アイドルマスター ミリオンライブ!」のライブイベント“765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove”が2023年7月1日~2日、東京・神田スクエアホールにて開催された。

本公演には765 MILLIONSTARSより天海春香、如月千早、星井美希萩原雪歩、高槻やよい、菊地 真、水瀬伊織、四条貴音、秋月律子三浦あずさ、双海亜美、双海真美、我那覇 響、春日未来、最上静香、伊吹 翼、徳川まつり、野々原 茜、望月杏奈、七尾百合子、高山紗代子、高坂海美、天空橋朋花、エミリー スチュアート、木下ひなた、横山奈緒、馬場このみ、宮尾美也、福田のり子、真壁瑞希、永吉 昴、ジュリア、白石 紬、桜守歌織が出演した。
今回は先がけて行われたゲネプロ公演をベースにレポートする。本記事ではライブのセットリストや演出に関する具体的な記述を行なうので、後日配信視聴予定の方は留意されたい。

TEXT BY 中里キリ

総勢34名のアイドルたちが織り成す豪華絢爛なステージ
会場となったスクエアホールは数百人規模のオールスタンディングの会場で、アイドルとの距離が近いイメージだ。シアター事務員の青羽美咲の前説の後、まばゆいスポットライトが会場を照らしだし、彼女たちの原点であるシアターの開演ブザーと、輝かしいオーバーチュアとともにライブはスタートした。

オープニングを飾ったのは天海春香、星井美希、春日未来、最上静香、徳川まつり、高山紗代子、馬場このみ、福田のり子の8人による「Dreaming!」。色とりどりのレーザーが蝶のモチーフのステージを彩り、ソロパートを担当するアイドルにスポットが当たってぱっと存在の明度が上がる。
個人的には初めてこの曲を見た日の春日未来と最上静香の印象が濃いのだが、「いっくよ~!」と前向きな笑顔でステージを牽引するのはもちろん春日。間奏に最上が「皆さん、私たちのライブ、最後まで楽しんでいってください!」と挨拶すると、天海春香が「後ろの方まで、ちゃんと見えてるからね!」とアリーナでの伝説を思い出させる名調子を響かせた。

ライブの開幕のMCを担当したのはユニット・ストロベリーポップムーンの春日未来、最上静香、伊吹 翼。最上の少し硬さのある生真面目な挨拶に伊吹が天真爛漫にツッコミを入れる。伊吹と春日が緊張をほぐそうとしているのが3人の絆を感じさせて、照れる最上の初々しさを際立たせていた。

「合言葉はスタートアップ!」では高槻やよい、水瀬伊織、秋月律子、双海亜美、我那覇 響のユニット・レジェンドデイズが勢ぞろい!緑を基調にした涼しげな夏らしい衣装で、センターは我那覇響が務めた。
高槻・秋月・我那覇の3人と亜美・水瀬の2人に分かれたパフォーマンスを見せると、スムーズなポジション移動で高槻センターにスイッチ。少し舌ったらずな歌声に唯一無二の力がある。円陣から「いぇーい!」とかわいくはっちゃけるギャップがいい。我那覇と秋月のセッション感のある動きから、落ちサビでは我那覇の伸びやかで美しいソロパートが会場を輝きで満たし、水瀬の音楽的なまでに美しい魅惑の歌声が追いかける。最後は5人が集まってしっとりとキメた。

「Vault That Borderline!」は伊吹 翼、七尾百合子、高山紗代子、真壁瑞希、ジュリアが披露。
765AS(765PRO ALLSTARS)組のイメージが強い楽曲をシアター組オンリーでの歌唱だ。ボーカル質の強いメンバーが揃った編成で、それぞれの歌声が飛び出してくるよう。ステージの奥行きを活かしたポジションチェンジの妙が感じられる楽曲で、間奏のギターパートではジュリアがエアギターを先導してフロアを熱狂させた。伊吹が「みんな、もっともーっと、私たちに声を聴かせてくださーい!」と煽ると、「ハイ!ハイ!」の合唱がフロアを満たす。コールを受けての七尾の表情豊かさが印象に残る。5人揃ってのキメのあとは、“Vault that borderline!”のシンガロングを受けながらの浮遊感のある歌い継ぎで、会場と一体になる姿が印象的だった。


