INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
「U149」での千枝は、実は今まで“軸にしてきた”イメージ
――「U149」のアニメ化は、プロデューサーさんたちはもちろん、今井さんをはじめ出演者の皆さんにとっても待望のものだったのではないでしょうか。
今井麻夏 はい。お話自体はかなり前から聞いていたので時間をかけて動いていたプロジェクトだったと思うのですが、私たち演者には少しずつ情報がきたような感じで(笑)。そんななかで「なんだか、すごいことになりそうだなぁ」とは思っていました。
――放送開始後の反響は、どのようなものでしたか?
今井 本当に、すごい反響をいただいていると感じています。「U149」って何年もずーっと、少ないメンバーで小さな規模で活動をしていたので、こんなに人目に触れることってなかったんですよ。
――元々は漫画と、それに付属したドラマCDでの展開が主でしたからね。
今井 そうですね。配信番組や小規模なイベントもやってはいたんですけど、なかなか皆さんに知っていただけるほどの規模ではなくて。でも、放送が始まってからはSNSとかでもすごく反響をいただき、びっくりしていて。「やっぱり『アイマス』がアニメ化されるということは、本当にすごいことなんだな」と感じますね。
――そんな今回の「U149」のアニメ全体の中で、千枝はどのようなポジションにいるように感じられていますか?
今井 千枝ちゃんがお話の中心になる第8話以外ではみんなをフォローしたり励ましたり、ネガティブになっているところでなんとかポジティブなことを言おうと頑張る!みたいにサポートに回っているシーンがかなり多い印象があります。ただ、千枝ちゃんってすごく難しくて。プロデューサーさんたちが触れている媒体や時期によって、違った感じ方をしている方もたくさんいるような子だと思うんですよ。
――今井さん自身は、どのような違いを感じられていますか?
今井 私がオーディションを受けたときの印象をそのまま描いているのって、実は「U149」の千枝ちゃんなんですよね。だから、今まで演じるにあたって軸にしてきたのも「U149」の千枝ちゃんで。それよりも前に出会っていたゲームの千枝ちゃんは、そこを軸にして成長した先にいる、すごく積極性を持った姿だなぁ……という印象があるんです。なので、ゲームだけをやっている方には「U149」の千枝ちゃんはだいぶ新鮮に映ったかもしれませんけど、私は「千枝ちゃんらしさを存分に出していただいているな」と感じています。
――そしてもちろん「U149」には、第3芸能課のプロデューサーも登場します。この「U149」のプロデューサーは、今井さんにはどんな存在に見えていますか?
今井 アニメの中でも第1話から最終話に向かって、プロデューサー自身もすごく成長していますよね。最初の頃は戸惑ったり、アイドルとの接し方にすごく悩んで考えていたりしていて……例えば(櫻井)桃華ちゃんのお当番回(第4話「羽が折れているのに飛んでいくもの、なに?」)では、まだまだ「なんて声をかけていいかわからない」という感じだったじゃないですか?でも千枝ちゃん回の頃にはもう、察してくれることがすごく多くなってきているんですよ。
――そのなかで、頼もしさも感じたというか。
今井 そうですね。
――ちなみに今井さんから見て、千枝以外の第3芸能課のアイドルの中で、好きなアイドルや気になっているアイドルを1人挙げるなら?
今井 うーん……みんな個性も性格も違っていて比べようがないので……今回のアニメでカギになる存在だと思っている子でもいいですか?
――はい。お願いします。
今井 みんなをまとめてくれるようなキーになる存在なのは、やっぱり橘 ありすちゃんかな?ああいうふうにみんなの中心になれる人って、集団の中ではすごく必要で。ありすちゃんが真ん中にいてくれるからこそ、あのバラバラなみんなが1つにまとまれるんじゃないかな、って。それにありすちゃんって、とにかく色んなことに気づく子ですし、その気づきを通じて第3芸能課が成長するきっかけを作ってくれているんです。なので、今回もし誰か1人を挙げるのなら、ありすちゃんがふさわしいように思います。
アップテンポで明るいOPテーマの中で、“千枝らしく”あるためのポイントとは
――では続いて、OPテーマ「Shine In The Sky☆」についてお聞きしていきます。まず楽曲を聴いたとき、物語やアイドルたちとどのように結びついているように感じられましたか?
