次世代を担うシンガーソングライター・Tani Yuukiの勢いが止まらない。TikTokから人気が広がったラブソング「W/X/Y」はストリーミング総再生数4億回を突破。
彼の次なる一手となるのがアップテンポで攻めるロックナンバー「械物」(かいぶつ)。日本テレビ系アニメ『EDENS ZERO』の新たな幕開けを飾る、初のアニメタイアップである。 6月28日(水)に配信が、7 月 26 日(水) にCDがそれぞれリリースされる。最新アルバムを引っ提げた「Zepp Tour 2023 “多面態”」の話から「械物」のこと、アニメの話題、未来地図まで。Tani Yuukiのクリエイティブに対する真摯な姿勢や人柄が垣間見れるインタビューとなった。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
念願のアニメタイアップで「気合いが入りました」
──まず、「Tani Yuuki Zepp Tour 2023 “多面態”」を終えられた直後ということで、感想や手応えを教えてください。
Tani 僕史上最高のツアーになりました。というのも、1stワンマンライブからずっと声が出せなかったんです。でも今回のツアーは最初から声が出せて、途中の仙台公演からはマスクも解禁し、まっさらな状態でのザ・ライブという感じでした。この規模だったからという部分もあるのかもしれませんが、お客さんとのコミュニケーションも取ることができて。
──Taniさんのライブにいらっしゃる方々の年齢層は幅広いのではないでしょうか。
Tani そうですね。お子さんも来てくれていましたし、最前列がおばあちゃんだったこともあったんです!しかもその隣には、息子さん、小さい娘さんと、三世代いらっしゃって、こんなにも早く三世代でいらっしゃる方を見られることができるとは……と驚きました(笑)。次はホールでの開催なので、ゆっくり見ていただけたら良いなと思っています。
──本ツアーを経て、音楽に対する想いの変化はありましたか。
Tani 1stライブから回を重ねるごとに、お客さんも一緒に成長してくれていることを感じていました。最初は僕自身慣れていないところもありましたし、コールアンドレスポンスもできませんでしたが、いざ声が出せる!となったときに、より一体感を出したいなと思ったんですよね。それで、マイファス(MY FIRST STORY)のライブ映像を見たんです。まだ声は出せない時期でしたけど、みんな手が挙がっていて、曲が進むに連れてギアが1個ずつ上がっていくんですよね。僕自身、マイファスのライブは何度か拝見させてもらうことがあったんですが、そこからさらに進化していて、風圧を感じるようなライブだったんです。
──ロックバンドのライブからインスピレーションを得たのですね。
Tani そうですね。あと、僕はRADWIMPSがすごく好きなんですけども、曲間に(野田)洋次郎さんが言ったフレーズをお客さんが繰り返して言う……という光景を見ていたので、そういうことがいつか出来たら良いなと思っていました。表題曲「多面態」は、コールアンドレスポンスを意識したバンドサウンドの曲でしたし、「夢喰」もタオルを振り回すようなライブ向けの曲で、ほかにもロック調ではなくてもお客さんと一緒に歌う曲もあって。今まで自分1人で歌っていたものもあえてお客さんに歌ってもらって、やりたかったことができたライブでした。きっとお客さんも“初めての声出しライブ”を経験する方も多かったと思うんですよね。でも、そんななかでもしっかりと声を出してくれて、なんて言うのでしょうか……上手く言えないのですが、鳥肌が立ちました。良い空間でした。ライブが終わったその日、興奮して寝られなかったですもん。それで「じゃあ、寝れないから曲を作ろう」ってなると眠くなる(笑)。
──まるで宿題のような状態(笑)。
Tani 曲の種のようなものは出来ていましたが……僕、そんなに器用なタイプではないんです。作家のときの自分、ライブでアーティストになっているときの自分のモードは少し違って。作家のときの自分に引きずり込まれてしまうと、素の自分になってしまい、ライブでテンションが上がらなくなってしまうんですよね。
──作家・Tani Yuuki から見たアーティスト・Tani Yuuki はどういう存在なんでしょう。
Tani そうですね……どちらも嘘ではなく、素の自分ではあるんです。ただ、以前はどこか引っかかるものがあったような気もします。声が出せないなかで「本当にツアーをやってるのかな」「会話してないな」とか。だから今回のライブをやっているうちに、アーティストとしての自分も、作家としての自分も少し変わるかもしれないなという感覚はありました。それでも、今はまだ作家・Tani Yuuki の側面のほうが強い気がしていて。元々人前が苦手な人間だったんですよね。だから作家モードになって1週間もしたら元に戻ってる。あのときのコミュニケーション能力はどこへ……?というような状態です(苦笑)。
──ものづくりは好きだけど、人前で表現したり喋ったりすることは苦手という。
Tani そうです。学校の発表も苦手でした(苦笑)。元々SNSが出発点だったので、作家の自分から出てきたんですよ。それに動画はいくらでも自分好みにカスタマイズできますから、それを公開することにも抵抗はなくて。そのときはライブアーティスト・Tani Yuuki はいなかったんですよね。活動していくなかで、その側面が少しずつ大きくなってきたな、という気がしています。
──そういう意味では、「械物」はものすごく良いバランスで作れたのではないでしょうか。
Tani たしかに。ジャケ写も、アーティストの自分・作家の自分を表しているのかもしれません。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に感化されて
──Taniさんは元々アニメをよくご覧になられているそうですね。アニメ好きになったきっかけというのは?
