“Under149cm”の小さなアイドルたちの物語を描くTVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」(以下、「U149」)。その最終話、U149のメンバー9人のステージデビューを飾った新曲「キラメキ☆」を書いたのが、作編曲家・キーボーディストの渡部チェルだ。
関連シリーズの楽曲に多く関わり、今回のTVアニメでも第1話EDテーマ「よりみちリトルスター」、古賀小春(CV:小森結梨)の初オリジナル曲となった第7話劇中歌「アイム・ア・リトル・プリンセス~お星さまにお願い~」を含む3曲を書き下ろした彼に、それらの制作エピソードと「U149」に対する情熱を語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

「シンデレラガールズ」、そして「U149」との出会い
――まずは「アイドルマスター シンデレラガールズ」シリーズとの出会いについてお聞かせください。

渡部チェル 「アイマス(アイドルマスター)」という意味では、2008年に『THE IDOLM@STER MASTER LIVE』シリーズで2曲だけ編曲をやっていたのですが(秋月律子「9:02pm(REM@STER-B)」と如月千早「GO MY WAY!!(REM@STER-B)」)、「シンデレラガールズ」に関しては「私色ギフト」(TVアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』第17話EDテーマ)が最初でしたね。そのあとに「流れ星キセキ」(第25話挿入歌)も採用していただいて。それまでにも総選挙曲のコンペとかには参加していましたが。

――当時は「シンデレラガールズ」というコンテンツにはどんな印象をお持ちでしたか?

渡部 とにかくアイドルの多さに驚いたのが第一印象でしたね。
当時、アニメの第1クールのコンペから参加していたのですが、中心人物だけでも14人いたじゃないですか。しかもアニメを観ていたら、それ以外のアイドルもバンバン出てきたので、これは大規模なコンテンツだなと思いました。

――「私色ギフト」は、城ヶ崎莉嘉(CV:山本希望)、諸星きらり(CV:松嵜 麗)、赤城みりあ(CV:黒沢ともよ)から成るユニット・凸レーションと城ヶ崎美嘉(CV:佳村はるか)が歌う楽曲でしたが、彼女たちが歌うことを前提に制作した楽曲だったのでしょうか。

渡部 そうです。コンペの際に各ユニットの雰囲気と誰が歌うかは明示されていたので。凸レーションの場合は、「大人への一歩を少しずつ上っている」みたいなテーマ性が提示されていて、それに沿って作りました。
その頃は個人的に作家仕事の調子が良くない時期で、このままだと“過去の人”になってしまうという危惧があって、自分の中に焦りがあったんです。でも、「私色ギフト」が発表されたらSNSですごく反応をいただいて。自分は今55歳なのですが、この年でもまだアニメ・ゲームコンテンツの最前線で仕事をさせていただけているのは「シンデレラガールズ」のおかげという意識があるので、すごく感謝しています。

――TVアニメ以降も「シンデレラガールズ」シリーズでは数々の楽曲を手がけてらっしゃいますが、今回アニメ化された「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」(以下、「U149」)のアイドルとも縁が深いですよね。凸レーションの赤城みりあはもちろん、櫻井桃華(CV:照井春佳)のソロ曲「ラヴィアンローズ」(2015年発売)も提供されていて。

渡部 そうですね。
元々SNSとかでも「U149」のマンガが大好きと公言しているのですが、それも心を惹かれた最初のきっかけは、TVアニメの第17話に出てきた「とときら学園」(劇中に登場するテレビ番組)のメンバーが「U149」のメンバーとほぼ重複していたからなんです。あと自分は元々マンガ好きで、「シンデレラガールズ」のコミカライズ作品も全部揃えているくらいなのですが、そのなかでも「U149」は、ファンの間でもよくスポ根と言われるくらい、少年漫画的な壁を越えていく熱さみたいなものが描かれているので、読み始めてすぐハマりました。全部初版本で通常版と特装版を揃えています(笑)。

――同コミックの7巻の特装版付属CDに収録された、龍崎 薫(CV:春瀬なつみ)の初ソロ曲「ひまわりマークをさがせ!」(2021年発売)も渡部さんが作編曲を手がけていますが、これは日本コロムビア音楽プロデューサーの柏谷智浩さんに直談判したのがきっかけらしいですね。