「my song」は、まず菊地 真、水瀬伊織、三浦あずさが披露。古くからのファンにはたまらないCDオリジナルメンバーでの歌唱だ。眩い光の洪水とともに3人が登場すると、ステージの背景が緑あふれる自然の景色に変わる。歌い出しの三浦の引きこまれるぐらい圧倒的な歌唱力と菊地の凛々しくも優しい歌声、そして水瀬の唯一無二のボーカルの取り合わせはオリメンならではの良さだ。

驚いたのは曲途中にステージ上空からブランコタイプのリフトで伊吹 翼、真壁瑞希、ジュリアが下りてくる演出があったこと。かなり高さのある挑戦的なステージ構成だ。
ブランコの上で優しい歌声の中にも彼女ならではの味を入れてくるジュリアのケレン味。ジュリアが歌う間、その姿を隣から見つめる伊吹と真壁の眼差しが優しい。高度のあるブランコ演出はフライングに近く、怖さもあるのではないかと思われたが、伊吹がその経験さえも楽しんでいるように足をパタパタとさせているのが彼女らしかった。

水瀬、菊地、三浦が美しい三重奏を響かせる中に、降下したブランコから伊吹、真壁、ジュリアが合流。ステージ上は6人になって、美しく舞うようなダンスを見せる。ジュリアと菊地、三浦と伊吹、真壁と水瀬の溶け合う歌声が美しく響き、名曲の新しい一面を見せてくれた。
この曲が終わらずにずっと続いてほしいと祈りたくなるような特別な時間だった。

白石 紬と桜守歌織はユニット・オフィウクスとして最新楽曲「電波感傷」を披露。自在に可動するクレーンステージ2機に乗って登場した2人は、蒼と紫の近未来の街並みを背景に尖りに尖ったサイバーな空気感のステージングを披露。クレーンステージが合体して仮設のメインステージを作り上げると、ステージ上で立ち位置を入れ替える動きが鮮やか。変幻自在のステージを自在に舞い、テクニカルなステップを踏みながら加速度的にテンションを上げていく。シンメトリーなダンスと無敵の二重奏のボーカルで、オフィウクスここにありを示すようなパフォーマンスだった。

強烈なインパクトを誇る問題曲「Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~」は伊吹 翼、七尾百合子、天空橋朋花、エミリー スチュアート、永吉 昴が披露。突き抜けた楽曲の中で、アイドルが本来してはいけないムーブを時折見せる。アイドルたちが崖を昇る強烈な入りから、エミリーの「私たちはチュパカブラでーす!」の振り絞るような精一杯のシャウトがいい。文字通り火花散るハイテンションステージのセンターを務めたのは天空橋で、「チュッパチュパなカブラでーす」の声にも聖母らしい慈愛とどこか余裕が感じられた。全力のアイドルたちが「私たちはアイドルです!」の叫びを響かせると、ステージの演出も最高潮に。火花は激しさを増し、背後のチュパカブラたちの眼が光を放つ。地響きのような盛り上がりの中、五者五様のポーズをキメるアイドルたち。タイミングバッチリの七尾の投げキッスが場をさらっていた。

新曲「グッドサイン」も!シアターから飛び出したアイドルたちの新たな可能性
折り返しのMCは白石 紬と桜守歌織が担当。2人で歌った「電波感傷」について客席に問いかけると、満場の拍手と歓声がこれに応える。MCでは「電波感傷」が天体公演で披露された楽曲であることを紹介。桜守は公演前に白石と金沢で仕事をしたエピソードを披露。白石は「Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~」がシアターの宣伝ソングになることを知ったときに「一体プロデューサーは何を考えているのかと驚きました」とストレートに語っていたが、同曲での予想以上の会場の盛り上がりに満足して喜んでいる様子だった。

「春風満帆スターティング」はCDオリジナルメンバーの萩原雪歩、菊地 真、最上静香、福田のり子、永吉 昴が歌唱。祭り感のあるハイテンションな楽曲のセンターを務めるのは萩原で、自信と輝きにあふれたセンターっぷりは彼女の新境地を感じさせる。疾走感のある楽曲の中から菊地のパワーボイスが突き抜けてくるのが印象的。コールアンドレスポンスも盛り上がる、会場と一緒に駆け抜けるような熱いテンションとパッションにあふれたパフォーマンスだ。落ちサビでは一転萩原が透明で力のあるソロを輝かしく歌い上げていた。

高槻やよいの「キラメキラリ」のイントロが流れると、会場の空気がざわっと揺れる。おもちゃのブロックで形作られた虹やひまわり、チューリップが彩るステージに、活動的で元気な装いの高槻が登場すると子供番組のようなキュートで楽しい空気感になる。高槻が躍動しながら元気いっぱいに、ちょっと舌ったらずに歌うこの曲はシアターでも指折りの盛り上がり曲だ。