Tani しっかり観始めたのは成人してからなんですよ。自分でサブスクに入れるようになってからは、好きなように観ることができるので(笑)。以前から『僕のヒーローアカデミア』にはずっとハマっていて、最近は『地獄楽』『推しの子』『スキップとローファー』などの少年漫画の作品を中心に観ています。それこそ「夢喰」は、『ヒロアカ』に憧れて作ったところもあるんです。あと『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の物語に感化されて「FREYA」という曲を作り、当時のツアーの入場者特典としてCDを配布したんです。
──そして、念願のアニメタイアップが『EDENS ZERO』。気合いも入ったと思います。
Tani いやあ、もうめちゃくちゃ嬉しくて……気合いが入りました。しかも真島ヒロ先生の作品。中学生のときに『FAIRY TAIL』を観ていたので、初のアニメタイアップが自分の観ていた作家さんの作品になることってあるんだ、とエモい気持ちになりました。もちろん同じ作家さんなので、絵柄やタッチは『FAIRY TAIL』と通じるものもありますし。
──舞台も物語も違うのに、お互いの作品を知っていると面白くなるところもありますしね。
Tani そこが面白いですよね。僕、ハッピーが出てきたときにびっくりしましたもん。「もしかして何か繋がってる!?」とめちゃくちゃ調べました(笑)。『FAIRY TAIL』をリアルタイムで見ていたので、すんなり物語に入ることができました。
“人の形をした化け物はどっちだ?”
──「械物」は力強くロック、ド真ん中のアニメソングを目指した印象があります。制作サイドから曲に対するリクエストはあったんですか?
Tani ほとんどありませんでした。ただ、作家さんにとっても、アニメーションの主題歌ってとても大切なものだと思うんです。僕が担当する部分のお話を原作で読ませていただいたときに、惑星の機械たちは最初は家族のような感じで……外の世界に漕ぎ出したときに、“悪い人間だけではないけど、良い人間だけでもない”という感覚と同じように、色々な機械に出会うことになる。「これはどっちが悪者なんだっけ?」と。自分たちが生きているときも、同じように感じることがあると思うんです。よくよく話を聞けば「どっちも悪くないな」って。そういうこと、ありませんか?
──ありますよね。客観的に見れば、どちらも自分なりの正義を貫いている。間に入るとより感じます。
Tani そうそう、両サイドの話を聞くと「難しいところですねえ」となってしまって(苦笑)。そういうことを思い出すような物語だったんですよね。じゃあ何を書こうかなと思ったときに、葛藤している姿や世界観、主人公・シキのことを書きたいなと。
──“人の形をした化け物はどっちだ?”というワードにその想いが顕著に出ていますよね。
Tani そのフレーズは自分から出た瞬間にハッとしたんです。また、セクションによってはレベッカっぽいところもあります。少しネタバレになってしまいますが、物語に寄せて目線を変えています。特に落ちサビにいく前のインタールードにスクラッチの巻き戻しが入っていて、でも最終的に同じメロに戻ってくる。それはレベッカの力(リバース)を反映しています。
──この曲自体にも伏線が張り巡らされている。
Tani 物語が進んでいくうちに「あっ」て思うところが出てくるかもしれません。最初って宇宙船に乗って空に行くじゃないですか。でも本人の力は空を飛ぶものではないので、あからさまに“飛ぶ”というワードは使いたくなくて、だったら“落ちる”が良いかな、とか。そういうことを考えながら。
──最後の“落ち続けて 掴むは憧憬”というのは……。
Tani ジギーのことです。
──そうですよね。それを憧憬という言葉に表しているところが素敵だなと。
Tani 僕、この言葉はそれまで知らなかったし、伝わりにくいかもなとか思いつつも……ちょっとかっこいいじゃないですか。
──(笑)。憧憬という言葉を使った曲はいくつかありますけども、私も「風の憧憬」という曲をきっかけに知ったんですよね。この曲をきっかけに覚えられる方もいらっしゃるかもしれません。
Tani ああ、たしかに……!そうなってくれたら嬉しいですね。それと、憧憬の前にある言葉の“遥か園”は、マザーのことです。結局正体がわからない。アニメの中の登場人物もまだ知らない様子でしたし、原作でもまだ描かれていない部分なので、僕も期待を込めつつ。
──「械物」というタイトルはどこから出てきたのでしょうか?
