TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」EDテーマ「燈」(あかり)を手がけた崎山蒼志に、リスアニ!WEBとしては初となるインタビューを実施。「燈」の制作を中心に、崎山自身が好きなアニメ、漫画についても話を聞いた。


INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之

「懐玉・玉折」に寄り添った「燈」、滲み出た“裏テーマ”
――新曲「燈」はTVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」EDテーマ。『呪術廻戦』に対してはどんな印象がありました?

崎山蒼志 最初のイメージは「暗い影のある少年漫画で、大人気」ということです。元々影のある作品が好きなので、以前から漫画は読んでいて。今回、アニメのEDテーマのお話をいただいて改めて読み直したんですけど、「懐玉・玉折」は特に暗いエピソードが多いなと思っていました。

――後に最強の呪術師となる五条 悟、最悪の呪詛師と呼ばれるようになる夏油 傑の高専時代の話が中心になっていて。

崎山 「過去にこんなことがあったんだ」と回収できるというか。夏油さんも若いときは優しかったんだなとか、どうしてああいう人になってしまったのかもちゃんと描かれているんですよね。映画「ジョーカー」と似たような感じもあるのかな?

――なるほど。EDテーマの制作についても、夏油 傑をイメージしたとか。

崎山 そうですね。原作を読んだときも、夏油さんのシーンが印象的だったので。優しさや理想を持っていたのに、だんだんと闇落ちしてしまうというか……。
感情に揺らぎがあるところに少し共感できたんです。なので夏油さんにフォーカスして曲を書いてみようと思って。あとはバラードっぽいものがいいかもという話はしてました。

――夏油に共感できる部分というと?

崎山 ほかのキャラクターたちもそうかもしれないですけど、曖昧さがあるんです。愛しいと思ってるけど、時々すごく嫌いになったり、何かの出来事をきっかけに“裏切られた”と感じたり。そういう表裏一体な感じは「わかるな」と思って。

ーー歌詞に関して言うと、“他者を尊重すること”もテーマの1つだとか。

崎山 歌詞に直接現れているわけではないんですけど、裏テーマになっているかもしれないですね。今は色んな人の色んな意見が溢れていて。それは素晴らしいことだと思うんですけど、分断するようなことを(SNSなどに)書いてしまう人もいるじゃないですか。繊細な話題に関してそういう意見を投げかけるのは良くないし、やっぱり尊重し合うことが大事だなと。それは日々感じてることだし、この曲の歌詞のどこかに出ているかもしれないです。


――“孤独under crying”など、独特な言葉遣いも印象的でした。韻を踏むことも意識してますよね?

崎山 そうですね。トラップっぽいビートも入っているし、ラップというほどではないけれど、韻を踏んでいるところもあるので。歌唱については、全体を通してスムーズさ、滑らかさを意識してました。ところどころ強さも出してるんですけど、基本的には感情をぶつける感じではなくて、丁寧に歌ってみようと。

――歌の表現も広がってますよね。

崎山 嬉しいです。最近、自分の過去の作品を少しずつ客観的に聴けるようになってきて、「こういう感じだったのか」と。それを踏まえて、歌の幅も広がってるのかもしれないです。

――なるほど、ギターについては?

崎山 曲に馴染むようなニュアンスを意識してたかな。ネオソウルの文脈のギタリストが好きで、自分でもやってみるんですけど、なぜか違う形になってしまって(笑)。

――崎山さんのギターの響き、すごく独特ですからね。
「燈」という曲名については?


崎山 明るすぎない、温かみのある光が灯っているというイメージがあったんですよね。“燈”って仏教用語でもあるらしくて。『呪術廻戦』にも神社や仏閣が出てくるし、似合うのかなと思ってこの曲名にしました。仏教にもちょっと興味があって。“推し僧侶”は山側宗玄老師ですね。NHKの「こころの時代~宗教・人生~」で特集されているのを見て、素晴らしいなと思ったんです。

――渋い。エンディングの映像を観て、どう思いました?

崎山 すごく優しくて、きれいな映像だなと思いました。悲しさや切なさもあるんだけど、楽しそうな場面もある。曲に合わせてもらっているところもあるので、ありがたいです。アニメ作品に関わらせてもらうときは、その作品のことをすごく考えるし、歌詞も世界観やストーリーを意識するので、普段だったら書かないような言葉も出てくるんですよ。『僕のヒーローアカデミア』のときもそうでしたけど(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期EDテーマ「嘘じゃない」)、原作の漫画、アニメを愛している人に喜んでいただけるような曲を書きたいし、「良かった」と言われるとホッとしますね。


――ちなみに崎山さん、夏油と五条のように、学生時代に切磋琢磨した経験ってありますか?