曲途中からは高槻に呼びこまれて、野々原 茜と白石 紬が参加。白石も高槻とお揃いの元気な装いに衣装を早替えして登場。普段はクールさが魅力の彼女の年齢相応の一面が垣間見えるキュートなパフォーマンスを見せた。間奏の高槻の「ギターソロかもーん!」に応えて、野々原と白石がエアギターパフォーマンス!トリを受けた高槻のエアギターが堂に入っているのがちょっと意外で新鮮だ。激しいダンスの中で3人のテンションはとどまることなく、会場にはオレンジの光が瞬いた。ラストは「さいっこう!」のフレーズとともにバッチリウィンクでキメた。

エミリー スチュアートと木下ひなたは「アマテラス」を披露。月下に和のぼんぼりが並ぶステージセットで、2人の衣装も和のテイストのアイドル衣装だ。情熱的な愛の歌詞と、無邪気に歌う2人のギャップがいい取り合わせだ。曲途中からはCDオリジナルメンバーの萩原雪歩、四条貴音、秋月律子、三浦あずさが逆助っ人として登場。大人のアイドルたちが楽曲本来のニュアンスを加えてステージを彩った。四条ののびやかでしなやかなダンスが目を惹き、電車ごっこのようにラインを作る振付が目にも楽しい。先輩チームの分厚い四重奏と、エミリー・木下の透明感のある歌声の対比がいい。月下に花火が上がる中キメ。片足を上げてぴたりとキメる秋月の立ち姿が絵になっていた。

「Growing Storm!」では春日未来、伊吹 翼、望月杏奈、七尾百合子、、真壁瑞希のユニット・乙女ストーム!が勢ぞろい!「乙女ストーム!、いっくぞ~!」の掛け声をかけると、屋外の噴水を背景に、腰の高さとスタイルの良さが際立つ衣装に身を包んだ5人が歌い踊った。“未来の風はいつだって”のフレーズを春日が歌うこの5人のこの曲はやはり特別。伊吹が歌う憧れの先輩との共演を甘く歌うフレーズは、先輩たちと一緒の今日の公演ではまた違う意味合いを帯びる気がした。5つの個性が会場に、そして世界に嵐を巻き起こすような心浮き立つパフォーマンスだった。

「MUSIC♪」ではステージ上段に如月千早、萩原雪歩、菊地 真、四条貴音、下段に天海春香、星井美希、三浦あずさ、双海真美が登場して8人編成で披露。ピアノと音符の意匠で構成されたステージで、音を操り音楽を楽しむようなパフォーマンスを披露。双海真美ってこんなに包みこむような柔らかなニュアンスがある表現者だっただろうか。個性豊かなダンスも見どころで、個々の動きのニュアンスを見ているだけでも飽きることがない。自由に弾む音符を通して“楽しい”の気持ちを伝える、経験豊かな先輩チームならではのハーモニーだった。

MCとしてステージに残った天海春香が、次が最後の楽曲であることを伝えると、会場から「ええー!」の悲鳴が上がる。こうしたコミュニケーションも、有歓声のライブならでは。ここでステージには望月杏奈が元気いっぱいに登場。「杏奈、最後までビビッと盛り上げちゃうね!」と宣言すると、ラストナンバーが新曲であることを伝えた。

ライブを締めくくる楽曲は新曲「グッドサイン」!ステージに残った天海春香と望月杏奈が歌い出しを担当すると、続いて双海亜美、双海真美、野々原 茜、高坂海美、横山奈緒、宮尾美也、桜守歌織が登場。そのまま望月がセンターポジションに入った。心の躍動を形にしたようなリズムに合わせたダンスは手元足元の情報量が多くハイクオリティ。全員そろったジャンプ一番が一糸乱れず決まるのが気持ちいい。圧巻だったのは望月の落ちサビのソロで、歌うほどに輝かしく存在の明度が上がって感じられるほど。ふたたび9人の歌声がひとつになると、会場に黄金のテープが舞い飛んで充実のライブは大団円となったのだった。

最後に緞帳が下りると、最後の挨拶のために望月杏奈がぴょこっと登場。緞帳の前に出てきてくれたせいか、まるで本人がそこにいるような(いるのだが)実在感が強く感じられる。充実した表情の望月はいつも支えてくれる関係者や応援してくれるファンへの感謝を伝えると、「これからもいーっぱい恩返ししていきたいから、またステージで会えるように、応援くださーい!!」と笑顔でステージを締めくくっていた。