Tani この曲の中で自分は何が言いたいのかなと改めて考えたときに……化け物ってどっちなんだろうか?という、物語の中の葛藤を描きたいんだなと思って。人間と機械、どっちが怪物なのかと考えたときに、「かいぶつ」というタイトルが良いなと思ったんです。最初は「械」じゃなかったんですよ。「モンスター」も良いなと迷いましたが、最終的にこれがしっくりきました。
──様々なことが伝わるタイトルになっていますね。
Tani ありがとうございます。物語に寄り添えたのかなと思っています。
──これが映像になるときが楽しみだなと。
Tani すっごく楽しみなんですよ!感動しちゃうと思います。
僕の曲は「どこまでいってもポップ」
──「械物」はアップテンポのうえに、キーが高いですよね。Taniさんの楽曲はミドルテンポの多い印象があったので新章という感じがします。
Tani そうなんですよね。多分聴いてくださっている方には、ミドルテンポのイメージが強いと思うんです。最近でこそ、「夢喰」や「多面態」などのロックチューンがありますけど、数は多くないので。歌い出しでシャウトしたり、がなってみたりと、ポップになりすぎないようには気をつけていました。でも、どこまでいっても僕の曲ってポップなんですよね。
──こういうロック調の曲を今後もやっていきたいという想いはありますか?
Tani 多分増えてはいくと思いますが……現段階では足りていると思うんですよね。ライブを重ねていくごとにロックな曲調は増えていくのかなとは思いますが、ここまでロックな雰囲気というよりは、もっとエモーショナルで爽やかな曲が増えていくかなぁと。
──それでも、“どこまでいってもポップ”というのがTaniさんらしいなと。それはTaniさんの音楽性の核となってるんでしょうか?
Tani 最近「コード進行の中で同じ音が鳴っているとロックっぽく聴こえる」ということを教えてもらったんです。僕はシンプルなコードを使うことが多いので。そういう部分も関係しているのかな。あと、僕の曲って三連符が多いんですよ。これは完全に好みの問題なんですけど、音が跳ねる曲が好きなんですよね。
──Taniさんの中で、みんなに楽しんでもらいたいという気持ちもあるのかなと思いました。歌心というか。
Tani ああ、なるほど。たしかにそういう部分もあるのかもしれない。基本的にはそのスタンスなんですよ、みんなに楽しんでもらえたらっていう。
──「Life goes on」のような歌詞で攻めるような曲も中にはありますね。
Tani あれこそ、韻に呪われています(笑)。WurtSさんの「Talking Box」という曲があるんですけど、ああいうカッコよくてラップのある、デジタルなアップテンポの曲が欲しいなと思って作りました。今でも色々な曲の振り幅がありますが、もっと増やしていきたいなと思っていて。実は良い感じのロックチューンができそうなんです。
──おお……!撒いた種が育ちそうなんですね。
Tani そうなんです。次のツアーに向けて作っているところで、少しずつ育っています。
──今回、「械物」でTaniさんを知ったという方は、次にどの曲を聴くのがおすすめですか?
