本作のOPテーマを飾るのはネオ・グランジ・バンド・w.o.d.の初アニメタイタップとなる「STARS」。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
ソリッドで直球なロックサウンドを鳴らす3ピースバンド・w.o.d.のメンバーが忘れられないアニメソングとは
――リスアニ!初登場となるw.o.d.ですが、まずは皆さんにとっての印象的なアニメソングを教えてください。
サイトウタクヤ たくさんあるのですが、厳選すると……一番印象にあるのは、子供の頃に観ていた『デジモンアドベンチャー』の「Butter-Fly」(和田光司)です。めちゃくちゃかっこよかったですし、大人になってから聴くと泣ける1曲ですよね。当時は「週刊少年ジャンプ」作品のアニメをたくさん観ていたので、『NARUTO-ナルト-』のオープニング曲だったASIAN KUNG-FU GENERATIONの「遥か彼方」も印象的でした。今考えると、その頃からきっとロックが好きだったんでしょうね。それと映画『ワンピース THE MOVIE デッドエンドの冒険』の主題歌だったBUMP OF CHICKENの「sailing day」も超かっこよかったです。それから『鋼の錬金術師』のオープニング曲だったポルノグラフィティの「メリッサ」も好きでした。あの曲に関しては、小学校の友だちもみんな好きだったので、仲のいい友だちと振り付けまで考えて楽しんでいました。最近だと『ピンポン THE ANIMATION』のオープニング曲「唯一人」ですね。爆弾ジョニーの曲なのですが、アニメのオープニング映像との親和性もすごく高かったですし、めちゃくちゃ感動しました。それから『チェンソーマン』で米津玄師さんが歌うオープニング曲「KICK BACK」もかっこいいですし、友だちのSIX LOUNGEが歌った『僕のヒーローアカデミア』のエンディング曲「キタカゼ」もマジでいい歌詞を書くなと思ってグッときました。
――たくさんの楽曲をありがとうございました(笑)。Kenさんはいかがですか?
Ken Mackay 実は若い頃には全然アニメを観てこなかったので、今回のタイアップが決まったことで最近になって『BLEACH』を観始めたところです。観ているうちに「いいな」と思ったのがオープニング曲を飾っていたASIAN KUNG-FU GENERATIONの「アフターダーク」です。あれはテンションがアガるなと思いましたし、印象に残っています。
サイトウ そもそもアニメを観なかったけど、最近観始めて「めっちゃおもろいな」って言ってるのが面白いんです。
Ken めっちゃおもろい。『BLEACH』。
サイトウ 本当に第一話から見始めたんですよ。
――絵が今と全く違いますよね!(笑)。
Ken 絵やアニメーション技術の移り変わりも一緒に体感しています。今は藍染が空座町に攻めてきました。
サイトウ めっちゃいいとこ!
――では元良さんはいかがですか?
中島元良 僕の中で印象に残っているのは、アニメ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』初代オープニング曲であるJUDY AND MARYの「そばかす」です。その頃まではアニソンはアニメのために作られた曲だったものが、ここにきていわゆるJ-POPの、作品に繋がりのない曲がアニメに使われるようになったと感じたんです。それまでマンガやアニメは小さい子が観るもの、という捉えられ方を世の中的にはしていて、アニメを観ていること自体が今のように市民権を得てはいなかったように記憶しているんです。ジュディマリは当時、聴いているとおしゃれと思われる代表みたいなバンドだったんですよね。ジュディマリやYUKIちゃんのライブに行くとおしゃれな人が多いんですけど、そのジュディマリがアニメの曲をやるということは、『るろ剣』のアニメを観ていること自体が“おしゃれ”なこと、という見られ方をしたことで急にオタクが市民権を得たようなイメージがあります。急に「るろ剣、観てるよ」って言えるようになった気がして。『るろ剣』はほかにも川本真琴さんとかもやっていて、逆におしゃれだった。調べていくとアニメのことをあまり意識せずに曲を作ったようなことも知って、いわゆるバンドの曲をオープニングやエンディングに使うことが主流になってきたように思うんですね。もちろんそれまでのアニメのために作られたアニメソングも好きなんです。「翔べ!ガンダム」みたいな。
サイトウ カラオケに行くといつも歌っているしね。
元良 歌うね。
語彙力を失う『BLEACH』のカッコよさを、音で体現したオープニング曲を
――そのw.o.d.が、今回アニメ『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』のオープニングを担当することに。そもそもアニメのオープニング曲に対してはどのようなイメージをお持ちですか?