渡部 忘年会のときに柏谷さんが「楽曲を書きたいアイドルがいたら聞きます」って言うので、いの一番で言いました(笑)。薫に関しては、TVアニメの第17話で初めてキャラクターボイスが付いたんですよ。
そのときに桃華も同時に声が付いたのですが、桃華にはすでにソロ曲を書いていたので、薫もどうしてもやりたくて。それと5thライブ(“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 5thLIVE TOUR Serendipity Parade!!!”)の石川公演2デイズのときに、しゅがー(佐藤 心)、森久保(乃々)、(宮本)フレデリカ、薫の4人で「私色ギフト」を歌ったときがあったんですね。初日でそのことを知って、気になって翌日の公演をライブビューイングで観たら、ものすごく衝撃を受けまして。自分はアニメでキャラソンを作り続けてきたので、オリジナルの歌唱者に対するこだわりがあったのですが、そのこだわりを全部破壊してくれたんですよ。これが「シンデレラガールズ」なんだなって思いましたし、その時の薫のパフォーマンスはものすごく印象的でした。

――オリジナルとは別のアイドルが歌うことで、また新しい可能性が広がっていくという。
念願が叶って制作された「ひまわりマークをさがせ!」は、TVアニメ「U149」の第9話、薫のお当番回のEDテーマにもなりました。


渡部 自分に決め打ちで発注をいただいたときは、大体2パターンの楽曲を提出するんですけど、先にこの「ひまわりマークをさがせ!」ができて、ちょっと明るい成分ばかりに振りすぎたかなと思って、薫のがんばり屋さんなところにフォーカスした、もう少し落ち着いた感じのミュージカルっぽい曲も作ったんです。ただそっちは年齢感が少し高いかなということで、結果「ひまわりマークをさがせ!」になりました。薫の無邪気な部分を特徴的に出したかったんだと思います。

一曲入魂!「U149」への想いを注いだ「よりみちリトルスター」
――そのように「U149」には並々ならぬ思い入れをお持ちだったわけですが、TVアニメ化を知ったときはいかがでしたか?

渡部 コンペの募集で知ったのですが、メールの題名に「U149」とあって、「まさか」と思いながら中身を確認したら、固まってしまって。すぐさま廾之さん(コミック版「U149」の作者)に嗚咽みたいなLINEをしたら、「情報行きましたか」って冷静な返事が戻ってきて我に返った覚えがあります(笑)。
そのくらい自分の中でも相当な喜びでしたね。

――第1話のEDテーマ「よりみちリトルスター」の作編曲を担当されましたが、こちらはコンペだったのでしょうか。

渡部 はい。そもそも全体のEDテーマのコンペで作った曲なので、第10話から使われている「グッデイ・グッナイ」と同じテーマで作られているんですよ。一日が終わって今日も楽しかったね、明日も頑張ろうっていう。だから第1話の特殊エンディングで使われることはまったく想定していなくて。なぜそうなったのか、岡本(学)監督にお会いする機会があれば聞いてみたいですね。

――この楽曲のコンペにかけた想いについては、ツイッターでもつぶやかれていましたね。「もうなにがなんでもこれは獲らねばならないと思い全てのアイデアを絞るつもりで毎日そればかり考えてました」と。

渡部 とにかく今まで持ってきた「U149」に対するイメージやアイデアを全部つぎ込もうと思って。そのツイートにも書きましたが、今までの「アイマス」アニメのEDテーマで一番好きだった「夢色ハーモニー」(TVアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』第2クールEDテーマ)にインスパイアされた部分があって、イントロに似たフレーズが入っていたり、特に楽曲の構成や転調の仕方は同じようなやり方を踏襲しているところがあります。あの楽曲、ABメロのキーは「一日の終わり」みたいな感じで、今回のテーマにも即しているんですけど、サビの頭で突然転調して、いわゆるエモい楽曲になるんですよ。で、そこから4小節やったらまた戻って、4小節やったらまた同じところに転調する。しかも楽典的には属調と呼ばれる、比較的自然な感じで転調できるやり方を使っていて、それであそこまでガラッと雰囲気を変えていることにすごく感心して、自分もその方法論をいつか使いたいなと思っていたんです。なので「よりみちリトルスター」は、サビに入る10小節前、Bメロの真ん中から属調に転調して、そのままサビにいって、サビの後半で元に戻る、「夢色ハーモニー」に近いやり方を導入しました。