Tani 「械物」から入られた方であれば、「夢喰」「多面態」辺りがアップテンポで聴きやすいかもしれません。ほかにも「燦々たるや」というロックバラードがあります。もしかしたら、先ほど話に上がった「Life goes on」はエレクトリックなものなので、少し抵抗があるかもしれません(苦笑)。振り幅が広いので、好きな曲から聴いていただけたらという感じです。まずはアニメーションで「械物」を最初から最後まで、飛ばさずに聴いてくれたら嬉しいですね。
──その後、フルで聴いてもらいたいですよね。
Tani はい、後半をぜひ聴いてもらいたいです。アニソンを作るのは初めてだったので、89秒の壁が難しくて。でも89秒の中にもハッとするポイントは入れられていると思うので、期待してほしいです。
──これをきっかけにアニソンへのオファーは増えるのではないでしょうか。
Tani 増えたら嬉しいなと思っています。でも、ご縁やタイミングもあるんだろうなと思いつつ、やっぱり憧れますね。
──憧れをまた1つ叶えたTani さんが今後目指していきたいものを、憧憬という歌詞にかけて伺いたいです。
Tani ライブアーティストとしては、いつか日本武道館やアリーナ、ドーム、スタジアム……と挑んでいきたいですし、いつかは海外に行きたいと思っています。あと、これは以前からずっと話しているのですが……学校の教科書に載るような、世代を超えて受け継がれている曲って、作った人がわからないことも多いじゃないですか。でも、みんな曲は知ってる。それって最強だなと思っていて。作家としては、そういう曲を死ぬまでに作りたいですね。
──11月から12月にかけて開催されるTani Yuuki初のホールツアー「Tani Yuuki Hall Tour 2023 “kotodama”」について、現段階でお話できる範囲で意気込みなどを教えてください。
Tani Zeppツアーでの演出面は引き継ぎつつも、Zepp以上のことをできれば、と。ホールということで、家族連れの皆さんが安心して観やすくなるのかなと思っています。また、タイトルの“kotodama”に合う曲を作りたいなと考えていますし、そのタイトル通り、「言葉」が届くライブにしたいですね。
●配信情報
デジタルシングル
「械物」
配信リンクはこちら
●リリース情報
ニューシングル
「械物」
7月26日(水)発売
購入リンクはこちら
<CD>
1.械物
2.械物 (「EDENS ZERO」OP ver.)
3.械物 (Inst ver.)
仕様:CD+真島ヒロ描き下ろしジャケット+アナザージャケット
※期間生産限定盤
●ライブ情報
Tani Yuuki Hall Tour 2023 “kotodama”
■開催日程
11/3(祝・金)東京・東京国際フォーラムA
11/10(金)福岡・福岡サンパレス
11/23(祝・木)愛知・センチュリーホール
12/1(金)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
12/8(金)宮城・仙台サンプラザホール
12/13(水)北海道・札幌カナモトホール
12/22(金)大阪・フェニーチェ堺
詳細はこちら
●作品情報
『EDENS ZERO(エデンズゼロ)』
毎週(土)日本テレビ系全国30局にて放送中!
【キャスト】
シキ:寺島拓篤
レベッカ:小松未可子
ハッピー:釘宮理恵
ワイズ:手塚ヒロミチ
ピーノ:井澤詩織
ホムラ:青木志貴
ウィッチ:安野希世乃
シスター:藤井ゆきよ
ハーミット:高尾奏音
モスコ:岩田光央
ジン:新祐樹
クリーネ:大久保瑠美
ラグナ:八代拓
エルシー:大原さやか
ジャスティス:浪川大輔
ネロ:土師孝也
シュラ:鈴村健一
ゼノリス:井上和彦
ジギー:大塚芳忠
【スタッフ】
総監督:石平信司
監督:渡部穏寛
シリーズ構成:広田光毅
アニメーションキャラクターデザイン:迫由里香
美術監督:魏斯曼(スタジオちゅーりっぷ)
色彩設計:伊藤由紀子
撮影監督:廣瀬唯希
編集:後藤正浩(REAL-T)
音響監督:はたしょう二
音響制作:マジックカプセル
音楽:平野義久
音楽制作:日本テレビ音楽
オープニングテーマ:Tani Yuuki 「械物」
エンディングテーマ:ロザリーナ「my star」
アニメーション制作:J.C.STAFF
製作:講談社・日本テレビ放送網
関連リンク
Tani Yuuki
オフィシャルサイト
https://taniyuuki.com/
オフィシャルTwitter
https://twitter.com/yu___09___11