サイトウ オープニングの名の通り、幕開けですよね。曲が流れてくると「はじまったな」と強く感じさせることと、ストーリーが進んでいくと歌詞の響き方が変わってきたりするなと思っています。最初に聴いたときには感じていなかった気持ちが、後々に「そういうことに繋がっていたのか!」とグッとくる瞬間がきたりもするんですよね。話が進んでいく中で共鳴を強くしていくのもオープニング曲だなと思います。
元良 先ほどもお話したように、アニソンは2種類ある気がしていて。「哀 戦士」のようなアニメのために作られた曲なのか、それとも「そばかす」のような曲なのか。そんななかでも最近ではバンド側もアニメの内容に沿った曲を作るようになってきていますよね。アニメに寄り添いながらw.o.d.らしさを出した曲が今回は出来たように思っています。
――オープニング曲の話が来たときにはどのような感想がありましたか?
Ken びっくりしました。さすがにアニメに触れてこなかった自分でも知っている作品ですし、オープニング曲はそのアニメを知らなくても自然と耳に入ってくるような曲でもあるので、かなり重大な仕事だなと思って、「頑張らなくちゃ」という気持ちになりました。制作に関しては、自分がやるべきことをやるだけではあるんですけど、いい曲が出来るといいなと思いながら制作に臨みましたし、その意気込みに応えるだけの楽曲が出来たのでよかったです。
――そんな『BLEACH』への印象を教えてください。
サイトウ 初めて観たのは小さいときでしたから「とにかくかっこいい!」という印象だったんです。うわぁ!と昂ぶるなぁ、というイメージでした。子供の頃には技の名前なんて難しいから、なにを言っているのかもわからなかったですが!
元良 大紅蓮氷輪丸とかね。
サイトウ 言いたいよね。かっこいい。「卍解!」って叫ぶよ、それは!という感じで。『BLEACH』はそういったところを大事にしていますよね。ロックもそうですが、たとえばレッド・ツェッペリンってかっこよすぎて言葉で表現ができないんですよね。
Ken 最初は「どうだろう」と思いながら観始めたのですが、観ていくうちに芯を感じてきて、ブレない良さのあるアニメだなって思っています。かっこいいですし、スタイリッシュ。
サイトウ 一護のキャラのブレのなさってかっこいいよね。
Ken 本当にそう。かっこいい。
元良 僕は元々原作ファンなんですけど、「週刊少年ジャンプ」の読者って“少年”とあるくらいだから、そもそも少年のものなんですよね。ただ少年のためのものでありながら、女性読者を多く獲得した作品が数多くあって、『BLEACH』はその1つだと思うんです。たぶんその前にあったのが『幽☆遊☆白書』で、そこから数年を経てまた女性読者を獲得した作品という意味でもすごい魅力があると思うんです。
一同爆笑
元良 たとえば『幽☆遊☆白書』で言うと、女性人気が高かったキャラクターとしては飛影や蔵馬がいたと思いますが、あんな男性、世の中どれだけ探したっていないんですよ。それを“理想の男性”と思ってしまった女性たちは多いんじゃないでしょうか!男子だと大人になってくると桑原に憧れるようになるんですよね。『BLEACH』にもそれがあると思うです。中学生くらいだったら日番谷冬獅郎がかっこいいって思うんでしょうけど、高校生とかになると藍染惣右介や市丸ギンにハマる感じがありますよね。そういう意味でも罪深い作品だなって思います。ちなみに俺は27巻で織姫が一護の枕元に立つところに人生観や恋愛観が詰まっているのを感じていましたし、すごく影響を受けました。
w.o.d.初挑戦となった「89秒の壁」
――そして制作に入られた「STARS」。アニメ側からのオーダーで印象的だった言葉などはありましたか?