――歌詞に関しても、コンペの時点で朝倉 路さんに書いてもらって、その歌詞に対してご自身も要望を出されたと、同じツイートでつぶやかれていました。

渡部 普段はコンペの歌詞にそこまでこだわることはないのですが、このときばかりはこだわりを発揮しました(笑)。1番のサビにある“きらめき集めたら 夢にしよう”というフレーズが、メロディと言葉のノリが上手くハマってすごくキャッチーだなと思ったので、「次の行の歌詞もこれに準ずる形に」とお願いした結果“虹の橋かけたら 飛びこえよう”というフレーズになりました。なにしろどうしても獲りたいコンペだったので、少しでも自分が「いいな」と思ったことを取り入れたくて。

――サウンド面で言うと、まさに“きらめき”を集めたようなキラキラ感もそうですし、リズム隊の躍動感ある演奏も本楽曲の魅力だと思います。ベースは田辺トシノさん、ドラムは佐野康夫さんが担当されていて。

渡部 そこをわかってもらえて嬉しいです。自分が作った「シンデレラガールズ」楽曲でドラムとベースを生で入れるときはこの2人にお願いしていて。余談ですが、佐野さんとは若い頃に一時期、フュージョンバンドを一緒にやっていたんですよ。当時はお互い食うや食わずのミュージシャンだったのですが。それから10年近く経ってたまたまスタジオで再会してから、生ドラムが欲しいときはよくお願いしています。この曲でも、デモの打ち込みドラムより30倍くらい躍動感のある演奏をしてくれました(笑)。

――それとフルバージョンでは、2番以降の展開がまた変化しますよね。

渡部 今回は1番のサビ前にある“だいすき”のところが、2番では“あの宇宙(そら)へ”になって、そこから間奏に入るというアイデアが最初にあったので、2番はAメロBメロから間奏に行って、そこからサビに行って終わり、という構成はフルサイズを作り始めたときから決めていました。ただ、今どきは楽曲の要素的にABCDくらいまでないと物足りないという風潮があるので、1番と2番の間に長めのDを入れて。その後の2番のA→B→間奏→サビのあとにもう1回サビを入れたくなかったので、Dメロは長めにして、転調もかまして雰囲気が変わる感じにしました。

――あのDメロ部分の転調は、歌詞の印象もあって、U149メンバーの遊び足りない気持ちがグッと伝わってくる気がしました。

渡部 あそこはちょっと引っ張られるような感じになりますからね。ここはサビのときの転調とは違って、同主調の平行調という、同じ主音の調のメジャーからマイナーに転調しそれと同じ音を使うメジャーキーに移るテクニックを使っているのですが、それをやることで属調に転調するよりもさらにカラーが変わる雰囲気が出るんです。歌ってくれたキャストの皆さんもあの部分が好きと言ってくれる人が多くて、ちょっと意外だったけど嬉しかったですね。

――その意味ではTVバージョンだけでなく、ぜひフルバージョンも聴いてほしい楽曲だと思います。

渡部 自分の中では、テレビでかかる楽曲はテレビでかかる部分で完結しなくてはいけない感覚があるのですが、今回は、デモよりも尺を縮める必要があったので、イントロを短くしたり、結構ギリギリな感じになってしまったなと思っていて。その意味では「デレステ(アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ)」のサイズ(GAME Version)が、自分の中では理想のイメージなんですよね。あれがいわゆる最初に作った、自分の中で確定した形だったんです。2Dリッチの映像もすごいですよね。自分は音ゲーが苦手なので、ゲームをしながらだとろくに映像を観られないのですが(笑)。


ミュージカルのように――古賀小春の初ソロ曲制作秘話
――そしてTVアニメ第7話の劇中歌、古賀小春(CV:小森結梨)の初オリジナル曲「アイム・ア・リトル・プリンセス~お星さまにお願い~」も、チェルさんの作編曲でした。

渡部 小春に関しては、薫よりも前から意識をしていたところがあって。実は誕生日(4月1日)が一緒なんです。

――えっ!そうだったんですね。

渡部 ちょうど「私色ギフト」がTVアニメでオンエアされた頃に、きらりの誕生日(9月1日)があったので、おめでとうツイートをしたんですよ。それをきっかけに、自分の書いた曲を歌ってくれたアイドルの誕生日にはツイートするようになったのですが、そのときに色々調べていたら、自分と同じ誕生日のアイドルがいることに気付いたんですね。それで気になって深掘りするうちに、だんだん娘みたいに愛着が湧いてしまって……まあ、今では孫でもおかしくないくらいの年齢差になりましたけど(笑)。薫は2ヵ月に1回くらい遊びに来るまさに孫のような存在だとしたら、小春は一緒に育っていきたい感覚があるので、やっぱり娘なんですよね。自分の中での2人の位置づけとしては。

――今回の小春ソロ曲は、コンペではなくご指名だったのですか?