オフィシャルYouTubechannel
https://www.youtube.com/@TaniYuuki
TVアニメ『EDENS ZERO』公式サイト
https://edens-zero.net/
「Myra」「もう一度」をはじめ、これまで発表した楽曲も好調なチャートアクションを記録し、ツアーは7会場 SOLD OUT ──と、2020年に彗星の如くシーンに現れた彼は、リスナーたちを鷲掴みにして、次から次に繰り出す曲たちで魅了しその心を離さない。この3年間、配信でリリースされたシングルだけでも16曲、アルバムは2枚と、制作にも意欲的だ。
彼の次なる一手となるのがアップテンポで攻めるロックナンバー「械物」(かいぶつ)。日本テレビ系アニメ『EDENS ZERO』の新たな幕開けを飾る、初のアニメタイアップである。 6月28日(水)に配信が、7 月 26 日(水) にCDがそれぞれリリースされる。最新アルバムを引っ提げた「Zepp Tour 2023 “多面態”」の話から「械物」のこと、アニメの話題、未来地図まで。Tani Yuukiのクリエイティブに対する真摯な姿勢や人柄が垣間見れるインタビューとなった。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
念願のアニメタイアップで「気合いが入りました」
──まず、「Tani Yuuki Zepp Tour 2023 “多面態”」を終えられた直後ということで、感想や手応えを教えてください。
Tani 僕史上最高のツアーになりました。というのも、1stワンマンライブからずっと声が出せなかったんです。でも今回のツアーは最初から声が出せて、途中の仙台公演からはマスクも解禁し、まっさらな状態でのザ・ライブという感じでした。この規模だったからという部分もあるのかもしれませんが、お客さんとのコミュニケーションも取ることができて。
皆さんの声が聞けたり、表情が見えたりしたことが、僕の中でとても印象強くて。ライブって一緒に作り上げていくものなんだな、とより感じましたね。
──Taniさんのライブにいらっしゃる方々の年齢層は幅広いのではないでしょうか。
Tani そうですね。お子さんも来てくれていましたし、最前列がおばあちゃんだったこともあったんです!しかもその隣には、息子さん、小さい娘さんと、三世代いらっしゃって、こんなにも早く三世代でいらっしゃる方を見られることができるとは……と驚きました(笑)。次はホールでの開催なので、ゆっくり見ていただけたら良いなと思っています。
──本ツアーを経て、音楽に対する想いの変化はありましたか。
Tani 1stライブから回を重ねるごとに、お客さんも一緒に成長してくれていることを感じていました。最初は僕自身慣れていないところもありましたし、コールアンドレスポンスもできませんでしたが、いざ声が出せる!となったときに、より一体感を出したいなと思ったんですよね。それで、マイファス(MY FIRST STORY)のライブ映像を見たんです。まだ声は出せない時期でしたけど、みんな手が挙がっていて、曲が進むに連れてギアが1個ずつ上がっていくんですよね。僕自身、マイファスのライブは何度か拝見させてもらうことがあったんですが、そこからさらに進化していて、風圧を感じるようなライブだったんです。
ロックバンドならではの一体感があって、素直にかっこいいと思いました。
──ロックバンドのライブからインスピレーションを得たのですね。
Tani そうですね。あと、僕はRADWIMPSがすごく好きなんですけども、曲間に(野田)洋次郎さんが言ったフレーズをお客さんが繰り返して言う……という光景を見ていたので、そういうことがいつか出来たら良いなと思っていました。表題曲「多面態」は、コールアンドレスポンスを意識したバンドサウンドの曲でしたし、「夢喰」もタオルを振り回すようなライブ向けの曲で、ほかにもロック調ではなくてもお客さんと一緒に歌う曲もあって。今まで自分1人で歌っていたものもあえてお客さんに歌ってもらって、やりたかったことができたライブでした。きっとお客さんも“初めての声出しライブ”を経験する方も多かったと思うんですよね。でも、そんななかでもしっかりと声を出してくれて、なんて言うのでしょうか……上手く言えないのですが、鳥肌が立ちました。良い空間でした。ライブが終わったその日、興奮して寝られなかったですもん。それで「じゃあ、寝れないから曲を作ろう」ってなると眠くなる(笑)。
──まるで宿題のような状態(笑)。
ツアー中に曲作りもされていたんですか?