今井 「明るくて楽しくて元気!」という、わくわくと希望と明日への楽しみが詰め込まれた曲で、子供たちに歌ってほしいと大人の私たちも思うような曲ですよね。世の中には翳りを生むような曲もありますけど、そういう要素は一切排除して「楽しい!」だけに特化した、OPにすごくぴったりな曲だなと感じています。
――第3芸能課の世界に、一気に連れて行ってくれますよね。
今井 そうですそうです!「U149」のお話って、漫画もアニメも「子供だから、ただ賑やかだったり楽しいわけじゃなくて、子供も色々悩んだり葛藤したりしながら頑張って楽しくやっているんだよ」というものなんですよね。だからOP前のアバンタイトル部分が静かめだったり、疑問を投げかけてから始まるようなお話も多いんです。でもこの曲とOP映像で1回明るくバーン!と弾けさせてくれて、雰囲気をガラッと変えてから改めてCM明けに物語が始まっていって。それから改めてみんなを掘り下げていく……という“単純じゃない展開”なのがいいんですよね。
――そんな「Shine In The Sky☆」、歌う際にはどんなことを大事にされましたか?
今井 私は千枝ちゃんとして歌うときにはいつも「とにかく小さい声で歌うように」とディレクションをいただいているので、毎回毎回試行錯誤しながら声を大きくしないまま元気に明るく楽しく聴こえるよう歌っているんですね。なので今回も、千枝ちゃんらしさを失わないまま、この曲の楽しさをなんとか表現できたらいいなと思って歌いました。
――ということは、この曲を歌っている千枝の姿をイメージしながら歌っていくというか。
今井 そうですね。ただ、千枝ちゃんって普段は喜怒哀楽を我慢して抑えちゃうタイプなので、その姿だとかなり無表情な感じになってしまうと思うんです(笑)。なので、ステージ上でみんなと一緒に踊っている「頑張っている千枝ちゃん」を想像して、「みんなの中に混ざったらどうだろう?」と考えながら歌っていきました。
――ステージに立った千枝が「ここのパートでは、どんな表情をしてるかな?」といったことを思い浮かべながら。
今井 はい。舞台上の、いつもよりもちょっとテンションが上がっちゃった千枝ちゃん……というイメージで、ドキドキやワクワク、「頑張る!」みたいな歌詞の中の色んな気持ちに沿って感情を乗せて歌っていきました。しかも今回は、Aメロ・Bメロを筆頭に今までよりも表情を色濃くつけようということになったので、私は今までの中で一番オーバーに感情を乗せた覚えがあります。
――ソロバージョンでは、そんな千枝の姿をより色濃く想像できますね。
今井 1人1人の歌声が全然違うので、もしかしたらほかの子とは違う曲を歌っているように聴こえるかもしれないですね。だけどみんな合わさると、なぜかすごく一体感が出るんです。それは不思議でもありますし、嬉しいことでもありますね。
――それぞれの魅力が全然違う場所にあるけど、全部合わさると綺麗な円になるような。
今井 そうなんです!いつも「邪魔しちゃうんじゃないか?」みたいに思ったりもするんですけど、そんな心配いらなかったな、って。「子供らしさ」という意味では、やっぱりパッション組がいてくれるありがたさは毎回感じるんですけど(笑)、でもそれ以外……例えば小春ちゃんやありすちゃんのソロの魅力と全員合わさったときの魅力がそれぞれ違うので、すごく聴き応えのあるCDになっているように思います。
――さて、続いては千枝がフィーチャーされた第8話についてお聞きしていきます。このエピソード全体については、どのような印象をお持ちですか?
今井 ほかの回に比べると、すごく落ち着いた雰囲気の回になっているような印象があります。
――たしかに、よく考えたらこんなに少ない回は初めてですね。
今井 そうなんです。例えば桃華ちゃん回ではメインは桃華ちゃんとありすちゃんだけでしたけど、最初にみんな出てきたりと、意外と毎回みんな何かしら一言は言っていたんですね。でも千枝ちゃん回だけは登場する子がすごく少なかったので、出演のなかったほかのメンバーからは「どんなお話だったの?」ってよく聞かれました(笑)。
――ちなみに、今井さんとして第8話の中で、特に印象に残ったシーンとしてはどういったものがありますか?
今井 私がこのお話の中で好きなシーンって、全部千枝ちゃんとプロデューサーさんとのツーショットのところなんですよ。それはきっと、みんなでワイワイしているなかでふっと静かなシーンがあるから心に残るのかなと思うんですけど……なかでも、プロデューサーさんが「かわいい衣装だな!」と言ってくれたときに「はい。千枝には、もったいないぐらい……」って返すというやり取りが、何回見ても心がキュッ!としてしまって……。そういった千枝ちゃんなりの心のゆらめきや揺らぎが、すごく繊細に描かれて詰め込まれていたのがこの第8話なんですよね。しかも、アニメオリジナルストーリーではあるんですけど、その雰囲気が漫画の千枝ちゃん回のものと結構似ているんです。
どこまで“言える”のか……繊細に千枝らしさを探っていったアフレコ
――そんなこの回を演じるなかで、今井さんが気をつけられたポイントは、どんなところでしたか?