渡部 そうです。さっきお話した忘年会のとき、柏谷さんには薫と小春の曲を書きたいと話していたんですよ。よく覚えていたなあと思いましたが(笑)。

――この楽曲は劇中でも特殊な使われ方をして、アニメの描写に合わせてまるでミュージカルのように展開していましたが、どのように制作を進めたのでしょうか。

渡部 お話をいただいたときには脚本がほぼ出来上がっていて、楽曲自体の流れのようなものも、脚本家の方がキーになるワードをいくつか提示してくださっていたんです。それがA-A’-B-Cくらいに分かれていて、それを元に「尺はこのくらいの曲にしてください」というオーダーでした。

――普通の楽曲に比べるとかなり特殊なオーダーですね。

渡部 でも自分は劇伴作家でもあるので、そういう作業は慣れていたし、サウンドイメージも「ザ・ミュージカル」という方向で決まっていたので、悩むことはなかったですね。ただ、ミュージカルっぽさを出すために、例えばAとA’でメロを揃えたりせず、言葉を優先してメロディを作っていくという方法を取ったので、まず劇中で使われる部分の歌詞を書いてもらって、それに合わせてメロディを作りました。で、歌詞に関しても、字数を揃えたりせず、なるべくばらける感じにしてほしいと、自分からお願いしました。

――そうすることによって、メロディがリフレインするのではない、ミュージカル的な楽曲になるようにしたわけですね。

渡部 ただ、その後、尺の関係もあってTVサイズは色々カットされたので、その辺りの工夫はフルサイズのバージョンを聴いてもらえるとわかると思います。

――そもそもTVサイズとフルバージョンでは、楽曲のテンポ感も少し違ったりしますよね。

渡部 曲の頭のところですね。最初のサビで入るところは、まず脚本に基づいて歌詞を書いてもらって、それに曲を付けたのですが、その後に、アニメでは冒頭でお母さんと一緒にアカペラで歌う、という演出になったんです。なのでフルバージョンは、曲の頭にサビが付いていて、TVサイズとはまったく違うものになりました。

――フルバージョンのものを聴くと、2番以降の歌詞では迷子になるような展開も入っているので、アニメで描かれた物語の流れとも連動するようなところがありますよね。

渡部 まずテレビ用のワンコーラスが完成したあとに、フルサイズを作り始めたのですが、今度は自分が第7話で流れることを意識して、「こういうパートを作りたい」という構成とサウンドの見本を作ったうえで、それを朝倉さんに渡して、脚本に沿った歌詞を書いてもらいました。迷子になるところと、雨が止むところは、メロディがない状態で歌詞を作ってもらって、それに合わせてメロディを作った感じです。「小春が好きな映画の曲」という位置づけの曲なのですが、そういうソロ曲は今までなかったパターンだったので、作っていて楽しかったですね。

――ちなみに小森さんのレコーディングには立ち会われたのでしょうか。

渡部 朝倉さんとは入れ違いになる感じで、後半のレコーディングから立ち会ったのですが、私が到着したときにはTVサイズのレコーディングはもう終了していました。ただ、苦労はされていましたね。「おねシン(お願い!シンデレラ)」が初めてのレコーディングだったらしいので。その後に「よりみちリトルスター」や「グッデイ・グッナイ」「Shine In The Sky☆」を含め、短期間の中で何曲も歌われていたので、初めての人には大変だったと思いますけど、よく頑張ってくれました。


U149メンバーの輝きを集約した最終話ライブ曲「キラメキ☆」
――そしてTVアニメ最終回となる第12話の劇中歌として制作されたのが「キラメキ☆」。物語のクライマックス、U149がステージデビューするライブシーンで歌われた楽曲です。

渡部 これもコンペだったのですが、「よりみちリトルスター」を一曲入魂で制作しつつ、その合い間に「アイム・ア・リトル・プリンセス~お星さまにお願い~」の歌詞ができるのを待っていたくらいの時期に、「最終話ライブ曲のコンペがあります」というお話をいただいて、「え!?まだあったの?」と思って(苦笑)。「よりみちリトルスター」でここ何年か分のコンペに対する体力をつぎ込んでしまったところに、さらにもう1曲どうしても獲りたい曲があると。自分の身と心を立て直すのになかなか苦労しました。

――それでも絶対に書きたかったわけですね。楽曲のテーマとしては、どんなオーダーがあったのでしょうか?