シアターから飛び出した765 MILLIONSTARSの新しい可能性を感じさせる、素晴らしいステージだった。

付記:MR(Mixed Reality)ライブとしての「アイドルマスター」シリーズの進化
今回レポートしたのは、「アイドルマスター ミリオンライブ!」のアイドル(キャラクター)によるライブだ。スクリーンに投影されるハイクオリティなCGライブと、スポットライト、レーザー演出、スモーク、銀(金)テープの射出などの現実のライブ演出を組み合わせることで、2次元と3次元の境界を超えようとする試みと言える。

企画としては、2018年の4月~5月に神奈川・DMM VR THEATER(すでに閉館済み)にて初演が行なわれた「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆」シリーズの発展形と言っていいだろう。

【参考記事】

REPORTこれはうつつか胡蝶の夢か。765PRO ALLSTARS「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆」VRライブ初日レポート

REPORT亜美と真美の共演は思い出のティアラと共に。「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GLOOVE☆2nd SEASON」双海亜美・真美主演公演レポート

前身の「MR ST@GE!!」は各公演に“日替わり主演アイドル”を設定し、イベント性、双方向性を持ち込むことで特定のアイドルが本当にそこに生きているような実在性に特化した公演だった。対して今回の「765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove」は30人以上のアイドルが登場し、現実のライブと同じフォーマットでのライブをCGキャラクターで実現する方向性であったように思う。自分が作品世界のライブに行く感覚だ。

今回のライブを見て感じたのは、CGアイドルライブとして、そして現実のライブに極限まで近づけたライブ映像コンテンツとしての両面での進化だ。前回の「MR ST@GE!!」から現在に至るまでの技術革新と研究の成果を惜しみなく投入していて、映像面でもはっきりとした進化が感じられた。特にライブステージに奥行きが感じられて、前後の動きやフォーメーション変更時のすれ違いが自然なのは実在感を大いに高めていた。また、アイドルの表情の変化やダンスのニュアンスの個性付けなど、生きた存在としてのアイドルの表現にも細かな気遣いが感じられた。ライブで歌って踊るアイドルの描写を長年追求してきた「アイドルマスター」チームの面目躍如と言えるだろう。

「Dreamin’ Groove」のライブ演出チームでは、現実のアイマスライブでもおなじみのJUNGO氏が構成・演出・映像ディレクション・映像制作を担当している。CGによるライブにリアルな血肉を与えて現実に現出させる意図は、こうしたスタッフワークからも見て取れる。ゲームやアニメの世界のライブシーン、リアル世界での声優キャストによるライブに続く第三のライブコンテンツの軸として、新しい一歩を踏み出した公演と言えそうだ。

●セットリスト
「765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove」
2023.7.1 神田スクエアホール(直前ゲネプロ)セットリスト

M01:Dreaming!(天海春香、星井美希、春日未来、最上静香、徳川まつり、高山紗代子、馬場このみ、福田のり子)
M02:合言葉はスタートアップ!(高槻やよい、水瀬伊織、秋月律子、双海亜美、我那覇 響)
M03:Vault That Borderline!(伊吹 翼、七尾百合子、高山紗代子、真壁瑞希、ジュリア)M04:my song(菊地 真、水瀬伊織、三浦あずさ、伊吹 翼、真壁瑞希、ジュリア)
M05:電波感傷(白石 紬、桜守歌織)
M06:Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~(伊吹 翼、七尾百合子、天空橋朋花、エミリースチュアート、永吉 昴)
M07:春風満帆スターティング(萩原雪歩、菊地 真、最上静香、福田のり子、永吉 昴)※公演替わり楽曲
M08:キラメキラリ(高槻やよい、野々原 茜、白石 紬)
M09:アマテラス(萩原雪歩、四条貴音、秋月律子、三浦あずさ、エミリースチュアート、木下ひなた)
M10:Growing Storm!(春日未来、伊吹 翼、望月杏奈、七尾百合子、真壁瑞希)
M11:MUSIC♪(天海春香、如月千早、星井美希、萩原雪歩、菊地 真、四条貴音、三浦あずさ、双海真美)
M12:グッドサイン(天海春香、双海亜美、双海真美、野々原 茜、望月杏奈、高坂海美、横山奈緒、宮尾美也、桜守歌織)

©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.

関連リンク
「765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove」公式サイト
https://idolmaster-official.jp/live_event/dreamingroove/