチックな心情と景色の変化を表現すると、長谷川は再び降壇して、今度は伊地知虹夏役の鈴代紗弓がステージに。the peggiesの北澤ゆうほが楽曲提供した第8~11話のEDテーマ「なにが悪い」を歌い、虹夏らしい明るく元気な歌声で会場を一気に華やかな空間に塗り替える。サビでマイクを持っていないほうの手を上げて左右に振ったり、歌詞の“(今!ほら!)”のところで耳元に手を当てたり、さらにはステージを左右に大きく動きながら手を叩いたりと、賑やかな動きも込みで会場を盛り上げて、最後は「せーの!」でジャンプして締め括り。その後のMCでも、恒例の「BTR」コールを含めたコール&レスポンスなどでファンとの交流を楽しんでいた。

新曲初披露、名シーン再現、ギターヒーロー青山爆誕!
鈴代と交代で長谷川がステージに戻ってくると、次は初公開の新曲「青い春と西の空」を披露。ミドルテンポの爽やかなバンドサウンドに乗せて紡がれるのは、青春時代に感じていたような、言葉にならない感情や気持ち。スクリーンには江ノ島の映像が映し出され、ラストは夕景と共に締め括られたところを含め、思わずアニメ第9話「江ノ島エスカー」で描かれた結束バンドの姿が頭に浮かんでしまう。長谷川はこの楽曲について「高校時代の青春はあの頃にしかないから美しいところがあるので、ちょっと爽やかさと切なさを感じる歌」と感想を語っていた。

そしてライブは早くも終盤戦に。
客席に声出しを呼びかけて士気を高めると、「行くぞ、Zepp!」と檄を飛ばしてTVアニメ第12話の文化祭ライブで1曲目に歌われた「忘れてやらない」へ。曲間にバンドメンバー紹介も挿みつつ、長谷川は客席に向けて指を差したりしながら楽しそうに歌いあげ、サビでは観客も大合唱で応える。その後のMCで長谷川が「次の曲は何かわかっていますよね?」と尋ねると、客席は歓声で同意を示し、みんなで次の楽曲のタイトル「星座になれたら」をコール。16ビートの軽快なリズムとギターカッティングが心を弾ませ、それと同時に長谷川のどこか切なく甘酸っぱさも感じさせる歌い口が胸をギュっと締め付ける。ギターを背負って楽しそうに歩く喜多ちゃんのイラストを軸に、おそらく喜多ちゃんの部屋をイメージしたであろう部屋のCG(マイクやギター、アンプなどが置かれていた)や星空などを用いた映像演出も素晴らしかったが、何よりグッときたのは間奏でのギタリスト2人の演奏。なんとアニメ第12話での喜多ちゃんとぼっちによるギター演奏シーンを完全再現したのだ(さすがにぼっちのスライド奏法は「おにころ(カップ酒)」ではなくスライドバーを用いていたが)。終盤ではミラーボールも回転して、星座のようにそれぞれの輝きが集まってひとつの形を織り成す、バンドの関係性の尊さをステージ全体で表現してみせた。

ライブ本編のラストに披露されたのは、結束バンドの楽曲の中でも屈指のエモーショナルさを誇る「フラッシュバッカー」。ステージの足元にはスモークが立ち込めるなか、ゆったりとしたリズムとオルタナロック~シューゲイザー直系のヘビーなギターが生み出す深い音響、長谷川の一層感情のこもった歌声が響き渡る。ラスサビ前、バンドの演奏がストップして、一拍の静寂を置いたあと、長谷川が息を吸いこんで再び歌い始める場面には思わず引き込まれたし、最後は雲のかかった淡い青空に続いて結束バンドのロゴが大きくスクリーンに映し出され、ギターのフィードバックノイズが鳴り続けるままメンバーたちが退場していったところも、バンドらしい演出で素晴らしかった。

客席からはアンコール代わりの「BTR」コールが巻き起こり、しばらくすると再びバンドメンバーが登壇してスタンバイ。そして後藤ひとり役の青山吉能がギターを手にして登場すると、会場からはどよめきにも似た歓声が上がる。
ドラムの4カウントに続いて、彼女がぼっちと同じ黒のレスポールカスタムで奏で始めたのは、ASIAN KUNG-FU GENERATION「転がる岩、君に朝が降る」のフレーズ。TVアニメ第12話のEDテーマとして用いられた、後藤ひとりによる同曲のカバーを、青山自身のギター演奏でライブ披露するというスペシャルな演出だ。コードストロークだけでなくソロパートの部分もしっかりと弾きこなしつつ、序盤は弱々しいが楽曲が進むにつれて力強くなっていく歌のニュアンスもバッチリと表現。YouTubeで展開されたアニメとの連動企画「ギターヒーローへの道」で初めてギターを手にしたという彼女だが、そこでの努力が実った素晴らしいパフォーマンスだった(同企画が最終回を迎えたあとも密かに特訓していたという)。