渡部 このときは珍しく、監督から具体的なリファレンスの楽曲が示されていて。それを聴いたときに、これを「アイマス」でやるとしたら「マスピ(M@STERPIECE)」を使うしかないな、というようなイメージの楽曲だったんですよ、自分的には。そのときから自分の頭の中に「M@STERPIECE」しか鳴らなくなってしまって(苦笑)。それを拭い去って全然違うものを作ろうと思ってもどうにもならなかったので、3日目くらいに考え方を変えて、自分にとっての「M@STERPIECE」を作ろうと思ったんですね。別に似ちゃってもいいじゃんって思って。イントロが「M@STERPIECE」に寄せたものになっているんですけど、あのイントロが出来たときからスコン!と1コーラス出てきたんですよ。のちにAメロは変えちゃうんですけど、これはいけるな、と思った瞬間があって。あとでバックアップファイルを見ると、メモ書きみたいな感じでしたが、ほぼ3時間くらいで書いたみたいでした。

――そこから調整されて完成形に仕上げていったと。

渡部 はい。いわゆるサビ始まりでインパクトを出すやり方は避けたくて、でもいきなりAメロに入るだけだとインパクトが足りないので、最初に「よりみちリトルスター」のイントロのフレーズを歌う形にしました。最終回にちょっとリフレインで思い出してもらえたらいいなと思って。そうしたら、作詞の高瀬(愛虹)さんが、その場所に“キラキラ”という歌詞を当ててくれたんですよ。自分は元々、ここは「ラララ♪」とかでいいかなと思っていたんですけど。これはハマったと思って。

――“キラキラ”というワードはこの楽曲で象徴的に使われていますが、そういう経緯があったんですね。

渡部 今でこそサビに“キラキラ”がたくさん入っていますけど、実は高瀬さんの第1稿にはあまり入っていなくて。ただ最後のリフレインするサビのフックの部分に入っていた“キラキラ”がすごくキャッチーで心にすごく残ったので、「もっと“キラキラ”を入れたいんですけど、どうでしょう?」と提案したら、そこと同じメロディの部分はすべて“キラキラ”を入れてくれて。それで一気にインパクトが上がりましたね。最後のサビに入るところの転調も完全に「M@STERPIECE」そのままで。これで(コンペに)落ちたら、もうしょうがないと(笑)。

――歌詞もそうですが、楽曲自体もキラキラと煌めいている印象があって。やはりU149のメンバーがステージ上で輝いている姿をイメージして制作されたのでしょうか。

渡部 そうですね。コミックの「サマーライブ編」に、メンバー13人が並んで同じポーズを取っている絵があって、それが見開き2枚分の大きさなので本だと一度には見られないんですけど、それを繋いで一枚の絵にしてくれたものを、廾之さんが以前、ツイッターに上げていたんですね。その絵を(PCの)バックグランドにしながら曲を書いていました。

――めちゃくちゃいい話じゃないですか!この取材の時点ではまだTVアニメは放送中の段階ですが、ご自身としては大きな達成感も得られたのではないでしょうか。

渡部 達成感としては、第3芸能課のみんなが実際のステージで歌う曲を書けた喜びは相当大きかったですね。ぶっちゃけ、俊龍くんが「ドレミファクトリー!」(2018年発売)を書くと聞いたときに、ものすごく悔しかった思い出があるので(笑)。とにかく自分としては第3芸能課の全体曲を書きたいとずっと思っていたので、今回のアニメでは2曲も使っていただけてありがたかったです。薫と小春のソロは、書ける状況になったら書かせてもらえるんじゃないかと思っていましたが、U149に関してはアニメ化されるまで、作るかどうかもわからない状況だったわけで。そこに2曲も書かせてもらえることになったのはちょっと出来すぎだし、これで運をすべて使い果たしたんじゃないかなと思っています。