Tani 曲の種のようなものは出来ていましたが……僕、そんなに器用なタイプではないんです。作家のときの自分、ライブでアーティストになっているときの自分のモードは少し違って。作家のときの自分に引きずり込まれてしまうと、素の自分になってしまい、ライブでテンションが上がらなくなってしまうんですよね。
──作家・Tani Yuuki から見たアーティスト・Tani Yuuki はどういう存在なんでしょう。
Tani そうですね……どちらも嘘ではなく、素の自分ではあるんです。ただ、以前はどこか引っかかるものがあったような気もします。声が出せないなかで「本当にツアーをやってるのかな」「会話してないな」とか。だから今回のライブをやっているうちに、アーティストとしての自分も、作家としての自分も少し変わるかもしれないなという感覚はありました。それでも、今はまだ作家・Tani Yuuki の側面のほうが強い気がしていて。元々人前が苦手な人間だったんですよね。だから作家モードになって1週間もしたら元に戻ってる。あのときのコミュニケーション能力はどこへ……?というような状態です(苦笑)。
それはお客さんに対してだけでなく、身近な人に対してもそうなんですよ。「あれ、どんなふうに自分は喋ってたっけ?」と。
──ものづくりは好きだけど、人前で表現したり喋ったりすることは苦手という。
Tani そうです。学校の発表も苦手でした(苦笑)。元々SNSが出発点だったので、作家の自分から出てきたんですよ。それに動画はいくらでも自分好みにカスタマイズできますから、それを公開することにも抵抗はなくて。そのときはライブアーティスト・Tani Yuuki はいなかったんですよね。活動していくなかで、その側面が少しずつ大きくなってきたな、という気がしています。
──そういう意味では、「械物」はものすごく良いバランスで作れたのではないでしょうか。
Tani たしかに。ジャケ写も、アーティストの自分・作家の自分を表しているのかもしれません。
ただ、この曲を作ったのはだいぶ前になるんです。“多面態ツアー”の直前だったかな。だからライブを見越した曲やアップテンポのものがほしいな、というモードだったんです。多少なりとも、そのときのモードが影響しているように思うんですけど、根底にあったのはTVアニメ『EDENS ZERO』のOPテーマとして寄り添うこと。原作やアニメを観て、アニメソングのど真ん中にしたいなと思っていました。物語が壮大なので、バラードやミドルテンポの考えはまったくなかったですね。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に感化されて
──Taniさんは元々アニメをよくご覧になられているそうですね。アニメ好きになったきっかけというのは?
Tani しっかり観始めたのは成人してからなんですよ。自分でサブスクに入れるようになってからは、好きなように観ることができるので(笑)。以前から『僕のヒーローアカデミア』にはずっとハマっていて、最近は『地獄楽』『推しの子』『スキップとローファー』などの少年漫画の作品を中心に観ています。それこそ「夢喰」は、『ヒロアカ』に憧れて作ったところもあるんです。あと『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の物語に感化されて「FREYA」という曲を作り、当時のツアーの入場者特典としてCDを配布したんです。
本当に勝手に作ったんですけど……(笑)。そのときに、外的な影響から作ることがとてもやりやすく、楽しいなと思っていました。
──そして、念願のアニメタイアップが『EDENS ZERO』。気合いも入ったと思います。
Tani いやあ、もうめちゃくちゃ嬉しくて……気合いが入りました。しかも真島ヒロ先生の作品。中学生のときに『FAIRY TAIL』を観ていたので、初のアニメタイアップが自分の観ていた作家さんの作品になることってあるんだ、とエモい気持ちになりました。もちろん同じ作家さんなので、絵柄やタッチは『FAIRY TAIL』と通じるものもありますし。
──舞台も物語も違うのに、お互いの作品を知っていると面白くなるところもありますしね。
Tani そこが面白いですよね。僕、ハッピーが出てきたときにびっくりしましたもん。「もしかして何か繋がってる!?」とめちゃくちゃ調べました(笑)。『FAIRY TAIL』をリアルタイムで見ていたので、すんなり物語に入ることができました。
“人の形をした化け物はどっちだ?”
──「械物」は力強くロック、ド真ん中のアニメソングを目指した印象があります。制作サイドから曲に対するリクエストはあったんですか?
Tani ほとんどありませんでした。ただ、作家さんにとっても、アニメーションの主題歌ってとても大切なものだと思うんです。僕が担当する部分のお話を原作で読ませていただいたときに、惑星の機械たちは最初は家族のような感じで……外の世界に漕ぎ出したときに、“悪い人間だけではないけど、良い人間だけでもない”という感覚と同じように、色々な機械に出会うことになる。「これはどっちが悪者なんだっけ?」と。自分たちが生きているときも、同じように感じることがあると思うんです。よくよく話を聞けば「どっちも悪くないな」って。そういうこと、ありませんか?