サイトウ 本当になにもなかったです。やりとりをしていく中で唯一あったのが、「イントロにパンチが欲しい」ということくらい。そのオーダーを受けて新たにギターリフを考えたところはありましたが、それまでは本当に好きなようにやらせてもらいました。ただ初めて試みたこととしては89秒という尺に合わせてやったことくらいでした。
Ken 伸び伸びと作らせてもらったよね。
サイトウ 嬉しかったよね。自由に、思うままにやらせてもらえたことが。
――89秒というアニメソングならではの決め事についてはいかがでしたか?
サイトウ 89秒の中で展開が多くてスピード感もある、というイメージがありましたが、逆に自分が観たり聴いたりしてきたアニメのオープニングもすべてがそういった制約の中での楽曲だったなというのがあったので、「こういうものだ」というイメージがあったおかげでスッと作れました。話が来たときにはその場でデモが出来て、そこからちょっとずつ詰めていく作業、割とスムーズでした。ただこれまではあまりメトロノームを使って録ることがなかったんです。今回のようにテンポを決めて、構成を決めて作っていくというよりも、もっとバンドっぽく作ることが多いので、その作業は新鮮でした。89秒のどこになにを置くか、という制作はどこかパズルのような感覚でもありました。
Ken テンポによってぴったりにならないんですよね。1下げると足りなくなったり、時間が余ってしまったりすることには少し苦戦をしました。
サイトウ テンポの気持ち良さと構成の気持ち良さのバランスもあったけど、意外とそれもすんなり決まりました。本当に気持ちよく作りました。
――『千年血戦篇』だからこそこだわった部分はありましたか?
サイトウ ストーリーや内容はすごく意識はしたんですけど、かといってそこに沿って作るとリアリテイィがなくなるし、自分が反映されていなさすぎて、歌っている自分に対しても説得力がなくなってしまうし、聴く人にとっても説得力のない曲になってしまうから、自分と重ね合わせて歌詞を書きました。自分の中で納得できる言葉をすごく選びましたね。最初はオケから作っていったのですが、その時点では完全にオープニングという気持ちで作っていたので、疾走感があるサウンドで斬魄刀を振っている姿をイメージしながら作りました。
Ken オケを聴いただけで「『BLEACH』だな」と思いました。作品が想像できる曲だったから、すごいなって思った。
元良 でも俺らの音楽がそもそも『BLEACH』っぽいと思う。ほかの楽曲でも『BLEACH』っぽいものがあると思う。
サイトウ 『BLEACH』では、目に見えないものがテーマでもあると思うんです。だからこそ僕自身もそれをテーマにして歌詞を書いていったんです。僕はサン=テグジュペリの『星の王子様』が大好きで、自分にとってはバイブル的な本なんですが、そこに「本当に大切なものは目に見えない」というフレーズがあるんですね。そういうことを想いながら歌詞を書きました。
――打合せの段階から楽曲が浮かんでいた、とのことでした。バトルのシーンを抽出しようだとか、なにかしらか楽曲を呼び込むイメージがあったかと思います。それはどんなものだったのでしょうか。
サイトウ それはやっぱり作品としての『BLEACH』を知っていたからこそだと思います。特に「これ」というものがあったというよりは『BLEACH』ならこれでしょう!と思ったことと、そこで自分たちにできること、自分たちがかっこいいと思うような楽曲を作ろうと思ったらスッと出来た感じでした。
――特に『BLEACH』に対してこの「STARS」で会心の出来だ!と思うところをそれぞれ教えてください。
サイトウ 英語の部分の歌詞は、『BLEACH』の話数毎のサブタイトルの感じを意識しました。このまま引用できるくらいのフレーズです。そこは会心です。
元良 サビのコード感が僕の中ではすごく『BLEACH』らしいんです。さっきレッド・ツェッペリンに対して語彙を失う話が出てきましたが、言葉より表現が豊かだと思うんです。本質的な意味で。『BLEACH』を音楽で表すなら、というサウンド感になったと思います。
Ken ベースでいえば、あんなに動くフレーズはこれまでになかったなって思います。
サイトウ 確かに珍しかったかもね。
Ken 今まではシンプルなフレーズが多かったんですけど、複雑なベースラインは自分たちとしても新しいですし、『BLEACH』的には躍動感を表しているのかなと思います。
サイトウ そうかもね。激しくて切ない感じの音楽というのは、『BLEACH』のイメージがあったからこそできたかもしれない。『BLEACH』って切なさや寂しさがあるじゃないですか。激しい中にもそういった色が出たのは『BLEACH』のイメージがあったからこそかもしれない。すごく激情的な中でちゃんと温かくて、切なくて、泣ける感じになりました。
元良 『BLEACH』のコミックスの扉絵のような感じがある。
サイトウ そうだね。自然と『BLEACH』の影響を受けて作れたかなと思います。
アニメ映えのみならずライブ映えする「STARS」をぜひ聴きに来て!