――それだけ情熱をかけてコンペに臨んだ結果だと思いますし、逆に言うと、それほどの気力を捧げることのできる作品に出会えたということですよね。

渡部 それは嬉しいですよね。自分が好きなマンガのアニメ化に携われることは人生の中でも多くないでしょうし。ツイッターにも書きましたけど、今回は自分の作曲家人生にとっての最後の花道だと思っていて。最後に1つ大きな花を添えてもらった気持ちでいっぱいなんですよね。この記事が載るのは最終回が終わったあとになりますけど、多分、最終回が終わったあとの自分は干からびて何にも残らないんじゃないかと思っていて(笑)。このあと自分は何をして生きていくんだろうって感じです。

――いやいや!「U149」もコミックを含めてまだまだ展開があると思いますし、チェルさんには今後もたくさんの楽曲を書いてほしいです。

渡部 まだソロ曲のない(「U149」の)アイドルが4人いますしね。自分はこの先の計画をまったく知らないですけど、「U149」の曲はできるだけ書かせていただけたら嬉しいですね。それと自分は作曲家というよりもキーボード弾きの意識が強いので、もし「U149」のライブがあり、生バンドで行われるならば、何かしら弾かせてもらえると嬉しいです。作曲で人の楽曲を聴いて嫉妬することはあまりないのですが、シンデレラバンド(※「アイドルマスターシンデレラガールズ」のライブをサポートするスペシャルバンド)が発表されたときには、タッキー(滝澤俊輔/キーボード担当)くんに相当嫉妬したので(笑)。

●リリース情報
「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 01 Shine In The Sky☆」
発売中

品番:COCC-18121
価格:¥1,650(税込)

収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/COCC-18121.html

配信URL
https://imas-u149.lnk.to/Shine-In-The-Sky

「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 02 よりみちリトルスター」
発売中

品番:COCC-18122
価格:¥1,760(税込)

収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/COCC-18122.html

配信URL
https://imas-u149.lnk.to/Yorimichi-LittleStar

「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 03 Nightwear」
発売中

品番:COCC-18123
価格:¥1,650 (税込)

収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/COCC-18123.html

配信URL
https://imas-u149.lnk.to/Nightwear

「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 04 ゼロトゥワン!!」
発売中

品番:COCC-18124
価格:¥1,760(税込)

収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/COCC-18124.html

配信URL
https://imas-u149.lnk.to/Zero-to-One

「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 05 グッデイ・グッナイ」
発売中

品番:COCC-18125
価格:¥1,760(税込)

収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/u149music/#COCC-18125

配信URL
https://imas-u149.lnk.to/GoodDayGoodNight

「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 06 キラメキ☆」
2023年7月5日発売予定

品番:COCC-18126
価格:¥1,650(税込)

収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/u149music/#COCC-18126

●TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」アイドル別プレイリスト
https://lit.link/U149PLAYLIST

●作品情報
TV アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」

原作:バンダイナムコエンターテインメント
原案:「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」 廾之(サイコミ連載)

【スタッフ】
監督:岡本学
副監督:高嶋宏之
シリーズ構成:村山沖
アニメーションキャラクターデザイン:井川典恵
コンセプトアート:大久保錦一
デザインワークス:
野田 猛 小田崎恵子 中村倫子 渡部尭皓 槙田路子
美術設定:曽野由大
高橋武之 金平和茂
美術監督:井上一宏
色彩設計:土居真紀子
3DCG:石川寛貢 榊正宗 神谷宣幸
撮影監督:関谷能弘
編集:三嶋章紀
音響監督:岡本学
音楽:宮崎誠 川田瑠夏 睦月周平
音楽制作:日本コロムビア
アニメーション制作:CygamesPictures

【キャスト】
橘ありす佐藤亜美菜
櫻井桃華:照井春佳
赤城みりあ :黒沢ともよ
的場梨沙:集貝はな
結城晴:小市眞琴
佐々木千枝:今井麻夏
龍崎薫:春瀬なつみ
市原仁奈:久野美咲
古賀小春:小森結梨
プロデューサー:米内佑希

©Bandai Namco Entertainment Inc. /PROJECT U149

関連リンク
TV アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』
公式HP
https://cinderella-u149-anime.idolmaster-official.jp/

公式Twitter
https://twitter.com/u149_anime

渡部チェル 公式Twitter
https://twitter.com/cher_vOwO