今井 千枝ちゃんって明確な気持ちを言葉にできる子ではないので、息や「はい」の一言のような少しのセリフの中に“戸惑い”みたいなものや“悲しい”とか“切ない”、あとは「どうしよう?」みたいな、言葉そのものとは違った気持ちを混ぜていくような作業が多いんです。
――そのニュアンスの塩梅も、例えば「お手伝いさせてください!」と(桐生)つかさに言う前後ではかなり変わってくるわけですよね。
今井 そうですね。特に前半では、「頑張ります」と言っていてもシンプルに「100%頑張ろう」という気持ちではなくて、「頑張らなくちゃいけない」とか「こう言わなくちゃいけないんじゃないか?」みたいなニュアンスが多いんです。でも後半は、千枝ちゃんにしては気持ちをすごく言葉にしているんですよね。ベンチに座ってプロデューサーさんと話すシーンやつかささんに「お手伝いさせてください!」と言うシーンだったり、最後には舞台袖でプロデューサーさんに「千枝のこと、ずっと見ててくれますか?」と言っていたり……。
――そのベンチのシーンは、千枝が一歩踏み出す特に大きなきっかけになったもののように感じました。
今井 千枝ちゃんって「思っても言えない」か、「言えても、思い切れてない」みたいなことが多くて、あれだけはっきりと「やりたいです」と言うことってほぼほぼなかったんです。だから、相手に対して大きな声で気持ちを伝えるということが新鮮でしたし、その勢いで後半ではいつも以上の意志の強さが出たように思っています。ただ、その力加減も、実際アフレコしていくなかで想定から変わっていった部分がありまして。
――どんな変化があったんですか?
今井 例えば、その舞台袖のシーンは監督さんとも話し合って、「結構吹っ切れた感じで、かなり明るいところまで持っていきましょう」と決めて収録が始まったんです。でも、いざやってみると「そこまで行くと、果たして千枝ちゃんらしいのか?」というお話になってもう少し抑えることになったりと、「言えるけど、全部は言えない」みたいなバランスもすごく繊細に考える必要がありました。
――成長が見える回ではあるけど、100%まで成長するわけではない、という。
今井 はい。「U149」の中には「私たち、まだまだ成長中!」みたいなテーマがあると思うので、ここで成長しきらないというか。でも「これからこの子たちは、どんどん羽ばたいていけそうだな」というきっかけは、すごく見えるお話なんですよね。第8話は、千枝ちゃんのその“兆し”が見えたお話だったと感じています。
――そうやって勇気を出した千枝の姿を大人として見守る方だけではなく、同じように過剰に謙虚になってしまいがちな方は、共感の目で観ているかもしれないとも感じました。
今井 そうですよね。「千枝ちゃんもやろうよ」と言われてようやく「うん」って言えるけど、今回の(赤城)みりあちゃんみたいに手を差し伸べてくれる友達がいなかったら、「頑張ります」の一言も言えなかったわけで……だから、「私はいいよ」が口癖の方はきっと共感してくれるんじゃないでしょうか?と思っていて。そういうふうに断ってから後悔するのって、やっぱり「でも本当は、頑張りたい」という気持ちがあるからだと思うので、その後悔と向き合って「今からでも頑張れるよ」ということを、千枝ちゃんは教えてくれるんだと思います。
――実際、勇気を出して踏み出してからの千枝は「そりゃ、つかさ欲しがるよなぁ」と思うくらいでしたし。
今井 頼り甲斐がありますよね(笑)。きっと、本当は色々できることがあるのに自制してしまっている子なんでしょうね。そこに色んな方が手を差し伸べてくれて、少しずつできることを増やしていける子なんだと思うんですけども。だから今回のお話を通じて、自分を開放してためらわずにチャレンジできれば、千枝ちゃんにもできることがたくさんあるんだな……と、感じてもらえたら嬉しいですね。
――そんなお話をEDテーマとして締め括ったのが、千枝のソロ曲「あこがれステッチ」でした。
今井 物語自体はつかささんのソロ曲とともに終わるので、そのあと「あこがれステッチ」を聴いていただくことで、今回のお話を通じて成長した千枝ちゃんの姿をもう1回リフレインしていただけられたらと思います。
――楽曲自体は今回のお話ができる前に生まれたものではありますが、内容と結びつくポイントもたくさんあって。
今井 そうなんですよ。今までの千枝ちゃんって「うさぎさんが好き」みたいなほかの要素が注目されることが多くて、特技のお裁縫がフィーチャーされたことがそこまでなかったんですよ。でも今回はそれが物語でも歌でも一気にクローズアップされていたので、そこもとても新鮮でしたし、それを改めて皆さんにお伝えすることができたと思うとすごく嬉しいです。
――そんな第8話は、今井さんにとってどんな回になったと思いますか?