──ありますよね。客観的に見れば、どちらも自分なりの正義を貫いている。間に入るとより感じます。
Tani そうそう、両サイドの話を聞くと「難しいところですねえ」となってしまって(苦笑)。そういうことを思い出すような物語だったんですよね。じゃあ何を書こうかなと思ったときに、葛藤している姿や世界観、主人公・シキのことを書きたいなと。
──“人の形をした化け物はどっちだ?”というワードにその想いが顕著に出ていますよね。
Tani そのフレーズは自分から出た瞬間にハッとしたんです。また、セクションによってはレベッカっぽいところもあります。少しネタバレになってしまいますが、物語に寄せて目線を変えています。特に落ちサビにいく前のインタールードにスクラッチの巻き戻しが入っていて、でも最終的に同じメロに戻ってくる。それはレベッカの力(リバース)を反映しています。
──この曲自体にも伏線が張り巡らされている。
Tani 物語が進んでいくうちに「あっ」て思うところが出てくるかもしれません。最初って宇宙船に乗って空に行くじゃないですか。でも本人の力は空を飛ぶものではないので、あからさまに“飛ぶ”というワードは使いたくなくて、だったら“落ちる”が良いかな、とか。そういうことを考えながら。
──最後の“落ち続けて 掴むは憧憬”というのは……。
Tani ジギーのことです。
──そうですよね。それを憧憬という言葉に表しているところが素敵だなと。
Tani 僕、この言葉はそれまで知らなかったし、伝わりにくいかもなとか思いつつも……ちょっとかっこいいじゃないですか。
──(笑)。憧憬という言葉を使った曲はいくつかありますけども、私も「風の憧憬」という曲をきっかけに知ったんですよね。この曲をきっかけに覚えられる方もいらっしゃるかもしれません。
Tani ああ、たしかに……!そうなってくれたら嬉しいですね。それと、憧憬の前にある言葉の“遥か園”は、マザーのことです。結局正体がわからない。アニメの中の登場人物もまだ知らない様子でしたし、原作でもまだ描かれていない部分なので、僕も期待を込めつつ。
──「械物」というタイトルはどこから出てきたのでしょうか?
Tani この曲の中で自分は何が言いたいのかなと改めて考えたときに……化け物ってどっちなんだろうか?という、物語の中の葛藤を描きたいんだなと思って。人間と機械、どっちが怪物なのかと考えたときに、「かいぶつ」というタイトルが良いなと思ったんです。最初は「械」じゃなかったんですよ。「モンスター」も良いなと迷いましたが、最終的にこれがしっくりきました。
──様々なことが伝わるタイトルになっていますね。
Tani ありがとうございます。物語に寄り添えたのかなと思っています。
──これが映像になるときが楽しみだなと。
Tani すっごく楽しみなんですよ!感動しちゃうと思います。
僕の曲は「どこまでいってもポップ」
──「械物」はアップテンポのうえに、キーが高いですよね。Taniさんの楽曲はミドルテンポの多い印象があったので新章という感じがします。
Tani そうなんですよね。多分聴いてくださっている方には、ミドルテンポのイメージが強いと思うんです。最近でこそ、「夢喰」や「多面態」などのロックチューンがありますけど、数は多くないので。歌い出しでシャウトしたり、がなってみたりと、ポップになりすぎないようには気をつけていました。でも、どこまでいっても僕の曲ってポップなんですよね。
──こういうロック調の曲を今後もやっていきたいという想いはありますか?
Tani 多分増えてはいくと思いますが……現段階では足りていると思うんですよね。ライブを重ねていくごとにロックな曲調は増えていくのかなとは思いますが、ここまでロックな雰囲気というよりは、もっとエモーショナルで爽やかな曲が増えていくかなぁと。
──それでも、“どこまでいってもポップ”というのがTaniさんらしいなと。それはTaniさんの音楽性の核となってるんでしょうか?
Tani 最近「コード進行の中で同じ音が鳴っているとロックっぽく聴こえる」ということを教えてもらったんです。僕はシンプルなコードを使うことが多いので。そういう部分も関係しているのかな。あと、僕の曲って三連符が多いんですよ。これは完全に好みの問題なんですけど、音が跳ねる曲が好きなんですよね。
──Taniさんの中で、みんなに楽しんでもらいたいという気持ちもあるのかなと思いました。歌心というか。
Tani ああ、なるほど。たしかにそういう部分もあるのかもしれない。基本的にはそのスタンスなんですよ、みんなに楽しんでもらえたらっていう。
──「Life goes on」のような歌詞で攻めるような曲も中にはありますね。
Tani あれこそ、韻に呪われています(笑)。WurtSさんの「Talking Box」という曲があるんですけど、ああいうカッコよくてラップのある、デジタルなアップテンポの曲が欲しいなと思って作りました。今でも色々な曲の振り幅がありますが、もっと増やしていきたいなと思っていて。実は良い感じのロックチューンができそうなんです。
──おお……!撒いた種が育ちそうなんですね。
Tani そうなんです。次のツアーに向けて作っているところで、少しずつ育っています。
──今回、「械物」でTaniさんを知ったという方は、次にどの曲を聴くのがおすすめですか?