崎山 自分はないですね。割とヘラヘラしてたので(笑)。音楽はめっちゃ好きだったし、曲を作ったりもしてたので、中学生くらいから「音楽に携われたらいいな」とは思っていました。こうやって活動させてもらえてるのはすごくありがたいです。

――闇落ちすることもなく。

崎山 はい(笑)。皆さんと同じく、気分の浮き沈みはありますけどね。

「中学生くらいの頃、漫画家になりたいと思っていたんですよ」
――崎山さんのアニメのお話についても聞かせてもらえますか?

崎山 小学生の頃は配信サービスなどがそれほどなかったので、DVDを借りて観ていました。その頃は尖った感じというか、ちょっと暗いところがあるアニメ、大人っぽいアニメを選んでましたね。『デュラララ!!』とか『電脳コイル』とか。逆に今は『スポンジ・ボブ』とかが好きです(笑)。カーニというキャラクターがいて、日本語吹き替え版だと「カーニカニカニ」って笑うんですよ。
英語版はどうなのかな?と思って観てみたら「ハハハハ」って普通に笑ってました(笑)。

――(笑)。

崎山 中学生くらいなると、松本大洋さんの『ピンポン』や大友克洋さんの『AKIRA』などを観るようになって。今観てもすごい作品だなって思いますね。『ピンポン』の主題歌が爆弾ジョニーの「唯一人」で、それもカッコいいなって。

――アニメで知ったバンドやアーティストも?

崎山 はい。印象に残ってるのは、凛として時雨ですね。『PSYCHO-PASS サイコパス』の主題歌の「abnormalize」(凛として時雨)を聴いて、「ギターやべえ!」って衝撃を受けて。TK(from凛として時雨)さんの『チェンソーマン』のEDテーマもめちゃくちゃカッコよかったですね。

――「週刊少年ジャンプ」も読んでいましたか?

崎山 小学校、中学校はずっと読んでいましたね。今もたまに買ってます。小学生の頃は「SKET DANCE」「めだかボックス」「NARUTO-ナルト-」とか。
もちろん「ONE PIECE」も読んでいましたし、それから「ハイキュー!!」や「僕のヒーローアカデミア」が始まって。あとは藤本タツキ先生の「ルックバック」「さよなら絵梨」もすごかったですね。中学生くらいの頃、漫画家になりたいと思っていたんですよ、自由帳に絵を描いたりしていたんですけど、“ガワ(カバー)”にこだわっていて。「巻頭カラー『〇〇〇〇』」ってドーンと描いて、1枚めくったら、もう次の漫画になるっていう(笑)。

ーー表紙も大事ですからね(笑)。

崎山 (笑)。僕、ビジュアル系バンドが好きなんですけど、特にハードな感じのビジュアル系バンドってCDやボックスセットのアートワークがすごいんですよ。特典DVDとかも独特な、意味のわからない映像がずっと流れていたりして、それがすごく好きなんです。

――8月9日にリリースされる崎山さんの3rdアルバム『i 触れる SAD UFO』も楽しみです。「燈」も収録されますが、どんなアルバムになりそうですか?

崎山 ライブのバンドメンバーと一緒に作った曲が結構ありますね。歌詞に関しては、意外と抽象的ではないかも。そこまで具体的ではなくても、何を歌ってるかわかる曲が多いし、自分のことを歌ってる曲もあります。そこは今までとは少し違うかもしれないですね。あと、ジャケットのアートワークが“モンチッチ”なんですよ。

――え、かわいいですね(笑)。

崎山 そうなんですよ(笑)。モンチッチも子供の頃から好きなので、ジャケットに出来たのはすごく嬉しいです。

●リリース情報
TVアニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」エンディングテーマ
崎山蒼志 ニューシングル
「燈」
2023年7月19日(水)リリース

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【通常盤(CD)】

品番:SRCL-12556
価格:¥1,430(税込)

<収録曲>
01.燈
02.My Beautiful Life
03.係留
04.燈 -Instrumental-

【期間生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:SRCL-12557~8
価格:¥2,300(税込)

【CD】
<収録曲>
01.燈
02.My Beautiful Life
03.君はひとりじゃないとか
04.燈 -Instrumental-

【Blu-ray】
<収録曲>
1:「燈」Music Video
2:「燈」Music Video Making
3:「噓じゃない」Music Video
4:「Samidare」Music Video

関連リンク
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https://sakiyamasoushi.com/

公式Twitter
https://twitter.com/soushiclub
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