今井 自分に軸にしてきた千枝ちゃんを、皆さんにお披露目できた回になったかなと思いますね。繰り返しになって申し訳ないんですけど……千枝ちゃんという子は、色んな側面を持った子で。私が最初にオーディションでもらったイメージのような「U149」の印象とゲームとでも違いますし、そのゲームの中でも、すごく消極的なときもあればかなり積極的なときもあったりと、時期ごとにまったく違う印象のある子なんです。そんな色んな姿のある千枝ちゃんの大元になる、「ここから千枝ちゃんは始まったんだよ」という姿を皆さんに知っていただけた、とても大事な回になりました。
――さて、アニメ「U149」の放送も残り4話。終盤へと差し掛かっていきます。最後に、毎回アイドルたちの成長や活躍を楽しみにされている読者の方々へ、一言メッセージをいただけますでしょうか?
今井 まずは何より、「U149」と第3芸能課を応援していただいてありがとうございます……とお礼をお伝えしたいです。子供たちならではの悩みや葛藤、楽しいだけではない大変な毎日を、みんなで乗り越えて。明るく楽しく……「明日も元気に頑張ろう」という気持ちで一生懸命彼女たちなりに過ごしているので、小さな一歩一歩ずつではありますけど、これからも成長を見届けていただけたら嬉しいです。
●リリース情報
「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 01 Shine In The Sky☆」
発売中
品番:COCC-18121
価格:¥1,650 (税込)
CD購入はこちら
https://imas.lnk.to/U149-01-CD
配信はこちら
https://imas-u149.lnk.to/Shine-In-The-Sky
<収録曲>
1.Shine In The Sky☆
歌:U149(橘ありす、櫻井桃華、赤城みりあ、的場梨沙、結城晴、佐々木千枝、龍崎薫、市原仁奈、古賀小春)
2.Shine In The Sky☆ 橘ありす ソロ・リミックス
歌:橘ありす
3.Shine In The Sky☆ 櫻井桃華 ソロ・リミックス
歌:櫻井桃華
4.Shine In The Sky☆ 赤城みりあ ソロ・リミックス
歌:赤城みりあ
5.Shine In The Sky☆ 的場梨沙 ソロ・リミックス
歌:的場梨沙
6.Shine In The Sky☆ 結城晴 ソロ・リミックス
歌:結城晴
7.Shine In The Sky☆ 佐々木千枝 ソロ・リミックス
歌:佐々木千枝
8.Shine In The Sky☆ 龍崎薫 ソロ・リミックス
歌:龍崎薫
9.Shine In The Sky☆ 市原仁奈 ソロ・リミックス
歌:市原仁奈
10.Shine In The Sky☆ 古賀小春 ソロ・リミックス
歌:古賀小春
11.Shine In The Sky☆
(オリジナル・カラオケ)
●作品情報
TV アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」
原作:バンダイナムコエンターテインメント
原案:「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」 廾之(サイコミ連載)
【スタッフ】
監督:岡本学
副監督:高嶋宏之
シリーズ構成:村山沖
アニメーションキャラクターデザイン:井川典恵
コンセプトアート:大久保錦一
デザインワークス:
野田 猛 小田崎恵子 中村倫子 渡部尭皓 槙田路子
美術設定:曽野由大
高橋武之 金平和茂
美術監督:井上一宏
色彩設計:土居真紀子
3DCG:石川寛貢 榊正宗 神谷宣幸
撮影監督:関谷能弘
編集:三嶋章紀
音響監督:岡本学
音楽:宮崎誠 川田瑠夏 睦月周平
音楽制作:日本コロムビア
アニメーション制作:CygamesPictures
【キャスト】
橘ありす:佐藤亜美菜
櫻井桃華:照井春佳
赤城みりあ :黒沢ともよ
的場梨沙:集貝はな
結城晴:小市眞琴
佐々木千枝:今井麻夏
龍崎薫:春瀬なつみ
市原仁奈:久野美咲
古賀小春:小森結梨
プロデューサー:米内佑希
©Bandai Namco Entertainment Inc. /PROJECT U149
関連リンク
TV アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」
公式HP
https://cinderella-u149-anime.idolmaster-official.jp/
公式Twitter
https://twitter.com/u149_anime