Tani 「械物」から入られた方であれば、「夢喰」「多面態」辺りがアップテンポで聴きやすいかもしれません。ほかにも「燦々たるや」というロックバラードがあります。もしかしたら、先ほど話に上がった「Life goes on」はエレクトリックなものなので、少し抵抗があるかもしれません(苦笑)。振り幅が広いので、好きな曲から聴いていただけたらという感じです。まずはアニメーションで「械物」を最初から最後まで、飛ばさずに聴いてくれたら嬉しいですね。
──その後、フルで聴いてもらいたいですよね。
Tani はい、後半をぜひ聴いてもらいたいです。アニソンを作るのは初めてだったので、89秒の壁が難しくて。でも89秒の中にもハッとするポイントは入れられていると思うので、期待してほしいです。
──これをきっかけにアニソンへのオファーは増えるのではないでしょうか。
Tani 増えたら嬉しいなと思っています。でも、ご縁やタイミングもあるんだろうなと思いつつ、やっぱり憧れますね。
──憧れをまた1つ叶えたTani さんが今後目指していきたいものを、憧憬という歌詞にかけて伺いたいです。
Tani ライブアーティストとしては、いつか日本武道館やアリーナ、ドーム、スタジアム……と挑んでいきたいですし、いつかは海外に行きたいと思っています。あと、これは以前からずっと話しているのですが……学校の教科書に載るような、世代を超えて受け継がれている曲って、作った人がわからないことも多いじゃないですか。でも、みんな曲は知ってる。それって最強だなと思っていて。作家としては、そういう曲を死ぬまでに作りたいですね。
──11月から12月にかけて開催されるTani Yuuki初のホールツアー「Tani Yuuki Hall Tour 2023 “kotodama”」について、現段階でお話できる範囲で意気込みなどを教えてください。
Tani Zeppツアーでの演出面は引き継ぎつつも、Zepp以上のことをできれば、と。ホールということで、家族連れの皆さんが安心して観やすくなるのかなと思っています。また、タイトルの“kotodama”に合う曲を作りたいなと考えていますし、そのタイトル通り、「言葉」が届くライブにしたいですね。
●配信情報
デジタルシングル
「械物」
配信リンクはこちら
●リリース情報
ニューシングル
「械物」
7月26日(水)発売
購入リンクはこちら
<CD>
1.械物
2.械物 (「EDENS ZERO」OP ver.)
3.械物 (Inst ver.)
仕様:CD+真島ヒロ描き下ろしジャケット+アナザージャケット
※期間生産限定盤
●ライブ情報
Tani Yuuki Hall Tour 2023 “kotodama”
■開催日程
11/3(祝・金)東京・東京国際フォーラムA
11/10(金)福岡・福岡サンパレス
11/23(祝・木)愛知・センチュリーホール
12/1(金)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
12/8(金)宮城・仙台サンプラザホール
12/13(水)北海道・札幌カナモトホール
12/22(金)大阪・フェニーチェ堺
詳細はこちら
●作品情報
『EDENS ZERO(エデンズゼロ)』
毎週(土)日本テレビ系全国30局にて放送中!
【キャスト】
シキ:寺島拓篤
レベッカ:小松未可子
ハッピー:釘宮理恵
ワイズ:手塚ヒロミチ
ピーノ:井澤詩織
ホムラ:青木志貴
ウィッチ:安野希世乃
シスター:藤井ゆきよ
ハーミット:高尾奏音
モスコ:岩田光央
ジン:新祐樹
クリーネ:大久保瑠美
ラグナ:八代拓
エルシー:大原さやか
ジャスティス:浪川大輔
ネロ:土師孝也
シュラ:鈴村健一
ゼノリス:井上和彦
ジギー:大塚芳忠
【スタッフ】
総監督:石平信司
監督:渡部穏寛
シリーズ構成:広田光毅
アニメーションキャラクターデザイン:迫由里香
美術監督:魏斯曼(スタジオちゅーりっぷ)
色彩設計:伊藤由紀子
撮影監督:廣瀬唯希
編集:後藤正浩(REAL-T)
音響監督:はたしょう二
音響制作:マジックカプセル
音楽:平野義久
音楽制作:日本テレビ音楽
オープニングテーマ:Tani Yuuki 「械物」
エンディングテーマ:ロザリーナ「my star」
アニメーション制作:J.C.STAFF
製作:講談社・日本テレビ放送網
関連リンク
Tani Yuuki
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TVアニメ『EDENS ZERO』公式サイト
https://edens-zero.net/
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