――アニメで流れるのが楽しみですね。
サイトウ 『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』のプロモーション映像でまず流れたんですけど、これがもう最高でしたから。
Ken PVのコンテも見せてもらえたんですが、その時点で「すげぇぇぇ!」ってテンションがあがりました。
元良 声優さんの声も入っていたので、すごくアガりました。
サイトウ アニメーターさんってすごいなって思って、マジで感動したんです。
元良 だからこそオープニング映像は僕らもすごく楽しみにしていて。
Ken PVでこれだと、オープニング映像はヤバいぞって思いましたよね。
サイトウ どんどんスタイリッシュになっている中で最新型ですから。放送開始がとにかく楽しみです。
元良 あとアニメのオープニング曲の熱いところって、最後のほうのいいところで入ってきたりするじゃないですか。「STARS」もそれがあるんじゃないかと今から期待もしています。
サイトウ それがあったら泣いちゃうかもしれない……!
――「STARS」で新たにw.o.d.と出会う皆さんもいらっしゃるかと思いますが、8月には「ONE MAN TOUR”バック・トゥ・ザ・フューチャーⅤ“」が控えていらっしゃいます。ライブへの意気込みをお願いします。
サイトウ いい音環境で、いいワンマンをバシッとやるので、お楽しみに!
Ken 「STARS」もやります!
サイトウ 絶対にライブ映えする曲ですから。楽しんでもらいたいです。
元良 いつも曲を出してからライブをすることに不安があるのですが、この曲についてはライブでの熱が想像できますし、演奏することも楽しみしかないので、期待してください!
サイトウ 僕らはライブバンドです。それこそ中学生の頃からずっとライブをやっていて、コロナでライブが出来なくなったときにはどう生活していけばいいかわからなくなるくらいショックでしたし、日々の生活サイクルの中にライブが常に組み込まれているくらいのバンドなので衝撃も大きかったですが、声が出せない状態での最初のライブは本当にすごい熱でした。ライブはまさに“生き物”。生きている人間が観に来て、生きている俺らが演奏をしていますから、観客の人数を制限された声の出せない中でのライブでさえ生きている人間の圧倒的なパワーを感じるほどのライブでしたし、ロックバンドでしか得られないライブの良さが毎回出るようにライブしています。音もデカいですが、ぜひ“生”を感じにライブに来てください。
――では最後に読者へのメッセージをお願いします。
サイトウ アニメの放送開始を皆さんはもちろん俺らもめちゃくちゃ楽しみにしています。『BLEACH』だけではなく、アニメやマンガも音楽も、そこで影響を受けて人生が変わったり癒されたり感動したりすることが普通にあると思いますが、そんな作品の一部になれることは特別なことだし嬉しいです。『BLEACH』を観る人たちに気に入ってもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします!
●リリース情報
w.o.d.
「STARS」
7月9日配信リリース
配信リンクはこちら
●作品情報
TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』
毎週(土)23:00からテレビ東京系列ほかで放送中
●ライブ情報
ONE MAN TOUR “バック・トゥー・ザ・フューチャーⅤ”
2023年8月10日(木)
東京・恵比寿ガーデンホール
OPEN 18:00 START 19:00
2023年8月17日(木)
大阪・梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 19:00
TCIKET:前売り 4,600円 (D別)
オフィシャル東阪統一最終先行(抽選)
受付期間:7/1(土)12:00~7/10(月)23:59
受付はこちら
チケット一般発売(先着)
取り扱いプレイガイド:チケットぴあ/イープラス/ローソンチケット
販売開始:2023年7月15日(土)10:00~
※予定枚数に達し次第販売終了となります
©久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ
関連リンク
w.o.d.オフィシャルサイト
https://www.wodband.com/
TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』公式サイト
https://bleach-anime.com/