その直後には、TVアニメの劇場総集編の制作が2024年春上映予定で決まったことが発表。会場が興奮に沸くなか、キャスト4人がステージに登壇し、改めてライブの感想とサポートしてくれるすべての人への感謝の気持ちを伝える。そして「まだ聴いていない曲があるんじゃないかな~!」(青山)と期待させる言葉を告げて青山・鈴代・水野がステージを去ると、残った長谷川は、もう1曲の新曲「光の中へ」をリリースに先駆けて初披露。SAKANAMONの藤森元生が作詞・作曲した本楽曲は、快活かつアップテンポなギターロックで、そこに込められた音楽やバンドに情熱を注ぐ真っ直ぐな気持ちを、長谷川は気持ちよく伸びる歌声で情感たっぷりに表現する。この日のステージを模した場所に立つぼっちのイラストを用いた映像もまた、今まさにステージという光の中にいる結束バンドを表しているようで胸に迫る。

そしてついにクライマックスへ。この日、結束バンドの楽曲で唯一歌われていない、TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』のOPテーマ「青春コンプレックス」が、ライブを締め括るラストナンバーだ。最早体力を温存する必要はないとばかりに、この日最大級の歓声で盛り上がるオーディエンス。
長谷川もステージを縦横無尽に動き回りながら、鋭くパワフルな歌声を放つ。会場を揺るがすほどの大合唱に呼応するように、尻上がりに熱量を上げていくバンドの演奏と長谷川のパフォーマンス。銀テープが発射されたラスサビからのテンションもすさまじく、その振る舞いは“衝動的感情 吠えてみろ!”という歌詞そのものだ。その場にいる誰もが心の中の“雷鳴”をかき鳴らし、圧倒的な高まりの中でライブは終幕した。

<SETLIST>
M01. ひとりぼっち東京
M02. ギターと孤独と蒼い惑星
M03. ラブソングが歌えない
M04. Distortion!!
M05. ひみつ基地
M06. カラカラ
M07. あのバンド
M08. 小さな海
M09. なにが悪い
M10. 青い春と西の空
M11. 忘れてやらない
M12. 星座になれたら
M13. フラッシュバッカー
EN1. 転がる岩、君に朝が降る
EN2. 光の中へ
EN3. 青春コンプレックス

●リリース情報
結束バンド
「光の中へ」
5月24日(水)発売

【初回仕様限定盤】
品番:SVWC-70620
価格:¥1,320(税込)

<収録曲>
1.光の中へ
2.青い春と西の空
3.光の中へ-instrumental-
4.青い春と西の空-instrumental-

5月22日(月)0時~「光の中へ」先行配信実施!

初回仕様限定特典:結束バンドLIVE-恒星-パックステージパス風ステッカー

※収録内容や特典は予告なく変更となる場合がございます。予めご了承ください。
※各種店舗特典の詳細はHPでご確認ください。

「ぼっち・ざ・ろっく!」vol.6
5月24日(水)発売

【Blu-ray 完全生産限定版(Blu-ray+特典CD)】
価格:7,700円(税込)
品番:ANZX-16351~16352

【DVD 完全生産限定版(DVD+特典CD)】
価格:6,600円(税込)
品番:ANZB-16351~16352

<収録内容>
#11~#12(2話収録)

<完全生産限定版特典>
キャラクターデザイン・総作画監督 けろりら描き下ろしジャケットイラスト

<特典CD>
・忘れてやらない-Anime Ver.-
・星座になれたら-Anime Ver.-
・忘れてやらない-instrumental-
・星座になれたら-instrumental-
・転がる岩、君に朝が降る-instrumental-

<特製リーフレット>
EDイラストステッカーシート

特典映像:青山吉能ギターヒーローへの道 後半/結束バンド『忘れてやらない』リリックビデオ/結束バンド『星座になれたら』リリックビデオ/TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」SPECIAL STUDIO LIVE/本PV

※これらの特典映像はYouTubeで公開されたものです

●書籍情報
「リスアニ!Vol.50.5 ぼっち・ざ・ろっく!号デラックスエディション」
発売中

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©はまじあき/芳文社・アニプレックス

関連リンク
TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』公式サイト
https://bocchi.rocks/

TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』公式Twitter
https://twitter.com/BTR_anime
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